息ぴったり
うちにはピアノがないから夏実ちゃんの家にお邪魔した。
あー、久々の夏実ちゃんちは、昔とあまり変わらない。
よく、このリビングでお菓子食べたりしたなぁ。
てか、お母さん留守か。
夏実ちゃん一人でお留守番昔は苦手だったのに、今は平気なのかな…?
「夏実ちゃん、お母さん仕事?」
「うん…」
少し寂しげな表情の夏実ちゃん。
「あ、もしよかったらだけど…また一緒に勉強再開しない?」
と、またもスムーズに誘うことができた。
そして、
「うんっ」
と嬉しそうな笑顔をお返しに返してくれた夏実ちゃん。
またも簡単に…
オレは一体なにを悩んでいたのだろうか。
無事難問が解決したところで、オレは夏実ちゃんに
「オレが合図したら、課題曲弾いてくれるかな?」とお願いをした。
そして、手を振り心の中でイチ、ニイ、サンっと数えて夏実ちゃんに合図すると夏実ちゃんは、それに合わせて課題曲をひきだした。
それに合わせて指揮をした。
やっぱり夏実ちゃんピアノ上手だなぁ。指揮が合わせやすいや。
そして、曲のピークに差しかかったとき夏実ちゃんと目があい、お互い微かに微笑んだ。
あー、なんか一体感的なものを感じた。
ハグしてないのに繋がっているみたいな。
そんな初合わせなのに、息がぴったりのまま、終了した。
伴奏が終わると夏実ちゃんは、
「すごいね!直斗くん!びっくりしちゃったよ」
と褒めてくれた。
頑張ってよかった〜。
「あぁ、この指揮春野さんに教えてもらってね。」
というと夏実ちゃんは、いきなり顔色が雲った。
「あー…春野さんか」
と。
あれ?やっぱり夏実ちゃんと春野さんってなんかあるのかな…
「どうかした?」
「えっ、ううん。…てかさ、早速勉強しない?」
となにかを誤魔化すかのように夏実ちゃんは、勉強の支度をしだした。
「あ、じゃあオレも勉強道具持ってくる…ってか、オレの部屋でやる?」
「ううん。あの…今日は、わたしの部屋でしない?」
なんてかわいい顔で言われてしまったーーー‼︎
するする‼︎夏実ちゃんの部屋でするー‼︎なんかこの会話だけ切り取ったらカップルみたいな会話じゃね⁉︎
まぁ、カップルじゃありませんけど…でも、雰囲気味わうくらいいいよね〜。
あー何度も脳内で流れる、わたしの部屋でしない?
はぁ、幸せです‼︎
勉強道具を用意しているときふと思った。
夏実ちゃんの部屋に足を踏み入れるの何年振りよ⁈って。
あー、いいのかなぁ…?彼氏でもないのにオレがお邪魔してもいいのかなぁ?
いいんですよぉー。だって夏実ちゃんが、わたしの部屋でしない?って誘ってくれたんだからぁ♡とウキウキしながら道具をバックに詰め詰め。
こんなに、勉強やりに行くのにワクワクしてテンション爆上がりな日は、滅多にないだろうに。
やっぱり…やっぱり夏実ちゃんパワーってすげ〜。
一度自分の部屋から台所によりコップに一杯水を汲んでごくごくと流し込んだ。
いざ‼︎
コップをコンっと置いて夏実ちゃんの部屋へと向かうのでありました!
続く。