春の逝麺争奪戦・珍珍清姫ものがたり・10
「まぁしかし、早苗については早急にあれこれするのもまずいんちゃうか」
さて、場所は変わりまして離宮のうちの部屋。
目下、目の前にベラ子がおります。
「でなベラ子。薫もいずみーも4月には痴女皇国に赴任してくる訳やんか。その二人かて、地下で寝起きが基本になるからな…エマ子には話をしとるが、4人用の女官寮居室に近づけるようにあそこのゲストルームを改装してもらう依頼稟議を出した。あとであんたもサインしといてくれるか」
「あ、そうか…母様、薫さんも泉さんも独身でしたよね。あの人たちはどうなんですか…男性関係」と、うちから回して来たと思しき書類を表示させて指先サインを入れながら聞いて来よりますが。
「あの中やと野郎付き合いに一番前向きなん、早苗やってな…」
「つまり何ですか、薫さんや泉さんの男性経験って、早苗さんよりもっと悲惨…」
「それか下手くそな遊び方してるか、どっちかやな。地味子でも私生活がアレなん、おるにはおるからな」
そうですね…例えば、マリアンヌとスザンヌを通わせていた学校の先生の不倫問題とかあった際、実はかなり前からうちもあの先生とあの先生がってのは意識を読んで知っておりました。
で、SMプレイめいた事までしていたとか色々とそれはもうだったのですが、二人ともですね、痴女種でなければ、とてもそんな過激な事をしているとは思えない地味目な先生でしてね。
言うなればハプニングバーでお見かけするとか、あるいは一昔前の写真投稿雑誌に過激行為をしている姿を投稿しているような感じの方々で、一見すると普通の人にしか見えない印象のひと。
そういう抑圧された人種が、何かの弾みで頭のネジが外れたままになると結構無茶苦茶するのです。ママの店で、何かの時にSMショーをやるという事で内地から呼んだ女王様もこれに言及しておられまして…素人は怖いと。
で、幸いな事というべきでしょうか。実のところ、薫も泉も奥手の部類です。
そして早苗も大きいお姉さん用の玩具を買い込む程度には助平な部類ですが、そもそもですね。
昔、うちが嘉手納基地にいた時、ママのお店関係者名義で小売店アカウントを取ってアダルトグッズを仕入れて同期や後輩先輩に密かにお友達価格で融通していた件、覚えておいででしょうか。
はたまた、昔、アフガニスタンから米軍が撤退する際に女性兵士が残していった白人向けサイズの「そういうもの」を写真でご覧になられたとか。
ええ、天の声に言わせると「某有名通販サイトでの購入者、最低七割が女性名」という言葉で言い表せるような実態が存在します。
男性に購入や利用の実態があまり伝わらないだけで、この手の玩具、女性にも一定の需要があるのです。
更にはエロ本の類も。
(違法流通のせいもあるけどさ、あたしのサークルで契約してる通販DLサイトの統計資料だと購入客、7割が女性向けのエロコンテンツ買ってるそうよ)とは副業のおかげでデータを貰えたり取って来れる雅美さんの弁。
ただ、実際の「本物」と玩具はやはり違います。これは誰かに聞く前にうち自身が断言します。
そしてですねぇ。
「母様…やはり母様と早苗さんをくっつける案は間違っていたのでしょうか」うーむと唸るベラ子。
ベラ子が考え込むのも無理はありません。改めて早苗の脳内をきっちり覗いたがために、自分の代わりにうちを早苗にあてがえば丸く収まると思っていたのが否定されたからです。
例え身体が同じでもジーナさんは苦手、無理矢理くっつけたら後で揉めるとの早苗の反応がいささかショックだったようです。
まぁ、これもベラ子が促成栽培の上に、生まれてこの方10年近くを痴女種、それも万卒以上の上級痴女種として過ごしたせいもあるんですよねぇ。
言うなればこの子、純粋な女性の思考ではないのです。
「んな事はない。ただ、それしても早苗が心底うちらに靡いてくれるかはまた別問題っちゅうだけや。シャブ漬けとか薬漬けというけど、実際のところは思考を麻痺させる効果の方が高いからな。つまり…ちんぽに負ける女というのは本当はおらんのやっ」
これはうちの持論なのですが、実のところ痴女皇国で開発した催淫成分各種を使いに使っても、いわゆるちんぽに負ける事というのは、本来皆さんが期待する意味では起きていないだろう。
うちはこう思っております。
で、男性と違って女性の場合、男性から見られる自分を気にする気持ちが極めて強いのです。そしてその気持ちは男女が無防備な状態になるあの時にですら、存在します。
それと、うち自身も痴女種になってから改めて理解できましたが、男性は基本的に性交が男女のお付き合いの終着駅と生理的に思うフシがあります。
考える、ではなく思うのがミソなんですよ、これ。
でまぁ、男性であっても理性が強い方や、結婚相手に対する考えを深く持てる方ならば、現実的に考え将来を見据えた行動をお取りになると思いますが…まぁ、程度の差こそあれど、まずは射精の衝動ありき。
