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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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番外編・親の因果が子に報い?

「で、小学校からの同級生と離れたくはない、と」ヒアリングされた内容に内心、頭を抱えつつも要点項目に目を通して行きます。


「で。件のなんたら女子学園は、在校生家族への悪影響を避けたいと」


「送迎であーみーまーかアーマード何か知らんけど、めっちゃイカつい車何台も来てるやん。送迎車に国産はレで始まる奴以外あかん言う不文律があるみたいやけど、うちらのトラクターヘッド、外車も多いねんぞ。スカト◯やなしにスカ◯アとかペガソとかボロボとかっ」


「アークロイヤル級もテンプレス級も外車というか外国船ですわよねぇ」


「しかし、親の確執や思惑は子には伝わりづらいからなぁ」


「ですわねぇ…この件、もいっこ問題がありましてよお義姉様」


「あー、あそことかあそこの親御さんから聞いた。学校側が生徒の転校流出を恐れてるから、PTAと結託してよそに行く子と仲良くすんなとか言ってるらしい件な」


「普通は、流出を恐れるなら囲い込む方向で考えますわよねぇ」


「校長や学年主任の頭の中を覗かせて頂いたけどさ、うちの娘らには出来たらよそ行って欲しい。理由は、半分くらいの父兄が反対してるPTA側と、経営をガラス張りにしたくない学校側の利害が一致してるみたいやね」


「ですわね。有り体に申し上げて学歴ろんだりんぐですか、就学歴だけは持たせたい子女が幼年部や初等部に紛れ込んでいるらしき話、保護者の集いで聞いたことがありますわね。現状ではそういう、お金で学歴を買うが如き層の声が大きいとなりますか」


と、痴女宮21階にて保護者の集いを開催中のクレーゼさんとあたし、ジーナさんですよ。


ちなみに財務部ですが、出納部にディアディリーネさんを抜擢した上で財務部長にクレーゼさん、財務局長デルフィリーゼさんとなりました…。


言うまでもなく、デルフィリーゼさんはクレーゼさん、そして双子としてアレーゼさんを産んだお母様で、あの肖像画を見るまでもなく、明日のために子供は叩きのめす方針で恐れられていた方でした。ぶっちゃけ、マイレーネさん同等以上の恐怖の大王ポジションだったと…。


しかし復活後の痴女宮事情を鑑み、女官教育については女官長と騎士団長のコンビに任せる方向で行くそうです。


「私の金衣当時とは世情が異なるし、連邦社会や比丘尼国からの受け入れ者を預かる現状であれば、昔はこうだったが一概に通用はしますまい。何を隠そう、この私とてアデルリーゼ…先代金衣にして実母から昔はこうだったと口やかましく言われた部類でしたからな」とは本人の弁。


で、そのデルフィリーゼさんもあたしやクレーゼさんの娘たちからすれば祖母の立ち位置とあって、財務本部の応接席を借りて三人でお話中なわけです。


「しかし我が孫娘たちの懸念はわからなくもない。あの年頃だとまだまだ多感であるし、別離を理性で理解するには感情が勝る段階であろう。ここは一つ、仲の良き学友の父母にはだ、かようなやましいところ大な学舎に通わせて良きものか。事情が許すならば我が孫娘たちの後を追わせてもと吹き込むのも手かと考えますが」


「あ、なるほど」


「確かにお母様の話の方が我らのみならず、日本政府や連邦方針にそぐう傾向に世を誘導する話ですわね」


「全く、宇宙人…異星人を受け入れるよりは遥かに楽な話やと思うねんけどなぁ」これ、聖院も痴女皇国も、連邦世界との接触後に関係者全てが悩んだ話なんですよ。女官種や痴女種という、人類に対する上位互換生命体をこっちに受け入れさせる努力は並大抵のものじゃありませんでした。


そして、今は更に八百萬神族や鬼族など、痴女種からしてももうひと段階、人類を超越した存在が現実的に聖院や痴女宮を闊歩して経済活動に参画している現状です。


幸いにして彼らは連邦社会で存在を知られた諸々と類似または完全同一体であり、人々との付き合い方をおおむね心得ております。


ですので、問題はむしろ、そういう人外と相対した連邦側の皆様が彼ら彼女らと如何に接するかだと、元をただせばロシア系日本人なあたくしジーナ・ワーズワース・高木は考えるわけなのですよ。


