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魔法屋  作者: 兎
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第一幕 一話

  魔法屋。それは遠い昔、魔法を発見した魔法学者、ブルーズ・ノールズが初めて開業した店。

 魔法という物は習得するとmp以外使わなくてもいいのだが、魔法を習得できない人のために開発された、杖や魔法粉、ポーションなどは魔法屋で買うことができた。ほうきと絨毯などに魔法をつけることもできるが、それも高い技術がいるため、元からついている物を買うこともできる。

 魔法屋で買える魔法は多種多様。戦争の最前線で兵士が使うような攻撃、防御魔法もあれば、日常の中でちょっと便利になる魔法もあったりする。

 例えば風の魔法をうまく使うと洗濯物を乾かすこともできる。

 うちのおじいちゃんはリンジー・ダウダル。炎を使える魔法を発見したり、魔法の種類を分けたりしたれっきとした魔法学者だ。

 その頃から、魔法学者は魔法屋を経営するという風習のようなものがあったりした。

 そのためおじいちゃんも魔法屋を経営し出したとお母さんから聞いている。 

 だが今はそれから五十年ほど経っている。魔法は発達しきったとして魔法学者は年々減っていき、もし魔法学者がいても魔法屋を経営せず、実験を重ねるだけだそうだ。学生も研究室で実験をしている。

 今はほとんど魔法屋は無くなっていて、あったとしても後継ぎだけだそうだ。僕もそのうちの一人だ。いや、正確にはまだ跡を継いだ訳ではない。僕が後一年、魔法学校を卒業して十七歳になったら、後をついでいく。

  昔、おじいちゃんから聞いた話では、どこか村に行くと、絶対に二つ以上は魔法屋があったらしい。そこと取引することもあったらしいが、少しずつ無くなっていったらしい。用事があって大きい町に行くと、魔法屋の市場があったらしい。そこでは大量の魔法屋が、お互いに足りない魔法を埋めていたためその頃見つかってる魔法の中で買えないものはなかったほど多かったらしい。

 僕も卒業したら一回だけ都会に行ってみたいなぁ。馬車を引いて何日くらいかかるだろうか。まぁそんなことしてるくらいなら魔法の材料とって来たほうがいいか。

 チャリンチャリン、と入り口のベルが鳴り、お母さんが「いらっしゃいませ」と言った。久しぶりにお客さんが来たのだ。

「ちょっと山奥で狩りをしようと思ってね。炎の杖の強さ二十。五回分で何ペリドットだい?」

 このお客さんは常連のガリボルディさん。良くいろいろな買い物に来てくれる。この店の収入三分の一はこのお客さんってくらい買ってくれる。仕事は大工だそうだ。

「えーとそれだと相場は一万ペリドットだね。最近は品薄が続いてるから一万千ペリドットでどうだい」

 するとその時、お父さんが藁の鞄にいっぱいのポピーの花を摘んで帰ってきた。

「ただいま。あ、ガリボルディ。ポピーいっぱい取れたから。炎の魔法だったら安く売れるぞ」

「おぉ。ちょうどよかった。炎の杖二十の五回分を買いに来てたんだ。何ペリドットかい?」

 ガリボルディは財布を漁っていた。

「お父さん。炎足りてないから一万くらい?」

 お母さんが慌てて口を挟んだ。

「あぁ。そっか。じゃあすまんが一万ペリドットでどうだ?」

「わかった。明日までにできるか?」

 そう言ってガリボルディは財布から一万ペリドットを取り出した。

 この店はお母さんが店をやってお父さんは材料を集めて来ている。ただもうお父さんもお母さんも四十代だ。体力的にも厳しいらしい。

 魔法の材料は生き物から花、鉱石までいろいろある。集めれる場所も変わってくるので、

最近は隣町の魔法屋と近くにある材料を交換するのが主流になって来ている。魔法屋が少ないため結びつきが強く、交流は盛んに行われている。

 するとお父さんに名前を呼ばれた。

「ダニエル。ガリボルディさんのやつ明日までに仕上げれるか?」

「うん。今日学校休みだから余裕だよ」

 僕はそう言うとすぐに制作室に向かった。僕の家は魔法屋と制作室と一緒になっているため、すぐ作ったりすることもできる。

 僕は杖の素(イヌシデの木)を手に取り、削り始めた。イヌシデの木は、魔法がつきやすく育つのも早いため魔法の杖の材料には良く使われている。ちょうどよくこの魔法屋の裏にはイヌシデの森があったのでこの魔法屋ではその材料しか使っていない。

