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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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マリアたちの里帰り・2

「りーえーちゃーん」


「車掌さんが教えてくれなかったらモンペリエ・サン・ロッシュ駅で途方に暮れてましたわね…」


「まぁ、とりあえず列車に乗れたから良しとしましょう」


「しかしローカル電車にも一等席があるのはいいとして…なんか、あっちの二等の椅子とあまり変わらない気が」


「これ多分、二等だと混むのを嫌がる人からお金をむしり取るだけのような気がするわね…」


「日本の普通車用グリーン車でもリクライニングくらいするわよ…」


「すんません、多分朝早い時間帯にあるインテルシテ…特急でも恐らくリクライニングしないのか、しても少しだけです…」



はい、前回に引き続き、広報役兼陰の案内人として田中雅美がフランスからお送りしております。


実は我々、二日間有効のユーレイルフランスパスとかいうものを渡されておりまして、TGVや特急…理恵ちゃんが説明するところのインテルシテ、つまり英語でいうインターシティには追加の指定料金券を買えば良いとされておりました。


で、ここで密かなお節介が発覚。


以前に一等と二等の落差で揉めた云々がありました件を覚えていたマリー、理恵ちゃんの代わりにくだんのユーレイルフランスパスなる乗り放題切符を買った際、後でバレて叱責(しっせき)譴責(けんせき)されるのを覚悟で敢えて一等パスを買っていたのです。


この乗り放題切符、二等パスを買うと延々と二等で我慢する必要があるらしい記述を見つけたマリーが、一人あたま5千円未満で済むならと敢えて一等パスを購入。


女官長職に加え、何かあれば聖院世界や連邦地球にも行かされる事が一度や二度ではない彼女、実は部下の数を加味されていてダリア並みに業務報奨金をもらえる立場だそうです。


で、与えられていた経費処理用の法人向けクレカ枠で処理して、後で国土局の予算枠から精算してもらおうとした上に、参加者の聖環に電子チケットを配ってしまっていたので理恵ちゃんに発覚していませんでした。


…これ、普段なら何さらしとんねんとばかりに怒られそうな事案ですが、以前の聖女ベルナデットの遺骸見学の時の騒動や、はたまたナルボンヌまでのTGVの一件があったせいでマリーの慧眼(けいがん)がここで光る事に。


そして、このパスで移動していたのにTGVの料金券だけ二等だったのを不思議に思った車掌さんとマリーの雑談で、TGVを降りる駅、全力で間違えていたのが発覚しまして…。


「おいおいマドモアゼル、トゥールーズに行くならモンペリエじゃなくナルボンヌだろう。この列車を降りて20分と待たずにT E R(いなかのでんしゃ)が出るから座席券もナルボンヌまでで発行しておいてやるよ。T E R(ろーかるれっしゃ)はパス持ちなら追加料金なしで一等に乗れるから、電車の窓の下に黄色の帯が走ってる辺りの席に座りな」とか親切に教えてくださった模様。


ええ、マリー、グッジョブ。


そして親切な車掌さんのおかげで地域間急行(T E R)とかいう快速電車につつがなく乗り継げ、とりあえずトゥールーズを目指しております。


「まぁ今回はマリーの判断が正しかったって事で、経費申請が通るようにお祖母様とクレーゼ母様に口を利いておこう」


「ですねー。電車も四両編成なのに二等側がめっちゃ混んでますよ…」


「どうも一本前の電車が故障で運休したみたいよ。で、そのお客さんもこの電車に回されたと…1時間待たされてるのに激しく怒ってる人よりあきらめ顔の人が多いのは何か、この手のことが日常茶飯事みたいなふいんきなのだけど」


いや、実際に日本だと暴動が起きたり、マスメディアに垂れ込みだの鉄道会社に投書(こうぎめーる)されるような事案でしょうに…。


「それで乗るなり車掌が切符見にきたのか…ほら白マリ、あたしらの前に一等に乗り込んだ奴が何人も追い出されてたろ。すきあらば二等のチケットで一等に座るなんてのも常態化してるみたいだぞ」


「車掌さんも手慣れてたわね…ほらここは一等だ、あっち行った行ったって感じで」


はい、これまたフランスあるあるですね。


そしてこの電車だと一両の半分が一等席、ガラス扉の向こうが二等席になっているようです。


だから気楽に一等が空いてたら居座ると…。


ガラスの仕切りに数字の1がでかでかと貼られていますし、座席の頭のところに布カバーもかかっています。


それどころか二等の青色に対して一等の座席は赤いモケットが貼られていますよ。


まぁ、座席自体は他の人が言う通り、二等とあまり変わりばえしませんけど…。


それとですね、車掌さんとの対応で改めて判明したことがあります。


まず、車掌さんのみならずフランス人に気に入られるには、外見も喋りもフランス語ネイティブなマリーに対応させる方がよい。


これは相手の心中を見透かせる痴女種ならはっきりわかります。


そして不肖この田中雅美、痴女皇国にお世話になる前にフランス来訪やフランス人との接触を若干経験してましたので、彼らと会話する場合、絶対にはいはいの意味でOKイエースとかやってはならないと叩き込まれておりました。


