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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど
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Unbeaten Tracks in Japan - 日本をめこ紀行 -「みなと横浜編」2

「ふむふむ。基本的には痴女皇国の場合、公使は聖母教会の職員として受け入れておられると」


「もしくは美男公のように派遣者扱いとさせて頂いたり、イザベル陛下やアナ大公殿下のようにうちの職員扱いですね。宗教上のお付き合いか、単なる人の貸し借りに見えるように配慮せざるを得ませんので」


「ふむ…となりますと、我が国も釣り合いを取る意味でも、貴国に人材を拠出した方が良いでしょうかな」


「その辺はお任せしますわ。ただ、美男公の場合、うちの東欧支部長の関係者の統治地域を侵略しようとした懲罰代わりに捕虜にしたら意外に本人が有能かつやる気で、あれよあれよと出世してしまった一面がありまして。更にイザベル陛下に至っては我が国の債権回収作業まんだきんゆうのしごとの結果、自らとアナ様を差し出すことになった経緯がございますからねぇ」


「イザベル陛下のご事情は伺っております。ま、件のイザベル陛下におかれましてはご愁傷様としか…」


「貴国がスペインを殴り辛くなりました心中はお察し致しますが、言い換えれば商売のタネが出来たとも言えますでしょ?」


「まぁ確かに…海事研修に始まり、合同造船所経営や造船技術ライセンスに国際特許事務所に…数え上げればきりがありませんな。ただ、貴国のご指導あっての我が帝国の利潤享受。この姿勢は強く訴えておけと女王陛下よりきつく言われております。うははは」


「神聖ローマ帝国とフランスを殴りたいのは山々でしょうが、真綿で首を絞めるという言い方が我が国にはございまして。ほほほほほ」


「個人的にはベルサイユ宮殿が革命の炎とやらで燃えて崩れ落ちる様を是非眺めたいのですが。はっはっはっはっはっ」


…何ですかこの微妙な上にも微妙を極めた空気はっ。


(外交なんてだいたいこんなもんだろ。特に今、あたしらの前に並んでる連中がどこの国の人間か考えてみろ。あたしのお祖父様を水割りにしたようなもんだよっ)姉がぶつくさ申しております場所。何を隠そうクラブジュネス・淋の森店です…。貴賓ラウンジがあるのに何でここを使うのですか!


(そりゃあベラ子君、我が国の象徴ともいうべきエロ文化の花咲く様を見て頂きたいからだよっ)

あまり見せて良いものじゃない気もするんですけど…。


(ムーランルージュ風情にデカい顔をさせて良いのかね? マリーには悪いが欧州助平選手権トップを突き進むのはどこの国が良いのかね?)


…そんなもん突き進みたくありません!


(ベラ子へーか。うちの国を助平の塊のように評価するのはやめて頂きたいのですが!)


(でもマリーちゃんち、ブローニュの森とか混浴スーパー銭湯とかあるしっ)


(痴女皇国の時代にはまだそんなもんございませんっ)がるるるると唸ってそうなマリーを宥めたいのですが、直接の敵ではないにしても祖国と英国の関係がもーのすーごーく微妙、敵か味方かで分けると敵分類される国出身のマリーを今、クラブジュネスに呼ぶ訳には行きません。


それに今来たら最後、絶対にあたしのツケでピンドンかクリュッグかヘネシー辺り頼んでラッパ飲みド◯タ飲みすると思いますから。


(流石のあたくしも◯ヶ崎エレジーな一升瓶飲みは致しません!そういうスタイルのお酒の嗜み方は酔いどれアル重巡洋艦の国の陛下にお任せします!)


