痴女宮ふゆやすみ・りえちゃん米沢へ行く 3
「だからジーナさんもちゃんとしたドレス着こなせるんですから、旦那さんのためにもサービスした方が絶対喜ばれますって…」痴女皇国ピンクのものすっごい大胆なネイキッドドレス寸前のパーティドレスを嫌そうに着ているエロおばちゃんですが、写真撮って見せてあげます。
ぶっちゃけ下に着ているレーシーなパンツがはっきり分かる代物です。
「ねぇクリスさん、あたしより遥かにこういうの似合うと思いますよねっ」本当に悔しいからおっさんの痴漢のようにケツを触っておきます。あたしに触られてきゃーとかギャーとか声を上げない辺りがジーナさんらしいんですけどね。
ただ、お返しにあたしのまな板から多少はマシになった乳をいじられましたが…このすけべいBBAっ。
「まぁ…理恵さんは理恵さんで悪くはないのですが、ほら、うちの妻の身長が皆さんからしても飛び抜けてる部類ですし…」と、あたしが万一の際の何かを懸念して持って来ていた無難そうなフォーマルパーティドレスを褒めるクリスさん。
本当はバルーンスカートの奴にしようかと思ったのですが、関係者しか乗ってないのに気合い入れすぎても仕方ないので、中庸と平凡を狙いました。
ただ、ダリアにはそれなりに気合いを入れてもらっています。ぶっちゃけホストを連れた風俗嬢状態です、我々。
で、ダリアの姿。
スポーツクラブのお姉さんっぽい姿に近いですがエナメルピンクのレギパン…ただ、足首のところに花びら風の飾りがついてます…そして同系統のスポブラ風トップス。で、シースルー素材のジャケットを羽織り足元はサンダルです。
そして恐ろしい事に、ゆっくりとした速度でセパレート上下の透明度が変化しているのです。
つまりぃ、見続けてたら乳首はもちろん、レギンスの中のパンツが丸見え丸わかりになるんですよ…。
更にはブレスレットにネックレスにとあちこちに装着したシルバーのアクセサリー。
ちなみにこれ、四季◯にまりりと乗り込んでるアルトさんともお揃いでして、アルトさんの方はホワイト系統でアクセサリーはゴールド。
この姉妹風のコーディネート、男役として見られる二人だけに、それぞれの食堂車で同じ時間に割り振られた他の方々からうっはぁと羨望のまなざしが。和服姿にしたうちの父や母もダリアの男前な姿に唖然としてましたから。
ただねぇ。
まりり。
あんたが受けを狙ってんのはわかるけどさ。
蟹衣装で食堂車ってどうよ。
確かに四季◯の食堂車って瑞◯のダイナープレヤデスより明るくカジュアルよ。
だけどいくら何でも蟹って…。
(いいじゃねぇかよ…)
(いくら何でもアルトさんと釣り合い取れなさすぎよ。今すぐ着替えないならエマちゃんに頼んで擬態強制解除してもらうわよっ。ベラちゃん…まりりが着替えないならベラちゃんの持ちドレス貸してあげてよ)
(確かに理恵さんが言う通りであんまりすぎます。たのきちのスーツ姿は認めても姉のあれは許し難いという意見にあたしも賛成です。ねーさん、痴女皇国制式ドレスでいいから、はよ着替えましょうよ…)
で、そのベラちゃんですが…某ベラ・◯ディッドがカンヌで着た姿並みの強烈なスリットとカッティングのドレスです。
色は…イタリアントリコロールの赤白緑の順番で上から下にイルミネーションのようにゆっくり変わって行く代物ですよ。◯季島側の食堂車の中をアルトさん視点で見せてもらいましたが、叶◯香かあんたはと言いたくなるゴージャスさです。
ああ、何というイタリアーンな姿。
そして瑞風側にいるフランス組三人。
赤基調のセパレート…スカートは激ミニに、ネイキッドローブを組み合わせたジョスリーヌさんと、同じスタイルですが白色のマリー、そしてうちのダリア同様にハーフなので日焼け系の肌に映えるブルーのダリア。かっけぇ。
