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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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眠り姫の推し活

 わたしは眠り姫。子供の頃に魔女に呪いをかけられ、塔の中で眠らされていた。


 眠らされているといっても、万年眠っているわけでもない。排泄や食事で起きる時もあった。医師によると、ロングスリーパーと似ているらしい。


 そんな時、偶然、テレビでアイドルのヒカルくんを見つけた。


「何この人、王子様みたい」


 ヒカルくんは歌も踊りも完璧。演技も上手。グループ内でも他メンバーをさりげなくフォローし、優しい性格なのが良い。


 という事でヒカルくんにハマってしまい、毎日推し活していた。呪いのせいで眠ってしまう時もあったが、ヒカルくんのためなら、推し活頑張れる!


 そして時が流れた。


 推し活に夢中の私に、婚活中の王子様もドン引きし、去っていく事が多い。


 わたしも引いてる。塔の中に我が物顔でやってくる王子様に。


 俺様風の勘違い男ばっかりだし、ヒカルくんと比べると、ルックスも性格も見劣りする。それにヒカルくんの動画、CD、ドラマ、雑誌もグッズが溢れて、心は満たされてるから、いい。


「まって、しんどい。ひーくん、供給過多だから……」


 ヒカルくんの推し活やっている方が楽しい。


 それに加齢とともに呪いも薄まってきたらしい。一日八時間程度の睡眠でも大丈夫になり、ヒカルくんのコンサートやディナーショーにも行けるようになった。


「ひーくん、こっちみて!」


 ペンライトを振り回している時が、一番幸せ。


 もっとも時間の流れは残酷だった。わたしは五十代の独身女性として、周囲から腫れ物扱いされていた。もはや、アイドル推しは偶像崇拝という呪いだと説く聖職者まで現れる始末。


 ヒカルくんもファンと事務所に甘やかされ、ベテランなのに演技派になれず、今はファン向けのコンサートやディナーショーで食い繋いでいる。


 昔は「ハリウッドデビューが夢」って熱く語っていたんだけどなぁ。


 それでもビジュはいいから、メディアで「美魔女」とも呼ばれていた。今、ファンの間でも「まじょひーくん」というニックネームで通ってる。


「でも、それでもいいわ。変な王子様と結婚するより、推し活の方が楽しいもん。ね、まじょひーくん……」


 今日もペンライトを振り回す。まだ眠りから覚めていない気がしてきたが、とても幸せだった。


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