具体的にはウィウィOKですとか、メルシーサンキューという感じで、フランス語を先に発音しようとしなくてはなりません。


そうすると、あーこいつは不慣れだがフランス語を先に言おうとしていると、相手が好意的に受け止めてくれる模様。


彼らも自分たちの言語が男性形女性形があり、更には発音の困難さが例のアレなのを理解していますので、高貴で習得困難なフランス語を喋ろうと努力する哀れな外国人旅行者として、同情や慈悲の目を向けてくれます。


ですので、やってはならないのは白人などが自国語を先に言う事です。


イタリア語スペイン語はまだしも、英語ドイツ語辺りは確実に敵意反感を内心で買われます。


そして日本人がよくやる英語でのお返事発言、これも彼らのマジノ線に触れます。


そしてここはフランス、日本に来たら日本語喋れと内心で思いたくなる某民族や某民族に対する我々以上に、非フランス語圏に対するプライドの高さがありますから、本当は英語できるのに私英語デキマセーンパードンとばかりにイケズをやられた日にはお手上げです。


そうそう、フランスを擁護する事になるかどうかわかりませんが、1800年代末、つまり幕末の日本に接触してきた英仏両国の振る舞いから両者の国民性が理解出来るかも知れませんね。


ごく単純に言うと、ザ・蛮族を競う野蛮人同士で殴り合いをした結果「こいつら滅亡させると我々も被害莫大、しかも、かくも精強な薩摩にフランスやドイツが接触したらどうするのだ」という結論に至り友好通商路線に転じたのが、例のごはんが美味しくない日の沈まぬ島国です。


そして一方で公使を派遣したり、生麦事件などに代表される外国人との摩擦事件の際にも巧みに立ち回り通商利益を確保しつつ、幕府に取り入りパリ万博に招いたご飯だけは美味しい大陸国。


江戸幕府が要請したものの全て叶えられなかった600万ドルの設備投資借款を習ったか、はたまた自ら調べて知った方もいらっしゃるでしょう。


で、日本ではどちらの文化が主に取り入れられたかは皆様も知る通り、言語については当時の外交圧力先の一つアメリカの影響もあって英語がメインとなりますが、フランスもドイツ同様に我が国にそれなりの影響を与える事になります。


例えば台風が来ると揚げるとされる例の揚げ物、フランス語での呼び名はご存知Korokkeですが、かなりの年配…天の声の実母が存命ならレベルですと、英語でクロケットと称する場合があります。


まぁ食べ物中心にフランス語が定着して行ったのはやむを得ないでしょう。


あの島国の食文化、これだけは大々的に我が国に輸出という名な強要を図ったが最後、日本全国日本人すべてが生麦生米(チェスト精神)状態で生卵どころか自滅覚悟で鉛弾をお見舞いしかねなかったと思います。


言い換えますと、(とも)と殴り合いして分かり合う外交が英国、そして英国の影響甚大な米国と繰り広げて来た歴史があるとすれば、さながら娼婦の如く気を引き擦り寄り外交を仕掛けて来たのがフランスとご理解下さい。


もっとも、言葉に対するプライドがあったのか…連邦社会でのパークスさんやサトウさんのような日本語への造詣深い外交官を育成してこなかったせいで情報収集が遅れ、明治政府への接触では後塵を拝した事もありましたけどね。


そして痴女皇国世界でも、マリアちゃんのお祖父様やジーナちゃんの旦那さん(くりすくん)の影響があって英国優勢な状態です。


ですがフランスを無視はできません。


まず、地球上の鉱物資源のあらかたを痴女皇国が抑えたせいで、工業資源は痴女皇国に頭を下げないと配給しないよと諸国には圧力をかけ倒しております。


ですがフランスが得意で、かつ我々としても規制どころか、大いにその生産を推奨せざるを得ないものがあります。


そう、小麦や野菜、そして豚に牛にニワトリと言った農業生産品、あるいは畜肉です。


巨大農業国フランスに対しては痴女皇国といえど消極的支援…家畜や小麦への伝染病排除だの、寒冷地に強いタマネギやジャガイモ原種の提供などなどを行い、周辺国への食料輸出を監視しつつも推進させねばならない苦渋の立場なのですよ。


そして農産物生産や輸送の効率化を図るための運河水道整備や機械設備の導入、そしてあの物凄くだだっ広い広大な国土への道路整備、これを痴女皇国主導で行うための戦略的外交を着々と進めて周辺からフランスと神聖ローマ帝国、つまりドイツを包囲して戦争せずにキャンと泣かせよう、これがマリアちゃんの戦略です。


そのためには一応英国が発明発祥という事にする鉄道を比丘尼国で実験的に敷いて、大成果を挙げた上で本国ならびにイタリアとスペインも大々的に導入、やーいお前らうらやましいやろ、悔しかったら土下座してみろという流れに持っていきたい、そして今から用意周到にフランスの需要を満たすものを準備しておこうと国土局に秘密指示を与えているそうです。


