ディーバ候補者たち
扉が開く。大広間のようなところで、蘭が皆に声をかける。
「皆。今日入ってきた新人連れてきた。」
一斉にこちらを見る。美女ばかりだ。何故、私はここに居るんだろう。
蘭に挨拶するよう、視線で促される。
「なずなです。よろしくお願いします。」
品定めするように見る人、驚いた様子の人、ニコニコしている人、反応はそれぞれだ。
「ちょっと、嘘でしょ⁈神は正気なの?こんな地味な子。」
アジアンビューティーな子が物凄い剣幕でこちらを睨みながら言った。
「すぐに噛みつかないの。ガーデンへようこそ。私、椿。よろしくね。この子は牡丹。」
この中では、お姉さん的な立ち位置なのかな。落ち着いた様子の人だ。
「こーゆー野暮ったい子が好みっていう人も居るし、案外分かんないもんだよ。私は桃。宜しく。」
ボーイッシュでサバサバした見た目だけど、毒舌だな。
しょっぱなから随分な言われようで、少し凹む。私だって好きでここに居るわけじゃないのに。
・・・なんか、甘い匂いがする。
「皆、おやつでも食べよ!今日はねぇー、フロランタン作った♪良かったら新人ちゃんも一緒にどう?私はすずらん。よろしくねっ」
小柄で可愛らしい人。ニコニコしていて、この人からは敵意を感じない。
「他にもメンバーは居るんだけど、おいおいってことで。とりあえず、皆がどんな感じで自分を磨いてるか見学でもしたら?まずは、、、牡丹」
蘭が取り仕切るが、本音は面倒だから早く自分の手から離れてほしい、って感じなのか。
「えぇー!何で私が。。。ってか、この子レベル低すぎて訓練なんてしたところで、意味あんの?」
「あんまりツンケンしてると、神から寵愛を受けれなくなるわよ?ステージアップの条件は容姿やレベルだけじゃないんだから。」
やはり、牡丹をなだめるのが椿の役目のようだ。
てか、それだけじゃないってどういうことなんだろう。
「そうなんですか?」
「さっきも言ったように、基本的にはレベル10刻みごとにステージが上がるんだけど、日頃の素行とか、面会の時とかに神がお気に召したら、一気にステージが上がることもある。」
あ、忘れてた、というような顔で蘭が説明をする。
日頃の努力と、チャンスをものにできるかどうか、ってことか。
「面会って、いつあるんですか?それと、ディーバって、いつ選ばれるんですか?」
「全員参加の定例会は月に一度。これまでの鍛錬を披露する場ね。あとは、上位ステージ限定のお茶会だったり、神の気分次第で指名を受けて面会ができたり。」
話し方の余裕っぷりや雰囲気から、椿が上位ステージなのが分かる。
「あとは時々、神の方から様子を見に来ることもあるよ。昨日も、神が小腹が空いたって言って厨房に来てたし。」
そんなこともあるのか。神って食いしん坊なのかな。
「お気に入りであればあるほど、神と接触の機会が増える。でも今の君じゃ、そうそう会えないし、直接話すのも難しいだろうね。」
悪気があるのか無いのか、表情を変えずに桃が話す。
「そして、最後の審判、、、いつディーバが選ばれるのかは、私達にも分からない。案内人にも、分からないんだって。神が心に決めた人が現れたら、その時が来る。」
椿の言葉を前に、皆の顔が真剣になった。
じゃあ、延々と続くかもしれないし、明日終わるかもしれないってことか。あんまり居心地良くなさそうだし、なるべく早く終わってほしいなぁ。
でも、、、
(早く俺の近くまで上がって来い。そしたらたっぷり可愛がってやるよ。)
(待っててやるから、俺を楽しませろよ、底辺女。)
あれは、、、ちょっとときめいたかも。。。いや、類にそっくりな声で言われたから動揺しただけで、あんな自分勝手な神なんて。思い出したらまた熱くなってきた。
「何ぼーっとしてんの。さっさと行くよ!言っとくけど、邪魔だけはしないでよね。すずらん、私の分のフロランタンとっといて。」
牡丹に急かされ、慌ててついていく。
◆◇
「アンタ、その様子じゃここに来る前ろくに努力もしてこなかったんでしょ。ここはね、そんな甘いとこじゃないの。」
「はぁ・・・」
図星だけど、そんな言い方しなくても。
「邪魔にならないところで勝手に見れば。」
ストレッチと筋トレをした後、スッと目つきが変わった。音楽に合わせて、牡丹の身体が動きだした。
なんて美しいんだろう。漆黒の髪や長い手足が生かされた滑らかな動き。繊細で、素晴らしい表現力だと思った。
「すごい・・・!」
思わず口から出た。
美貌と才能、溢れる自信が羨ましい。
「毎日必死に努力してんだから、当たり前でしょ。これぐらいで関心してんじゃないわよ。」
そっか、、、。皆、前の世界から、ずっと自分を磨いてきたんだ。
「そろそろ、次に行ってくれる?」
キツい物言いだけど、努力家なんだなぁ。きっと、他の皆も、、、。
◆◇
次は道場のような所。
「お、来たか。危ないから離れてなよ。。。はっ!!」
「わっ!」
その勢いと力強さに、驚いた。
桃は、様々な武具を使った武術を見せてくれた。筋肉質で、無駄のない身体。女子校に居たら王子様なんだろうな。
◆◇
次は厨房。
「いらっしゃ〜い!お腹空いてない?ちょっと待っててね♪」
すずらんは歓迎してくれた。見たことない食材が沢山。ほんの数十分で色んな食事が出来上がる。
「ん!!美味しい!全部、、、美味しすぎるー!」
可愛くてフレンドリーな上、こんなに美味しい料理で胃袋鷲掴みにされたら、誰もがイチコロに違いない。
◆◇
次は、蘭のところだけど、一体どんなことを極めてるんだろう。到着したのは、アトリエのような部屋。
「私は絵描いてるだけだから、大して面白くはないと思うけど、好きなだけ見てって。」
「わぁっ!」
壁一面に、息をのむほどの絶景が描かれていた。まさに、楽園。首がもげそうになるぐらい、あたりを見渡した。
見た目は学級委員長、またはシゴデキOLって感じだし、淡々とした人だと思ってたけど、こんなに想像力が豊かだなんて。
そして、次は、、、