表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

プロローグ 昔の自分と今の自分は違う。

プロローグ 昔の自分と今の自分は違う。


それは夢だったのか、現実だったのかは分からない、曖昧なもの。


大きなゾウの滑り台が印象的な公園。

そこに三人の小さな子供が座り込んで話している。

「これから俺達は、何があってもずっと一緒だ」

威勢の良い男の子がくさい台詞を口にする。

「うん、そうだね、相棒の言うとおりだよ。僕もその意見に賛成だよ!」

「相棒って、ずっと俺のことそう言ってるよな」

「おかしいかな?」

「いや全くもって、おかしくないぜ!」

少し気の弱そうな男の子が、威勢の良い男の子と拳を合わせて、ニコニコと笑い合っている。

「もう、二人ばっかりずるいよ。私もその約束に入れて。それに相棒は私の方でしょ?」

そこに入っていく、とても寂しがり屋な女の子。

「よし、しーちゃんも俺達と約束したからにはずっと一緒だからな。あっ、でも、相棒が二人いるのはおかしくないか?」

威勢の良い男の子が寂しがり屋な女の子にそう言うと、少女はホッとしたようにえへへっと微笑む。

「いいんだよ、相棒!」

そして、三人の視線は、もう一人の不思議そうにこちらを見つめる少女へと送られる。

威勢の良い男の子が、声を張り上げて、少し遠くにいるその少女へと声をかける。

「おーい。お前も、もう俺達の仲間だからな」




ドスンっと、背中に強い痛みが走る。

「痛ぇ……」

勢いよくベッドから落ちた俺はしばらく天井を見つめて呟いた。

「また、あの夢か」

今の俺に見せられても、困るんだよな。

そう思う理由ははっきりとある。

ちょうど十年ほど前のことだ。

まだ七歳だった頃、俺は交通事故に遭った。

幸い、命に別状はなかったのだが、頭を強く打った衝撃で、記憶を失った。

目覚めたときには、家族の名前はおろか、自分の名前さえも分からなかった。

当然のように、自分の記憶がないことに困惑した、頭の中に何かぽっかりと空白が出来たような、そんな気味の悪さが当時の幼い俺を襲った。

だけど、今はもうそんなマイナスな気持ちなどない。

さっき見ていたあの夢。

おそらくは俺の記憶なんだろうけど、

今見せられても自分の記憶というか、誰かの想い出を見ているような。

そんな気分にしかならない。

正直に言ってしまうと、今の俺にとってはどうでもいい。

過去のことはしょせん過去だし、何せ、記憶を失ったのが、七歳の小さい頃だ。

これが大人ならば、こんな簡単にはいかないだろう。

だけど、小さかったということもあって、今現在、十七歳になった俺にはもうどうでもいいことになっていた。


「自分の過去なんて…興味ねぇよ」

そう呟きながら、俺は家を出た。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