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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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アフリカの爆弾女 2

さて、マリアヴェッラから唐突にネタバレです。


なぜ、MIDIシリーズという高機動無人戦闘兵器がなにゆえに放火換算、いえ邦貨に換算して何十兆円もかけて開発されたのか。



どうも設計製造に関わった人がいるようです。

ま、人が作ったものなら当たり前なんですけどね…。

「しかし、ここのワインってちょっと癖があるんですよね」

「蒸留酒を加えるからな。ポートワインと似たようなもんだよ」


スケアクロウの後部貨物扉からいくつも機内に搬入されるワイン樽。


これは痴女宮に運ばれて食前酒または食後酒としてストックする分だそうです。


「しかし、砂浜が少ない島とは知っておりましたが…」フランス製の輸送機を運用するとなると滑走路を建設する必要があると聞かされてショボーンとなっているジョスリーヌさん。


では我々はどこにいるのかと申しますと、マデイラ島南岸のサン・マルティーニョ(フンシャル)という街におります。

厳密に言えば街の前の港に設けられた広場ですが。


そして、スケアクロウを垂直着陸させてから取り卸された船舶修理用の毒林檎材、手早く台車で運ばれておりますが、一部は近所にあるカナリア諸島のスペイン海軍基地兼痴女皇国南欧支部基地にも持って行くそうです。


「カナリアとここは漁業基地としても使えるからな。生体発電機も設置して冷蔵庫や冷凍庫を用意させてるよ」


「でもスペインって真面目にやるならそれなりに成果残せたと思うんだよねぇ、こう言う事の手早さを見てると」


「実は護海卿(ドレイクさん)の後押しがあってな。フランスの勢力を削ぐためにスペイン相手に船員や軍人の教育を請け負ってるんだよ。肝心の船は半生体発電機の制御を痴女皇国が握ってくれさえすればイギリスを攻める事は出来ないだろうから、英国海軍の下働きを頼んでるって寸法さ」


「イザベルさんは怒らないの?」


「英国の出してる金は例の債務返済にも回る。ま、実際にはビタ1シリングも英国から金は動かしてないんだけどな」


種を明かしますと、痴女宮地下の財務部金庫室。


あそこで保管している南アフリカ分の金とダイヤモンドの所有登録を都度スペイン保有に書き換えて棚の札を差し替えてるだけだそうです…。


「そりゃそうと、ベネチアの鋳造所から文句来てるか?」


「今のところありません。もっとも、こちらに文句を言えるかどうかは…ですね」

「ベネチアン・ドゥカート金貨って模造品も多いからな…」

「叔父が討伐したがってますからねぇ、あの沿岸…」


レバント、つまり東部地中海沿岸地区の贋造貨幣鋳造所でドゥカート金貨の重量が同じでそっくりな物を作って撒いているのです。


で、これに対して姉が取った対策が…。


「あの金貨が聖母記念銀行はもちろん、聖環をつけた人なら偽物かすぐわかるのはいいんですけど…あのマーク使うのやめましょうよ…」


「ベラ子の満拓か珍珍レリーフよりマシだろ!」


「余計にダメです!」


えーと、南洋ルピーって以前お話しした通り、金銀を使ってない貨幣なんですよ。

そして特殊な方法…鋳造時に混ぜ込まれた八百萬神種族因子で識別できるのです。


そして、その製造方法を応用して旧ベネチア共和国で鋳造していたドゥカート金貨や銀貨と同等の純度で作られたのが、バチカン名義で製造したことにしているサンタマリア金貨、単位はセイントです。