(マリー。あたしも堤防(せっかん)という痴女宮の作法を覚えておく必要性を痛感しましたので後でお付き合いを。それは良いとして…ちょっと真面目な話ですよ。ニオオフラーネさんの行動監視結果はどうですか)


(んー。うちのダリアさんからも言われてますから、各部門女官による合同監視体制を密かに組んでおりますけどね、今のところ不穏な動きは見られませんね。聖院の方のダリアにも聞いてみましたけど、聖環より罪環つけとく方が監視は楽なんじゃないかと言われました。ただ、罪環は出来れば避けたいところですわね)


(引き続き体制維持願いますよ。関係者によると特殊暗示が発動する可能性が一番高いのは就寝後らしいので)


(しかしあんな糞な上にも糞な村、よくも野放しになっておりましたものですわね。修学宮の犯罪学部門の新たな教材扱い確定ですわよ…)


(マリー、おめーの国にも猟奇的な大量殺人やらかしたアホはいなくはねぇんだけどな、いけにえ村と違う要素があるぜ)


(犯罪に加担した人数、でしょうか)


(ああ。組織犯罪として考えても異常な部類だ。他ならぬ英国のソニー・ビーン一族ですら一家でやってるだけだし、これ以上に頭がおかしい部類は…浅間山荘絡みの過激派とかΩな電気抵抗とか…宗教が絡むとガイアナ人民寺院事件だな。Ωもそれをやりかねなかったが、あいつらは外側に暴力性を向けたし…)


(…ぎゃあああああ…これ、うかつにいけにえ村を攻めて犯罪を暴こうとすると、この人民寺院の二の舞になりかねませんわね…)


(だろ。だから慎重かつ、なるべく早くカタつけてぇんだよ。ニオオフラーネを媒介にしてこちらを探るくらいの力はねぇようだけど、生きてるか死んでるかは分かるみたいなんだよな)


(例のかぶき者のお侍様はどうなさってますの)


(とりあえず装備訓練。なんせ現地の状況を偵察しようにも上空から判別不可能、頼りはニオオフラーネと、潜入に成功した町のおっさんの記憶だ。北欧支部に協力してもらっておっさんの頭の中抜いて、ニオオフラーネの記憶と突き合わせて現地を可能な限り再現した場所を江戸郊外にこしらえて制圧訓練中だよ。あ、ベラ子。今回かーさんは何がなんでもTAPPS7乗務になるからスケアクロウのコパイ、お前な)


(えー…)


(あのおばはんでないと無理物件その1なんだよっ、TAPPS…更に今回は聖院側でも似た作戦を同時進行するけど、あっちにはニオオフラーネに該当する子がいないから荒事が出来る。ぶっちゃけこちらの作戦に合わせて向こうは向こうでMIDI組み上げて、地球の裏側からポルノ王国丸ごとマジェスティックキャンセラー・アクティブバーストで消毒しちまうからな。で、向こうのスケアクロウ13号機が空くからこっちの作戦に協力してくれるが…今回は11号機と13号機の二機体制でないと痴女皇国側の作戦が遂行できねーんだわ)


(何で地球の裏側から…)


(蛇が地底に逃げられねーようにだよ。だからこっちも向こうもエマ子とMIDIは絶対に痴女宮に配置しておく必要があるんだ。更に言うとテンプレス2世も村の場所が固定されねぇと動かせねーからな)


(はぁ。厄介な相手ですよねぇ)


(救いは鬼作戦の時ほど広域じゃないって事くらいだな。ただ…紫薔薇と黒薔薇は全員投入する。村の人間は百名未満らしいが、全員回収して男は()()()送りだ。うちの工場でもいいんだけど、幕府が土建関係の労働者を欲しがっていてな。たはらで揉んでから使う方がいいだろって話をしたんだよ)


(それであの箱みたいな車を…)


(いや、あれかーさんが悪いんだよ…ムカつくからあのおばはんに購入費半額出させたけどな!)


(あれそもそも何で買ったんです? けいとらで十分な気がしますけど…)


(ああ、細かい経緯は言ってねぇか…ほら、前にお前の乱暴ルギーニをあわや下取りにしようとした件があっただろ。お前がむっちゃ怒ったやつ)


(ええ。更にその後、かー様が悪いのに逆襲してきて母娘で醜い戦いを繰り広げましたからね…)


(んで、あのレで始まる東大阪のお店だが、実は監獄社系列のディーラー…販売会社が経営していてな。店舗は変わるけど監獄社の車は全車種買えるんだよ)


(ふむふむ)