ところがこれが女側になりますと、その男性と致して妊娠した後の未来が真っ先に頭の中に浮かびます。
うちの場合ですと、クリスならクリスの遺伝子をもらうだけではなく、将来の生活などが頭に浮かぶわけです。
つまりは妊娠した後でも養ってもらえそうなオスだと認めて、初めて性行為の対象と認識するのです。
じゃ、女さんが浮気や不倫に走る場合って、あれは一体何よとなるでしょ? どうですか? 男性諸君。
で、実は浮気や不倫だって、単純にちんぽに負けているわけでもないとあたしは考えています。
要は今捕まえてる男に不満があるから、別のつがいを探しているか、二股かけている状態である。
これが業務の傍らで、浮気や不倫の結果として起きた事を処理してきた事例経験から得たうちの結論です。
ただ…女官種や痴女種の場合は改良型駄洒落菌に感染したり身体機能をアップデートする以前に、基本はちんちんが好きになります。
理由は、おなかが空くから。
もう少しきちんと感覚を説明しますと、喉が乾いて頭が朦朧としてる状態ですね。
この感覚が来ます。
そして男性役ができる千人卒から上は、男性の生理や感覚も獲得することになりますよ。
ですから、痴女皇国草創期の堤防とかレイプ罰、あれ…うちもそうですけど、千人卒以上の上級痴女種なら男性同様に普通にできるんですよ。
つまり、純粋な射精衝動だけで行為に及べます。
むろん、ちんちんを収納して…というより完全な女性の下半身状態にしておけば女性そのものの考え方もできます。
ですが、上級女官の場合、拠点外活動で何日も痴女級や支部を空ける場合以外は精気授受作業を最低でも1日に1回は行います。
ですのでいちいち女性状態…女官種モードにするのもめんどくさいとばかりに、ほとんどの女官が痴女種状態を維持していると思ってください。
完全に男性そのものではありませんが、かなり男に近い生き物という事ですね。
「しかし母様、それでは早苗さんは…」
「まぁお待ち。そもそも痴女皇国は婚姻について厳密には認めてはおらんやろ。超特例として、クリスとうちがNBで入籍しとる状態なのが皆に認めてもろてるだけや。連邦世界のような妻や子に対する扶養義務すらないやろ」
「そう言われてみれば確かに」
「例外はダリアで、通常経時出産を承認されたくらいやし…ただ、これも子供が産まれた後は12歳相当にされるのが決まっとるしな」
「あーそうか…マリアンヌちゃんもスザンヌちゃんも、母様とクレーゼおばさまの娘さんという以上の扱いはありませんよね」
「それどころか皇族子女として女官扱い…つまり、ある程度の労働を課してすらおるやろ。言い換えたらあの子らは痴女皇国世界では大人扱いされとる訳や」
「はぁ…つまり、痴女皇国では早苗さんが考えてるような、あわよくば専業主婦という存在には」
「なれん。最低でも女官業務をしてもらう。聖院時代やったら罪人とデキて婚姻に至った事例はあるし規定もあったけど、今は二択やろ」
「還俗して夫婦となるか、子供さんを聖院学院に預けて女官勤務継続の二択でしたっけ」
「そういうこと。痴女種の子供を許可なく作らせない決まりの応用や」
「実際には…確か痴女皇国になってからは結婚退職めいた事例は聖院時代より更に減っていたかと」
「助平するためだけやったら痴女宮来たら会えるからな。実質の指名解禁が効いとるさかいに」
「まぁ、人間に戻ると老化がついて回りますからねぇ」
「今後は百人卒未満の昇格試験不合格後に結婚という話が続くのがあり得るとは思うけどな。そうしたケースに対応する形で世帯向けの住宅を作る話も出てたやろ」
「はい。雅美さんから提出されていました…あ」
「読めたか。つまり早苗もその規定から外す事は出来んやろ。昇格したら美味しい思いが出来るという経験をさす意味での千人卒にも出来るけどな」
で、早苗のステータス、思い出して下さい。
Sanae Iijima. 飯島早苗 Ten Suction (Limited Thousand)十人卒(限定千人卒)Pure female Visual. 女性外観 Researcher, Biochemistry laboratory. 生物化学研究室研究科員 Cultural Education Bureau, Imperial of Temptress.文化教育局
この十人卒ってのが曲者です。
更に女性外観にされていますよね。
この制限を解除できるの、現状では一千万卒超えとなります。
うちは厳密な精気吸引能力を持たされていませんが、精気上貢や下賜能力は億卒級と聞かされています。
(おばはんにドレイン能力を渡すと絶対にえらい事になる。何よりおかみ様とか変な相手と吸い取り合戦になりかねないから制限してんだよ。本当ならあたしやベラ子並の性能出せるんだけど、あたしはかーさんの限定解除する気、一切ないからな)
(確かにかーさまの能力を解放するのは危険ですね。これだけはねーさんに同意しておきましょう)
