魔女の御神託
わたしはシンデレラに魔法をかけた魔女。当時は話題になり、仕事も沢山あったけれど、今は全然。魔力もついに枯れてしまい、現在無職だった。
「さて、どうするかね。最近は技術革命もあり、工場に働きに行くか……」
森に中にある家で考える。しかし、もうわたしは老女だ。今更、油まみれになりながら工場勤務はできない。森から工場も遠い。
「マーケティングするか」
街に出て、人々が求めているものを調査することにした。
もうシンデレラの頃と時代が変わった。街には労働者が溢れ、女も子供も働かされている。ガラスの靴で一発逆転の魔法は流行らないかもしれない。そもそもわたしにはもう魔力がない。
さらに工業区域に入ると、労働者も多いが、失業者も多いことを知る。一部では人手不足になっているらしい。
「どういうことかい?」
わたしはその足で職安に向かい、それとなく職員に尋ねてみた。
「最近はね、技術革命もあり、単純作業労働者が逆にフリなのよ。人より機械おいた方がコスパもタイパもいいからね。ついていけない労働者は多い。生きづらいみたい」
そんな話を聞きながら、商売がひらめいた。こうした生きづらい人をターゲットにし、甘いだけの言葉を与える商売を。
「本当はね、自分に向き合って、どんな仕事をするべきか考えないといけないけどね」
職員の言葉は無視し、わたしは商売の計画を立てに家に戻る。商売の名前はすぐに決まった。「魔女のミラクル☆ハッピー御神託カウンセリング」だ。生きづらい人をターゲットにし、とにかく甘い言葉だけ与え、問題解決もさせず、依存させて常連客になってもらう。
「お、我ながらいい商売だわ。魔力もいらんし、適当に神のお告げって言っておけばいいんだ」
わたしはニヤリと笑う。
その後、わたしはこの商売を始めた。実際、連日とても人気だ。行列もできていた。
「仕事についていけない。生きづらいんです」
「それはあなたの魂が特別だから。そうよ、あなたは選ばれたスターシードなの」
適当なことを言っているだけなのに、顧客は笑顔で帰っていく。しかし、一時は気分が良くなるだけ。何の解決もしていないため、またやってきてくれる。リピーターだ。リピーターは商売をする上でとてもありがたい存在だったから、カモになってもらう。
「仕事でミスばっかりで」
「それは発達障害かもしれないわ。特別な才能があるギフテッドなのよ」
適当に言っただけなのに、顧客は真に受け、自己流診断で発達障害だと主張してきた。
「わたしはADHDだったみたい。診断名がついたっぽくてホッとしました〜。これからは精神科に行きまーす!」
「え、ちょっとお客さん。うちのカウンセリングは受けないの?」
「ええ。医学の方が権威があるからね」
こうしてわたしの商売、精神科に邪魔されるようになった。最近は売り上げが落ちてきていた。
「精神科、権威と科学的っぽい雰囲気出してるだけで、やってる商売は私とちょっと似てないかい? 元々障害で苦しんでる人も多いだろうけど、うちの顧客みたいな患者も混じってそうだよな……?」
そんな気がするが、今日も生きづらそうなお客様がやってきた。
「お客さんは選ばれた特別なスターシードよ。そう、あなたは何も悪くないし、生まれつき問題だから。ええ、あなたはありのままで良いのよ。なんの努力もしなくていいし、自分を愛しているだけでいいから」
甘い言葉だ。自分で言いながら、その甘さに耐えきれなくなってきたところ。




