すれ違い
夏実ちゃんは…みさきを好きじゃなかったのか…
…
ほんと悔やんでも悔やみきれないってこのことなんだろうな。
「夏実ちゃん…」
「なに?」
「あの……直斗くんには、おもい伝えないの?」
「えっ」
固まる夏実ちゃん。
アレ…オレは言ってはいけないワードを言ってしまったのかな…
そうだよな…だって伝えたとことでもう…赤ちゃん産まれるんだもんな。
「あ、ごめん。オレ変なこと言った。」
「うん。びっくりした…」
…
「あ、それで春野さんのことなんだけど…オレたち付き合ってないよ。一度も」
「え?じゃあ…じゃあなんでキスしてる写真をあんなに大事そうに持っていたの?」
「あー、あれはキスしてなくてそういうアングルに見えるって友達がふざけてくれたやつでね。その場で捨てるのは失礼じゃん。かといって友達に返してもね…」
「そうなんだ。」
「うん。」
「みさきさんは、なんて?みさきさんから何か聞いたことない?その…恋愛感情的なさ…なんか」
「あー…、前にオレのこと好きだったって聞いたりはした…けど」
…
「やっぱり…そうだよね。わたしもみさきさんが中学のころ直斗くんを好きって友達伝いに聞いたことあったから…」
あぁ。
「そっか。まぁでも…なんにもなかったよ」
オレはずっと夏実ちゃんを好きだったし…
「そうなんだぁ。わたしずっと勘違いしてて…あーあー…わたし…バカだなぁ」
「いや、オレも相当バカだったわ…」
…
時間が戻ればいいのにな。
「じゃ、そろそろ帰ろうか!元カレのご飯の時間だ」
⁉︎
え?
何それ?
元カレのご飯⁉︎
どういうこと⁉︎
同棲して…るわけないよね⁉︎
それに元カレって…もうすぐ子ども産まれるんだよね?
え?
何⁉︎
どうした?
柚乃さんの弟さんは、どうして夏実ちゃんから夜ご飯の支度をしてもらっているの?
「あの、夏実ちゃん…元カレってどこにいるの?もしかして夏実ちゃんち?」
「うん、もちろんだよ」
⁉︎もちろんなんだ。
「あのー、オレ…元カレにあってもいいかな?」
「うん、いいよ!きっと喜ぶと思うんだ」
…へー。
喜ぶんだ?
なんで?
オレと同じ名前だから?なの⁇
よくわからなかったけど、とりあえず夏実ちゃんについていくことにした。
で、やっぱりオレは相当のバカなんだと思うのでありました。
なぜって?
それは…
夏実ちゃんちに行くとなーさんがお出迎えしてくださったのです。
で、オレはなーさんにメロメロで一瞬にして、元カレの存在を忘れたよね。
夏実ちゃんは、ちょっと着替えてくるって言って部屋をでたからさ、オレはなーさんに
「久しぶりでちゅね〜」
なんて話しかけていたんです。
そしたら…視線を感じてゆっくり振り向くと…そこには夏実ちゃんのお姿が‼︎
うわっ…バズっ
「久しぶりの再会だもんね。どうぞ!もっとなーさんに話しかけあげてね」
と夏実ちゃんは、笑った。
‼︎ちょっと‼︎
そんな和やかに過ごしてる場合じゃなくない⁉︎
元カレだよ!
「夏実ちゃん、元カレは…?」
「え?ここにいるじゃない」
…え、待って。
鳥肌…
ここにいるってなによ?
「あの…どちらに…」
「ここにいるよね、なーさん♡」
え?
「あの…なーさんじゃなくて元カレの…」
「えぇ?元彼氏役のなーさんだよ?もうなーさんは、みさきくんちの猫ちゃんと結婚しちゃったけどね」
⁈
「待ってよ…柚乃さんの弟さんは?」
「え?裕貴くんがどうしたの?」
⁉︎裕貴?
直斗って名前じゃないわけっ⁉︎
「あの、裕貴くんは…元カレなんじゃ…?」
「えー、元カレなわけないよー。わたしが家庭教師してたってだけだよ?」
⁇
「え…でも壁ドンとかしてたのみたよ?」
「あー、あれは先輩として告白のときのアドバイスをね。彼氏もいないくせにね。」
とクスクス笑う夏実ちゃん。
…
え?
「じゃあ、夏実ちゃんって…もしかしてさっき…もしかして…オレの為に泣いてくれてたの?」
「え…うん。」
…ウソだろ?
「オレ…さっき直斗くんにおもい伝えないの?とか聞いちゃってたね…てっきり柚乃さんの弟さんが夏実ちゃんの彼氏だってずっと思ってた…」
「え?そうなんだ。裕貴くんは、試験が終わったら同級生に告白するんだよ。」
…オレって勘違い酷すぎだろ。
夏実ちゃんを泣かせたりしてさ…
まぁ、夏実ちゃんはもうオレを好きじゃないかもしれないけど、オレは夏実ちゃんに自分のおもいを伝えることにした。
「夏実ちゃん…オレずっと陽キャな夏実ちゃんにつり合いたくてバスケ頑張ったり色々頑張ったんだ。でも、夏実ちゃんはみさきを好きなんだっておもってたから…そんな夏実ちゃんを支えたくてね。それで…結果から回ってたんだよね…ごめん。」
…
「わたしは、みさきさんと直斗くんが中学の頃から付き合い出してるって聞いて…二人は、高校も一緒になってラブラブなんだなって思って…でも、直斗くんのそばにどうしてもいたくて…直斗くんには、彼女がいるのに…でも幼馴染ポジションでなら一緒にいてもいいよね?って…強引にさ…きっと直斗くんを困らせてたんだって思ってた。」
「てことは、オレたちずっと両思いだった?の?」
「うん。わたしは、幼い頃からずっと好きでした。今も…」
と言い終えると涙が溢れ出した夏実ちゃん。
そんな夏実ちゃんをオレは抱きしめた。
「夏実ちゃん。オレもう夏実ちゃんを泣かせたりしない。今度夏実ちゃんが泣くのは、嬉し涙ね。夏実ちゃん、愛してる」
オレに抱きしめられた夏実ちゃんは、うんうんと泣きながら頷いてくれた。
「もう泣かないで」
「これは、嬉し涙だから」
「そっか。」
優しく夏実ちゃんの涙を拭って見つめ合いオレたちは、ずっと両思いだったのにやっとキスをしたのでありました。
「もう勘違いしないし、させないからね。ずっと両思いだったのにそのもったいない時間を取り戻すためにオレは夏実ちゃんでいっぱいにしたい。夏実ちゃん、夏実ちゃん夏実ちゃん夏実ちゃん」
「直斗くん、直斗くん、直斗くん」
「「ふふ♡♡」」
見つめあってまたキスをした。
「オレたち十年以上無駄にしてたかもね」
「そんなことないと思うよ?いい経験かもよ?」
「そっか。ならその経験を活かしてずっと我慢してた抱擁をこれからたくさん取り戻さないとねっ」
それから長いことオレたちは、すれ違いのことを色々語り合ってすれ違った分、いや…その倍以上抱き合ったりキスをしたりしていたのでありました♡
おしまい♡