独立起業シンデレラ
「まったく薄汚いシンデレラね!」
「本当に醜いわ!」
「これだからシンデレラなんて!」
義母と義姉は、私の事は嫌いらしい。毎日虐げられていた。
どうも、こんにちは。私はシンデレラ。一応貴族の娘だが、家庭は複雑だった。
お母様が病気で早死にし、お父様が再婚してから、大変。再婚相手やその連れ子は極悪で私を虐げる日々。また貴族の後妻におさまった事を良い事に義母は贅沢三昧。義姉は結婚で一発逆転を試み、連日舞踏会に出没していたが、あの顔ではね……。特に肌が汚いのがネックよな……。
私はというと、毎日灰の掃除をしていた。おかげで灰かぶり、シンデレラというあだ名まで付けられた。解せない。
「しかし、灰って何かリサイクルできないもんか? うん? っていうか私、灰を扱っている割には手荒れしてない。もしや灰に美容成分があるのでは?」
亡くなった母は美容研究家だった。母が残した研究室に通い詰め、ついに灰に美容成分がある事をつきとめ、石鹸や化粧水を開発した。
父親の方の親ガチャは大外れだったが、母方ガチャはアタリだったらしい。母の隠し遺産を活用し、美容ブランドを新しく作った。独立起業である。
といっても「美容灰洗顔シリーズ」の売り上げは芳しくない。
王都で開催されている起業セミナーに参加し、ブランディングの重要性を学んだ私は、ブランドのリニューアルを決意した。
まずブランド名は「シンデレラの秘密」に変え、キャッチコピーは「どんな女性もお姫様さまに変身できる!」とした。先輩起業家によると、女性はお姫様願望が強いので、そこをくすぐるキャッチコピーを作ると良いとアドバイスされたし。
また社長の私自身もブランディングした。虐げられているシンデレラが、うちの化粧品を使って大変身! 王子様をゲットという盛りに盛ったストーリーを作成し、ブランド戦略とした。
もっとも王子様と何の付き合いもないと困るので、起業家仲間から紹介して貰い、一緒にビジネスをする事で契約成立。
という事で私の化粧品ブランドは大成功となり、巷ではシンデレラストーリーも大流行りだという。
一方、王子はこんな私を見て「おもしれー女」だと大笑い。本当に結婚を前提に付き合う事になったが、向こうも会社経営者なので色々と相性も良く、何の問題もなかった。
ちなみに義母はうちの化粧品を使って若返った為、今は美魔女キャラとして人気らしい。義姉も私の化粧品のおかげで肌が綺麗になり、婚活も上手くいき、二人とも全く頭が上がらなくなっていた。つまり、私への虐め問題もスッキリ解決!
「俺の存在って何?」
父はこんな私達を見て大泣きしていたが、こればっかりは仕方ない。
今日も大都では各種シンデレラストーリーの演劇が上映されているという。
シンデレラストーリーの作者が弱々しいとは限らない。私のような独立起業の作者も多いかもしれない。
「さて、今日も美容成分の研究やブランディング戦略を練るわよー!」
腕まくりをし、仕事を進めていた。