(んで、まりあ状態で母がご迷惑をとお詫びに行ったついでに痴女皇国の事情とかさ、軽トラ買おうかという話が出てんの説明したら、差し当たり池田社の軽トラの監獄社版とか、更に他社分もうちがまとめて業販で入れて一括納入する、保証もつけると言われてなぁ)


(で、そんだけされて何も買わないのもなぁって事で、お祖母様やクレーゼ母様…母様は運送屋の関係でダンケ号何台か買った事あるから付き合いあったし、あそこならと許可出て、まず国土局用に例の泥棒が狙う四駆を買った。あの結構いい値段したやつ)


(あー、理恵ちゃんが大名気分だって言ってましたね。ただ…あたしのと変わんないくらいおっきいですよ…)


(それにりええは分身もまだ若葉マークだろ…とりあえずりええには山道で走らせるなと厳命したけどな…んで第二弾。これは白マリも噛んでるけど、積載量があって人も運べるやつが聖院でも欲しい。金は出すからという事で検討した結果、あのダンケダンケでこれまた泥棒が狙う車を痴女皇国と聖院に4台ずつ入れようとなってな)


(それはいいのですが、何であの色にっ)


(ああ、かーさんやクレーゼ母様の時に付き合いがあった運送屋で注文したけど発注キャンセルになったやつ。悪い事にその会社の色で発注しててな…。で、新車在庫で即納なんだけど、こんな色だから値引き入れますよって話をされてさ。ほぼ原価の10パー掛けくらいの向こうが泣く値段だったし、うちも痴女皇国や聖院で使うなら色を気にしねーだろって事で)


(かー様怒ってましたよ。きょじ…関西に持ち込む色やないって)


(それはその会社に言え!言っておくがそこ、あたしが通学に使ってた電車の乗り入れ先の六甲おろし社の子会社だからな。親会社ともどもわざとやってんのかという気もするが)


(描かれてる虎マスコットとかどうするんですか!)


(若様経由で甲子園社に購入経緯を教えてどないしまひょと聞いた。むろん本音は消すのめんどいし、再塗装したら全損か事故車扱いだからそのまま走らせたいに尽きる)


(で…消されてませんよね…)


(日本国内またはアフリカや中東で見つかれば問題だが、痴女皇国や聖院世界なら仕方ないだろう。逆に何かのタイミングでカメラに映ったらそのトラトラ運送や尼崎セン◯ープールな会社の宣伝になる。何なら球団ロゴや虎柄の使用許可も出すと言われてなぁ)


(まぁ、向こうがいいと言ってるなら…隠密活動に使いづらいとダリアが泣いてるくらいですね、今のところ文句言ってるの)


(更に入れ替え予定の中古高速バス買いませんかとか言われたが、流石に拒否っておいたぞ。東名や名神どころか東海自然歩道の道幅広げたレベルの道ばかりなのに、深夜バス走らせる気はねぇよ…りええはやられ号をヨーロッパで走らせたいみたいだが)


(向こうのやられバスって二泊三日とかザラなのでは…)


(いや、例のやられ号社の系列の車体会社だよ。あそこがサハラ砂漠仕様とかアフリカ仕様をガチに売り込みたいらしくてな…)


(なんか日本の会社って割とゴリゴリ売り込みますね…)


(化学調味料や醤油を全世界に広められた理由がわかっただろ? とりあえずダンケ号は4台ずつスケアクロウに積んでいく。そんだけ積んでもかぶき者御一行の積載も余裕だが、希望があればカティサーク型の都合もつけようか。イギリスは北方帝国向け毛皮交易ルートを作りたがってるから、ポルノ国から足を少し伸ばせばすぐロシアだからな)


(ああ、金悟洞のおじさんが元・倭寇で船には慣れてるからお船でもいいとか言ってましたっけ。あのおじさん、龍皇国人なのに何で日本の海賊を名乗ってたんですか)


(怖がってもらえた方が方が仕事がしやすいからだよ。黒ひげの海賊スタイルと同じ理屈さ)


(それで日本語も出来るしあっちの犯罪組織にも詳しいと…)


(捨丸や慶次郎の旦那がいたとは言え、幇や半島上がりの廃兵暗殺団を返り討ちにしちまうくらいの腕前だからな。殺し屋として見たらこの時代だとトップクラスだよ。あのおじさんの後ろには絶対黙って立つなよ)


