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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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就活中の赤ずきんちゃん

 ある所に赤ずきんちゃんという少女がいました。


 多様性は素晴らしいもの&「障害は個性」という風潮の中育てられた赤ずきんちゃんは、無邪気にすくすくと育ちました。


 高校生の時に発達障害とか社会不安障害などと診断された赤ずきんちゃんでしたが、そんな教育の中で育ったんだもの。それも個性だと思い込み、自己肯定感も全く下がりませんだした。


 時が流れ、赤ずきんちゃんも社会に出る年齢が近づいてきました。


 せっせと履歴書を作り、気に入った求人票の企業に面接に行きました。


 なぜかキャリアアドバイザーには障害のことなどを公言しないよう釘をさされていましたが、赤ずきんちゃんは学生時代にがんばった事などを面接で話しました。


 面接官の狼さんは「いいね!」と笑顔。様々なペーパーテストや作文も乗り越え、赤ずきんちゃんは自信満々です。きっと内定が出ると笑顔でした。


 しかし結果はお祈りメールでした。


 実は企業で「発達障害者や精神疾患者は絶対に採用するな」とコンセンサスが出ていました。ペーパーテストも作文もそれらを排除するためのものだったのです。


「あれ、なんで落ちたん?」


 赤ずきんちゃんはお祈りメールを睨みつけるが、その答えは分かりません。


 人間の心には魔女が住んでいます。


 口では多様性や「障害は個性」などと建前を言いながら、本音では差別主義者なんて事はよくあるんです。「鬱は風邪」などと綺麗事を言いつつ、隣に障害者作業所が建設されると嫌がる住民は多いものです。一見、善良そうに見える日本人でもその傾向が一番高いそうですよ。


 さて、ぬるま湯で育った赤ずきんちゃんが、この現実を知るのはいつの事でしょう。それでも彼女はめげずに求人票を読み漁っていますが、どうなる事やら。


 人間の心には魔女が住んでる。


 本当は早めに子供に教えるべき事なんですけどね。教科書に載せても良いぐらいですが、今日も綺麗事で埋め尽くされているようです。


 どうか赤ずきんちゃん、綺麗事に騙されず、狼の本音を見抜いて強く生きてね。

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