地獄の沙汰も金次第? 痴女宮編・1
皆様ボンジョルノ。マリアヴェッラです。
…今回の話はアルトリーネさんの方で続いていた反社作戦の続きになります。
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なるんですけど…。
ええ、主犯格の方を処罰する際に、思いもよらない方面から擁護の話が出まして。
しかも、最初は痴女皇国に送って処罰しろって言った方自身のやらかしが原因ですよ!
…はぁ、どうやって減刑しましょうか…。
「へー。これ一隻でいくらくらいするんですか」
「一兆円超え。それと、さっき格納庫の中にいたあの黒い輸送機、あれだけでも五千億円はすんのよ。とてもそうは見えないだろうけどさ…」
「小型の宇宙船みたいな使い方もできるんですよ。あれだけでNBや聖院、痴女皇国にも行けますから」
「こりゃスーパーカーとかクルーザーはもちろんだけど、アラブの石油王の飛行機どころじゃねぇな。吉崎のヤサやロールスロイスくらいじゃ全然威張れないよな…まぁ日本の面積以上の島一つ領土に抑えてんだから、こんな船の一隻くらいはお持ちってところですか」
「一応はNBからのリース品って扱いにはしてんだけど、実際には痴女皇国専用船だね。聖院にも全く同じのがいるよ」
「あとは陛下と内親王殿下だな…」
「ああ、お召し替えですか。確かにこりゃ、半端ない暑さだってのは雪子から聞いてたけど…」
えーと、我々は今、聖院港にいます。
それも痴女宮が真正面、坂道の上に見えるアークロイヤル級専用船着場です。おりしもハーミーズがテンプレス2世の反対側の埠頭に接岸しています。
「お待たせ致しました」母様に連れられて、財務局用アオザイに着替えたこうご…奥様とお嬢様が転送で我々の前に立たれます。
「申し訳ありません、マリアンローズの在庫品ですぐお出しできる衣装がこれしかなかったもので…」
「お母様、確かにここですとマリアリーゼ陛下以外の皆様があのような服装をされるのがよく分かりますわね」ないしんの…雅美さんと似たご趣味がおありという奥様のお嬢様も深く合意なさいます。
「それにしてもこのアオザイ、シルクのようですが…」奥様が生地を触られて不思議そうな顔をされていますが。
「あ、それ、我々の服と同じでしてね。父…クリス・ワーズワースと私の二人で開発した半生体素材なんですよ。下着同様に付着した汗や老廃物を吸収生分解する他、簡単な生命維持機能もありますから」
(まさかと思いますけど、たのきち仕様じゃありませんよね…)
(ばっきゃろ…さすがにそれは不敬にもほどがあるよ…ちゃんと女性賓客用の不透明仕様だ…)
なるほど、奥様もお嬢様も下着が全く透けていませんね。
「さて、ここから参道を上がってあそこまで歩いて頂く訳には…お、来た来た」姉が正面に手を振っています。
見れば、馬に乗った慶次郎さんと捨丸さんに続いて20人ほどの白薔薇騎士がこちらに。
それと在留学生の方用のとね服姿のゆっきーが。
「おお、大将殿、こちらがお后様と姫様であるか。失礼、それがしは馬丁にございます。ささ、お乗りを」
「慶次郎さん…ちゃんと名乗ろうよ…陛下、こちら加賀前田家今津化粧料奉行にして奥州米沢藩上杉家武芸指南役の前田慶次郎利益様。こちらのお供は慶次郎殿の従者頭の捨丸殿です。ま、内親王殿下には慶次郎さんと捨丸さんの実物ですって申し上げた方が早いですよね」と、姉が慶次郎さんと捨丸さんを奥様とお嬢様にご紹介。
「まぁまぁ、あの傾奇者の…さすがにここの気候ですと、派手なお姿では厳しいようですね」
「暑うございますからな。しかし、やんごとなきお方をわしが馬にお乗せするにはちと不敬。いかがしたものか」
「あたしがやるよ。陛下、松風は手綱をつけない方針らしいので、横座りに鞍にお座り頂いて…鞍の前の端に掴み手になる反りをつけておりますのでこちらにお手を」