(立ちませんっ)確かにあのかぶき者御一行様、イタリア人視線で見れば慶次郎さん以外はイケてません。今の奥さんの伽姫様にしても、古代日本人の血も入っているそうですが、たのきち成分強めの地味子さんです。ただ、仕草はめちゃくちゃ上品ですけど。


ですが…全員、仕事が出来る部類です。


それも半端ではなく。


敵を倒した数を四人合計すれば一万人にはなるそうですが、本当にそのくらいは余裕でやりそうなほど場慣れしています。


普通の人間なのにダリアや黒薔薇と組んで潜入行動が取れる時点でとんでもない気がしますが。


(そりゃ捨丸の兄ちゃんにしても抜け忍だから毎日命を狙われてる生活が長年続いてた訳だし、骨のおっさんに至っては金と秘密次第でどんな仕事も請け負ってたからな。あのおっさんが失敗したの、慶次郎の旦那の暗殺依頼だけじゃねぇかな)


(太閤殿下の密命で、佐渡本間家処分の際に上杉景勝様を暗殺しようとして慶次郎様が阻止しておられますよ)そこに入って来られたお方。


「しー、内緒でございますわよ。公使様方…此度の件ではそちらにもご迷惑をと」侍女らしき方を連れた前田まつさんがそこに。


何かこう、この時代の日本人離れした印象を受ける色気と貫禄を感じます。


イザベラ・デステという類似物件が身内におりますが、本当にこの方、物事に動じませんね。


「おやおやこれはミセス・マエダ」


「お気になさらないで下さいませ。私も異国の特殊な風習、使命以前に興味があるからこそ観察しておりますので」


「付け加えさせて頂きますと、本国からも現地事情調査の他、道や海路の状況調査を申し渡されておりますからね。カティサークの喫水で航行可能な水域とかは特に」


(もしも現地へ軍を差し向ける事になった場合の事前調査をするぞって意味だよ。NBの連中もそうだけど、ほんと、こういう事には抜け目ないからなー…)


(江戸湾でもこっそり水深調査をしてましたね。要所要所に色つけたロープ投げ入れて)


(ゆくゆくはテンプレスやアークロイヤル入れるから喫水まで掘り下げるぞって言ってんだけどな…)


「そうそう、サトウ様のお祖父様、いけにえむらとやらがあります国のご出身とか。いかに昔の神様の話がございましたとしても、果たしてそこかしこでいけにえを捧げるお国柄なのか、わたくしには信じかねますのですが」そうそう、お二人とも浴衣のような感じの薄手の和服ですよ。そしてお付きの女性は奥村加奈さん。富田流小太刀の免許皆伝でなぎなたという長い柄のついた刀も得意らしいですね。


「実はですな…我が祖父の出自、単純にあの自由好色王国の出と言うには少しばかり注釈が必要でしてね」


「ほう」


「あー、あの戦争講和条約で一時期だけドイツから削り取られて助平本王国になったあそこですか!」


姉が驚いていますね。


「そうなのですよ…ですから本当は祖父、ジャーマン人系でして…むろん助平王国本土ではなく飛び地扱いなのです」で、サトウ様の説明に加えて姉が地図やら何やらを出しております。これ完璧にドイツの一部じゃないですか。


「確かに、これは件のむらとおぼしき場所から相当に離れておりますわね」


「ええ。件のむらにさらわれたおっさんたちの町…イェブレからは直線距離で700キロ。江戸基準で言うと津軽か安芸に行くくらい離れてますね」


「ま、そう悲観なさらずに。確かに私の家系からはかなり離れた地域の話ですがね、実はこの辺り一帯を治めていた民族、後に我がブリテン島に渡り我らの祖先ともなっております。更に彼らの神話は文学として我が国の図書館や学校にも収集されておりましてね。文字も…恐らく保護女性、ルーン文字を使えると思いますが、我らの祖先にも用いていた者が少なからず」


「おまつさん、つまり…北欧神話について全く知らない訳じゃないんですよ、サトウさんをはじめ英国の方々。ちなみにあたしも多少は知ってるぜーっ」


「ねーさんそれ全く自慢になってないっ」


「ベラ子てめぇハリセンはどつき漫才として容認してやるが、もう少し手加減しろよっ!」


「まぁそれはそれとして、北欧神話や向こうの文化といけにえの風習の関係ですよ。ザ・蛮族じゃ安心して交易に行けない懸念があるから実態調査をしたがっておられる訳ですやん…」


(ベラちゃん、おばはん語…!)


