迷子
夏実ちゃんが座ろうとしたときオレは夏実ちゃんをみさきの隣に座れるように促した。
女の子が端になると危ないからねって。
そんなわけで、みさき・夏実ちゃん・柚乃さん・オレの順番で腰をかけた。
夏実ちゃん、頑張れ!
オレは、夏実ちゃんがみさきと話せるように極力柚乃さんと話をした。
ちょっと夏実ちゃんたちの会話が気になるけどね。
我慢我慢。
二人の世界をつくってくださいと願いつつやっぱり複雑なオレ…。
…うん、楽しそうに話しているね。
このままうまくいけばいい…んだよね?
そう。だってオレは応援させていただくのだから。
うまくいけば…いい…
「あ、そろそろ始まる」
と後ろからワクワク声の子どもが空を見上げた。
そしたら、その近場にいた人たちも空を一斉に見上げた。
なんなら、オレも見上げていた。
あ、星だ。月もある。
なんて天体観測していたらドドーンと花火が始まった。
おー、やっぱりきれいだわ。
キラキラだ。
花火を見つつたまに夏実ちゃんをこっそりと無意識にみていた。
夏実ちゃん…夏実ちゃん…
花火に負けないくらい美しいよ…
花火の合間にまた夏実ちゃんを…見たら…あ、みさきががっつりこっちをみていた。
…気まずー。
オレはなにをやっているんだか。
それからは、極力夏実ちゃんを見ないで花火をみた。
無意識とか一番危険だ。
来年は、夏実ちゃん…みさきと手繋いでみてんのかなー。
オレは、その日バイトでもして花火なんかあったんですか?みたいな感じでやり過ごそうと思う。
無になろう。
心を無にしてすべてを忘れよう。
今日の花火も忘れちゃえばいい。
夏実ちゃんとかき氷食べたこともトイレ行き帰りに手を繋いだことも…全部…そうだ全部だ……昔おままごとしたことや、縄跳びしたことも全部…忘れて…
…
全部…夏実ちゃんと幼馴染なことも…忘れ……られる…わけねーじゃん‼︎
無理だよ…夏実ちゃんは、ずっとオレの脳内で笑ってんだよ…。
「はぁー…」
思わずため息をついてしまった。
すると隣にいた柚乃さんに、
「食べ過ぎた?」
と笑われてしまった。
…
「あー、そんな感じ」
と慌ててごまかした。
まさか幼馴染の夏実ちゃんの恋を応援できなくて悩んでるなんて言えるわけねーし…。
恋とは、ピンク色とか赤色なんて言っている人いるけどさ…恋ってもっとダーク色な気がするんだよね。
付き合っちゃえば、薔薇色?いや、そんなこともない。
付き合ったら付き合ったで色々不安だらけだろう。
大人になればなるほど不安度が高い気がするのは、オレだけなのだろうか…。
オレは器がミニチュアサイズなのかもしれないな…。
ハハハ…。
そんな器ミニチュア男に好かれるなんて、夏実ちゃんがかわいそうだ。
そんな男が夏実ちゃんを幸せになんてできないっすよ。
そうそう。夏実ちゃんがかわいそうと、自分を追い詰めてみた…。
これで諦めがつくかなってね…。
諦めどころかむなしくなってきましたよ?
まったくさ…
…
きれいな花火をみて心がすさむ…
あーあー…
だれかオレに大きな器プレゼントしてくれないかな。
そしたら幼馴染が友達と付き合ってもさ、いいじゃん!お似合いだよ〜って言えんのかなぁ…。
なんなら二人の恋の相談とかまで受け付けてたりして?
器がでかいってすげーな。
どうやったら器が大きくなるのだろう?
空にキラキラと上がる花火を見ながらそんなことを必死に考えるオレなのでありました。
お腹大きく膨らます?…なんか…カエルみたいだな…
なら、大きな器丸のみ…なんかできるわけないし…大きな器がからだに入り込んでも無駄だよね?
そもそも脳内で考えているのだから脳内をうまく操ればいいのでは?
一度、脳内のいろんなものをきれいに洗濯畳むみたいに畳めば整理がスムーズかな?
てか、もう器の話じゃなくない?
オレは…どこに向かっているの?
みんなと花火見ているように見えて…実は心の迷子になっておりました。
迷子センターいく?
一緒に花火みている友達が横にいるのにオレは……迷子になりましたーー‼︎‼︎
続く。