 魔法を作ってると毎回思うんだけど、魔法を作る魔法できないのかな。なんでかわかんないけどそれだけはできないんだな。応用とかしてうまいことやってもただの棒が出来上がっただけだし。

 杖は種類によって最適な太さなどが違う。お父さんは昔からそのことについて教えてくれた。もう十年以上教えてもらっている。去年にはお父さんももうお前は一人前だと言ってくれた。

 そこから杖だと大体僕が作るようになった。最近は杖以外にも魔法の粉やポーション、ほうき、絨毯などいろいろなものにも挑戦するようになっていった。

 そんなことを考えてると段々とこの店を継ぐのが楽しみになってきた。

 杖を作って炎の色彩魔水につける。液は魔法の強さによって濃さが変わるため作り置きできない。そのためさっきお父さんが大量にとってきたポピーを魔力凝縮液に入れる。そうすると炎の色彩魔水ができる。

 魔力凝縮液は水にmpを注ぎ混むだけでできる。魔力凝縮液も濃さが変わってきて濃さによって使うmpも変わってくる。

 だからmpの回復と最大を増やす練習をしないと。大量に作れるようにならないと。

 そして五分ほど待った後杖を乾かす。それを繰り返す回数によって使える回数が変わってしまう。

 今回は五回分だから二十回くらいつけたらいけるだろう。

 このようにややこしい工程をやっても売れる魔法は簡単なものだけだった。習得する魔法よりは圧倒的に弱いうえに自分の意図が反映されるものは作れない。何か作れないかといつも考えるのだがお父さんはいつも「新しい材料を見つけるくらいしか方法はない」と言う。諦めるしかないのか……。

 杖を色彩魔水に出し入れして、やっと二十回が終わった。

 これで完成だ。木箱に杖を入れると、制作室に置いて自分の部屋に戻った。気づくと肌寒くなっていて、窓の外はもう暗くなっていた。

 リビングの方から「ご飯よー」と言うお母さんの声が聞こえてきた。

 次の日、いつも通り朝から魔法学校に通っている。僕は魔法学校の中の制作科に入っている。制作科では名前通り魔法を作ったりする。制作科は、午前中授業をやり、午後は研究室に向かう。研究室では場所によってやることが違う。

 例えば種族の研究室では新しい種族がないかだったりもっと細かい区分をできないかをを研究している。

 僕が入っている研究室は意識の研究室だ。意識の研究室にもいくつかあり、僕のところは作った魔法が使う人の意識を反映させれないかと言うのをやっている。どう言うことかと言うと、杖を作ると杖を振った方向に種族の物が動く。

 例えば炎の杖だと降った方向に火の玉が飛んでいくのだ。水の魔法と組み合わすことができるとうまく狩りができることもある。焼いて鹿などを殺し、いい感じに焼けたタイミングで水で消化するのだ。すると鹿丸々一頭焼くよりも大幅に手間と時間が省ける。

 ただこの魔法は杖を振った方向にしか飛ばない。杖を振って目の前に木があったらその魔法が使える人は横に回らせることもできる。ただ杖を買った人は曲げることはできない。制御しているのは杖自体だからだ。元はただの棒だ。人間の意志を汲み取ってくれるわけがないのだった。

 そこでその研究室は杖に意識を読み取る機能をつける実験をしている。今まで少なくとも百回以上は仮説を立て実験をしたが何一つ上手くいかなかった。このまま卒業してしまうのではないかと言う不安も湧いてくる。そこでこの研究室の七人は必死に研究しているのだ。

「おはよう。ダニエル」

 研究室に入ると友達のアラスターが先に来ていた。アラスターも僕と同じ五年生、つまり最高学年だ。アラスターはいつも僕と一緒に研究してくれる。

「おはよう。アラスター。なんかオルガからよさそうなの届いやた?」

「いや。見たことあるやつばっかり。なんか魔鉱石とかあったら嬉しいんだけどな」

 オルガとはこの研究室の三年生。唯一の女子だった。女子だが好奇心は異常でワープの魔法をこの研究室の中で一人だけ習得しているため材料を採集する担当になってくれたのだ。いつもは研究室が終わる直前に持って帰ってくるのだが昨日は休日。オルガは自主的に休日でも採取に行ってくれている。