で、この金貨…人が触るとですね、純正品は例の「丸と棒を組み合わせた」マークが浮かび上がるんですよ…。


更にスペインで作ってることにしているイスパニアターラー銀貨、これにも同じ仕掛けがしてあります。


「呪いを解除せずに溶かすと祟られるおまけつきだしな!」と豪語する姉ですが、実はイタリア連合公国もリラ貨幣を発行しています。


こちらは銀貨と銅貨が主体で、ベネチアの鋳造所にお仕事を提供するために作られておりまして、呪いはかけていません。


ただし真円度が非常に高いので、偽物と混ぜて重ねたらすぐわかるようにしているそうですよ。


「ま、あと百年も経過すりゃ紙幣経済に移行させられるから、それまでの辛抱よ」

気の長い話と言えば気の長い話です。


「さてと…積み込みが終わったみたいだな。今度は後ろに乗ってくれていいぜって、りええに言っといて」


で、座席配置。


ジーナ まりり

べらこ りええ

ダリア じょすりん

みさき・アルト まさみ

るっきー・みかこ


「ベラ子…お前が操縦せんかいっ」


「ねーさんが決めた配置ですよ…」


「結局うちか!うちが飛ばさなあかんのか!」


ええ。後部荷物室扉を閉めて機外点検を済ませて操縦室に戻りますと、一番前の左側…つまり機長席から苦情が出ました。


大西洋横断を転送で飛ばしているから実質飛行時間は30分と飛んでいないはずなんですが…。


「はいはい、次はエチオピアだからな。昼前にはゴンダールに着くように飛ぶからよ」


「ラリベラには寄らないの? それかアクスム」後ろの添乗席に移った雅美さんが聞いてきます。


「ちょっと二代目様に聞いてみるか。…あのー、マリアですけどうちのダリアいるでしょ。ええ、聖院じゃなくて痴女皇国の方。今マデイラなんですけど、ゴンダールにあるうちの支部にこれから行くじゃないですか。はぁ。聖母絡みならラリベラだけど、ダリアならアクスムでもいいと。…ゴンダールの聖母教会で代用できませんかね。うちの母親がめんどくさがりますから。…はぁ、アクスムかラリベラのどっちかにしろと。わかりました。どちらかに寄るようにします…かーさん諦めろ。アクスムのオベリスク群かラリベラの聖母遺跡かどちらか来いってよ…」


「…うちにも言われた。どっちがええねんやろ」


「微妙なんだよな。アクスムって昔の王国、ロン毛さん崇拝してたじゃん」


「ラリベラにもエチオピア正教会遺跡、あったわよね。あれさ、こっちにもあるの?」


「ああ…原始聖母信仰遺跡だけどさ。ま、現地に行ってアーペディオーネとメルクストレーネに聞いてみるか」


「とりあえず飛ばすで」


そして大西洋上に舞い上がるスケアクロウ。

順調に高度を上げてサハラ上空に差しかかります。


「なかなか進んでるじゃん、緑化」


「とりあえず急速成長型の粘菌類を何回か撒いて土質改善するとは聞いてたから、下手したらあれ風か何かで自然に生えた雑草かも知れんぞ」


「ああそうか、早々と定着しちまったんだな」


「クリスが言うてたけど今の段階で雨をザンザン降らしても地下水増やすだけらしいな」


「そそ。だから地下に至るまで地質監視しながらやっていく必要あんのよ。地形的に水源をある程度までは人工的に確保してやんねぇと、雨すら見込めねぇかんな」


と、姉と母様がサハラ緑化事業の進捗を確認しています。


これ、まさに火星なら火星のような惑星の大気質改良事業…惑星開発作業そのもので使う土質改良ナノマシンを何度も散布して植物が定着しやすい土に変えて行ってから地衣類を繁殖させる作業をしているそうです。


「これで森林が定着するまでの期間はどれくらいになるのでしょう」偵察員席についたジョスリーヌさんがお聞きになります。


「地形変更を入れながら、人工降雨抜きでステップ地帯になるまで40年から50年ってところかな。急ぐなら10年かかんないみたいだけど」


「これ…連邦側だと火星と、可能なら金星にも施工を予定しておられるのですよね」


「火星は既に着手済みだよ。金星はやってみないとわかんない部分が多いけど、自転速度にブレーキをかけたり潮汐を発生させる必要もあるからな。つまり月クラスの衛星を都合する必要があんのさ。それも岩石質のやつ」