(何だかんだで連邦社会におけるボンバルディア・アルストムの影響力はでかいんだよ…それと英国は確かに当初は鉄道業界への影響甚大だった。だが最大の英国系とも言えるアメリカが自動車社会に転換した事で欧州勢や旧共産圏につけ入る隙を与えてんだよ。しかも戦争で植民地を失うわ国力が疲弊するわと致し方ない面もあるが、戦後に蒸気機関車を捨てて動力近代化を成し遂げるのに立ち遅れてね…鉄道どころか国自体が斜陽化してるんだよな…)


「フランスもガスタービン車両とかTGVとか、大概なものを大量に輸出してるけどねっ。エジプトやイランみたいな砂埃だらけの砂漠の国にジェットエンジン積んだ特急車両輸出とか正気の沙汰じゃないわよっ」


(ロリータ猿人を積んだ市販車の数少ない生産国でもあるから工業水準は決して低くはないんだけどなぁ…)


「まりり、その誤字だと江田島の会社の人が赤いヘルメットかぶってバット握りしめて襲いに来るわよ…」


「多分監獄社のダンケ号のバッジ替えバージョン(ぼんご)で来そうね」


そんな事をわいのわいの言っておりますと、車内壁際の電光表示にBientôt arrivé "Gare de Toulouse-Matabiau"と出ます。


英語表記も出ましたがArrived soon Toulouse-Matabiau Stationですよ…。


これを一発でトゥールーズ・マタビオ駅と読める人、どれくらいいるでしょうか。


以前クリス君が言っていたゲール語の綴りよりはマシだと思いますが、それでも大概です。


で、マタビオ駅のいかにもヨーロッパ、いかにもフランスな大きな屋根がかかった低い低いプラットホームに降り立ちます。


さて、ここで次に乗る列車は…どうもルルド行き、ルルドが終点じゃない列車ばかりみたいなんですよ…。


「例えて言うならJRで天理や富士宮を目指すようなものです。…あー、インテルシテが次か…まりりー、特急だけどとりあえず乗っていい? 検札来たら車内精算でいけるはずだから」


「しゃーねーな。次は1時間後か…ルルドまでに検札来たらあたしが指定券代払うわ」


駅のホームには液晶案内板も出されていて、何両目から何両目までが一等か見ればわかるようですが、直前で前後が逆になるとか、普通にあるそうです。


しかも日本と違って前から後ろからどうぞ…ではなく、こほん。


客車列車だと前から後ろから1号車2号車と表示されているわけではなく、何らかの番号規則はあるみたいなんですが素人にはさっぱりになるようです。


しかも到着直前まで何番線に入って来るのかわからないとか、素人殺しにもほどがあるフランス鉄道事情に改めて頭痛がします。


言っときますが我々、小型ですけどスーツケース転がしてますからね?


そりゃ飛行機とかバス使ったり、バカンスシーズン名物オートルートの渋滞覚悟で車を出しますよね…。


「うわー、客車じゃない…一応バリアフリー対応タイプだけど…まぁコライユじゃないだけマシか…」


車椅子対応でガバッとドアが外側にスライドして開く、割と新しい客車みたいですね。


「昔の映画にあるような客車だと、重い荷物を提げてえっちらおっちらステップを上り下りしましたから、これはまだマシな部類です。ただ…」


はい、車内に入ると車椅子対応座席の先に階段が。


ええ、またしても二階建てです。確かあたしがパリに来た時に乗った急行地下鉄とかいう、フランス国鉄の電車が入って来る方の地下鉄(R E R)も二階建てだったな…。


「理恵ちゃん。何となく想像つくけど、この国なんでこんなに二階建て好きなの?そんなに一階席からスカートの中のパンツ見たい人が多いの?」


「んな訳ないでしょ…見ての通り、汽車の時代のままのホームを改築したくないけどバリアフリーってうるさいから部分低床車…そこだけ車椅子が出入りしやすいように作ると二階建てにする方が楽みたいなんですよ。で、1両あたりの椅子の数も増やせるから連結する車両も減らせます。ドイツやスイスやイタリアやオランダやフィンランドにもこの手のがチラホラいますよ…」いるのか…。


「あと雅美さん。痴女種とはいえ我々は女性です。スカートの中が気になるのは雅美さんくらいとして、さっき言った汽車時代のままの低いホームなのに、TGVの一階席からパンツを見るようなことは不可能でしょう…あ、透視できんのか…しませんよっ」


「あたしもする気はないっ。しかしまた後ろ向き座席が並んでるわね…なんなのこの国…」


「とりあえず空いてる席に座りましょう。荷物棚のところのインジケータが緑色の席にしてくださいね」


さてここで我々がいる一等車の二階がどんな車内か。


略図で現すとこんな感じです。


▷▷▷▷▷▷◻︎◁◁◁◁◁◁

[通路          ]