おのれら。自分の親がそんなに信用ならんのか。
(だって普通におめこするだけであらかた吸い取ってるじゃねぇか。かーさん…下手にあんたに上貢させたら、ブラックホール相手すんのに近いんだからな…)
(確かにあの吸い取り効率はとんでもないものがあります。聖環リミッターが作動してないと本当に危ないですよ。億卒でも下手したら一発死亡確定じゃないですか…)
(うちは自分でそんな設定した記憶はない。というかできん。お前らが何かせん限り無理や)
(えーと、エマ子ですけど。ジーナかーさまの吸引制御はうちがやってます。ただ、基本無制限。まぁ…直接合体した相手からでないと吸えないようにしてますから、バラージドレインで地球上の全員から吸い取るような事は金輪際不可能ですよって安心したってください)
まぁ…死人を出すよりはええか…。
と申しますのも、このまま早苗を放置するのもよろしくはありません。
薫と泉の到着まで、誰かが側でケアしてやった方がいいでしょう。
そして…この子の適性を痴女皇国向けにカイゼンするならば、敢えてリミッターを外して千人卒化。
これでどうにもならんかったら、その時は最終手段もやむなしではないでしょうか。
どないや、ベラ子にマリ公。
(問題はだな、早苗さんの指導員だ)
(かーさましかいない。あたしはそう思いますが。仮にジョスリンが痴女宮にいても絶対に止めます。それならまだ、マリーちゃんに預けた方がマシというものです)
(べらこへーかー。あたくしを一体何と思っておいでなのでしょうか…泣きますわよっ)
(っていうかいきなりストラスブール送りにしてどうするよ…それならまだバーデン=バーデンかいっそスイス送りにした方がマシだろ…)
(イザベルです。何でしたらマドリードで預かりましょうか? 先日の東洋女官が好評でしたし、マドリード娯楽館についても増員を要請しておりますしねぇ…)
(イザベルさんもここぞとばかりに痴女宮本宮に恩を売るのはやめましょうよ…女官教育もまだなのに、売春の現場に投入してどうするんですかぁっ)
(オマリーでございます。マリアヴェッラ陛下、ナッソーであれば売春を抜きにして、女給や踊り子だけでも頂ければと…)
(はいはい、オマリーさんは一般女官が欲しいという事で3月末の配転組を船便で送る予定ですからぁっ)
(北欧支部のニオオフラーネですが…上官から人を寄越せとおねだりしろって言われました…)
(あのー、英国支部クライファーネです。あたし一人行かせといて何してんですか。何でしたらアルトリーゼ来させてもらえません? 欧州作戦の後片付け支援とかいい加減にして下さいよ…うち、他の支部より現地採用について厳しいから現地調達できなくて困ってんですよ?)
(クライファーネ。なにをねごとをいっているのですか。むらさき薔薇は半数いじょう、えいこく常駐のようなものではないですか。ひとの数はともかく優秀な女官を回しているのですよ?)
(お前ら。人が欲しいのは分かったが、そもそも4月に向けての配転人事はすでに地区支部に通告しているだろう。それを思い出せない奴は痴女宮に呼び戻して研修する。それかスイスまたは北米に1ヶ月預ける事にするけど、それでもいいなら遠慮なくあたしに言って来てくれ…)
ええ、マリ公がキレよりました。
(マリアリーゼ陛下…お願いします!懲罰研修はともかく真剣にですね…)まぁ、クライファーネさんとこは実質紫薔薇の欧州拠点みたいなもんです。これは仕方ないでしょう。
(クライファーネ。サリアンに言って何人か現地採用新人を余分にこっちに回させてるから、それとのバーターでアルトを貸す。2週間くらいでいいか?)
(はい、ありがとうございます陛下。ただ…あたしと同格状態で来させて下さい。リバプールを廃墟にするのはちょっと…)
(安心しろ。それくらいはあたしも読んでる。というわけでアルト。お前今から荷造りしろ。1時間経過後にリバプールに飛ばすから頑張って支度しとけ。いいな)
(いきなりよめは何を言い出すのですか!警務局のおしごとをどうすればよいのですか!)
(…しゃーねーな。ダリアの体内の子供、自然分娩で行くつもりだったが促成させる。それまでの繋ぎには聖院のアルトを借りるからそれで何とかなるだろ。諦めて荷支度しやがれっ)
(痴女皇国のあたくし。マリアさまがいいだしたらきかないのをしっておるでしょうに。とりあえず聖院のマリア様の許可も出ました。こちらのあたくしのしごとはこっちのダリアとサリーにかわってもらえますから1じかん以内に痴女宮におじゃまいたします。あたくしがついてもまだのろのろしていたら…わかっておりますね? …まさみさん、聖院のアルトリーゼです。くろグッズで痴女皇国のあたくしをしばけるものをえらんでおいていただけますか)
ふむ。
瞬間に何かこう、閃くものがありました。
そーいや、アルトがいたよな…。