「あ、乗馬は経験がございますから普通に跨がれますわよ。もっとも、こんな立派なお馬にはなかなか乗せて頂けませんが」姉が奥様の体を浮かせて鞍に載せられると、ひょいと自ら跨られます。お言葉通り、かなり慣れておられますね。さすが皇族。
「内親王殿下は野風にお跨り下さい」お嬢様も姉が野風に乗せてしまわれます。
(前田慶次って本当にいたのかよ…)
(吉崎さん、前田慶次郎様は実在の人物ですよ。それと慶次郎さんと捨丸さんたちはうちの姉と傭兵の契約を結んでおられますが、痴女皇国内でも日本の武士の身分や流儀をある程度保証しています。不用意な発言をして斬り捨てられないようにご注意ください。腰の刀、本物ですからね…)
(は、はい…)さすがに実際の痴女皇国に連れて来られてはジタバタできないと悟ったようですね。
「あ、わたくしこの宇賀神邦彦の長女で宇賀神雪子と申します。こちらでは学業かたがた広報局の見習いをさせて頂いております。…ベラちゃん、月間痴女宮の取材なんだけどさ、陛下のお写真頂くわけにいかないかな…」
「陛下、わたしくしどもの女官向けの月次内部広報誌の取材でして…痴女皇国や関係者以外には出さない映像となりますが、殿下ともどもご乗馬のお姿、頂いてよろしいでしょうか」と、ゆっきーのお願いを陛下にお伝えします。
「まぁ、お気になさらずどうぞ。私どもの来訪で日本国に親近感を持って頂けるのでしたら協力させて頂きますわ」というわけでゆっきーに奥様とお嬢様の乗馬姿を撮影してもらいます。傍には慶次郎さんと捨丸さんもいる状態で。
「んじゃアルト、先導してくれ」姉が将軍装備に着替えたアルトさんに頼むと、警務部から派遣されてきた騎士の方が前後各10名、二列縦隊で整列してくれます。しんがりはダリアさんが騎士団長制服姿で務めることに。
で、やんごとないお二方を馬にお乗せして、我々は徒歩で痴女宮を目指します。
「いやしかし、妹姫様にお目にかかるのも久々な気がするのう」松風の横に並んで歩く慶次郎さんから聞かれますが。
「最近は日の本で色々ありまして…」と、罪環機能で自分の意志で身体が動かせないように拘束している吉崎さんをちらり。既にメディアウォッチは取り上げて、代わりにうちの罪人仕様の聖環と罪環を装着しています。
「なるほど…女衒のみならず人買い人売りか。こりゃ、そこの紅毛な日の本の御仁。よりによって大将殿や妹姫様の身内によろしくない事を企てるとは不敬千万であるぞ。今は自由に身体を動かせんであろうから何も致さぬが、わしや捨丸の手を煩わさせるような事、頼むからせんでくれよ」と振り向いて吉崎さんを脅されます。
どうも偏った知識とは思いますが、漫画で書かれたように慶次郎さんや捨丸さんが強いという認識は持ってくれたらしく、かくかく頷こうとしていますね。
「しかし妹姫様、この道の往来も増えたものよのう」
「姉がいらん事を、いえ農閑期で比較的気候が厳しい土地の農夫の方などに便宜を図るお触れを出しましたでしょう。身体を壊したり病に臥せらないよう予防するためでもあるからと聖母教会経由で参詣者を募ってるんですよ」
「罪人衆も増えておるしな。ま、景気が良いのはよき事じゃ。秀忠殿下も江戸が毎日変わると目を丸くして喜んでおられるそうじゃしな。えまにえる殿には御礼のしようがないと恐縮しておられた件、よろしくお伝えしてくれ」確かに一般の参詣者の方々とうちの罪人、すぐ見分けがつきますからねぇ…。
「そうだ宇賀神さん宇賀神さん、うちの国初めてでしょ。まずあたしらが登ってる坂道の上の正面にあるのが痴女宮…昔の聖院本宮ね」姉が真正面の石造りの黒いビルを指差しています。ま、あたしたちにはお馴染みの光景ですけど。