▷▷▷▷▷▷◻︎◁◁◁◁◁◁

▷▷▷▷▷▷◻︎◁◁◁◁◁◁


つまり、客室の中央の向かい合わせの椅子を挟んで半分は逆向きに座るのを余儀なくされます。


そして車両によっては向かい合わせ席ばかりとか、簡易個室席があったりするそうですけどね。


「フランスに限りませんが、ヨーロッパの駅はだいたい小田急や西武の新宿ですとか上野の地平ホームのように行き止まりで作られています。新しい駅はいざ知らず、古くからある駅だと通路な国のブリュッセル北駅ミディ駅南駅みたいな通路構造の駅が珍しいくらいなのです。そして東京から名古屋駅や京都大阪神戸駅のような立ち位置の拠点駅が片端から行き止まりになっていて、そこに停まる都度、列車の向きが変わるのです」


なんでそんな作りにしたのよ…。まぁなんとなく想像つくけど…。


「昔の陸蒸気レベルの小さい機関車だと、石炭や水を大量に積めないのでいきおい、長い時間走れません。しかも石炭を焚くためにショベルを振るうのは人力です。人も機関車も補給や休憩が必要でして…だから1時間なり2時間走ったら乗組員を交代させたり、石炭や水を補給するか機関車を交換する必要があったのです」


なるほど。


「そして日本も満州などで悩まされましたが、ユーラシア大陸やインド・アフリカを含めて世界でもそのまま飲める軟水がふんだんに得られる地域はものすごく限られます。あたしが生体発電機関車を強く推す理由でもあるのですが、フランスでもたいてい、ミネラル分を多量に含んだ硬水です。これを蒸気機関のボイラーで沸かすとどうなるでしょう」


「沸騰させたらミネラルウォーターの鉱物成分が残る…カスか!」なるほど…。


「清缶剤という薬がアメリカで発明されるまで、蒸気機関車を使う国はどこもこれに苦しめられたんですよ…蒸気を作るために沸騰させるので、必然的にカルシウム系の沈殿物が絶対に残ります。これがボイラー内の配水管を中心に溜まり、いずれは管を詰まらせますから、ひんぱんにスケーリングハンマーという工具などでどついて固着したカルシウム成分を取り除く必要があったんですよ。衝撃を与えれば剥がれますから」


「で、駅に突っ込んで来た列車のお尻に新しい機関車を挿入するわけね」


「セクハラおっさん化した気の強い雅美さんのアナルを責めるロマンを追求する趣味はありませんが、東海道線の特急燕号のような無茶をしたり、復水器という蒸気を水に戻して再利用する仕掛けをつけたり、はたまた自動給炭機…ストーカーといいますが、そうしたものを開発するまでは正に職人芸で水や石炭をケチりながら走らせるのが腕のよい機関士の条件でした。さらに」


「あたしのアナルを狙うのはともかく」


「だから狙いませんって。で、1800年代後半にエスカレーターやエレベーターつけてまで地下や高架橋を使って駅舎とホームを結ぶ構造にするより、単純に駅舎内から列車に向かえる櫛形配置の駅を作る方が楽だったのもあります。当時は人だけじゃなくて郵便や小荷物も列車で運んでましたから、積み込むものを運ぶための台車をホームで動かすには平面の方が都合いいですからね」


「そういえば、さっきこれに乗る時に後ろ側に運転席あったよね。これ電車なの?」


「それもヨーロッパあるあるです。ディーゼルや電気機関車が主流になり、機関車をひんぱんに付け替える必要は減りましたが、こんどは行き止まりホームが邪魔になります。何も機関車を付け替えなくてもいいのに付け替えたり、はたまた機回し線と言って、駅到着後にいったん外した機関車を先頭に回送する線路をわざわざ作ったり、めんどくさい事になりました」


「前見て運転しないといけないしね」


「で、電気機関車やヨーロッパによくある型のディーゼル機関車はモーターで車輪、回します。ですから配線さえ繋げば、機関車以外の車両につけた運転装置からブレーキ操作を含めてコントロールできます。これが、この特急の最後尾にもいた制御客車という運転席がついた客車なのです」


「ああ、ディーゼルにしても発電機ついてるやつか…」


「比丘尼国に入れる改良型生体発電機関車でも客車はこれにしようかと。あれ、全固体電池とインバータ回路積んでますからね。一種のハイブリッド車ですから精気節約もできて更にお得に」


「つまり比丘尼国に初期導入するの、かなりのハイテク機にならない? 保守や現地生産大丈夫なの?」


「連邦世界側から持ち込むものは基本的にマイ父社からみの技術派遣チームと罪人技師や技術女官で当初は保守を主導する予定。そして痴女皇国側の技術技能者育成ですが、監獄国の教育機関に鉄道学園のようなものを設立し、軍隊の鉄道連隊で使うような演習線の建設を併せて計画しています。痴女皇国世界側の思いつきはここでやれという具合にして、彼らの発明や発見を形にさせようかと思います」