「あっさり言われるのが恐ろしいです。ロリータ趣味をこじらせた金髪の方が落とそうとした石ころだけでも、実際の地球圏に移動させるのが大変に思えるのですが」


「まぁその辺は何とでもなるさ。何ならこっち側の金星で実験してもいいんだし」


と、とんでもない話をしている後ろで大人しくしているのは吉村美咲さん。


なにせ隣がアルトさんです。


雅美さんの隣だと絶対に揉めると思いましたし、ルクレツィア母様は母様で、歯に衣を着せぬ勢いで論破してしまうのがはっきりしています。


アルトさんも大概な方ですが、この人には話しかけづらいだろう。そして美咲さんにはあなたは監視対象ですという無言の圧力をかけ続けてくれています。


ただ…この人をかわいそうという気にはなれないんですよね。


美咲さんが大人しくしている理由は、我々が片端から彼女を瞬殺できる能力持ちで力では勝てないのがはっきりしているからです。


そして口で勝とうにも困難なのがはっきりしました。


更に言うと美咲さん以外の全員、痴女皇国ではなんらかの仕事をしており、連邦世界にも影響を及ぼしている人物も数名。


ですが一人でも自分と同じか、下のレベルがいたとすれば確実に弱い方を攻める部類です。ところや立場が変わればあっさりと「いじめる側に回る」部類なのが過去の記憶から暴かれていますから。



さて、エチオピア帝国。


連邦世界だとエチオピア正教の影響を受けた歴史的建築物や遺跡が多数存在する国です。


ですがいえめん宗教の影響を可能な限り減らした痴女皇国世界ではどうか。


(ロン毛さんと聖母信仰が存在する。この世界のエチオピア皇帝は宗教的権威をバックに力をつけてんだけど、そこに聖院が目をつけて比較的穏便に支部作って従えてる経緯があるんだ)


(今回は皇帝陛下へ謁見とかあるんですか)


(いや、うちの支部に来てくれるらしい。ワインの樽一つ渡して軽い歓談程度だな。こちらは遺跡に行く方が重要なんだ。二代目様いわく、この先の政策について着想を得て来いってこった)


(神託を得よとかいう話じゃないですよね)


(そこまで大層なもんじゃないよ。それにダリアのルーツを見せる旅でもあるわけだし)


とまぁ、一部区間を大気圏内スティックスドライブでショートカットしたりしつつ、湖のほとりに作られた支部の船着場にスケアクロウを停泊させてもらいます。


そして驚愕の状況。


アーペディオーネさん…日焼けはしてますけど、この辺から南の人に見えません!


聞けば欧州地区本部からエチオピア担当として赴任したメルクストレーネさんに外観を合わせているそうですが、ケニア支部担当兼、暗黒大陸地区本部暫定部長だそうです。


「まぁ実を言いますと、ぶっちゃけアフリカ大陸一帯の原住民には遺伝子改良入れてます。だから元から日焼けしたような人はどんどん減っていきますよ」


「あたくしが前に申しておりました、はだの色でさべつされるならされないようにしてあげよう、ということです。ありていにいうと全員がダリアのようなすがたになってもらったわけですね」


「まぁ、言っちゃうと欧米に奴隷じゃなくて出稼ぎ移住する場合でも受け入れられやすくしてあげたんだよ。アーリア人を脱色したような体型容貌にしておけば蔑まれることは少なくなるだろう。ただ、民族風習について一部では捨ててもらわざるを得ないものがあるけどな」


…無茶、しますねぇ…。


「あたしもかなり悩んだんだぞ。だけど民族や部族間の抗争をこの先数百年と延々続けられても困るし、なら流血なしに民族同化を図らせるしかないよなぁってなったわけよ…」


「はっきり申し上げますと、マリア様が痴女皇国を開かれた当時のやむを得ないいけにえや労働力収集、アフリカ大陸から得ている事も多かったのですよ…」


アーペディオーネさんもあまり言いたくない顏ですが、確かにアフリカ大陸とインドは微妙な部族の違いまで含めたら何十何百という複数民族が同居していて内乱も絶えない地域ではあるでしょう。