ちなみにエマちゃんもドカ◯スタイルから着替えていて、痴女皇国エマちゃんは女官服風のピンク色Tバックレオタードにお尻側から左右サイドに回り込むオーガンジーのスカートテール装備。
同じデザインで白色にしたものを聖院側のマリアちゃんとアルトさんとエマちゃんが着ているそうです。聖院組は基本これですが…。
(なぁ。痴女宮マリア。痴女宮のうちより更にえぐい姿になる必要あるんか)聖院のジーナさんが心話でまりりに文句言ってます。
で、その姿。
ネグリジェ風シースルーロングドレス、ノースリーブですよ。
それはまだ良しとしましょう。
下に着るもの次第ではまだマシですよね。
天の声氏の評価であたしの感想を代弁しましょう。
白色の放課後電◯磁◯波クラブ。
つまりスリングショット水着です。
それも、少し動けば乳首が見えかねない凶悪物件。
(理恵ちゃん。これ、胸のところの布の裏地が吸盤まがいの半生体素材になっとってな、乳首に食らい付いて固定しとんねん。しかも下、ヘアパンやで。…おい痴女皇国うち。後日でええからあいつ聖院に来させるか、そっち行くから堤防に呼んでかめへんか)
(聖院うち。あんたが言いたい事はわかる。せめて二人の服を変えていたらまだマシやった。こうやろ)
(うん。出来れば今すぐにでもわしらの衣装チェンジして欲しいねんけどな)
(かーさん。あたしら例の番組の服の全白バージョンなんだけど)
(ジーナおばさま。しかもあたくしもマリアンヌも下着なしですわよ…。おばさまにこそこのような服をですわね!)
(マリアちゃん。とりあえず服に不満がある全員、後日痴女宮に集めて堤防で不満聴聞会開いた方がいいと思うわよ)
(雅美さん…なんだよその糾弾会…)
(あたしと初代様はまだ自前のフォーマルドレスにしたけどさ、乳上もメーテヒルデさんも頭抱えてたわよ。ピンクと白の牛柄ハイカットネイキッドドレスって何の嫌味かって)
とまぁ、全員の服装の品評会と苦情相談会をしていたらキリがありませんからこの程度にとどめておきますが、とりあえず1名以外は全員フォーマルな感じを目指していた。こうしておきましょう。
ちなみに一夢庵組は四季◯のお部屋で和風懐石膳の配膳を受けておられますよ。
「しかし富山を過ぎてから結構雪が目立ちますよね…」
「この調子じゃ新潟県の雪が気になるわね…父さん、東さんの新潟支社の特雪の稼働、あちこちで必要になると思うけど大丈夫かしら」
「まぁ大丈夫だろ。69のオプションのラッセルヘッド、一応新津には用意してもらってるけどな」
「了解。最悪、装着して走る事になるかもしんないわね。まりり、920号機あるじゃん。試作2号機。あれ確か今回の試験で本務機の919号機の調子が悪い場合の予備機扱いで新津駅に待機してるはずだから、最悪あれを除雪車装備で動かしてもらうわよ。そんときは精気充填頼むわね」
「まぁ、天候情報は気をつけとく。最悪、鉄扇公女のアレを使うか、各員を女官モードで駆り出したら除雪はすぐだからな」痴女皇国制式ドレス姿を嫌そうにしながらナイフとフォークを使うまりりですが、流石にあたしの雪への懸念は真面目に聞く気があったようです。
(なんせ北陸から新潟秋田って豪雪来たらしょっちゅう何か閉じ込められるからね、あたしの心配もわかってよ? 今年はサンパチ豪雪並みとか言われてるからね…)
ああ、食事中に何気なく交わしたこの天候の話、真剣にフラグになるとは思いもよりませんでした。
食事第一班は富山から給仕スタートで直江津の先くらいでデザートでしたし、北陸界隈をご存知の方ならお分かりかと思いますが、親不知付近は山の中に掘られた長いトンネルの連続、ほぼ外界を見ずに糸魚川から直江津に抜けてしまいますから。
そして直江津から長岡と列車は走り、停車した駅。
夕闇迫る雪景色をバックに、封鎖されたホームに停車している2本の豪華列車の姿がその駅にありました。
その前に立ち、関係者と打ち合わせ中のわたくし室見理恵と相方のダリア、そして痴女皇国の国土局土木部長のエマちゃんことエマニエル皇配騎士。
