蛙化王子様
ラプンツェルはため息をつく。王子様と結ばれ、子供も産まれ幸せなはずなのに、全く面白くない。飽きた。マンネリ。蛙化。
思えば、塔の中でこっそり王子様と会っていた時が一番ドキドキした。今や王子様も父親となり、歳もとってしまった。
「可愛いでちゅねー!」
子供達に赤ちゃん言葉を使っているのも冷める。そのくせ、私の体調が悪い時や公務で忙しい時に限って育児に無関心。確かに彼氏としては最高だったが、父親としては微妙。顔も蛙に見えてきて困る。
「はあ。なんか飽きた」
ラプンツェルは再びため息をつく。
◇◇◇
毎日育児や公務に追われ忙しいラプンツェルだったが、王族の姫が遊びに来た為、丁寧にもてなす。
姫は最近婚約が決まり、デレデレと惚気ていた。
「私の彼、出会った時は醜い蛙だったんです。正直キモいなって思ってたんですが、本当はイケメンの王子様で。呪いをかけられて蛙になっていただけだったんです」
「へえ」
「もうそのギャップ萌えで、彼が何してもイケメンに見えちゃう。もうどうしようって感じ」
「へえ」
惚気る姫を眺めながら、ラプンツェルはどんどん冷めていく。自分も王子様と出会った時、もっと印象が悪ければ良かったと思うぐらい。
今は何をやっても王子様が蛙に見えて仕方ない。結婚生活は長い。恋人期間に過剰に盛り上がっても、何もよくなかったと気づいてしまう。あの蛙化した王子様と何十年も一緒にいる事を想像すると、気が滅入るが。
「おめでとう。末永く幸せにね」
それでもラプンツェルは姫の幸せを心から願う。こんな状況でもプリンセスとしての矜持は忘れないようにしたいものだ。