さらにさらに。


貧乏人の子沢山。


これを地で行く土地柄です。


しかも聖院時代から伝染病を駆逐する試みがなされていました。


みなさまの方の地球のインドにアフリカといった人口過剰地帯がまさに「強力な伝染病の影響が薄れたら人口がどうなるか」を立証していると思います。


むろん連邦世界でも理屈は同じ。


飢餓難民と言いますが、無秩序に増えたらそうなるよね、と言いたくなる側面もある話ではないでしょうか。


という訳で連邦世界の轍を踏まないように微妙な人口調節を行いーのドレインしまくりーので、こちらの管理要員を育てるまではあまり増えさせないようにしていたのが聖院並びに痴女皇国側のアフリカ事情だそうです。


とりあえず聖母教会を兼ねた支部で聖母や聖女らしき装いに姿を改めた我々、皇帝陛下率いる謁見団に対して手土産のワインやあといくばくかの金銀製工芸品…ぶっちゃけ聖母教風の十字架やら祭具を差し上げさせていただきます。


この裏には現・エチオピア皇帝を聖母教会が支援する代わりにエチオピア聖母教会イコール痴女皇国の間接支配下に置かれることを了承してもらう下地工作がありまして、今回の訪問はそれが表面化したものです。


で、交易街道整備やら何やらのご要望をお聞きして長居できぬことをお詫びしまして。


スケアクロウを見る人の反応で文明や文化程度が分かるとは姉の話ですが、これが飛ぶのを見るだけでも畏怖の念に囚われる部類でした、ここの方々。


湖から一気に舞い上がるスケアクロウを見送って頂く一団に心話でお礼のご挨拶をした我々、まずはラリベラ遺跡に向かう事にします。


ただし…スケアクロウは上空で旋回待機。ダリアさんと理恵パイセンだけが転送で地表に降り立つ模様。


あのですね。


何で二人に例の新型女官服と騎士服を着せる、ねーさん。


「そりゃベラ子お前、あれよあれ。アンドロメーダの系譜を残す話に決まってるじゃんか」


遺跡でそんなんさせていいんですか。

しかもアーペディオーネさんの話によると、まだ聖母教会として稼働してる場所もあるそうじゃないですかっ。


まぁともかく。


ジョスリーヌさんが左旋回中に左側偵察席でそちら側のカメラ類を使おうとしたりしていましたが、とりあえず何かあった際の対地援護射撃要員ということで皆の了解を得ようと必死になっていたことだけはお伝えしようと思います。


そして何故か雅美さんも偵察員席コンソールのモニタを見てあそこ映せここ拡大してとか、更にはルクレツィア母様まで来てあたしの後ろで騒ぐなとか、飛行中の操縦室で、むやみに席を立つなとジーナ母様がキレたりとかありましたが。


むろん理恵パイセンが怒り狂いまして。


(ベラちゃん。覗いてた人…ジョスリーヌさんと雅美さんとるっきーから見物料1万ルピーずつ巻き上げて。まりり、これ認めてくれないと、たのとデルフィリーゼさんに直談判しに行くからね!)


(五千ルピーにしてよ!そんなに興奮する内容じゃなかったわよ!)


(私もできればその程度で)


(理恵さん。あたくしの分はマリアヴェッラに請求願います)


(何であたしを巻き込むのですか!)


(つーか罰金徴収に応じてる時点であんたら、やましい事してる自覚あるんだな…)


(マリ公。それ以前に今回は秘匿行動やない事を理恵ちゃんに教えておくべきちゃうか。サハラ緑化状況視察も兼ねてるから光学偵察データ、リアルタイムでテンプレス2世のCICに送信してるし、エマ子が保存しとるはずやろが…)


(ぎゃあああ!消して消して消してぇええ!)


