お化け屋敷
なにがどうしたって…
もうここらで解散しようとしたら最後にみんなでお化け屋敷に入ろうってなったわけよ。
あー…
みさきたちが心配です。
夏実ちゃんは、二人をみてかなしくならないだろうか…。
手とか繋いだりし出したら…
あ、でもお化け屋敷って意外と暗いから手繋いでても大丈夫かな?
うんうん。
そうだよね…ね。
まぁ、一応油断は禁物です。なのでオレと夏実ちゃんが先に行くことにした。
そしたら後ろで手繋いでても、なにしてても夏実ちゃんには見えないもんね。
悲しくならないよね。
で、入り口を入った途端にヒッ‼︎ってなったよ。
なんか…しらたきのカーテンがあってさ…冷たいしビチャってしてるし…
入り口でオレは早々にテンションだだ下がり。
‼︎かと思ったら夏実ちゃんがまさかの、まさかの、
「手繋いでもいい?」
とオレにすがってきたじゃないかっ‼︎
かわいいよ。夏実ちゃん‼︎
昔は、夏実ちゃんがオレを引っ張っていってくれていた。
でも、今度はオレが‼︎
「うん!繋ごう。」
オレはすかさず夏実ちゃんの手をギュッと握った。
あぁ、夏実ちゃんの温もり。最高です‼︎
と幸せを噛み締めて前に進んだ。
でも…
幸せも一瞬で恐怖に早変わり。
いきなり全身緑の妖怪みたいなお化けみたいなのがボンッて登場した。
おー…とオレは緑の妖怪らしきものをマジマジとみた。
すげー手が混んでるわーと、少し感動をおぼえた。
そんなオレの横でオレの袖に必死にしがみつく夏実ちゃん。
…そういえば夏実ちゃんって昔からこういうの苦手だったよなー。
「大丈夫?夏実ちゃん。」
オレの声かけに夏実ちゃんは、
「え、あぁ…う、うん。」
と言いながら、片手でオレの手を握って反対の手もオレにしがみついていて、もうオレは夏実ちゃんに取り憑かれている状態だった。
あぁ、まさかお化け屋敷でこんなに夏実ちゃんと密着できるなんて最高でしかありません‼︎と、お化け屋敷を堪能した。
でへへ。
もうお化けとかじゃなくて途中からは、もう夏実ちゃんに取り憑かれて幸せなツアーみたいになっていた。
出口にくると夏実ちゃんは、
「直斗くん、ごめんね。しがみつきすぎて手痛かったよね。」
と謝ってきた。
「ううん。全然大丈夫だったし、楽しかったね。」
と違う意味で楽しかったオレ。
もう、時間が許す限り何度でもエンドレスで夏実ちゃんと、お化け屋敷にいたいなぁと心底思った。
まぁ、夏実ちゃんがかわいそうだからそれはしないけどね。
そんなオレたちよりも少し後に出てきたみさきと柚乃さん。
あれ?柚乃さん全然平気っぽい。てか、むしろみさきのほうが少し怖がってたっぽい?
「あー、楽しかったぁ」
とスッキリ顔の柚乃さん。
「あー…、ならよかったね」
とみさき。
うん。まぁ、それぞれ楽しかったようでなによりかな…。
そろそろ夏実ちゃんと柚乃さんは、クラスに戻る時間だったみたいで、教室の前までお見送りしてオレたちは、帰ることにした。
帰り道みさきに、君たち進展したんじゃね⁉︎と軽く肘でグイグイとされた。
…あー、みさきはオレが夏実ちゃんを好きなこと知ってるんだよなー。
てか、知られたっていうのかな。
そういう勘は素晴らしいのに、自分のことを好きな人とかがいても気づかないんだよなぁ。みさきってさ…
だから夏実ちゃんの気持ちも気づかなかったんだよねー。
…
「進展ねー…」
オレが遠くを見つめるとみさきは、
「つーかさ、お化け屋敷めっちゃ怖かったよなー。オレマジびびったわ。柚乃ちゃんにしがみついたもん」
と本気でびびっていた様子のみさきだった。
なんにも心配しなくてもよかったかもしれないなとホッとした。
今日一日夏実ちゃんは、曇り顔をしていなかった。
もしかしたら夏実ちゃんは、もうみさきを吹っ切れたのかもしれないな。
それならいいんだけどな…。
と強引に願った。
続く。




