金の卵を産むAI
令和の世にKという男がいた。Aは小説家志望だ。小説投稿サイトに作品をあげていたが、全く読まれもしない日々。
「うん? このサイトも収益化するのか?」
そんな折、投稿しているサイトで収益化の発表があった。PV数に応じて、お金やギフト券になるという。
欲に目が眩んだ。どうせ読まれないのなら、AIで大量に作品を作り、少しでも小遣いにしようと考えた。
「これって金の卵じゃん。AIでお金にするぞ!」
毎日百作以上を投稿し、新着欄を埋め尽くすほどだった。とにかく数打て作戦だ。質よりもPVだけを稼ぐ。特に人気の異世界恋愛小説だけを重点的に作らせた。
しかし人間というのは愚かなものだ。Kと似たようなことを考える者は他にもいた。さらに新着欄がAI小説に埋め尽くされ、地獄と化した。読者も似たようなAI小説に飽きていき、結局、アニメ化作品がランキング上位を独占し、格差はより一層広がっていく。
その上、出版社もAI小説に本格参入した。大手出版が大金を投資したAI小説のクオリティは高く、売り上げもいいらしい。
ついには新人賞を廃止するようになり、書店や電子書籍ストアに並ぶ作品は過去のヒット作、ベテラン作家の新作、AI小説の三種類しか無くなった。最近はAI小説新人大賞も開設された。審査員もAIで話題になっているという。
「あれ? 俺が書く場所、もうない?」
気づいたらKが投稿できる新人賞も無くなってしまった。いくらAIで大量に作品を作ってもPV一桁が並ぶ。これだと収益化するのに何年もかかる計算だ。
Kが利用していたAIにも異常がでてきた。あまりにも異世界恋愛小説を作らせたせいか、最近は「ざまぁ!」としか発言しなくなってしまった。
安易に便利なものに飛びついた代償はあったらしい。