「して、孫娘らは今は」


「とりあえずまりあともども21階に一室を与えています。一度、こちらで預かっている子女の日常も見ておきなさいと。たのちゃんと内侍様が教育中ですわね」


「差し当たり、親にも言えぬ話はあの二人に告げよとは申し渡したが…」


「こういう時はアレーゼさんに預けると話が早いんですけどね、あの人、今めちゃくちゃ忙しいですからねぇ。マリアリーゼは高木まりあもここ住まいにして、監督役をさせるつもりですけど」


「阿波内侍殿だったかな、怨霊神殿の巫女役のような方、あれには懐いておるようだが…」


「本人さんに聞いたところ、尼僧時代に寺で孤児救済めいた事をしていたらしく、心得があるみたいでして…通常女官研修は半日で切り上げて文教部に回ることになりました。田野瀬文教局長も田中広報統括部長も賛成していますね」ああ、立場的にはあたしの方が上なんですが、正直、デルフィリーゼさん…口調で分かると思いますけど貫禄の塊です。外観はああ、アレーゼさんの母親だなぁ、としか。ただ…威圧感を和らげるためか、アレーゼさん女心モードですから脱いだら女官がAEDな体格じゃありませんよ。


「あ、田野瀬さんと田中さんの名前で思い出した。マリアリーゼから来ていた部局制度の稟議書、お二方には回っていますよね」


「うむ。内容的にも妥当であろう」


「室見さんが、あたしの代わりがー!と泣いていたくらいですかねぇ、問題」


さて、ここでマリ公が出して来やがった人事案、以前これでどうかなーとたのちゃんあたりに聞いていたやつを覚えておいででしょうか。


実は財務以外にも色々仕事が増えた痴女皇国、某日本国他の民主主義国家などの近代体制に倣うべく、組織改廃や人事異動をわりと頻繁にやっているのは皆様にもお分かり頂けるでしょう。


もはや恒例行事と化した気もなくはありませんが、とりあえずはこんな感じで行くようです。部署のすぐ隣が局長または部門責任者とお考えください。


皇帝室 あたし(クリス)・ベラ子

内務局 初代様・マリ公

外事局 るっきー・雅美

財務局 デル子・クレーゼ・ダイア

文教局 たのきち・シェヘラザード・玄奘

厚労局 美男公・マリー・クライファーネ

国土局 理恵ちゃん・エマ子・ナディア

警務局 アルト・ダリア・凛ちゃん


で、理恵ちゃんが数年にわたり地味に地道に勤めて来ていた女官長職。ですが…比丘尼国を皮切りに展開予定の鉄道事業にはこの子の知識が不可欠です。


あのエマ子をして「うちは道路はまだしも鉄女は適性ないみたいで…理恵さんは鉄ヲタ扱いを嫌がってますけど、あれだけはあの人に譲ります。JRの役員どころか連邦政府の交通事業開発局でも通用するのでは?」とまで言わせた逸材認定を無理矢理食らって泣いています。


そして、泣いてる理由は鉄ヲタ認定だけではありません。ダリアと二人で築いて来た痴女宮女官教育のポジションを離れることにあるのです。


「これ真剣に悩んだんですよ、あたしだけじゃなく幹部全員…理恵ちゃん、マリーの後を引き継いだから苦労もひとしおだったの、みんな知ってますからねぇ」


「うむ…なればこそ、本来なら禁じ手のあれを実施した訳だが…我ら歴代金衣・銀衣の復帰とは意味が全く異なる話であるからなぁ…」デルフィリーゼさんの顔にも苦悩が滲みます。


「死者を甦らせるのは秩序崩壊に繋がると初代様も、おかみ様も踏み切りには躊躇しておりましたものね…」そうです。先程お見せした配置表の中に、事実上それをやらざるを得なかった御仁がいるのですよ。