「ああ、あの馬鹿でかい黒御影石っぽい外壁のビルですよね。あれは報道資料で見たことあります。けど…両脇の同じようなのは当時はありませんでしたね」
「陛下と内親王様には若様経由で最新情報渡してますけど、とりあえず初訪問の皆様に解説しておこうか。まず左側の車寄せの先に作ったのが修学宮。今度聖院学院って名前に変わるけど、孤児院を兼ねた小学校から中学までの福祉部門と、高校から大学以上の高度教育を担ってる教育部門の合同施設ね。後ろにある寮に入ってる児童や学生だけで目下二千名超え。教務や福祉の担当女官百名以上で回してるから」
「その学校とやらだけでタワマン4本分くらいのでかさですね…」
「運動についてはダムの上から左側通ってる道の先に運動場作ってるから。あと日本の学校みたいなプールが屋上にあるよ。ただ、右側2本目の罪人寮…刑務所みたいなもの同様に、暑い昼間や夕方のスコールを避けるために現在は6時から12時までのスケジュール組んでるんだ。昼からはクラブ活動みたいな運動や学習とか、慶次郎さんたちの別荘のある牧場で家畜の世話やら乗馬の練習とか色々。罪人寮や女官寮…本宮のすぐ隣にある建物で罪人や女官のお手伝いをする社会実習もさせてるから」
「学校教育は日本並みの水準なんですか…そういや、ここの罪人ってんですか。服役囚って割と自由らしいですね」
「後ろの吉崎くんの首にはめてる輪っかあるでしょ。あれで管理してるしね。それにさ…陛下や内親王殿下にはあまりお聞かせしたくないんだけどさー」
「車馬課特務係長からお聞きしていますよ、それはもう、まじめに働くならば男性であれば極楽のような生活だと。ほほほ」
奥様が忍び笑いをされておりますが、若様、どこまでお伝えしてるんですか!
「わたくしも伺いましたが、あの本宮向かって左側の方から入って行かれる中で、ふんどしだけのお姿で銀色や銅色の首輪の方が罪人と言われる皆様でございますね?」お嬢様からはさすがに無難な質問が。
「ええ、内親王殿下はもう大学へお進みでしょうからお教えしても大丈夫とは思いますが…あと、左手の森の向こうの旅館めいた建物、あれは聖院としての本来の扱いが不要と要望する男性向けの、ずばり申しますと風俗店同等の営業内容の旅館ですよ」これはあたしが教えておきましょう。
「参拝の方のお泊まりはありませんの?」
「えーと、たいていの場合、治療には1時間もかからないんですよ。ですから普通は終わったらそのままお帰りになります。ただ、あの風俗旅館の更に向こう…地下鉄の市場街駅から5分は歩きますけど、長期滞在の労働者や商人向けのお宿を兼ねた宿坊街ですよ」
で、奥様やお嬢様が地下鉄の件で驚かない理由なんですけどね、実は若様経由で月間痴女宮、読まれておいでです。
これには地下鉄計画や南欧並びに比丘尼国の鉄道・道路建設ですとか比丘尼国への簡易聖環普及事業なども掲載されています。
で、NBはもとより連邦世界の関係者には月々聖院と一緒に電子配信していたりしますので、これをちゃんと読んでいればうちの国や聖院の最新情報はある程度把握できるのですよ。
「痴女皇国がバチカン市国のような都市国家と以前に説明を受けましたが、実際には都市部だけでもモナコくらいは充分にありそうですわね」
「右手に工場群作っちゃいましたからね。あ、さっきまだ港にいる時にサイレン鳴ったでしょ。あれ午前中の業務が終わったよって意味なんですよ。二交代制なら朝番は3時半から11時半、または3時から11時って具合で…あの連中…食事後回しにして登院した罪人だな、あいつら…風呂がわりに使ってるな…」
(えええええ?刑務所なのにフーゾク行けるって…)
「吉崎さん、勤勉で仲間との関係も円満な罪人には月に何度かは遊べるだけの報奨金を支給しているのですよ。ま、行かなくても女官が奉仕しますけど、あれは短時間ですませますからねぇ、生体エネルギー吸収作業」