(ねーさん、駄洒落菌より母様語の治療ワクチン作ってって叔父に切望して頂きたいんですけど)


「とりあえず北欧神話というのは、主にノルウェーを中心に語り継がれてきたものなんです。で、ここで注意頂きたいのが、北欧三国のうち右のフィンランドには別系統の神話が存在します。そしていわゆる北欧神話とは出てくる神様がまるっきり違います。ここ注意」と、姉が申します。


しかし…なんで白ブラウスタイトミニ濃いめタイツパンプス伊達眼鏡装備する。


「うるせぇ。お約束だ。それより、北欧神話というのは実は上位の神話が存在する。9世紀から12世紀にかけて広まったゲルマン神話の中に北欧神話が入ると思ってください。日本じゃ平安時代から武士が鎌倉って蛮族度を研鑽している時期ですね」


「つまり紫式部が清少納言を悪う申しながらいけめん小説を書いておりました辺りにございますね」


「…おまつさまの現代順応性が密かに高そうな件…」


「失礼、帝の御姉妹様がた。女とは流行りに弱きものなのです!加奈…そなたですら江戸に発つ前には色々買い込んでおりましたでしょう?向こうは白粉も手に入れにくいからと…」


(ベラ子…いいか、顔面工事用のホワイト系コスメだ…覚えておけよ…)


(ええ、ねーさん。きっちり記憶しました)


(ああ、この時代の鉛白白粉は身体にめっちゃ悪いんだ…ふっ、後は分かるな?)


(しかも美白が流行りのようですねぃっ)


(ちっ、SK-*…P&GはNY市場か…イタリアだと化粧品の有名どころってどこよ)


(美白ならBionikeですかねー、プーパあたりも)


(おい…上場してねぇっぽいぞ…仕方ねぇ、4911.4922.4927.T辺りを抑えて…P&Gは成り行きで買っておこう。雅美さーん、ちょっと聖院で化粧品、特に美白関係のメーカーコンタクト取りたいって話、練炭系とか河口湖系の証券情報コミュニティ中心に流してくんね? ついでにそれ流した半日後くらいに指定銘柄の空買いぶっこんどいてよ)


(ねーさんそれいんさいだーとモゴモゴもご)


「でぇ、口頭伝承も多い北欧神話を取りまとめたアイスランド在住のスノリ・ストゥルルソンというおじさんが新・エッダとされる神話編纂を発表します。これに対して別の場所で編纂された古エッダという文書が発見されており、北欧神話を理解するためにはこの新旧エッダと、必要に応じて各地に伝わるサガと呼ばれる物語を参照していく事になります。スノリのおっさん自体は連邦世界の地球ですといえめん宗教の信者なので、ロン毛のお兄さんの見地からエッダをまとめてますので、文章にする際に偏見というかキリスト教の見方が入ってんですよ。極端な話を言うと神様とかの名前、スノリが後付けで付けたの結構多いです。ですから北欧文学や歴史学・民族学を専攻する人は古エッダの方も参照しないとならないしばくぞ状態なの程度でいいです。今の段階での理解」おい。


「だってまともにやると本一冊で済む話じゃねーってのよ。で、北欧神話の基本はユミルって巨人が産んだ子供の巨人たちとアウズフムラという名の原初雌牛が掘り出した原神から始まります。で、巨人族と原神族がオーディンを始めとする神々を産む一方、神々は巨人の強大さを恐れてユミルを殺しますが、ユミルの他の子供たちと争います。この争いは神々の黄昏(ラグナロク)と呼ばれる、巨人族と神族の最終決戦まで続きます」