で、この駅がどこかと申しますと、新潟県の新潟市から少し南下した場所にある新津駅の2・3番線プラットホームです。
この駅は信越本線長岡・新潟方向と羽越本線村上・仁賀保・秋田方面。そして磐越西線会津若松方面への合計4つの路線が合流する要所です。
父によりますとここの運輸区、はるか昔の国鉄時代から存在した新津機関区の末裔だそうでして、かなり整理されたとは言え未だに何本もの線路が敷かれた広大な敷地は、かつては蒸気機関車や電気機関車の基地だった名残りであるとの事です。
ですので、今から行う瑞◯への機関車連結や瑞◯と四季◯双方の走行データ測定機器の設置準備をするための空きホームの手配や係員さんの待機にはうってつけだったみたいですね。
で、さすがにかつての現金輸送用車両並みの機密保持体制での運転が効いたせいか、事前の運転情報を得て待ち構えている撮り鉄さんはいませんでしたが、線路を挟んだ反対側のホームで電車を待ち合わせている方がメディアウォッチやら板電話を向けそうになり、待機していた警備員の方に注意を受けていたり。
(注目度高い列車だし、まぁ仕方ないわね…)
(新津駅ではカメラ誤作動に留めていますよ。ご安心を)
(撮影しても構いませんけど、宙兵隊関係の軍事行動している人が乗客に含まれているらしいので妨害装置が作動しているようです。下手にカメラ類を向けない方がいいみたいですよって言ってくれてますね)
(OKOK。そんな感じのソフトな対応してくれていたらいいわよね。現場の警備員さんにいくら文句言っても通じないんだし、引き下がるか横田か嘉手納に苦情言うしかないんだから)
そして我々が見守る中、緑の列車の前方から、紅殻色と言われた濃いオレンジの車体の凸型機関車が白色の前照灯を光らせて接近してきます。
車体前方のデッキにはヘルメット姿の係員さんが連結作業に備えて待機中。
カンテラを振る緑の列車前方の係員さんの手前5mくらいと1mくらいで機関車は都度停止。
「やわやわ〜、やわやわ〜」鉄道関係者お馴染みの掛け声が響く中、再度ゆっくり動き出した機関車側の連結器が瑞◯の前方に突き出た連結器にがちゃ、と音を立てて組み合わさります。
続いてホームに降りた係員氏が連結を確認。
「瑞○の先頭って自連じゃなかったっけ…」傍で連結の光景を記録するためにカメラを回している父に聞いてみます。あ、業務での撮影だから祟られませんよっ。
「甲種(回送)の時だけだろ。吹田で組成した際に先頭も密連に交換してる筈だぞ」
「BEの方に双頭連結器付けといてよかったわよ。ま、空気管までは別配管しなくても大丈夫よね」
「今、貫通ブレーキ試験をするから聞いておこう。それより充電、頼むぞ」
「はいはい。じゃ、乗り込ませてもらうわよ。エマちゃーん、ダリアー」
で、機関車中央にある運転室の扉を開けてもらい、車内に入ります。
この機関車、原型となったDD51の842号機と瓜二つに近い外観をしていますが、実は全く同じではありません。原型機は貨物列車専用に製造されたグループなので暖房用蒸気発生装置を搭載していないのです。
このため、客車に送り込むための暖房用水蒸気発生器…乱暴に言いますと湯沸かしボイラーを積んだ生産グループより車重が6トンほど軽いのに見合った小変更がなされています。
具体的には運転室真下にある小さな台車と、それを支えているエアサスペンションが小型化されているのです。そして空転を防いだり発進時に車高を下げて引っ張る力を高める機械式のエアサス調整装置も、車体が軽くなっているのを見越したものにされています。
しかし、痴女皇国仕様ではここに生体発電機を積み込むので重くなります。
そこで台車や空気バネや応荷重調整装置はボイラーを積んだ生産グループと同じものを基本にして重い車重に戻った状態に対応するよう再変更されています。
