小公女セーラのセルフラブ
父親が借金を作り、寄宿舎に送られた小公女セーラ。
「でも、わたしは負けない! わたしはわたしを愛しています。セルフラブ!」
そんなセーラを支えたのは、心理学系のYouTubeだった。その中では、自分を愛すれば愛するほど上手くいくという。
「こんな状態になってもわたしはわたしを愛してる。心はお姫様!」
そうアファメーションしながら、寄宿舎の側の森を歩く。
アファメーションとはポジティブな言葉を宣言する事だ。繰り返しそう宣言していると、言葉の通りの現実になるという。心理学系のYouTubeで言ってた。
「もしもし、セーラ」
その時、森の湖で声をかけられた。湖には女神がいた。なぜか金の斧と銀の斧を持っている。
「あなたは誰?」
「わたしは女神。異世界転生を司る女神よ」
「へー」
セーラは半信半疑だったが、女神は続けて言う。
「この銀の斧を持てば、綺麗なジャイアンを……」
「綺麗なジャイアン?」
「間違えた。いえ、銀の斧を持てば、異世界転生後も自分として生まれ変わります」
「うん、いいね! わたしはわたしを愛しています! セルフラブ!」
女神は無視し、金の斧の説明に入った。
「この金の斧を持てば、異世界転生後は橋本環奈に生まれ変わります。ご希望でしたら浜辺美波、今田美桜、広瀬すずでも」
「は!?」
人気女優の名前があげられ、セーラはツバを飲み込む。セルフラブは一瞬で吹き飛んだ。
「どう? 銀の斧、金の斧、どちらを持って異世界転生したい?」
「もちろん金の斧です!!!」
セーラは女神に金の斧をねだった。あんなにセルフラブを謳っていたのに。
あなたは本当に自分を愛してる?