「智秋君が極楽という訳ですわねぇ。連邦世界のインドネシアやニューギニア界隈でも夜中から午前中に起きて働く生活習慣があるとはお聞きしましたし、理には叶っている印象ですわね」
「あれだけの建物、全て工場ですか…」
宇賀神さんが絶句していますが、海に向かってなだらかな坂状になっている女官寮のすぐ先から、埠頭近辺までの更地、今は2/3が工場群に転用されました。
その棟数、20以上。
姉によると横倒しにしたたはらくらいはあるそうです。
「罪人寮や女官寮に近い区域が綿花紡績や製糖、製粉に小規模木工所や金属加工所。遠いところがセルロースパネルだのコンクリートブロックだのガラスだの作る重作業工場です。あの送電線が近かったり高炉そのものがあるのがアルミ精錬や製鉄工場ですね」
「ではあの港と建物は…帆船がご、ろく、…十隻は停まっているようですけど」
「内親王殿下、あそこからは比丘尼国向けの加工品または一次加工原料を出荷しているのがまず第一。ついで綿製品や熱帯での生産に適した砂糖やコーヒー、香辛料に熱帯産木材加工原料などを欧州向けに積み出しています。逆にキューバで生産したマンチニール加工材や現地産品がこちらへも送られて来ますけどね」
「あの帆船…お尻から水を噴いてますね。あれが噂の信じられない速さの船ってやつですか」宇賀神さんが指差している先には…。
「えーと、ありゃオセアン型貨物船だな。フランスの提供してくれたオセアン級戦列艦の資料を参考にしたプロトタイプ貨物船だよ。あれ、一番目と二番目のマストの間空いてるの、宇賀神さんの目で見えるかな…。ちょうどあの辺にクレーン積みするための船倉扉を作るのに都合よくてね」
「あれの水密構造材、リグナムバイタでしたよね、ねーさん」
「バハマでリグナムバイタを大規模に植林する目処が立ったからな。キューバ産のマンチニールほど船体構造材としてあちこちには使えねぇけど…うちらの世界でスクリュー推進船を作るのはかなり先になるだろうけど、水流ジェット推進器の支持構造材とかに使ってるよ」
「なるほど、スクリューじゃなくてジェット推進…それで船尾から水噴いてんのか。あれでどれくらいのスピード出るんです?」
「カティサーク未満サンティシマ以上。船体設計がいいんで航行抵抗がサンティシマよりはるかに少なくなってるんだ。で、3万馬力四発で時速100キロ超え、常用巡航速度30ノット…だいたい60キロだな」
「かー…現代の水上艦船に比べて引けは取らねぇなぁ」
「ただ、基本は木造だからあれ以上でかくするの難しいんだよな。半鋼製船は既にイギリスで建造させてるけど、ノウハウが整うまではスペインにオセアン型をキューバで生産させて貨物船として数揃えさせるつもりだから」
「しかしマリアさん、あえて聞きますがね、何でそこまでしてるのに大規模な機械化や工業化を進めないんですか? あの水流ジェットエンジンの方が蒸気機関はもちろん、内燃機関よりはるかにオーバーテクノロジーでしょう。今、モーターボートみたいな加速で海に出ていってますけど」
「これも聖院当時に、主に連邦政府関係国向けの記者会見開いてプレスリリース出した通りなんだ。連邦世界の歴史からすると金銀やレアメタルに希有元素類はまだしも…石油もさりながら石炭の埋蔵量がね、かなり少ないんだ。そんな状況で蒸気機関はもとより、製鉄のために石炭ばかすか燃やせないんだよ…製鉄、特に鋼材精錬はコークスを大量に使うからね」
「それで木材を樹脂浸透硬化させたり、あの生体エネルギーエンジンを使うのか…おい吉崎、お前はよく聞いとけよ。俺の頭でもわかるけどな、こっちの世界は単に文明が進んでないんじゃないんだ。マリアさん達が意図的に文明の発展や開発をコントロールしてるんだよ。ちゃんと人間が衛生的な暮らしができるように考えてくれてるからな? ま…俺もマスコミの端くれだから聖院のプレスリリースは拝見したし、身内に実習学生がいて教えてくれるから理解してる面もあるんだけどな」