なお、米坂線区間では原型機DD51が装備する機構通りに作動する軸重可変機能を使用して、新津から坂町までの羽越本線と、ローカル線規格の線路での挙動の違いも調べる予定です。
さて、このBE69という機関車。
生体発電装置を積むが故にBio Electricだろうとご想像された方、正しいです。
ただ…あたしがまりりに文句を言いましたが、実は国鉄時代から続く機関車の命名規則からすると正しくない名前なのですよ。
例えばこの新津から出ているSL列車を牽引する蒸気機関車C57の180号機ですが、ABCで数えていくとCは三番目ですよね。
そしてC57にいっぱい付いてる車輪のうち、蒸気機関に繋がって回る駆動車輪、つまり動輪は左右合計6枚。繋がっている車軸の数は3本です。つまり、C=駆動軸が3本ある動力車って意味です。
で、BE69の原型というか擬装車体の元になったDD51ですが、運転室を挟んで前後にエンジンを積んだ凸型機関車です。
そして車輪の数は左右合計12枚、軸は6本です。
ただ、エンジンから変速機を介して動力を伝達される車軸は前後合わせて4本。さっきのABCDの理屈で言うとD型になります。そして動力になるエンジンはDieselなので、ディーゼルエンジンで軸配置4軸駆動の機関車=DDという意味になっているんですよ。
ですのでモーターで駆動する車軸が4軸あるBE69、その卑猥な数字はともかく前の英記号はBDと命名すべきだったのです。
まりり、量産機は絶対この規則で名前変えるからね。ついでにこのわいせつな数字も改番するからね。
さて、この機関車は普通、原型機DD51ならば車体下部に装備された燃料タンクがある位置に積まれた全固体電池の電力で走ります。
ただしその電池の電力だけでは数十キロくらいしか走れません。
ですので先ほど申しました運転室の生体発電機…原型機に積まれたSG、つまり暖房蒸気発生装置に擬装した外観のそれが車載バッテリー、ひいては走行用モーターに電力を供給する役目を担います。
で、この生体発電装置ですが…痴女皇国世界の頭がおかしい速度で走る帆船シリーズがありますよね。
あれの半生体動力水流ジェットエンジンに使っている代物の出力を落としているだけの実質同等品でして、鉄道車両用については1時間定格発電量が毎時4千キロワットとなるよう設定しています。
ですが、元来はサンティシマ型やカティサーク型を時速100キロ以上で走らせる一台3〜4万馬力のヘリカル水流ジェットエンジンを駆動するだけの電力を供給できる代物です。
その1時間定格発電出力、毎時4万キロワット。
これがこの生体発電装置の元来の出力です。
ただ、サンティシマ型やカティサーク型に4台積まれたこの装置の定格出力を保つと、現状では雅美さんが燃料タンク役でも1日が限界です。
(だから何であたしがそこで精気タンク容量の物差しにされるのよ!)
おだまり元祖エロババァっ。
で、痴女皇国世界に持ち込んだ暁には比丘尼国の巫女さんが精気を充填供給してくれる予定ですが、連邦世界で試験している間は生体発電機を止めて電源車を連結して走らせています。
…ま、停止中でも乗り込んだ人や周りの大気中から地面に至るまで、微生物を含めた生物全般から少しずつ精気を吸い上げて貯めてるんですけどねっ。
とりあえず充電…ええ。この精気充填方法についても悶着がありました。
有り体に申しますと、オ◯ホまたは電動こ◯しまがいの精気供給プラグを本体に装備して、痴女種がそれを使うという方法がまりりと雅美さんの案でした。
しかし、それはあんまりにもベタ過ぎる方法な上に、精気を充填する方には精神的にも苦行でしょう。実際にそれを試作して、言い出しっぺの二人に使わせましたが。
(わかったりええ。非接触充填回路にしよう…)
(最悪な絵図だからこそ理恵ちゃんにやらせたかったのに!)