「で、この最終決戦までの様々な話の大半が口頭伝承だったり詩や散文だったりと、さながら遠野物語をまとめた柳田國男先生もびっくりの根強い調査でスノリは神話をまとめますが、流石にめんどくさかったのか、スノリが勝手に命名したり膨らませて書いた話が結構あります。さっきも言ったろ?ベラ子」


「だから連邦世界を基準にして話すけどよ、北欧神話自体は…仮に神様が実在してたとしても、100パーセント事実を伝えてるわけじゃないんだ。ここ注意な。そして…現代のフリーおめこ王国のストックホルム県ウプサラ郊外にあったとされる神殿や聖地の伝承を、ドイツの研究者が調べ上げた結果がある」


「ウプサラってストックホルムから割と近いんですよ?座席指定の特急で40分、日本で言う通勤電車で50分ってとこですね」


「おや、フリーダちゃんいたのかよ」すけべい衣装に身を包んだ白人系の女の子が。


ステータスを見ると移住プログラム適用者ですね。


Frida Gustherene フリーダ・ギュストヘレーネ 100 Suction 百人卒 Pure female Visual 女性外観 Rosy knights, Imperial of Temptress. 桃薔薇騎士団


「あたしウプサラ大学で民族学取ってましたよ?声かけて頂いたらお話しましたのに…」


「ごめんごめん、しゃーねーなー。んじゃフリーダ、ウプサラ神殿の生贄の風習とか知ってる?」


「ええもちろん。簡単に言いますと、私が通っていた大学のあるウプサラ郊外の空軍基地の横くらいに、昔の遺跡が残ってます。これが古ウプサラ。神殿もここにあったとされています」と、てきぱきと地図を出してみせるフリーダさん。結構身長高いっすね。あたしより少し上ですよ。


「で、ウプサラ神殿に言及してる有名なのは二人。まずさっきマリアへ…マリアさんが言われてたスノッリ・ストゥルルソンですね。それともう一人はなぜかドイツ人でブレーメンのアダムなるおじさん。このおじさんは正確な出自が分かってないんですけど、ブレーメンやハンブルクの教会に勤務していてそこの教会史の編纂に関わったとされています。つまりキリスト教関係者の神職ですね」サクサク話を進めていくフリーダさん。


「でぇ、生贄の風習ですがねぇ。あります」ががーん。


「ああ、ウプサラ神殿…やってたな」


「この世界にウプサラ神殿があったり生贄の風習があるかどうかは私はわかりませんけど、少なくともさっきのスノッリやアダムによると、まず根本的にウプサラ神殿は神に生贄を捧げる場所です。それもイベントごとに。まず結婚がある場合は女神フレイに。戦争の勝利を願うならオーディンに。で…飢饉や疫病の場合は雷神トールに犠牲を捧げなくてはなりません。そしてその犠牲が問題なのです」


「なんかやばい雰囲気だな…」


「続けていただきましょう」


「で、キリスト教徒の場合、その生贄の対象から逃れるためにお金で自分の身元を保証する…つまり身代金を払う風習があったようです。どうも生贄にする対象、優先的に異教徒や異国人を狙っていた可能性も考えられますね。そしてこれ、かなり残酷な風習とスノリやアダムは記してます。特にアダムはボロクソに気色悪いと書いてますねぇ。なんせ…生贄の死骸は木にかけられて腐らせるんです。それも腐ってる方が神様、とりわけ女神が喜ぶとされてまして」


「うん。そーそー。フリーダさんの話であってる。しかもさー…その数が半端ねぇんだわ」


「ええ。まず生贄の条件。できればあらゆる種類の生きた雄の生物。そして、ウプサラ神殿では春分の時に九日間この儀式を行い、一日に二体の動物を含む九つの生贄を捧げる必要があるとされています。これ、生贄の中に人間を含むってはっきり明記してますから。で、九日間で少なくとも72体の生贄を木にもたせかけるそーです。更にこの際には春分を祝う祝宴も併催されますので…お祝いの食事とえげつない生贄の儀式を同じ日にやってたの確実なんですよ…私の顔色が悪い理由も察してください…」


