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エピローグ 過去を超えた先と勘違い。

エピローグ 過去を超えた先と勘違い。


「なぁ、一緒にお昼どうだ?」

 机に突っ伏していると、突如として湊に声をかけられる。

 俺は顔をあげて、湊の方を見る。

「ああ……遠慮してお―っ⁉」

 湊の後ろで、すごいこちらを凝視してくる松葉の姿が。

「お、俺は遠慮しておくよ……」

「そうか…」

 少し残念そうな表情しながら、去っていく湊。

「ありがとね、水無月」

 耳元で、そっとそんなお礼だけ残して、松葉も去っていく。

 頑張れよ、松葉。

「そんなに、華のこと見つめてどうしたの? 何か言われた?」

「何で、ちょっと拗ねてるんだよ」

「別に~。私以外の女の子と仲良くするんだなぁって思っただけだし…」

 頬を膨らませて、少し怒っている様子の夢風。

 相変わらずのかまってちゃんである。

お前は俺の彼女かよ……。

「ってか、お前は湊たちと行かなくていいのか?」

「何で? 私別に、清に興味ないし、それに一緒に行ったら、華に悪いし」

「そうか。それもそうだな」

 そう言い、俺は席を立つ。

「あれ? 水無月くん、どこ行くの?」

「お前も来るか?」

「え?」

 俺は夢風を連れて、グラウンドを超えた先の旧校舎へと向かう。

 そして、文芸部とかすれた文字で書いてある部室の前へ。

「何ここ」

「開ければ分かる」

 俺はガラガラと扉を開けた。

 その先には、一人佇む、神無月が。

「あら、来たの。いらっしゃい、私のぼっち城へ」

「今のお前は、ぼっちじゃないだろうが」

「へぇ~。紫苑が昼休み、教室にいないことがよくあるなって思ってたけど、ここにいたんだ」

「ええ、ここは静かでいいわよ」

「今更だけど、夢風と一緒に教室にいればいいんじゃないか? あえて、ここに来る意味あるのかよ」

「別にいいじゃない。私はここが好きなのよ」

「紫苑が好きなら、私も好きだな」

「なんて簡単なやつなんだ……」

「うん? 今何か言った?」

「うっ! お前、いきなり素の自分出すのやめろよ!」

「いやだって、ここなら、無理して猫被らなくても、よさそうだし」

「ま、まぁ、そうだけど…」

 でも、ある意味、俺と神無月の前では、正直な自分を出してもいいっていう。

 信用されてるって、とらえてもいいのかもしれない。

 そう考えると少し嬉しい気もするな。

「そこら辺に座って」

「お、おう」

 俺と夢風は適当な椅子に座る。

「で、今さらだけれど…私、まだあなたから謝罪の言葉を聞いていない気がする…」

「あっ、そういやそうだな」

「水無月くん? 別に無理して紫苑と仲直りする必要ないんだよ?」

「え?」

「だってそうすれば…紫苑は私だけの紫苑だし……水無月くんも―」

 と、何かを言いかける夢風。

 そんな夢風の言葉を遮るように神無月が言う。

「やっぱり今すぐ許してあげるわ。感謝しなさい」

「え? ええ?」

 困惑する俺。

 そんな俺を置いてけぼりにして、二人は見つめ合っている。

「えへへっ、紫苑ってば正直じゃないね」

「ええ、もちろんよ。でも、それは夢乃も同じね」

「え~? 私は…正直に言おうとしてるよ?」

 なんだ? 何か様子がおかしくないか?

「ど、どうしたんだ?」

「あなたは…」

「水無月くんは…」

「気にしなくていいのよ」

「気にしなくていいの!」

 二人して、声を揃えてそう言われたんだが。

 俺は、何と返答すればいいのだろうか?

 どう考えても、俺が何かやらかしたとしか思えないんだけど……。

「な、なぁ…神無月。教えてくれないか? お、俺…お前に嫌われたままなんて、辛すぎて死んじまうんだけど…」

「はぁ…別に誰も嫌ってないわよ。さっき許すって言ったでしょ?」

「ええ? で、でも……。そ、それに夢風も、せっかく最近、ちゃんと仲良くなれた気がするのに…前みたいにまた…」

「はぁ…別にそんなこと、もうしないよ…」

「本当にそうか?」

 心配そうにしている俺に対して。

神無月は呆れたように答える。

 夢風も呆れたように答える。

 

そして、再び、二人は声を揃えて……

「ねぇ、あなた……」

「やっぱりさ。水無月くん……」


「「私のこと好きでしょ?」」



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