おばあさん
コツコツと気になるツアーを一人はじめて数週間。
なんだかよく女子から見られるようになったのは…気のせいだろうか…?
視線を感じてパッとみるとパッと逸らされる…
なんなのだろう。
よくわからないまま、生活を続けていると久しぶりに中学で一緒だった春野さんから話しかけられた。
「雪村くん、久しぶり」
「あー、春野さん。久しぶり」
「なにぃー、雪村くんって最近モテるらしいじゃない?」
とニヤニヤしながら春野さんが言ってきたからオレはキョトンとしてしまった。
モテる?
みさきじゃなくてオレが?
「え?オレ…が⁉︎」
「んもー、またまたぁ。中学からそこそこモテるくせに!」
なんていいオレを軽くグイグイする春野さん。
…え、そうなの⁇
…
まぁ、モテるなら嬉しい!
「なんだー、春野さんもオレの事好きなひとり?」
なんて冗談を言うと春野さんは…春野さんは、顔を赤らめて
「そんなわけ…なぃっ」
といい走っていってしまった。
…あら?
春野さん⁇
どうしたんだろう。顔赤かったな…熱かな?
…
まぁ、春野さんのおかげでオレがモテるということがわかったぞ。
なら夏実ちゃんからもモテるかな?
ん?
それはまた別のお話かな⁇
でも、夏実ちゃんがいいやつだって思ってくれるように頑張ろっと。
オレはとにかくポジティブだ‼︎
学校だけじゃなくて外でもいいことたくさんしたよ?
知らないおじいさんと横断歩道渡ってあげたり、大荷物持ったおばあさんの荷物運んであげたりね!
…って、このおばあさん目的地までお運びしますよって言ったけど、どこまで運ぶんだろう?
もうすぐって言うけど…もうすぐオレんち…
このおばあさんは、近所に住んでいない…はず。
…
「あぁ、そこです」
とおばあさんが指差したのは、オレんち⁈じゃなくてその先の夏実ちゃんちだった。
「あらあら、みつこさん。いらっしゃい。」
玄関から夏実ちゃんのお母さんが出てきた。
おばあさんは、にっこり夏実ちゃんのお母さんに挨拶すると
「この素敵な青年がね、お荷物持ってくださってねえ。夏実と同じくらいのとしよねぇ。ほんとに素敵だわ。夏実いる?ぜひ紹介したいわ」
なんて言っていただいた。
「あら、みつこさん。この青年は、夏実の幼馴染なのよ。」
「あらぁ、じゃあもう出会っていたのねぇ」
「ええ、そうなのよ。夏実にもこんな素敵な彼がいたらいいのにね」
とお母さんがオレを見てにっこりしたじゃありませんかっ。
おかあさま…
おかあさまから褒めていただき光栄でございます。
オレは爽やか青年を装い、
「いえいえ、素敵なんて…まだまだですよ」
と笑顔でこたえて退散した。
やっぱり、いいことすると笑顔が周りからも溢れるくらいだと心が幸せで満たされた。
次の日夏実ちゃんから電話で
「みつこおばちゃんたら、未来の旦那さんにどうなの?いいお方じゃない?」
ってごり押ししてきたんだよって教えてくれた。
「あははぁ。未来の旦那さんかー。」
「ね、そんなことあるわけないのにさ。なんかごめんね」
と謝られました。
…天国から地獄へ突き落とされるっていうのは、こういうこと…なんっすね。
そんなことあるわけないんだ…。
やっぱりオレは…夏実ちゃんから…
でもさ、オレはまだまだ頑張ります‼︎
頑張りたいんです‼︎
頑張っていたら…いたらさ、オレなんか知らないクラスの人から告白されたよ?
夏実ちゃんじゃなくて違うお方…
でもさ、
告白するってすごい勇気いっただろうな。と、とてもありがたく思った。
でも、オレは好きな人がいるとちゃんと目をみてお断りをした。
何度もごめん。でも、ありがとう。とオレの気持ちをお伝えした。
そしたら、やっぱりあなたを好きになってよかったです。と言ってくださった。
こちらこそです。
その女性の姿が見えなくなるまでオレは深々と頭を下げた。
続く。