「うえー、私らさっきご飯食べたばかり…」


「側で聞いておりましても、あまり近代的に思えない風習ですな」


「どのように生贄を処分していたか、具体的な記述がないでしょ?」


「ええ。恐らく、供儀の儀式は異教徒には禁足だったと考えられます。もしくはあまりの残酷さに、どう殺すのか書かなかった可能性も。ただ…泉に放り込んで、浮かんでこない場合は願いは叶うという習わしもあったんですよ」


「え。生きたままですか」


「もちろんです…祖国の過去の嫌な風習なんであまりベラベラ喋りたくはないのですが、マリア陛下の話を聞いたり、頭の中の記憶共有してますからねぇ。あの女の子、恐らくその五月の風習を独自にやってた村の出身でしょう。女神フレイに人を捧げるのが一番喜ばれると言う観念、当時のあの界隈では一般的価値観でして、結構な犠牲が出た筈ですから。むろん、大量に人…それも労働力たる男性を殺して行くのはもったいないと思ったのか、ウプサラ神殿に集まって供儀の祭りにあやかるのが習わしだったようですけど、ウプサラから遠い場合は自分たちの居住地でしていた可能性は否定できません」


「ああ、例のホラー映画でやってたあれまんまね」


「あの映画は私も見ましたが、九という数字にものすごくこだわってる風習をよく再現してると思います。そして映画でははっきり触れられていない重要事項。女神に捧げる場合は雄の生贄。ではオーディンやトールに捧げる場合は?って話になりますよねぇ」


「…ああ、女性も逃げられないのね…」


「よくもこのような野蛮な風習を…」


「いや、バードさん…これはアステカ帝国やインカ帝国だの、あるいはこの界隈の首狩り族の風習とかもそうなんだけど、神に生贄を捧げる儀式そのものは世界各地では結構あったんだよ。日本にも昔は王の葬儀の際に家来や奴隷を一緒に埋めて犠牲にする風習が存在した。…ただ、本当に埋めると人的損失が甚だしいだろ?だから埴輪(はにわ)や、龍皇国の墳墓から出る兵馬俑(へいばよう)のような代用品を使うようになったんだ」


「付け加えておきますとウプサラ神殿は祖国のキリスト教化に伴って廃止され、その跡地にキリスト教の教会が建造されました。恐らく、皆様と同じ感慨を抱いたキリスト教徒が供儀風習の廃止を実力行使した結果と思われます」


しかし、思わぬところで詳しい人が現れて解説してくださったおかげで、理解も進みました。


「ねーさん…これ、あたしたちや他の皆様は嫌悪感しか思い浮かびません。ですが…そのいけにえ村の人たちはこの風習こそが生活習慣であり正義であると心底信じてる可能性、強いと思いますよ。つまり私たちが不潔で野蛮だからやめろよと言っても簡単にやめてくれない、話をしても延々平行線となる悪い予感がします」


「もちろん、あたしもそうだ。だからこそハ○エース仕立てて拉致りに行くんだろうが。あっちにゃハーメルンの伝説に類似した神隠しの事例もあるんだから、それをあたしたちが実現してやろうじゃないの」


「なるほど、今まで拉致を重ねていたのだから拉致し返すと。古代北欧の報復風習にも通じる考えですね」そんな風習だったのですね…。


「ええ。基本、やられたらやり返すのが昔のバイキングの考えだったんです。報復しないのは臆病者とまでされてましたから」


「だが、報復されても困るんでねぇ。あとベラ子。これは絶対条件だ。慶次郎の旦那とお供と伽姫様は絶対に五体満足で比丘尼国に連れ帰る。蛇や巨人が、人の手に余る状態で出てきたらあたしがMIDIで倒す」


「ちょっと待ってくださいねーさん。慶次郎さんと家来の男性三名はわかりますよ。なんで伽子さん連れて行くんですか」


「…ああ、伽耶琴のレプリカの手配、頼んでただろ。本当は伽子さんの持ってるオリジナルの伽耶琴が一番いいんだけど、新羅琴でも代用できなくはない筈だ。あの生贄村の連中の感情制御を打ち砕くためにはだな、伽子さんと伽耶琴が必要になるかも知れねぇんだよ」

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