呪いがとけるプリンセス
「本当? 隣国のプリンセス、元々は灰かぶりっていじめられていたのに、魔女に魔法をかけられて玉の輿!?」
そんな新聞記事を読むわたし。良い知らせのはずなのに、なぜかため息が出てきた。
それもそうだ。実際、わたし、男爵家の四女で別に王族でもなく、貴族とはいえ、お金持ちとも言いがたい。去年、お父様が事業を失敗したの、けっこうな打撃だったし。おかげで縁談もまとまらない。
顔も平凡。貴族令嬢としては特に目立った特技も才能もない。どこを切り取っても平凡そのものの。
「魔女に頼んだら願いが叶うかしら?」
隣国のプリンセスのように、一発逆転で玉の輿に乗れないものか。
確か子供の頃もよく魔女のところへ行っていた。魔女の占いの結果によると、わたし、絵や音楽の才能もあるらしいし、またアドバイスでも貰いに行こう。
そして森の魔女の家まで出向き、相談をした。魔女は否定もせず、よく聞いてくれた。
「そうだよ。あなたは絵や音楽の才能があるし、幸せになれる」
「本当?」
「そうさ」
「呪文をかけてやろう」
魔女の呪文は何を言っているか不明だったが、それだけで幸せになれる気がした。玉の輿に乗れる気がした。何者かになれる気がした。気がしただけ。
実際はわたしよりも美人の公爵令嬢たちが結婚していた。結婚だけでなく、絵や音楽の才能が認められている者までいた。
それに隣国から例のプリンセスも外交に来ていた。王都でパレードがあってわたしも野次馬に行ったけど、かなりの美人だ。別に魔法なんかを使わなくても、微笑んだだけで王子様を落とせそう。そもそも本当に魔法なんてあったのだろうか。噂が噂を呼び、そういう話になった可能性、高そうだった。
帰り道、心がざわつく。結局は持って生まれたものや運みたいなものが結果を生んでいるのだろうか。
手のひらを見つめる。何も持っていない。乾燥して指先がカサついていたが、わたし、幸福や何者かになること、執着しすぎていた?
最初は純粋な希望だったのに、いつのまにか呪いになっていたらしい。
「ということで、魔女。もうここへ来るのはやめようと思う」
「そうか」
魔女にこの事を話したが、特に反対されない。むしろ深く頷いていた。
「身の丈に合わない幸福は、いつか呪いになる」
「そうね、魔女……」
魔女の家を後にしたら、逆に気分はすっきりしていた。
空を見上げると、今は何の願いも見つからなかった。それでも良いと思う。どうにも冴えない現状も見つめられそう。
呪いは解けたのかもしれない。