「貴重なのは?」

「いや。ない。一番貴重だったのは最近見かけなくなったポピーくらいかな。思い切って洞窟に行ったらしいんだけど結構強い魔物がいたらしいね。彼女の勘で行くとあそこには結構な魔鉱石がありそうって感じらしい」

 アラスターは頭を抱えた。

「一回さ。みんなで行ってみない?。その洞窟」

 僕はそう提案した。続けて僕は、

「イザークは戦闘魔法持ってたよね」

 と言った。イザークとは四年生、同じくこの研究室の一員だ。子供の頃から戦闘魔法を教えられてたらしい。

「俺なんも持ってないし足手まといだからいいわ」

 そう言いアラスターが研究室を出ようとする。

「アラスター治癒もってなかった? 治癒いないと絶対負けるんだけど」

 僕がそう言うとアラスターはUターンして戻ってきた。

「でも怖いよ。俺運動神経悪いしさ」

「でも先生着いてきてくれるんだよ」

 そう。学校の外で活動するときは先生が絶対についてきてくれる。実際オルガはいっつもこの研究室の先生を連れている。と言うかたまに見かけるとほぼ友達のノリだった。逆にオルガのせいで研究室にずっと先生がいない。ただそれで困ったことはない。

「うーん。じゃあ今日オルガと先生帰ってきたら相談してみるか」

 アラスターは渋々了承していた。

 気づくと研究室にはオルガ以外の六人が全員集まっていた。オルガは移動時間もあるため昼休みご飯を食べると先生と一緒にワープを使って移動しているからいつもスタートの時間にはいないのだ。

「では、お願いします」

 と室長のアラスターが挨拶をする。そこからはずっと会議のような形だ。

「魔鉱石を溶かすとかどう?」

「じゃあmp逃げちゃうじゃん」

「種混合したらどうなるかな」

「それ種類の部屋がレポート出してたよ。混合した二つの種類の魔法が出るって。ちょっと話題になってた気がするんだけどなぁ」

 みたいな感じにずっと話し合いをする。これをやっているとたまに案が出てくるのだった。

「じゃあ無理矢理色んなのにmp注ぎ込んでみる? なんか変わったやつ見つかるかもしれないし」

 そう言ったのはアラスターだった。

「それ前もしなかった?」

 僕がそう言うとイザークも、

「やった気がするよ。なんも成果得られなかったじゃん」

 と言った。

 その時の記憶が蘇る。思い出しただけで寒気がする。

 目の前に大量のmpのポーションが並べられ、いろいろなものに無理やり吹き込んでいく。疲れたら無理にでもポーションを飲み、やり続けた。それで僕とイザークはいつのまにか倒れていたのだった。

「やめとこうやめとこう」

 僕はその記憶を思い出した瞬間思わずとも口から出た。

「なんか最近簡単にmp吹き込めるやつ出たの知ってる?」

 突然口を開いたのは二年生のミシェルだった。ミシェルは情報収集がうまくさっきのレポートを言ったのもミシェルだった。

「相場は一個三万ペリドットで結構高いから学校側からお金出るかわかんないけど一応やってみようよ」

 そう言ってミシェルはおもむろに研究室の金庫を開けた。そこには二十万ペリドットほどあった。

「これくらいでも買えて七、八個かな。うーん」

 ミシェルが悩んでいるとどうやらオルガと先生が帰ってきたようで研究室の床にワープホールができた。魔法陣の一種で他の人も一緒に入ることができるのだ。

 そしてワープホールの中からオルガと先生が出てきた。

「ただいまー。今日は鹿狩ってきたよー」

 オルガは圧縮袋から凍らされた鹿を出した。

「あれ? 氷って圧縮していいっけ」

 イザークがそう言うと、笑っていたオルガの顔は一瞬で真顔へと変わった。

 そして鹿を圧縮袋から取り出すと、カチコチに圧縮された氷があった。

「ごめん。これ外持って行くの手伝ってくれない?」

 オルガはそういうとみんなで凍った鹿を外に出した。

「ありがとう」

 オルガがそういった直後、オルガは指を歯科の方に刺した。すると火の玉が飛んでいって凍った鹿に当たった。

「よし! これで解凍できたかな」

 だが全く氷が溶けていない。あいにく誰も氷を溶かす魔法を持っていないようで、そこに『これは、制作科意識研究室の物です』と言う看板のようなものを立ててその日は解散となった。

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