(理恵ちゃん。そもそもうちは言いたいねんけどな。上空から可視光線スペクトル範囲の撮影データにばっちり一部始終が映るような場所選ぶか、普通)


(理恵さんが露出したいって言うんですよ…あたしは散々晒し者になってますからいまさらですけどね、出来ればサハラ砂漠以外の映像、消して欲しいんですけどっ)


(ジーナさんがいらん癖をあたしに付けたのよ!わかってよダリア!)


(うちか! うちのせいか!)


(みんな静かにしましょうね。騒ぎ足りない人は堤防よっ。ダリアさん、それでいいわね?)


たまりかねたあたしが宣言してとりあえず黙らせます。


そして戻って来たダリアさんと理恵パイセンをちらりと見る姉。


(あー、ダリア攻めか…不発っぽい。んじゃアクスムで今度はりええ攻めな)


まぁ、つまりそういう事らしいです…。

頑張って、パイセン。


(ベラちゃんをしばける人っだれかいないのっ)


(制限命令実行権さえ頂けるなら小官が)


(今のあたしならワンチャンあるわよ。さっきの罰金話、なしにする方向なら受けたげるけど)


(うぐぐぐぐ)


(まぁ、りええ。偵察に不必要なデータは消してやるから心配すんな。ただ…アクスムじゃ邪魔が入らないようにするのと、状況監視が必要だから赤外線で見るくらいはさせてくれ。そう何回もエチオピア支部はまだしもアクスムやラリベラまで来れねぇからな)


(つまり…次のアクスムっての。そこでは必ず成功させろと…)


(黄色と黒の栄養ドリンクのボトルはあたしからの差し入れだ。頑張ってくれったのむっ)


(それより理恵ちゃんに精気注入した方がええんちゃうか…アルト! 雅美さんと交代やっ)


(かーさんそれならベラ子の方が…あ、むやみやたらに昇格しても困る例の問題か…まぁ、りええくらいならアルトでもいけるかな)


(あたくしは精気の質でもべらこへいかに)


(ああっアルトさんすねないでわかったからっ!みんな覗いたら死刑よ死刑!)


と、24時間戦えるらしい購買部のドリンクを飲み干した理恵パイセン、アルトさんを座席から引きずり出して後ろに引っぱって行きます。


「この気密ダァの開け方を覚えてしまったあたしが悲しいわ…」ガチャガチャやりながら貨物室に消えました。パイセンいわく、ダァというのはどうも品川から出ている赤い貨物電車(ハマの赤いあん畜生)と、それしか乗れない体になったプロの乗客がドアを指して言う方言らしいです。知らんけど。


「あの…だいたい想像つくんですけど…後ろでしてることっていったい…」さすがに黙っていられなくなったのか、美咲さんが隣に移った雅美さんに質問されます。


「吉村。あたしがそうなんだけどさ、痴女種って好き勝手に繁殖できないのよ。で、子作りのタイミングを指示された2人が頑張ってんの」


「それはわかりますけどなんでまたこんな時に…」


「あーもう、ややこしいなっ」


「あたしが教えてやんよ。吉村さん、ダリアは古代エチオピア王女アンドロメーダの子孫の可能性を指摘されているんだわ。で、ギリシア神話上の重要人物の子孫を残せって話が出てんのさ。だから産む子は普通の子じゃない…こないだ雅美さんが焼かれる前に出産したペルセポネーゼもそうさ。シュメール神話のエレシュキガルって神様の生まれ変わりだって思っときな」


「なんかわからないけど、普通じゃない子どもさんしか作れないんでしょうか」


「無理。痴女種で子作りは認可性でね。勝手に作った場合、子供は強制的に記憶剥奪して聖院学院送りだし、場合によっちゃ親役に厳罰を課す決まりだ」


「つまりですね、下手に産むとあたしの子どもでインマヌエル…あの中井さんの便通を一瞬で直したりできるような子とか、聖院にいるんですけどアルトさんのお子さまのサリーさんみたいな子がね」


(ベラ子陛下!サリーです!すみませんけど…あたし陛下ほど派手好きですけべいじゃないですよ!ねぇしほちゃん!)


