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ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


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ブルベマウント白雪姫

「え、お母さまってイエベ? えー、そうなんだ。私はブルベですが。ふふ」


 白雪姫はパーソナルカラーの話題をするのが好きだった。パーソナルカラーとはその人に合う肌の傾向を診断したもので、上下はないはずだが、ついつい白雪姫はマウントをとってしまう。


「通りでお母さま、肌が黄色いと思いました。ふふ」


 勝ち誇ったように笑う白雪姫だが、実際彼女の肌は透き通る雪のように綺麗。白雪姫と呼ばれるだけある。


「もうあの娘のブルベマウントには嫌になるわ。血が繋がっていないとはいえ」


 マウントを取られた妃は頭を抱えた。こんな調子なので白雪姫の教育は失敗し続けている。最近は南国の姫にもブルベマウントをやらかし、戦争にまで発展しそうになった。外交では多様性とポリコレが面倒で仕方ないのに。


 お城の中は白雪姫の味方は少ない。白雪姫は侍女や洗濯婦にもブルベマウントをし続け、すっかり嫌われていたから。


「ねえ、私ブルベなんだ。ふふ」


 何度注意してもブルベマウントを辞めない白雪姫は、ついに城から追放された。その上、毒林檎を食べ死んだというが、城で心配する者は一人もいない。普段から恨まれていた結果だろう。


 あの毒林檎は妃が用意した。そんな噂もあったが、何の証拠もない。例え証拠があっても城の中で内々に処理されるだろうと言われていた。


「白雪姫、死んでざまぁって感じ」

「だよね。お妃様が犯人でも私は責めない」

「いつもウチらにマウントとってきたもんね」

「やっぱり普段から人の恨み買うって損だよね」

「ねー。マウントとかやめろって感じ。女社会舐めてるわ」


 城の侍女達がこんな噂をしてたが、白雪姫の毒林檎事件の調査も打ち切られ、そのうち誰も話題にされなくなった。


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