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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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ポリコレ人魚族

 人魚族には悲恋の物語が伝えられていた。「人魚姫の悲恋」という。王子様に想いが届かず、結局泡になった悲恋物語で、人魚族だけでなく、人間界でも人気だ。


 長らく人魚族は人間族に虐げられ、差別されていたが、この物語によって風向きが変わり、今では種族を超え、平等に平和に暮らしているように見えたが……。


「私、人魚族よ。差別なんてしないで、王族の婚活パーティーに出させてください」


 人魚族の娘・アリサもそう言い、無理矢理王族の婚活パーティーに入った。


 誰も断れない。今は逆に人魚族の方が強く団体と化し、人間界で少しでも差別があると、集団で抗議していた。特に小説や漫画などのエンタメ作品で、少しでも人魚族を悪く描く事を許さず、SNSで炎上も繰り返していた。


「でも差別は良くないでしょう。人魚族も人間も平等に仲良く暮らしましょう」


 アリサは人間のCMや映画にも出演するようになった。「人魚枠」があり、必ずそこに配役しないとCMや映画も制作できないという。


 今では人間よりも人魚族の方が偉く、国を支配するほどだ。


 王族も解体され、王子だった青年も海辺で慎ましく生活するようになってしまった。


 そんなある日、海辺で溺れていた人魚族を見つけて助けた。この時代は何でも差別になってしまうし、助けない選択はなかった。助けた人魚はアリサという。CMや映画でよく見る顔だったが。


「きゃー! 人間の男に触られた! セクハラ! パワハラ! 誰か助けてー!」


 助けたのになぜかアリサに大騒ぎされ、元王子様は逮捕されてしまう。完全な濡れ衣だったが、今は人魚族が強いし、誰も彼の言い分を聞かない。


「本当、今の人魚族は強くなりましたよ。もう差別される側とかじゃないよな。十分強いよ!」


 元王子は弁護士をつけ何とか濡れ衣は晴らせたが、もう人魚族にはウンザリだと思う。昔は人魚族と人間の悲恋もあったらしいが、今は絶対にあり得ない。人魚族は強くなり過ぎた。人間が弱くなったのかもしれないが。


 こうして人間と人魚族の恋物語は二度と生まれなくなった。差別もなく、多様性があり、あらゆる面に配慮したキレイな恋物語だけが生まれているという。その多くはAIで描かれ、何の炎上も無い平和な毎日だ。

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