(詳細は言いたくない。ベラ子陛下。父が目黒にいる間に差し入れついでに痴女宮に寄りますから。その時にサリーの行状、お教えします。何でしたら1ヶ月くらい私と代わって頂けませんか?)


(しほちゃん…4月からうち、毎日堤防あるわよ…いいの?)


(それはちょっと考えますね。あ、痴女宮のジーナおばさま。私、スケアクロウの機長資格ですがサリーより早く取りましたけど)


(何よあたしより一週間早いだけじゃない!)


(再試験言い渡されたからよ。で、おばさま…いかがなさいます? うちのマリア姉さんはOK出してますけど。代わりにベラちゃん来るなら承諾すると)


(よしベラ子。ちょっと聖院行ってこい)


(あほですかかーさま。4月から色々変わるのに、あたしが痴女宮にいなかったら大変でしょうが!)


「吉村。根本的な事を言うわよ。この飛行機の機長席にいるジーナちゃんを小学生の頃から知ってるんだけどさ、この子が産んだのが副操縦士席のマリアちゃん…マリアリーゼ上皇陛下。で、ジーナちゃんの後ろに座ってる天パロングパツキンの子もジーナちゃんの娘なんだけどね」


「ただ、マリアヴェッラを出産したのはあたくしルクレツィア。これだけで痴女種という生き物を理解できない人が出てくるんですわよ…」


「まぁ言いたあらへんけどな…まずマリ公を産んだんがうちのつまづきというか、色々と人生が狂った始まりやったな…」


「おいっおばはんっ待て待て待てっ」


(あのさー黒マリ。うちのほーのかーさんがものすごく同情的な目でそっちのかーさんを見てんだけど)


「おいこら白マリ…何か、地味にあたしをdisってると言うかsageてないかよ…」


(ダダ下げに下げてんのよっ)


「アルトさん。あたし思うんだけどさ。痴女皇国って今度10周年記念式典やるよね。これをできること自体が根本的に奇跡だと思うんだ」


「理恵さん。あたくしも同意見です。よくこのめんつでいままでつぶれなかったものとあらためておもうのです…」


「アルトくん…ダメ、それ思ってても言っちゃダメよ、ダメなのよ…」

雅美さんがすがるような目でアルトさんを見ますが。


「お前らなぁ…おらりええ、着いたからとりあえず行ってこい!」姉がいかりながら理恵パイセンとダリアさんを飛ばしてしまいましたが、ちゃんと地面の上に転送しなさいよ…。


「まぁ、痴女皇国がよく保ったというのはうちも同意見や…」


しーん。


ICDの駆動音はしますけど、静寂が操縦室に訪れます。


(もうちょっと保たせて欲しいんだよなぁ、僕としちゃあ。マリアリーゼ、なんのために君に色々とM-IKLA20経由で便宜を図ってるんだか。まぁ悪くはないんだけど、せめてあと…そうだね、1万年は頑張ってよ。ま、僕はそこまで生きていないと思うから別にいいんだけどね。あーそうそう。マリアリーゼ以外にはお初の方ばかりだね。(ぼか)ぁ…カウント・サンジェルマンって言うのが君たちの世界で知られた僕の名前みたいだね。ま、しがない錬金術師崩れだけどよろしく)


「おい。サンジェルミ。あんたがあたしかエマ子以外に接触すんのは協定違反だろ」


唐突に、姉の声が真剣になりました。


(はいはい、怒んないでよ。それよりそこの吉村美咲さんだっけ? 僕んとこ連れて来てもいいんだけどさ、将来を占ってあげることしかできないよ? それでいいならこの後こっちくる時一緒に連れておいでよ。何もしてあげらんないけどさ。ま、闇夜の海に灯りなしで漕ぎ出せって言われるよりは、たとえ大時化(おおしけ)で舟が沈んで死ぬの避けられないとしてもさ、その運命を知る方がずっと幸福じゃないかなぁ)

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