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第一章 勘違いとぼっち。(2)

第一章 勘違いとぼっち。


眠気と必死に戦いながら、今日も今日とて、一日の学校生活が終わりを告げる。

そんな放課後。

俺は、退屈な授業から開放されたのに。

明日もまた学校があるという事実に、学校は人生の牢獄だなと思いながら、帰りの支度を始める。

「はぁ…」

ため息をつきながら、ふと窓の外を見る。

運動部の威勢のいい声が、今日はやけに耳障りだったからだ。

「ため息なんてついて、どうかしたか?」

「えっ?」

いきなり話しかけられたことに、驚き、目を見開く。

恐る恐る、声の方へと顔を向ける。

俺の視界には、短髪に爽やかな笑顔を浮かべるイケメンがいた。

いったい何が起きているんだ。と内心、かなり動揺しながらも、頑張って言葉を絞り出す。

「え、えっと…お、俺に何か用?」

俺の噛み噛みな問いに、目の前のイケメンは少しばつが悪そうに答えた。

「いや、その…用ってほどでもないけど、一緒に帰らないかなと思って……」

用ってほどでもないと言ったわりには、普通に用じゃないかと思ったが俺は口に出さなかった。

いや、出せなかった。誘われたという事実に驚きすぎて、言葉が出せなかったのだ。

「あ…ああ…え、え、え、え、と……み、みみみみ、湊だよね…」

おっと、噛み噛みでもうなんだか、この場で話すこと自体が恥ずかしくなってきてしまった。

きっと彼も、苦笑いしてるんだろうな。

などと思っていたが、俺を見ても彼は苦笑いなどはせず、むしろ爽やかな笑みを浮かべた。

「どうしてそんなに緊張してるんだ。ほら、一回落ち着いて、深呼吸でもしてくれ」

そう言う、彼の言葉通りに俺は深呼吸をし、少し心を落ち着ける。

よし、もう大丈夫だ。

さっきはいきなりで動揺していたが、彼のおかげで少し落ち着いた。

「え、えーと、俺と一緒に帰りたいって、何か罰ゲームでもさせられた?」

我ながら自分で言ってて、悲しくなってくる。

しかし、彼ほどの人物が罰ゲーム以外で、俺に一緒に帰ろうと誘ってくるわけがないだろう。

何故なら、彼こと、(みなと) (きよ)という男は夢風同様、スクールカーストの最上位にいる男であり俺とは天と地の差があるほどの人物なのだから。

簡潔にまとめると、モテモテでみんなから人気があるリア充に誘われた。

まったく関わったことがないのに。

うん、意味分からんな。

「どうしてそんなことを言うんだ。別に普通に誘っただけなんだけど」

湊は冗談交じりに笑って答える。

いや、俺からしたら、その普通に誘ったってのが意味不明すぎるんですが。

「じゃあ、何か俺と帰らなければいけない理由でもあるのか?」

湊との会話に少しなれてきた俺は、ちょっと威圧的な口調で質問を投げかける。

そんな俺を湊は手の上で転がすように、優しそうな微笑みを向けて言った。

「友達と帰るのに、理由がいるか?強いて言えば、僕が水無月と帰りたいっていう理由があるけど……」

あの、まだ友達になった覚えもないのですが…。

などと、口に出すのは流石に無粋だったので、俺は色々と思うところはあるものの、誘われたという事実に普通に喜んでいたため、自分の心に正直になって考えてみた。

いや、何故かは分からないが、胸の奥底で、彼を受け入れたいという気持ちがすごかった。

まじで気持ち悪いとは思うのだが、素直にそう思ってしまったのだ。

「そうだな。よし、一緒に帰ろう…」

自分の顔が熱くなっていくのが分かる。

端から見たから、俺が、湊に発情しているみたいに思われてそうだな。

「おう」

湊は俺の言葉に嬉しそうに返事をし、二人で教室を出た。

教室から出るときに、普段は集めないであろうクラスメイト達の視線を気持ちが悪いほど、向けられた俺は、普通に心臓がバクバク鳴ってました。

学校から出るまで、湊と歩いているだけで、校内中からの視線を浴びて、すごく疲れた俺だった。

そして、湊とはどうやら最寄り駅が同じらしく、最寄り駅からの家の方向も同じだったために、俺は家の近所に着くまで湊とずっと話していた(湊が投げてくる会話に、ああとか、うんとか答えるだけ)。

湊と途中で別れた俺が、「じゃあな」と言うのに、どれだけの力を振り絞ったかは言うまでもないだろう。

そして家に着き、玄関に入る直前に俺はふと呟いてしまったのだ。

「久々にちゃんと人付き合いしただけで……こんなに疲れるんだな……」

なんて、呟きはしたが、何だかんだ言って、楽しかった。

 始めて話したはずなのに、とても始めてとは思えなかった。

 主に向こうの距離感が。


後になってから分かることだが…

この湊の存在が……


俺を救ってくれるのだ。



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