「たださぁ宇賀神さん、あたしらも頭痛いんだけど、お酒がねぇ…熱帯地域だからこればかりは難しいんだ。地底遊水池の空間に空調入れて醸造はできなくはないけど、生体エネルギー使うからね」
「せやからうちから酒渡しとるんやないか、こめのめしも食いたいやろがあっまりやっ」後ろからうるさい人の声が…。
「おかみ様。それは有難いのですが…阿波内侍さんから伝言がございまして」と、あたしは追いかけてきたおかみ様に近寄ります。
すぱこーん。
「いたいやないか!」
「内侍さんのお部屋の樽酒、弁償はあたしのお財布からなんですよ!」
「あー、お神酒をまた盗み飲みしてたんかい…」
「しかし、いくら泥棒をしたとは言え、伊勢神宮の神様を殴っていいんですかい…」
「宇賀神殿とやら。神様といえど人様の酒を盗み飲むのはいささかよろしくなかろう。これはわしも妹姫様の肩を持たざるを得ぬ。ですからおかみ様、一夢庵にお越し頂きますると酒の一杯や二杯」
「けいじろう。おまえとこでのんだらおまつや加奈がうるさいんじゃ…ときこに至っては飲んだ盃の数をかんじょうしよるんや…あとおまえらの時のさけ、うすいやろ」
「あー、安土桃山以前から江戸時代はビール並みのアルコール度数のあれか…」
「しかしそれにしても阿波内侍さんちの賀茂鶴かぱかぱ開けるのは許しません! 現代日本のお酒ならお金出してくれたらあたしが買ってくるからって言ってるじゃないですか! …陛下。ご先祖様にお手を挙げて申し訳ありませんが、そうせざるを得ない一面がございます。ちなみに比丘尼国朝廷よりおかみ様滞在経費名目の迷惑料を頂いております上にですね、我々からも幹部給与名目の滞在補助費を日本円にして年間二千万円程度ですがお渡ししております。ただ…地下の酒呑童子さん…外道丸設備部長が比丘尼国や我々からの支給費用管理もしておられまして、無駄づかいを防いでおりますが」
「せやから淋の森でかせがなあかんねや!」
「うちの女官に回るお客様取りすぎないようにお願いしてるでしょうが…それ以前に、私どもがお貸ししている義体を売春に使われるのは…」
「わわわべらこばらすな!」
「ご自身でバラしたんじゃないですか…子孫に連なる皇室の方々のためにも風評に直結する行為は控えましょうよ…確かにうちの国、売春は合法ですし、登録して売春税兼保険料さえ納めて頂いたら文句は言いませんけど…」
「相変わらずやってたのか、売春…」姉がかろうじて声を絞り出しています。
ええ、他の全員…隊列を組んでいる騎士さんまでが絶句するか、笑いをこらえるのに必死ですよ。
「淋の森で立ってる許可者の月次収入実績、財務局から定期報告が入るの、ねーさん知ってるじゃないですか。あたし連邦世界じゃ成人扱い特例だけど高校一年生ですよ!いくら皇帝って言っても…更に偉い方でも親戚のおばちゃんが立ちんぼ売春しておこづかい稼いでる収入状況、電子書類で毎月よこされる立場になってくださいよ…あ、陛下。殿下。神宮神事の円滑化のためにも今の話は聞かれなかった方向でお願いいたしますっ!」
「確かに、日本国が間接的にご迷惑をおかけしている話に…」
「お母様、祭主様か大宮司様に事情をお話しして、神宮奉納品のお酒を融通して差し上げます方が…または皇室への献上品でもよろしいかと」
ええ、日本一人間が出来ているご一族様です。
口には出しませんが立ちんぼとかやめてくれと顔に出ています。
「アルトさん、ダリアさん。すみませんが隊列そのままでお聞きください。流石に日本の皇室の風評に関わりますので、今後淋の森でおかみ様を見かけたら即座に捕縛してあたしかジーナ母様のところに連行願います…陛下、これでよろしいでしょうか…何せ一応は日本神道八百萬神種族最高位のお方なので、本気を出されたらうちのアルトリーゼ将軍とダリアリーゼ騎士団長二人がかりでないと押さえきれないんです…」