まりりはまだしも雅美さんの叫びは完全黙殺します。そして痴女種が手を当てるだけで充填されるか、乗り組んで心話めいたやり取りをして精気充填回路を構築すれば良いようにエマちゃんが改良。
今は痴女皇国で練習帆船になっているエルトゥールル号、雅美さんが乗り組むだけで精気供給されていましたが、あれはこの改良型生体発電機が装備されていたからこそエロ行為なしに精気供給が可能だったんですよ。雅美さんが乗船した時用に残しておけばよかったですね、TEN*A。
(ぐうっ、今は身重に見えないけど身重だから理恵ちゃんをしばけないのが辛いわっ)
(わかりましたから初代様と二人で大人しくご飯食べといてくださいっ。あと年末にはちゃんと成仏してくださいよ。命日には花輪お供えしてあげますからねっ、何とか玉入れ屋さんの新装開店祝いに飾られてるようなやつ。あ、岡山とか広島にあった花電車みたいな装飾を寝台にしてあげるのもいいな…)
(復活の暁には覚えてなさいよ…宇賀神さんと二人まとめて堤防の露にしてあげるわっ)
(なんであたしまで巻き添えにされるんですかっ冤罪ですよっ)
(ふふふふふ雅美さん、我が陣営にはダリアに加えてジョスリーヌさんもいるのをお忘れですね? 黒薔薇全員で復活祝賀会開きましょうか?)
(理恵さん…そんな大人気ない理由で黒薔薇動かさないで下さいよ…確かにうちの連中全員とも穴姉妹竿姉妹になってるのは知ってますけど…)
(ふっ、何を隠そう紫もあたしと穴姉妹竿姉妹じゃないのはユーラシア定住派遣者くらいよっ)
(ひいっあのサリアンまで籠絡してるこのカマトトホトトギスっ!)
(女かまきりに言われたくありませんねっこの女郎蜘蛛っ)
(母さん…ペルセポネーぜですが、大人気ないからそろそろやめておきましょうよ…何のために私は成長抑制して母さんの身体に負担がかからないようにしているのかと。今ここで9ヶ月目くらいまで成長してよろしいですか?)
(え?え?)
(雅美母様。同じく成長抑制中のアフロディーネです。室見さんが言い返したがる性質をよくご存知なら、私共が産まれて崩御なさる時か復活時に喧嘩なさって下さいな…テルナリーゼ母様も雅美母様に何か申して下さいませ!)
(えー。というか貴女方、もう喋れますの?)