「なんか理恵ちゃんが鉄道の母と呼ばれそうな予感」


すらすら答える理恵ちゃんに技術者の素養を覚えます。後光すら見える気も。


「微妙に嫌な称号という気もしますが、あと行き止まりの話ですけどね、1800年代から1900年代半ばまでの鉄道建設者や鉄道利用旅客が関係してるんですよ」


「え。何それ」


「たとえばさっきのトゥールーズ駅、やたら立派でしたよね。あとパリのリヨン駅とかも」


「だよね。いかにも昔からありましたというふいんき」


「あれ、当時のフランスの財界人が競って鉄道に投資して私鉄を林立させた名残りなんです。日本でもそんな時代ありましたけど。確かトゥールーズ駅舎にも南フランス鉄道の社紋や銘板が入っていたはずです。つまり、我が社の威容を誇りたいがために豪勢な駅舎を作らせたのがひとつ」


そして理恵ちゃん、ウィーン市内の画像を見せます。


これ確かオーストリア・ハプスブルク家の皇帝が避暑離宮を利用する際に使ってた皇帝専用の地下鉄の駅…。


「そーです。ロシアでもモスクワやサンクトペテルブルクの駅がスターリン様式でなくてもたいへん立派だったり、日本でも東京駅に貴賓室や要人専用通路があったり、はたまた原宿駅の宮廷ホームがあるのと同じ理屈ですね。駅に馬車や自動車で乗りつけた王族貴族他国外交官、はたまた富豪層が利用するための待合室などの設備を設ける必要がありましたし、自国の国威発露にも具合が良かったのです」


あー、ベラちゃん絡みだとドゥーチェ(ムッソリーニ)が造ったローマ・テルミニ駅…。


「ただ、そんなドヤ顔仕様の立派すぎる駅をなまじ造った場合、あとあとでなかば自動的に文化遺産になってしまいますよね。だから建て替えたりホームや線路ごと作り替えたくても簡単にできなくなりました。台湾は大胆不敵に台北や高雄や花蓮で豪快にやりましたけど」


「台湾は地下にまるっと新しい線路と駅作ったんだっけ」


「いずれ新幹線を作る計画もありましたからね。更に昔々のすけべいおじさんには人気の場所だったこともある新北投温泉。あそこに行く国鉄が工事の邪魔になるからとあっさり廃止して地下鉄にしてしまいました」


(しかし、りええ。台湾でも板橋や高雄の新幹線駅で揉めたの知ってるだろうけどさ、鉄道計画って都市計画とも密接に絡むから、くれぐれも暴走しないでくれよ…みんなもこうしてフランスを旅する事で、なまじ後々を考えずに色々やると後年に困るのがわかっただろうから、交通計画や都市計画にとどまらず、よろず後先考えない行動には注意してくれっ)


「新幹線作った理由も分かってもらえると父社やオレンジ社の中の人が泣いて喜びます…あれは本当に日本のために作りましたが、結果的に採算が取れるだけの数の人さえ乗ってもらえれば、ロシアだろうがアメリカだろうがヨーロッパだろうが少々の現地適合設計変更で走れる変態仕様になってますから…」


(日本で走らせるだけで積雪地帯とか寒冷地でテストすることになるからな。亜熱帯は台湾で経験してるし。あのリニアや新幹線が最短3分間隔で発着する変態時刻表を見せるだけで外国人は驚くそうだが)


(なんであれが出来るのか不思議でならんとみんな言うよな、日本に赴任して来た連中)


(かーさん電車通学してたらわかるだろ…たとえば、あの虎柄社の青い普通電車よ…今度鉄腕グループの中堅さんと会うけど、あの人確か番組の企画であれと駆けっこして勝ったことあるらしいぞっ)


「あー、あの変態企画ね…ジーナさん、あそこの普通って日本で一番加速も減速も早い専用電車なんですよ。ちなみにあの会社、むかしむかしは速度違反前提の時刻表で暴走運転してました」


(は? 電車で暴走? 投手が暴投とか選手が乱闘とかやなくて?)


「鯉球団の熱狂的な観客じゃないんですから…昔はあの電車、鉄道線ではなく軌道線って言って、珍珍電車用の営業免許で許可取って線路作ったんですよ。曲がりくねってるのはそのせいなんですけど…」


そこからの説明、驚愕でした。


あたしもそれは知りませんでしたが…あの会社、そんなに危ないことしてたのかと…。


「むかし、官営鉄道が神戸と大阪の間で蒸気機関車に引かせる列車を走らせてましたけど、向こうは親方日の丸、潤沢な予算と国の力にものをいわせて直線の線路を引きました。そして後発の虎社、電車の営業免許申請をした際に官営鉄道があるからと鉄道線の営業免許の交付を拒まれたのです」


「当時のお役所あるあるよね…」


「で、虎社は珍珍電車を走らせる軌道免許を、当時の監督官庁の内務省に申請して通したのです。ですが珍珍電車にすると最高速度が厳しく制限されます。そしてまっすぐな線路を飛ばす汽車は、当時としても侮れない速さで走っていました。このままではお客さんを取られると焦った虎社はアメリカ製の高速路面電車をライセンス生産した車両を投入し、監督官庁に申請して許可された珍珍電車用の制限速度…8マイルだから時速12.75kmくらいか…の三倍以上の時速25マイル…40キロで走らせていたそうです」


(何という違法運行…)


(あたしあの電車乗るの怖いんだけど!)


