表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソルティメルヘン短編集〜めでたし、めでたし〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/87

昨今の北風と太陽

 北風と太陽は常に勝負をしていた。一人の人間をターゲットにし、北風と太陽どちらがその人の言う事を聞くか。


「やあ、北風風くん。今日こそ負けない!」

「僕だって負けないぞ! びゅー!」


 北風くんは冷たい風を起こした。


「お、今日のターゲットはあの人にしようよ。陰謀論者になった主婦のA子さん。陰謀論にハマったせいで家族と不仲だってさ。よし、北風くん、A子さんが陰謀論をやめるかどうか、勝負しないかい?」

「おお、いいね! さっそく行ってくるわ!」


 こうして北風くんはA子さんの周りに冷たい風を起こした。


「何この風! 異様に冷たい!」


 A子さんはガタガタ震えた。


「さてはディープステートが気候変動させているのね! あの空にある雲はケムトレイル。人口地震が起きるかも!」

「何言ってるんだよ、A子さん! そんな下らない陰謀論にハマるな。全部デマだよ!」


 北風くんはさらにA子さんに冷たい風を送ります。


「は!? 北風が喋った! さてはこれもディープステートの仕業ね。目覚めている私に悪人達が攻撃しているんだわ!」

「は? バカじゃねー? そんなデマ言ってないで家事ちゃんとやってパートもいけよ。だから家族と不仲になってるんだ。自業自得!」

「なんですって ! この北風! これはやはりディープステートの陰謀。寝覚めている私たちが正しかった! ワクチン打たないで本当に良かったわ!」


 こんな調子で北風くんとA子さんの会話は何の進展もなく、結局、A子さんは「陰謀論者のウチらは目覚めていてサイコー!」と逆に信念を強めて帰っていった。つまり、北風くんの作戦は失敗。


「じゃあ、次は僕だね。行ってくるよ、北風くん」

「気をつけろよ。あのA子って女、本当に頭がおかしい。社会不適合すぎる!」

「まあまあ、大丈夫さ」


 こうして太陽くんはA子さんに話しかけた。


「A子さん、こんにちわ」

「は!? 太陽が話しかけてきた! これもディープステートの仕業?」

「はは、A子さんは陰謀論にハマってるんだね。いいね!」

「は?」


 陰謀論者として「いいね!」と言われる事は滅多にないA子は口をポカンと開けた。それに太陽くんのぎひだまりが暖かい。


「ねえ、僕は陰謀論が全て間違いとは言わない。中には本当の情報も混ざっているのだろう」

「そうよ! 人工地震だって政府が認めているんだからね!」

「そうなんだー。僕にも陰謀の内容を聞かせてくれない?」


 A子は嬉々として陰謀論を語る。中にはデマとしか見えない情報もあったが、太陽くんはニコニコと聞いていた。


「あれ? そう肯定的に取られると、拍子抜けするというか、毒気が消えるんですけど?」


 A子は太陽くんの態度にだんだん困惑してきた。


「あれ? 私、悪の組織と戦う少数派、選ばれた目覚めている陰謀論者でもなかった?」

「そうかもしれないね。実はコッソリ陰謀論好きな人とか多いかも」

「そっか……。私、ちょっと人と違う自分に酔ってたとうか」

「A子さんは人と違う陰謀論者じゃなく、心が優しい素晴らしい女性だよ!」

「太陽くん!」


 結果、A子さんは太陽くんのポカポカ陽だまり攻撃にも勝てず、陰謀論者を辞めた。今度は心優しい女性としてしっかり家庭を守り、地域社会のボランティアをして過ごすという。


「やった、僕の勝ち!」

「くそ、また太陽くんに負けた!」

「人は誰かにポジティブかつ肯定的に期待されると頑張れるからね。北風くんも素晴らし戦いだったと思う。次の勝負も行こう!」

「くそ、本当に太陽くんは口が上手いね!」


 こうしてまた北風くんと太陽くんの戦いは続いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