(神種族として私共を孕ませたりお孕みになりましたのは母様でしょうに…私もアフロディーネも既に意識はありますよ。言語を含む学習作業も開始しています)
(全くもって生まれた後の惨劇というか修羅場が想定できますわ、今からすでに…とにかく私たちが産まれるまでは自粛願いますよっ)
胎児にまで怒られている雅美さんが哀れにも思えて来ましたので、とりあえずこのくらいで勘弁しておきましょう。
ただし葬式の際の花輪、痴女皇国国土局長名で飾らせて頂きます。
で、食堂車では遅い方のディナータイムも始まっていますが、機関車連結作業の一方、ホームで繰り広げられる光景はおよそ豪華列車の傍で行われるものではありません。
安全帽を被った皆様が手早くデッキ…乗降室の壁や扉を開けてすぐの廊下などにセンサーを設置していきます。
「土木部長のエマニエルさんか、あの人の要望で無線型のセンサーを渡されたんだが…」
「さすがに一応は営業列車だからね。客室側のドア開けっぱなしで配線はあたし達には困るから」
「米沢発の坂町行最終は2両で出るそうだ。冬季排雪運転対応だから仕方ないか…まぁ、最終の後での運転ならお前たちが乗ってる間は雪で立ち往生はないだろう。翌朝も除雪車代わりの排雪運転になるだろうが、磐越西線でのテストでは電源車を牽引して走り抜いたらしいから、最悪は瑞○の走行機関を回して貰えたら何とかなると思う」
「あ、そそ、フラワー長井線の運転に支障はないよね」
「ああ、山形鉄道さんの運転を支障はしないよう走るから大丈夫だ」国鉄時代の名残りで、米坂線と線路を一部共有している第三セクター鉄道路線があるんですよ、米沢側に…。
と、そこで父の板電話が鳴ります。
「はい、室見でございます…ええ、こちらは今69と○風のキイテを繋いだところです。ええ。…え? 東さんが69を貸して欲しいと…?また何で急な話に…はい。とりあえず新津に試作2号機の920、試験本務の919がトラブった時用に待機しているはずですがね。ええ。そちらは東さん管轄のはずですよ…はぁ、電源車連結して西線に入線させると荷重がまずいかも知れないと…そもそも電源車を連結したら推進運転で徳沢の向こうまで行けないだろうと。ふむ、彼女たちが乗る方が都合がいいんですな。わかりました。娘に聞いてみましょう…理恵。えらい事になった。磐越西線の徳沢と上野尻の間でC57の180が雪の吹きだまりに突っ込んだ上に衝撃で蒸気配管故障、牽引列車は営業運転中で乗客数十名とともに立ち往生。新津の救援機は目下羽越本線の除雪や電車の救援に回していて出払っているそうだ。喜多方方向からも、あっちはあっちで勾配区間があって気動車が立ち往生して塞がってる。つまり若松や喜多方方向にも戻せないらしい」
「ブレーキとかロッドとか走り装置の故障は?」
「ちょっと待て。…押し引きは可能か現場に尋ねて頂けますか?…ああ、ブレーキは緩解も緊締も可能。後退するから手歯止めはかけていると。ただ、蒸気漏れでボイラー圧力が上がらないんですね。ふむ。念のため牽引可能か再確認願います…もう一度調べてもらうが、恐らく救援機さえ連結すれば引き出せるはずだ」
「つまり、うちの920号機で磐越物語号を救援すればいいのね?」頷く父。
(まりり、聞いた? やっぱりというか…うちの69の試作2号機貸して欲しいみたいよ?)
(…えれぇ事になったな。とりあえずホームに行くわ)
で、まりりを交えて関係者で協議。
「父さん、要請はどこから?」
「東さんの新潟支社だ。今、試験担当助役さんから本社にも連絡してもらってる」
「会社として東さんがOK出すなら手伝っていい? まりり」
「確かに機密が漏れるのはあまり良くないんだけど…おい、りええ…列車に家族連れ、結構乗ってねぇか?」まりりが山の方向を眺めながら言います。恐らく、まりりなら車内の様子までここから見えるのでしょう。
「あー。毎年恒例のSLクリスマス列車だからね…会津若松行きほどじゃないけど家族連れ、乗るよ」
「あとは暖房だな。あの列車って暖房どうなってんのよ」
「客車のうち2両くらいの床下にある発電機…CNG燃料があるうちは故障しなきゃ大丈夫。ただ、長時間稼働は難しいはずよ。持って一晩くらいかな」