(あたくしたち痴女宮から転送で通って正解ですわね…)


(速度が低いからいいようなものの、めちゃくちゃじゃない…取り締まられなかったの?)


「一言で言うと、スピードメーターが付いてないまま走らせてました」


(あほかぁあああああ!)


(もう違法運転する気満々じゃない…)


「珍珍電車だから不要と言えば不要だったのです。速度さえ守っていれば…そして運転用時刻表も駅名などを暗号で書いたのを運転士に渡していました」


(もう全力で違反ありきじゃんか!)


(あの会社、そんな無茶してたのか…)


(雅美さんが可愛く思えます。企業ぐるみの犯罪ではありませんか!)


「なんであたしが引き合いに出されるの!」


「で、運転士も運転士で違反を恐れるどころか、ちゃんとした鉄道営業免許交付を渋るばかりかちょっとばかり速度違反したくらいで鬼の首を取ったように騒いで偉ぶる官営鉄道に喧嘩を売る気に満ち満ちていて、薩摩の目で制御ハンドルを握った模様」


(三倍の速度違反はちょっとどころじゃないと思うぞ…)


(理恵ちゃん…それほんまなん?)


「破っていた側の会社に聞いてもしらばっくれると思いますよ。ただ、破られた陸運局と官設鉄道側が恨みに満ちた是正勧告記録を残していますから。何度も是正勧告を出すだけでなく官鉄の職員が時計持参で乗客にまぎれて密かに乗り込み、所要時間測って速度違反の証拠押さえてます」


(よくそれで会社潰れへんかったな…)


「最短9分間隔という高頻度運転や、官営鉄道をあからさまに意識しまくった運賃設定などが功を奏して、官営東海道線のお客は四割が虎電車に虎れ、いえ取られました。駅によっては七割の減収になったそうですよ」


(すげぇ…法律違反を恐れるどころか喜んで利用してる阪神沿線民も大概だよな…)


(いくら何でも、そんなことして政府から取り締まりとかされなかったの?)


「当時は法整備が未熟で、罰則規定までが定められていませんでした。それをよいことに会社は更に電車の性能の限界に挑み、当時1時間半だった阪神間をその電車では最終的に72分にまで縮めています。ちなみに所定ダイヤだと2時間ですね」


(本来の半分近い…スピードが遅いからまだいいようなもんやで…)


(法律の盲点を突くにも限度があるわよ!)


「まぁ、無茶できるだけの高性能電車だったんですよ。もともと時速80キロ運転を企画していましたし、実際に入れた電車も路面電車じゃない場所なら時速60キロ近く出せたのかな、とにかく昔だと飛ぶような速さに思われたでしょう。この中で広島の宮島行ったことある人」


「あたし一回ある」


「雅美さん、あそこ島じゃない側の船着き場に珍珍電車来てるの知ってます?」


「なんかいた記憶が。よく覚えてない。JRと民間船の乗り場が並んでて客引きを立たせる寸前までお客さん取り合いしてるらしいのは見た」


「あのもう一方が広島市内とを結ぶ珍珍ぶらぶら電車の系列会社なのです。で、途中まで専用の線路を走りますが、その区間の最高速度が60キロです。ただ…入れた電車は欧州の技術が入ったものもあって、最高速度自体は70キロ以上出ます。もし認可が降りたらあの会社、絶対に急行走らせると思いますよ。福井に珍珍電車の急行、ありますし」


(なんか乗りたくない急行よね…)


「聖院マリアさんちに今度入れる珍珍電車あるでしょ、タイヤが付いててベネチアで走ってるやつの聖院世界仕様」


(あーはいはい)


「あれ、ベネチアと本土を結ぶ橋の上で70キロ出しますよ。事業者として全力走行を体験しとく方がいい気もします。なんせゴムタイヤで走るから惰性走行できないので、あの4kmくらいの橋渡る間、ずっと全開全開」


(あー、あれ橋の上だとめちゃくちゃうるさいんですよ。もうモーターの音で会話できないくらい)


(あたし、そんな狂おしく身をよじるように走る電車(あくまのぜっと)導入にGOサイン出したのね…)


「お願いですから、くくくとか笑いながら補助猿人をチューニングして100キロ出すとかやめてください。あの系統でエンジンも積んでて、ガイド車輪を引き上げたら連接バスとしても走るやつありますからね」


(あたしはベラちゃんの車のようなのに乗る趣味はないし、黒マリのように人にむちゃくちゃな改造車押し付ける趣味はもっとないから!)


(いいじゃねぇか!にゅるにゅるしてる道で7分切りするマスタングが作りてぇんだよ!)


(宇賀神さんのお父さんを実験台にするな…頼むから人間が操れるものを渡せや…)


(かーさん。ジジイコレクションの枕ー連(まくらーれん)F1、売れば高いから密かに譲り受けるべく狙ってるだろ。下心のために運転練習してんじゃねぇ!)


