コスパが悪い鶴の恩返し
雪子は村の若者・正太郎に片想い中だった。貧しい農村だったが、真面目に働く正太郎にいつのまにか惚れていた。
といっても最近は重病になり、半年以上家で休んでいた。酷い肥満児だった雪子も痩せ細り、垢抜けて見えるぐらいだ。久々に村人にあったら、みんな驚くかも!
こっそりと屋敷を出た雪子は正太郎が罠にかかった鶴を助けているのに気づく。こっそり見ていただけだが、その優しさにキュンとなった。
「そうだ! あの鶴が擬人化した事にして正太郎にモーションかけよう。痩せた私は雪子だって気づかないはず」
という事で正太郎の汚い庵のような家に行き、鶴のフリして無理矢理あがりこんだ。
「あの時、助けてくれた鶴ですわ」
「へー」
「恩返しに来ました。お嫁さんになってください」
正太郎はテンション低めだったが、雪子の思惑通りとなり、同棲も成功。時には実家から宝石や着物を持ってきて彼を裕福にしたが、反応は薄い。
もしかしたら雪子だと正体がバレているのかもしれない。
雪子は正太郎の個室へ勝手にが入った。正太郎には決して入るなと言われていたが、想いは止められない。
「は?」
しかし個室にあったのは、大量の鶴のフィギュア。正太郎の日記を見ると、鶴のフィギュアを自分の嫁として可愛がっていたそうだ。なんせ老けない、病気にならない、ワガママを言わない鶴のフィギュアはコスパが最高だから。
雪子の事も最初は鶴のフィギュアが擬人化したような気がして楽しかったが、だんだんとワガママを言ったり、病気で熱を出したり、生理前に不機嫌になるのが面倒だったという。
「そんな……」
日記の最後のページには「女なんてコスパが超悪いな」と書いてあった。
「さよなら。正太郎、コスパが悪い私は去ります」
雪子が正太郎に別れを告げたのは自然な流れだったが。
「あ、そ」
相変わらず正太郎の態度はテンションが低く、雪子の顔は涙で濡れていた。




