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第一章 勘違いとぼっち。(3)

第一章 勘違いとぼっち。


家に入ると、目の前には裸の女性が立っていた。

「あっ、おかえり~」

大きな胸を揺らし、濡れた茶色の長い髪をタオルで拭きながら、何も起きていないかのように、普通におかえりと言ってくる。

「ちょっ、姉ちゃん! 服着てくれよ!」

「いや、だって風呂上がりだし~。正直面倒だなぁ~って。それにやっぱ風呂上がりは裸に限るっしょ! 気持ち良いし!」

と、親指を立てて、ぐっじょぶマークをする俺の姉こと、()無月(なづき) ()(ゆう)

ぱっと見、お姉さんらしい落ち着いた顔をしているのだが、それは外見だけの話であり、中身は全然違う。

「いいから、服着てくれよ! こんなとこ、()(れん)に見られたら、また怒られ―」

俺がそう説得している時だった、家の扉がガチャッと開いて、外からショートカットの少し小さな女の子が入ってくる。

俺の妹、水無月 花蓮だった。

「ただいま。あれ? 兄さんも今帰ってきたとこなん……」

姉ちゃんを見て、顔を真っ赤にする花蓮。

「ほら、だから言っただろ……」

額に手を置き、姉ちゃんに馬鹿だねと思いを込めて視線を送る。

「姉さんの変態‼ 何度言ったら分かるんですか! 女性ならば、もう少し慎みを持って行動してください!」

そんな恥ずかしがっている花蓮をおちょくるように姉ちゃんは言う。

「ひょっとして、花蓮ってば私の裸に見とれちゃった? えっちぃ気分になっちゃった? うんうん、年頃の女の子だもんね、分かるよ。それにしてもあれだね~。藍だけならまだしも、花蓮までえっちぃ気分にさせるとか、私ってば罪作りな女……」

と、ニコニコしながら言う姉を見て、俺と花蓮は声を揃えて言う。

「「いいから服を…」」

「着ろ!」

「着てください!」


それから、一時間後、リビングで服を着た(シャツ一枚なので、目のやり場に困る)姉ちゃんが拗ねていた。

「ぶぅ~。何でなのさ~。とっても可愛いくて美人な私の全裸ライフを邪魔するのさ~。どうせ私の裸に興味津々なくせに~」

頬をパンパンに膨らませて、机に突っ伏している姉ちゃん。

「誰も売れ残りの女に興味なんかねぇよ……ましては姉とか」

「ちょっと何よ! 今売れ残りって言った⁉ 私はまだぴっちぴちの処女だよ!」

ドンッと胸を張って言う姉ちゃん。

「いや、そこにぴっちぴちって言葉を使うなよ!」

「まだキスもしたことないし、付き合ったことすらないんだよ! ウブでしょ、ウブウブなウブでしょ‼」

机をバンッと叩き、少し涙目になりながら言う。

「それに私はま、まだ…に、二十三歳だから…」

震え声でそう言う。

そんな姉ちゃんに俺は勝ち誇ったような顔で言った。

「俺まだ、十七」

「うわあああああああああああああん。さすがにこの年齢なら恋愛の一つくらい経験したいわよ!」

俺の言葉がトリガーになり、わんわんと子供のように泣き出す二十三歳児。

「だったら、もっと普段から品のある女性になれよ。主に服を着るとかさ」

「別に私、外ではしっかりとしてるもんっ。家にいるときだけだもんっ」

頬を膨らませて、あざとくそっぽを向く姉に俺は一言。

「二十三歳児がそれはきついって」

ドンッと、体を乗り出して、向かい側に座っている俺に顔を近づけてくる。

「ああもう怒った。もう藍でいいからとりあえず経験させてくれない⁉」

「何の話してるの⁉」

耳にそっと、顔を寄せ、俺の頬に優しく手を置き、囁いてくる姉ちゃん。

「どう? 私おっぱい大きいし、気持ち良くしてあげるよ…。この際、姉弟かどうかなんて関係ないよね……」

「ちょ……」

我ながら気持ち悪いと思うが、普通に顔が熱くなっていくのが分かる。

マジでもう一度言うが、我ながら気持ち悪いと思う。

そして、さらにもう一度言う。

何か抵抗できない自分がいるんだが、本当に気持ち悪いと思う。

なんて、よく分からない葛藤をしていた時だった。

「何やってるですか、姉さん⁉」

急ぎ足で近づいてきて、姉ちゃんを俺から引きはがす花蓮。

「ふぅ……。助かったよ、花蓮」

買い物に出ていた花蓮が帰ってきたのだ。

「いえいえ、どういたしまして。あっ、今から夜ご飯の用意しますね」

そう言って、キッチンに向かう花蓮。

すぐにトントンっと調理をする音が聞こえてくる。

「まんざらでもなさそうだったくせに…」

おちょくるようにそう言ってくる姉ちゃん。

「う、うるせぇよ! 第一、そっちが変なことしてきたんだろ。まんざらじゃないのはそっちの方だろ!」

「顔真っ赤にしてそれを言われてもねぇ……どう思う花蓮~。さっき、藍ってば、私に誘惑されて抵抗しなかったんだよ」

トンっと、何かを切る音が止まった。

すると、タンタンと素早い足取りでこちらに向かってくる花蓮。

「いや、花蓮違うんだ! そ、その何というか、この馬鹿な姉のせいで―」

俺の言葉を最後まで聞かずに花蓮は笑顔で言った。

「ええ、大丈夫ですよ。えへへっ、兄さんはそんなことしないって私は分かってますし、信じてますから……」

「とりあえず包丁を置いてくれないか! あと、目が笑ってないのが超怖いんですけど‼」

普段から、姉ちゃんに振り回される俺だが、今日は一段と酷かった。

酷かったのだが、ふと居心地が良いなと思ってしまった自分がいた。

やっぱり家族って一緒にいても疲れないな…。と。

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