(やかましい!嫌がらせのようにあれに乗せられる身になってみい…買い物の足とかにクルマ借りようとしたら、毎回毎回あれしか空いてないとかイヤミかほんま…晴れの日なら何とか生きて帰れるようにはなったけどな!)


(マリアヴェッラ…今の聖院…いえ、痴女皇国というのはこういうやり取りが日常なのでしょうか…)

(二代目様。気になさらないでください。たまたまうるさいのが揃っているだけです。た・ま・た・まですから!)


(なぜたまたまの所に力を入れて区切るのかはともかく。いえ、私も聖院金衣を務めた身ですからち○ぽは嫌いじゃないのですがね。ですが…ルルドに着いて泉の側に来たら少し大人しめになさってくださいね…マリアリーゼ二人は誰が来るか分かっていると思いますが、呆れさせないようにお願いしますよ…)

黒マリ「みなさまの足じゃなくてみなさまの暴走する足だったとは…」

りええ「今さぁ、上六の方から入ってくる電車と直通してるでしょ」

黒マリ「あたしが通学で載ってたやつな」

りええ「あれさぁ、仮に赤福社としとくけど、直通用電車はね。そこの線路にいる時は旧型車とも連結するから加速度2.5km/h毎秒に抑えてる状態なのよ」

黒マリ「ああ、新車とお古つないだらお古に足並み合わせるのか」

りええ「で、桜川で虎社の運転士に交代する時にね、赤福線モードから虎線モードに車両システムを一括して切り替えてしまうモードスイッチを操作するのよ」

白マリ「なんか悪い予感するわねっ」

りええ「それ入れると、本来の加速性能…3.0km/h/sに戻るの…相手の線路でしか性能出せない子なの…」

黒マリ「言い換えると、虎社の線路に入ると全力で走る必要があるということになるよな…」

りええ「で、赤福社の特急、自動列車停止装置に速度超過制限する機能がつくまで、名古屋線ではしょっちゅうキンコンキンコン鳴らしてる音が運転席から聞こえたみたい。赤福社の特急って、読者の皆さんの世界でも130km/h出せるのが増えてるけどね、名古屋線の制限は120km/hです」

黒マリ「つまり何か。赤福社は赤福社で監獄社他の自動車メーカーと戦うために速度違反しまくってたと…」

りええ「そしてJRとも競合してて、向こうはディーゼルカーだけど電車並みに高速運転できるやばい車両入れてるのね。ちなみに父の会社もそれに少し噛んでます。で、そこよりもっとえげつないスピード違反してたとこもあるわよ。大阪」

ジーナ「え」

白マリ「どこよそんな事してたの…」

りええ「遅延や運休が常態化しててまたはにわか(mthnwk)と書かれる某JR路線」

ジーナ「ああ、あそこか…え?あそこJRやん。そんな無茶してたん?」

りええ「あそこ、そもそも私鉄のはにわ電鉄ですよ。で、戦争中に国に買収されるまでは鷹球団で羽車ソースな会社と大阪和歌山間で争ってました」

黒マリ「それで天王寺の駅とか変な場所にあったのか…核爆弾で壊滅したあと、うちらが除染手伝ってようやく作り直してるけどな」

りええ「あれもはにわ線のホームがあそこにあった理由は、はにわ電鉄だった名残り。で、どっか人民共和国に不発めいた核ミサイル落とされるまでは大阪と和歌山の先を結ぶ特急が走ってまして、阪和間は制限速度が鳳〜和歌山120km/hで天王寺から和歌山の所要時間が45分。この数字覚えておいてね」

白マリ「悪い予感がするわね」

りええ「そしてはにわ電鉄は昭和10年代に天王寺〜和歌山間を所要45分で結ぶノンストップ列車、その名も超特急を走らせていました」

黒マリ「時間からすると超特急を名乗るほどでもない気がするんだけど」

りええ「まりり。特急はJR世代の新型車で130km/h走行可能なものよ。で、はにわ電鉄が超特急に入れていた電車は当時最新鋭の高速用電車とはいえ公称最高速度95km/h。普通なら同じタイムにはならないはずよね?」

黒マリ「待て…最高速度に開きがありすぎるじゃねぇか…ノンストップとしても、ゲロしおもノンストップ便でその所要時間だったんだろ?」

りええ「もちろん」

白マリ「ってことは…その超特急、スピード違反…」

りええ「130km/hは出していたらしい。そのせいでモーターにつながってる歯車がすり減りすぎて早期の交換を余儀なくされていた模様」

ジーナ「…何でそこまでして速さを追求するんや!」

りええ「難解な鉄道との集客合戦に勝つのが至上命題だったのですよ。紀州街道に沿って海岸沿いの集落から一定の集客が見込めたあちらと違い、山寄りの田園地帯にド直線な線路を敷いたはにわ線は和歌山と大阪、ひいてはその先の官営線区間から直通してくる客を死守するしかありませんでした。本当に速さは正義だったのです…」

白マリ「あー、確かにあそこなら難解な鉄道とけんかになるわね…」

りええ「実際に阪和間、そして白浜への湯治客はもとより浜寺海水浴場や春木競馬場を巡り熾烈な集客合戦を行いました。戦争が起きて競争は終わりましたが、はにわ電鉄が国鉄に買収されたあと、今度は国鉄が難解な電車と競争を始めましたが、戦後は話が全く変わってしまうんですよ」

