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疎遠時代回避

 夏実ちゃんは、たくさんのプリントシールをミニキーホルダーにファイリングしていた。

 

 …

 

 夏実ちゃんと、友達のも多いよ。

 でも…

 

 柚乃さんと仲がいいっていうのもあるけど、みさきが…みさきがたくさん…そう…夏実ちゃんはみさきのシールも多いのだ…

 

 まぁ、柚乃さんがいつもとなりに映ってるからあれだけどさ…

 

 でもっ…でもさ…

 

 チュ…チュゥしてるやつもあるじゃん⁈

 

 夏実ちゃんは、そんなの貼って平気なの⁉︎辛くないの⁈

 

「夏実ちゃん…」

「なに?」

「あー…ううん。」

 

 夏実ちゃんに思わず、こんなの貼ってて辛くないの?って言ってしまいそうになった。

 

 でも…それはオレが決めることじゃないもんね…。

 

 夏実ちゃん…ごめん。

 みさきと柚乃さんをあわせてしまってほんとごめん。とプリントシールをめくるたびにあやまった。

 

 そんなオレに夏実ちゃんは、無邪気な笑顔で、

「どう?わたしかわいい?欲しいのあったらあげるよ〜」

 なんて言うじゃないか。

 

 もう写真じゃなくて夏実ちゃんが欲しいよ。オレ夏実ちゃんを大切にするから、だからその笑顔をずっとオレだけに向けてよ。っていいながら夏実ちゃんを抱きしめられたらいいのにって心底思う。

 

 思うだけ。

 そんなことしたら夏実ちゃんがオレと距離を置いてしまうかもしれない。

 疎遠になんてもうなりたくないんだ。

 だから、そんなことはしない。

 

 昔は、仲良かったけど小学生の高学年から疎遠時代に突入して、やっと疎遠時代が幕を閉じたのに…また疎遠なんて絶対に嫌だ‼︎

 

 それに今度こそ疎遠になったら…もうほんとうにヤバい気がする。

 

 それこそ、お母さん同士の会話から夏実ちゃんの様子を聞くだけの人になる可能性も高い。

 

 なんならお母さんがせんべい食べながら、そういえば夏実ちゃん結婚するらしいわよ〜みたいな。そんな軽い感じでいわれたりしたらオレは…オレは一生せんべい恐怖症になるだろう。

 

 そうならないためにも疎遠禁止なのだ。

 

「夏実ちゃんは、どの写真もうつりがよくてかわいいね。」

 とプリントシールをめくりながらいうと夏実ちゃんは、

「えー、お世辞でも嬉しい」

 と喜んでいた。

 

「お世辞なんかじゃないよ。マジで」

「え…ありがとう。」

 

 そうこたえる夏実ちゃんは、なんだか頬がピンク色にみえた。

 

 気のせいかな?

 

 あー、それにしても全部かわいいわぁ。

 

 夏実ちゃんが見てなかったら、全部写真撮って保存したいくらいだわ。

 

 でも、夏実ちゃん目の前にいるからオレは必死に脳裏に焼き付けた。

 

 あの夏実ちゃんも、この夏実ちゃんもその夏実ちゃんもかわいいーーっ‼︎

 

 このプリントシールどこで販売してるんですか?って聞きたいくらいだ。

 

 まぁ、販売してないのは…わかっております。

 ですから、脳裏に焼き付けておるんです。

 と、脳内と交信中。

 

 そして、無事データ保存完了!

 

「夏実ちゃん、ありがとう。オレもシール保存しよっかなー」

 となんとなくいうと夏実ちゃんは、おめめをキラキラさせながら、

「そのときは、ぜひっ、ぜひ見せてね‼︎」

 とガシッと手を握られた。

 

 …夏実ちゃん。

 よっぽどみさき好きじゃん…

 

 オレよくみさきと遊ぶもんな…

 この前あげたシールもみさきと一緒だったもんなぁ。

 

 …

 

 

 続く。

 

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