「…よし。東の社長さんがOK出すなら貸し出しに異存はねぇ。あとは充電役と機関車の操作指導だ。…慶次郎さんがいるのに子供、見殺しにゃあ出来ねぇよな。あの方面の状況は今、あたしも確認した。あの辺なら並行道路もまともな道は少ないはずだ。自衛軍の救出もそう簡単には見込めねぇだろ。宙兵隊動かせる将官はいるが、横田に連絡しても救出機出す時間が惜しい。いっそうちがスケアクロウ出した方が早えぇくらいだな。うん…りええ。わりーがダリアとエマ子とあたしと一緒に来てくれ。スイートを楽しむ数時間をふいにして済まねぇが、手伝ってくれるか」
「よっしゃ。やろう。ダリアごめん、いける?」傍のダリアに尋ねますと。
「人助けっしょ? マリアさんも理恵さんもOKってんのにあたしがNOって言える訳ないじゃないですか」いい笑顔でダリアも頷きます。
「アルト!悪いがてめぇも来てくれ。この雪じゃ女官種モードで放熱入れてもらう必要があるかも知れん。りええとダリアはさっき機関車に精気充填してくれたからな…室見さん、とりあえずうちは線路とSLの持ち主の東さんさえOKなら救援態勢に入れますよ」
「吉住さん…920号機の準備、お願いしてよろしいですか」緑文字社の試験責任者らしい人に父が頼みます。
「ええ。本社のゴーサインが出ると同時にやりましょう。しかし、徳沢まで全線閉塞しても快速で1時間20分くらいか…例の東北大震災の際の石油輸送のトラウマがありますのでね、西線は東区間も含めて乙線で3線または4線級…最高速度95km/hですけど60km/h未満制限区間も多いです。とりあえずカモレは通せますがあの機関車のフル性能は出せないと思って下さい」
「その辺は大丈夫ですよ。エマ子。立ち往生してる地点を正確に割り出せ。機関車ごとその付近に転送で送り込む。排雪運転ってのか、雪かき分けて走る試験するならちょうどういいサンプルも取れるだろ。りええ、あそこらって新津に出てくるのは下り勾配なん?」
「えっとね、細かいところはランカーブ…運転曲線表を見なきゃ答えらんないけど、とりあえず大まかなところじゃほぼ下り込みばっかりね。むしろ過速注意ってとこかしら」
「んじゃ、あの機関車なら充分に行けるだろ。精気充填だけしとくぞ。あれだな…」新津駅の広大な構内のはずれに停まっているはずの機関車に向けて意識を集中させるまりり。
「エマちゃん。920の新津側エンド…あれが今停止してるじゃんか。あれの北側、向こうの方の先頭にあそこのラッセルヘッド組み付けられる?」
「へい。ほいっと」一瞬で線路脇に置かれた除雪用のオプションパーツが機関車後方に組み込まれます。
「ラッセルヘッドのウィングと車高調整用のエア配管、それからヘッド側前照灯用ジャンパ線配管チェック」エマちゃんの遠隔操作で除雪装置の左右の羽根が開いたり閉じたり。そして機関車自体のヘッドライトが使えなくなる代わりに光るいくつかのディスチャージヘッドライトが強烈な白い光を放って点灯します。…ある程度発熱する発光体じゃないと、除雪走行中にライトにこびりついた雪が溶けてくれないんですよ。
「室見相談役。本社社長室並びに新潟支社長から支援要請出ました。TRの高木社長に代わって欲しいそうです」
業務携帯なのでしょう、お持ちの板電話片手の、緑社の作業服ですが偉い人が呼びかけて来ます。
渡された携帯を受け取り話し出すまりり。
「…ええ。乗務員も出払ってるか、新潟市内の渋滞に巻き込まれてると。あー、でしたら往路の機関車行程はうちらが短縮します。今から5分以内に機関車送り込みますよ。で、SLの機関士さんに横についてもらうか、うちの機関車を運転してもらったら大丈夫でしょ。…あー、無免許運転さえ黙認して頂けるならうちから出しますよ、乗務員。ええ、許可さえ頂けるなら何とでもします。はい。了解しました。では今から早速かからせて頂きます。…りええ。SLの機関士さんが横についてラリーのナビみたいに制限速度教えてくれるからよ。あれ、あんたが運転してくれ。今あれを運転できる人の都合がすぐにはつかんらしい。なんせ緊急事態だ。頼むぜ」