「確かに日本国の最高位祭祀神格にあたる方が俗世降臨状態とは申せ、示しがつきませんわね…」
「日本国と比丘尼国との長年にわたる接触制限、これも理由でございますか…マリアヴェッラ陛下…」
内親王殿下の悲痛な問いかけに対し、あたしは黙ってうなずきました。
ええ、あたしの祖父や叔父やルクレツィア母様も大概でしたが、あちらは純粋な人間です。
それも俗人を極めたような人物の見本です。
まかり間違っても尊い日本皇室の方々と比べるべきではありません。
「マリアヴェッラ陛下。申し訳ありませんが、本件につきましては国家機密の方向で…あ!月間痴女宮で盗み飲み処罰の記事が…」
「はい。懲罰器具出庫は月報掲載事例なんです…お馬鹿さんをしばいた事例として皆の反面教師にする必要がありまして、掲載せざるを得ないのです…いえ、実際のところ掲載もしたくないし、私もあれ…黒グッズを使いたくないのです! 吉崎さん。ちなみに話に出た懲罰器具というもの、普通の人間であるあなたに使用すれば10秒かからずに死ぬ危険物ですからね…口外なさらないようにお願いしますよ?」あたしも流石にこれは吉崎さんを脅さざるを得ません。
実際に黒グッズを使うとどうなるか記憶を見せると、もはやただでも核兵器以上に危険な痴女種の最上位たるあたしがどうなるかを速やかに理解してくれたようです。
(わわわわかりました誰にも話しません忘れますっ)
(ここだけの話ですがあなたへの処罰は記憶を抹消の上、労働罪人化の声多数、しかし、皇帝権限で妹たちなどから寄せられている厳罰要望を封殺して情状酌量した減刑措置を追って伝えます。その代わり…わかってますね!)
(はははははいっ!)
(宇賀神さん…ねーさんにアルトさんダリアさん。日本国皇室の名誉のためにもあえて皇帝権限を濫用します。ご了承願います…)
(まぁ、仕方がないですね…というより、痴女皇国の方は悪くないでしょ…)
(妹姫様の沙汰は仕方ありませんな。吉崎とやら、命拾いしたのう…)
(言っとくけど妹姫様、とんでもなくお強いからな…よしざきさん、だっけ…まりあべら様には金輪際逆らうなよ…命が惜しいなら沙汰には従っとけ…)
(北欧のいけにえ村作戦ですか、あの映像、わたくし達も拝見しましたからね…)
(人間の動きじゃないのは私も拝見させていただきました…吉崎さん、本気のマリアヴェッラ陛下を一言で申しますと超野菜人です。おわかりですね…)
(まぁこの場合のベラ子の裁定にあたしも文句はねぇ。おかみ様…頼むから淋の森に立つのと内侍さんの私物のお酒を狙うのはやめておいてあげてくださいよ…ベラ子が怒るとあたしでもなだめるの、苦労するんですからね…吉崎くん、いいか。あたしには少々悪態ついたり恨んだりしてもいい。だがベラ子のマジ怒りの時は絶対逆らうなよ…痴女皇国では限られた死刑決裁権限持ちだからな…皇帝だし…)
(ははははははいっ!)
まぁ、吉崎さんにはいい脅しになったと思いましょう。
それと皇室の方々に泣きつかれたからと言って、おかみ様への処罰を緩めると世のため人のためになりません。たった今、それを思い知りました。
しかしながら痴女皇国での処罰を望まれたおかみ様の犯罪が明るみに出てしまった今、我々と言えど理不尽に厳しく吉崎さんを処罰するのも、これまた後味が悪い話です。
…しかし、吉崎さんへの処分、どういう風にしようか。
あたしはため息をつきました。このストレス発散、かーさま o たのきちで。
(アホかベラ子!それこそ八つ当たりやないか!)
(ベラちゃん…マジにやったらあたしこそ黒グッズ出庫してもらうからね!)
うるさいっ。
…たまにはあたしも八つ当たりさせてください!