浦島花子
浦島花子はバカだった。勉強もついていけず,村娘の中でも落ちこぼれ。仕事にもありつけず、悶々としていた。
そんな花子は見た目だけは良い。漁師に身体を売りながら何とか食い繋いでいた。売春は最古の職業とも言われる。花子も最後の砦としてその仕事を選んでいた時。
海辺でイケメン漁師を見つけた。しかも気分が悪そうで倒れていた。
チー牛だったら無視するが、相手はイケメン。すぐに助けた後、お礼として海底にある竜宮城という夢のような場所へ連れていかれた。
イケメン漁師達が花子をお姫様扱いし、お酒、料理、スキンシップなどでもてなされた。
ずっとバカだと見下されていた花子にとっては夢のような世界だ。
もっともイケメン漁師達にもランクがあり、推しに貢がないとやっていけないシステムだった。
推しがNo.1になると、花子はもっとそれ以上のサービスを受けられるようになり、どんどん花子は貢いでいく。
売春で稼いだお金もあっという間に蒸発していく。
それに時間の流れもおかしく、気づいた時には三十代になっていた。
「これは困ったわね……」
お金が尽きた花子は考えた。またバカな漁師をカモにするしかない。
「おい、カメ! 今すぐ陸へ行ってチー牛or弱者男性を捕まえてきなさい。趣味もなく、仕事しか生きがいがないおじさんもなお良いわ」
カメに命令を下すと、花子はありったけの化粧と衣装で年齢を誤魔化し、乙姫という偽名を使いながら、男達から金をせびっていった。
親戚の浦島一郎までやって来た事は驚いたが化粧のおかげでバレていない。
「一郎さん、今日も楽しみましょ!」
「そうだな!」
こうして毎日ドンちゃん騒ぎをしていたが、時間の流れは相変わらずおかしい。残酷なぐらい。
花子も一郎もあっという間に六十代になってしまった。
今では竜宮城について「介護つきキャバクラ&ホスト」などと呼ばれているらしい。
今日もヨボヨボになった花子達は酒を飲み、大騒ぎし、推しに貢いでいたが、時間だけが過ぎていく。
こうして親や上司になる機会を逸してしまい、年齢だけ重ねている花子だったが、今日も笑顔だ。
ヨボヨボの老体に鞭を打ち、推しに貢ぐ姿は案外不幸そうでもなかった。




