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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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セカンドライフ人魚姫

 人魚姫は泡になって消える予定でした。大失恋し、声も出ず、魔女からもらった脚も痛かったんですが、目の前に良い魔女が現れました。


 良い魔女はシンデレラという女性も成功者にしたことがあるらしく、新しい身体をくれました。


「わあ! 声も出るし、歩ける!」


 喜ぶ人魚姫。


 自分を振った王子様にザマァしようと思いましたが、今時の女性は自立しないと。


 という事で人魚姫は素性を隠し、福祉の道へ進みました。取れる資格もなく、ブランクもあったので、引きこもりの就労支援職につきました。


 仕事は意外と簡単です。引きこもりにはコンビニ店員か福祉などの新規参入しやすい業界を進め、そこで面接が落ちたら終了です。短期離職しても、やる気がなくなって引きこもりに逆戻りしても当事者の責任になります。


 そもそもこの福祉業界、過剰に人権やポリコレを意識した結果「当事者本人の自由意思」を大事にしていました。人魚姫も資格を取ろうとか具体的なアドバイスはせず「当事者本人のお気持ち優先」のぬるい相談を続けていました。


 もっとも短期離職とはいえ、新規参入しやすい業界に一応行かせれば支援施設の実践になりますし、人魚姫自身も当時者の自立や生活、お金にも全く興味がないです。


 家に帰ると引き寄せの法則の書籍を見ながら、王子様と復縁する方法をイメージングしていました。


 現実はそんなもんです。


 こういった仕事も新規参入がしやすい為か、質のいい人はごく少数。ラノベ作家やバンドマンなどが本業に溢れて来る事もありますし、有能な人が引きこもりの支援職に来る事は少数です。


「へー、ラプンツェル っていう引きこもりが魔女を殺したんだ。えーでも引きこもり就労支援には何度も行ってたの? へー」


 引きこもりが起こした事件のニュースを見ても人形姫はこんな感想しか出ません。


「ま、どうでもいいか」


 そう、現実はこんなもんです。

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