エリート集団の働きアリ
ここは昆虫村という。様々な昆虫が労働して暮らしていた。僕はアリ。その中でも特に勤勉な働きアリだ。寝ずに働き、ついに働きアリのリーダーにもなった。
今日も早朝に起き、せっせと獲物を巣に運んでいた。本来ならこの仕事、無能なキリギリスやアゲハ蝶の仕事だったが、結局、僕がやるはめに。我が昆虫村、人手不足で困っていたんだ。
「なんかいい方法ないかな? そうだ、有能なエリート集団だけで仕事をやったら、生産性が高いんじゃ?」
そう考えた僕は、さっそくエリートだけ集めた。スーパーエリート集団と呼ばれ、最初は生産性も高く、昆虫村で一番の利益が出ていた。
「あれ、君は同じエリート集団のカマキリくんじゃないか? そんな道端でどうして泣いてるの?」
カマキリくん、最近、休みがちだと思ったら、道端で泣いていた。
「仕事が辛い。あのエリート集団の中では僕は最下位だ。無能なキリギリスやアゲハ蝶を馬鹿にしていた時が懐かしい! もうエリート集団なんて辞めたい!」
「ちょ、カマキリくん!」
引き留めたが、カマキリくんは退職代行を使い、本当にやめてしまった。完璧に見えてエリート集団だったが、定着率が悪く、ここでも人手不足に陥ってしまった。
「無能や落ちこぼれも集団に必要なのかな?」
僕は溜まった仕事を処理しながら考える。確かに彼らがいた時は、マウント取れたし、職場の空気が和やかだったことも事実だ。彼らには悪いが、自分より下の存在がいることは、精神衛生上、とても良かったらしい。
結局、エリート集団は解散し、元の状態に戻ってしまった。
「ちょっと、キリギリスくん! 怠けていないで仕事しろ〜」
無能や落ちこぼれのケツを叩いていたが、今はそんなに嫌いでもない。




