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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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昨今のシンデレラ

 今日もSNSを見ていたら、男女間で揉めている。特に奢るor奢らない問題は、根深い問題らしかった。


「私は働いているもの。奢らないで、出すわ」


 そんなSNSを見てしまったからだろうか。婚活相手と会食後も、財布を取り出した。周りも似たようなカップルが多いらしく、レジのあたりは少し混んでいた。


 そんなわたし、家に帰ってきたら、どっと疲れた。メイクを落とし、女子アナ風ワンピースを脱ぎ捨てると、ダラダラと映画を見る。


 恋愛映画だった。シンデレラストーリーで、虐げられたヒロインが、ハイスペックのヒーローにデロデロに溺愛される。


 本当はこういうのが好き。子供の頃の夢も花嫁。シンデレラストーリーを山のように摂取していたが、世の中は男女平等、女性の社会進出を推し進めていた。


 翌日、朝から生理がきた。腰も頭もお腹も痛かったが、無理矢理鎮静剤を飲み、会社に向かう。正直、満員電車に揺られるだけでもしんどい。ここにいる客は全員顔が暗い。葬式みたい。


「あーあ、子供の頃の夢とはぜいぶんとかけ離れてしまったな……」


 小さな呟きは、かき消された。


 そんな生活を続けたせいか不明だったが、婦人系の病気が見つかり、手術のために入院することになってしまった。


 術後は一日中ベッドの上だったが、別に王子様はこない。看護師や同じ病室のおばさんばかりと話していた。


 だんだと回復してきた時、電子書籍で今流行ってる漫画やラノベを見るが、ドアマッドヒロインや和風シンデレラストーリーが多い。キャリアウーマンがヒロインでも、相手はさらにハイスペックな社長や医者だったりした。


 女の本音はそうかもしれない。本当は無条件に庇護され養われたいのかもしれないが、現実は鎮静剤を飲みながら、無理矢理仕事をする毎日。


 その後、病気は完治し、また婚活に向かった。


「いいよ、私が出すから。割り勘にしよう」


 口ではそう言いながらも、本音ではそんなことは考えていない。女性の社会進出が進んだ北欧やアメリカでも、専業主婦願望の女がじわじわと増えていると聞いた。全世界の女性の本音、本当に聞いてみたい。


「っていうか、紗夏さん。なんか嘘ついてない? 本当は奢って欲しいんじゃね?」


 そんなある日、婚活で会った男に指摘された。いつものように財布を取り出そうとしたのに。


「もっと本音出したら? 仮面かぶって婚活しても、後々無意味じゃないか?」


 そう言われても、わたしの本音はとっくの地の底に埋まっている。


「いえ、割り勘にしましょう」


 どう頑張っても本音は出てこない。相手に指摘されても出てこない。


「そっかぁ。なんか王子様になり損ねた気分」


 相手が不満そうにしていても、建前はさらに分厚くなっていく。


 今日も財布を取り出し、割り勘にする。相変わらず王子様も現れず、SNSの男女の溝も深いらしい。

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