ゴミ屋敷ラプンツェル
塔の中のラプンツェル は、途方に暮れていた。
「あれ? 何でこんなにゴミ屋敷みたいになっているの?」
通販の箱、洋服、化粧品、バッグ、英語教材が足の踏み場もないほどに散らかっていた。
「はぁ、でも明日仕事だし。片付けるの面倒だ」
結局、掃除は先延ばした。ベッドに逃げ込み、無理矢理眠る。
こんなラプンツェル 、幼い頃に魔女に呪いをかけられ、塔から出られなかった。実の親も兄弟も知らない。
だからといって王子様がくる保証もなく、髪の毛を自分で切り、ガリガリと勉強し、バリバリと仕事もしていた。魔女も呪いの罪で捕まったし、気ままな塔での一人暮らし。
幸せ。そう幸せなはずだったのに、どうも心の隙間埋まらず、北風が吹いていた。
同世代のプリンセスは次々と幸せを掴み、気づくと、塔はゴミ屋敷。
「どうしよう?」
翌日はゴミ屋敷化した塔に悩む。それだけで脳が疲労するが、服もコスメもその他のものも全部、心を埋めてくれない。人にも頼れない。世間ではバリバリのキャリアウーマンのラプンツェルと有名だ。特に家庭内に人が入るなんてもっての他。
「でも……」
仕事では自分ができないものは、部下に協力してもらっていた。できる事とできない事を見極め、キャパオーバーになる前に、人に頼るように。尊敬している上司の言葉を思い出し、このゴミ屋敷も人の手を頼ると決めた。
汚部屋専用の業者だった。男女数名で塔を綺麗にしてもらったが、慣れているのだろう。ゴミ屋敷化した塔を見ても驚くどころか、しっかりとしたキャリアウーマンに多い傾向だと言われた。
もう塔の中はスッキリと片付いた。心を埋める為に買ったものは、ゴミとして燃えるだろう。
「あの業者のお兄さん、かっこよかったな……」
もう王子様がこの塔にやってくる可能性は低いだろう。それでも心は綺麗に晴れてる。できない事を手放したら、少し幸せに近づく気がした。




