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第二章 過去と今。(8)

第二章 過去と今。


「えええ‼ あっ、あんた覚えてないの⁉」

夜、姉ちゃんに神無月のことを聞くと、驚いたように目を見開いていた。

「いや、覚えてないのって言われても、心当たりすらないんだが」

「えええええええ⁉ まじで? マジなの? だから童貞なんだよ‼」

「それは本当に知らねぇよ! 処女に言われたかねぇわ!」

「いやいや、あんた幼馴染みを忘れるってマジでやばいって。しかも、紫苑ちゃんみたいな超絶かわいい子を」

ポロッと言われた姉の言葉の中には、とても信じられないようなワードが含まれていた。

だから思わず聞き返してしまった。

「はい? 今なんて…」

「だ、か、ら、幼馴染みでしょって!」

「はいぃぃ? 俺と神無月が幼馴染みぃ?」

理解に困る言葉に声を荒げる訳でもなく、冷静に受け入れようとする。

が、ダメだった。心当たりがないから。

頑張って記憶をたどってみる。

「そうよ。あんた、昔よく遊んでたでしょ。いやぁ~、昨日は驚いたなぁ~。まさか紫苑ちゃんが隣の家に引っ越してきてたなんて。しかも一年前に」

記憶をたどってみたのだが、まじで思い出せない。

あの毒舌で、無表情で、無愛想な女の子なんて、過去に知り合ったら絶対に忘れないと思うんだけどなぁ…。

「まぁ、あんたが思い出せないなら、しょうがないけどさ。いやぁ、しっかし我が弟ながらかなり最低な男だね」

「だから最低って言われても、思い出せないもんは思い出せないんだから、仕方がないだろ」

「紫苑ちゃんは何か教えてくれないの?」

「特に、何も言ってくれないな……あっ、なるほど。だからか」

「ん? どったの?」

「いや、なんか神無月ってやたらと一緒にいやすいし、やたらと俺のこと知ってるから、なんかおかしいなって思ってたんだよ。姉ちゃんの知り合いだったと思ってたんだけど……まさか、自分の知り合いだとは思ってもなかった」

「嘘でしょ……」

絶句した様子で俺のことを見る姉ちゃん。

その後、俺は姉ちゃんに神無月との違和感があった出来事を口にした。

「………」

「なんで姉ちゃんが黙るんだよ」

俺が一部始終を話終えると姉ちゃんはしばらく黙った。そして…

「なんんんんんっっっっっっで、それで気づかないのおおおおおおおおおおお⁉」

やたらとためた言葉を、声を荒げて吐き出す。

「どう考えても、分かるでしょ。絶対に藍のこと好―あっ、危ない危ない」

何かを言いかけて、ハッとしたように口を押さえた。

「すって何? 何を言おうとしたの?」

「はぁ…。お姉ちゃん、なんだか悲しいよ」

「え? 俺なんかした? 確かに幼馴染みのこと忘れてるのは最低だと思うけど」

「いやいや、それだけじゃないよ。はぁ…これはもう、本当に一生童貞ルートかな」

「だから何で姉ちゃんにそれを言われなきゃいけないんだよ」

「あの…さっきから、話している内容が全部聞こえてくるんですが…」

「あっ、ごめん、花蓮。うるさかったか」

部屋の扉を開けて、花蓮が呆れたような表情で出てきた。

ちょっと、俺も姉ちゃんも声を荒げすぎたかな。

「いえ、私が言いたいのは、うるさいってことじゃなくてですね…その…」

ジッと俺の顔を見つめてくる花蓮。

うっ、やばいな実妹ながら、なんて可愛いんだ。

青色の少し気怠そうな瞳が可愛すぎて吸い込まれそうだった。

なんて、痛いことを考えていると、

「さすがに兄さんが最低だと思います」

「へ?」

素っ頓狂な声をあげる俺に、それだけ告げて部屋に戻っていく花蓮。

そんな俺を見て、姉ちゃんは勝ち誇ったような笑みを浮かべて言った。

「ね? だから言ったでしょ」


本当に俺は、いったい何をやらかしているのだろうか。


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