白マリ「なじぇに…あ…くるま…」

りええ「戦後は国道26号線のみならず臨海道路に第二阪和国道や阪和道、阪神高速湾岸線と言った幹線道路が整備されていきます。そして堺から泉州の農業や漁業で生計を立てていた先住民はそれなりに裕福でしたし、戦後の宅地開発で移り住んだ人も、移住するだけの資金や収入があればこそ。つまり貧困層があまりいない土地柄だったんですよ。あの辺に住んだ経験者の天の声いわく、よそものに対してどちらかと言うと排他的な土地だそうですし」

黒マリ「つまり車が普及しやすい地域だったわけだな」

りええ「泉北や岸和田のニュータウンでもさ、はっきり言うとクルマ必須よ。泉北なんて電車こそ通ってるけど、電車沿いの団地地帯の外側の戸建て分譲地は絶対不便。さらに泉北高額鉄道と揶揄されたくらい運賃高い電車だから」

ジーナ「行ったらわかるけど、あそこは年寄りに自転車乗れと言うのもはばかる坂道だらけ。丘陵地帯切り開いてるんやから当然やけど。原付か車がないと生活は厳しいやろなぁ」

りええ「そしてオイルショック以降は宅地開発にも鈍りが出ます。同じ難解な会社でも、地元民や地権者とのしがらみが少なくのびのび開発できた河内長野や高野山方面と、何かとうるさい小金持ち地権者多数で人口増加率がさほどではなかった本線方面との輸送量差は歴然。高野線急行は朝、8両や10両連結当たり前でしたが海沿いは長らく6両だったそうですから」

ジーナ「本線沿いが伸びへん理由知っとる。死んだ親父があの辺出身やからな。だんじり祭り参加…特にだんじりの地車維持費ね…しないと色々軋轢がある自治体多いんや。他にも色々理由があるけど、あの辺は大和川から北、つまり大阪市内に行くのはよそ行き感覚で、普段は大和川を越えずに仕事も生活も成り立ってまうんよな…」

白マリ「実際に難解な会社、和歌山行きの輸送量は左下がり傾向がつづいてるからねぇ…」

黒マリ「本線沿いに大規模な企業誘致や学校移転があれば話は変わっていたかも知れないんだよなぁ」

ジーナ「頼みの綱の関西空港も地元以外の関西圏からは遠いから、むしろ伊丹の需要が高まる結果になっとる。うちらの時代やと大阪市中心部への核攻撃があったせいで関西圏の凋落著しくてな。名古屋から先にリニアがなかなか伸びて来なかったのもあって、名古屋に抜かれてる状態やねん」

黒マリ「天王寺に実質的なNBへの貿易物流基地を作れたのも、大阪再開発促進を日本政府から密かに期待されているところが大きい」

白マリ「ただ…港が欲しいのも事実なのよねぇ。成田の若様社や牧場所有地の一部を使って物流施設を作ったのも、成田空港との貨物のやり取りが楽なのが大きいのよ」

ジーナ「もしかすると大阪市再開発について痴女皇国が強く絡むかも知れへんけど、現状ではNBか痴女皇国の領有地扱いくらいにせんと求心力の高い開発は厳しいとは言い渡してるからな」

ベラ子「NBとの貿易、イギリスだけでなくてイタリアがノリノリなんですよ…欧州地域への貨物ターミナルをナポリに作るとかで。本編でも少し触れましたけど、既にアークロイヤル級が接岸余裕な岸壁が整備されています」

りええ「ゴッタルドベーストンネルやシンプロンベーストンネルが開通しているので、スイス経由の鉄道コンテナ輸送がやりやすくなっているのも大きいですね」

ジーナ「三河監獄国と監獄社の交流もあり、実は豊橋新港や田原の岸壁は既にアークロイヤル級対応になってるのは内緒やで(にやにや)」

黒マリ「ま、あたしたち痴女皇国は話が早い企業団体国家との国交や商談大歓迎ってことよ(にやにや)」

白マリ「むろん聖院やNBも同じ。ちなみに聖院がNBとの新規貿易交渉窓口やってたりもします」

りええ「既存利権維持や地域保守も大事だけど、新しい流れを見極めて開発の波に乗るのも大事よね(微笑)。ちなみに博多は例の財閥系政治家さんのおうちや若様の尽力もあり、九州監獄社に比較的近い苅田港開発の方向でまずは行こうかと」

ジーナ「実は連邦政府や宙兵隊、航空自衛軍からの後押しで苅田港開発推奨されたのも大きいんや。例の駄洒落宗の学校孤立事件もあり、アークロイヤル級やテンプレス級が交流名目で寄港してもらえるとありがたい話を諸方面にしてくれてな。これでやられ社や福岡県の顔も立つやろ」

りええ「ただ、明太子と高菜はもういりません!」

まさみ「わいろで買収もだめと思うの!(涙)」


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