で、罪人管理を含む労働管理量の拡充に伴って、女官長経験者で工場労働にも罪人の扱いにも長けたマリーが痴女宮復帰したのは良いのですが、いくらマリーでも、聖院時代からすると十倍を超える人数の罪人管理と女官管理は無理!というのは、本人の悲鳴を待たずにわかることでしょう。


鬼教官として悪名轟くマリーですが、一方で手腕評価の声も高いのは事実。


天の声の評価いわく「地味で空気だけど、休んだら最後職場が発狂するのがりええ。みんなから嫌われてるけど必要性が認識されてて、嫌う奴多数の一方、庇うもの多数なのがマリー」との事でして、あたしもこれには合意しておきます。


そんなマリーとコンビを組むポジションが務まる人材…。


メーテヒルデ「鯖挟国や鬼汗国や北方帝国監視要員代役を誰かください!中東地域本部って、乳上とスイスとイザベルさんとスカートまくり全部の担当地域くらいあるじゃないですか!」


アルテローゼ「東欧支部にそんな余裕があるとお思いでしょうか。例のけいとらでバルト三国からブダペストまでで結構ですから走ってみてください。うちに任せられた広さを呪いたくなります事請け合いでしてよ」


サリアン「確かに人材は預けられておりますが、欧州各地であっち行きこっち行きとやってるのが実情です。トライアンフのオフロードバイクも貸与頂きましたが、それを以ってしても欧州の広さを実感するしかありません」


イザベル「アナをこき使いましたり、イタリア支部のカテリーナ殿下にも助けて頂いていますが、地中海沿岸で手一杯です。この上大西洋の向こうのカリブ沿岸まで面倒見てたら死にます。さっさとフランスを殴り倒して痴女皇国管理下にして下さい。あと債務減額希望」


アレーゼ「売女…ちょっと北米大陸でネイティブの調伏の手伝いを頼んでいいだろうか。いや、マツカゼの脚でも横断するだけで何日かかるか知ってるだろ…」


マイレーネ「アレーゼ様に同じ。コクオウは駿馬ですが、やはり欧州は広うございます。更に、痴女皇国初期のように手荒に人を集める訳にも参りませぬ。現状では人材、地産地消とならざるを得ませぬ」


よりみつ「難しい話であるな…確かに我が朝廷、神官の数は痴女宮在籍者と最低でも同数はおるが…聖母殿もご存知の通り、諸国に置きたる社、つまり神社の管理があるのじゃ。なるべく貴国の実務に耐える人選は図ろうとは思うが、我らもきんだいかの端緒につき人手不足は似たようなものである。教育を兼ねて送り出すにやぶさかでは無き故、今しばし待たれよ。あと、うちのおかみ様…正直いない方がはかどる時も多々あるからな…戻して欲しくもありなくもあり」


とまぁ、人を無心どころか、各地からの苦情やら要望やらを逆に聞くハメに!


で、どうしたか。


「はぁ…いえ、アルトさんやダリアさんとはどうしても意見が合いませんでしたからねー。あたくしもあーめんどくせー剣で決着つけちゃらーと吹き上がりまして、結果はご存知の通り。で、本来なら精気枯渇で…でしたが、いや、まさかその後の現状がこうとは。それ知ってたらもちっと我慢しておりましたかもですわねー」と、のたまう本人。


「いやいやジーナ様、現状について状況共有させて頂きましたけど、今だと聖院時代とあんまし変わりませんのでわ? むしろ連邦世界のもろもろが入って来てますから、あたくしの騎士時代より便利に…一番おっきいのは痴女種化ですわねー。あの熱問題があっさり片付いたのはやっぱ大きうございますよー。いやー快適快適」


「でもさークライファーネさん、身体大丈夫なの?」


「んー、女官の時より動きますね。それより聖い…痴女宮の構造はもちろんですけど、女官の仕事も当時の聖院からはかなり変わってますからねー。ついて行けるかが心配で」


「とりあえずオリューレさんに付いて復帰研修、そーねー、二週間でいけますか?」と、理恵ちゃんが体調を聞いているのは初代クライファーネさん。聖院に今いてる人の痴女皇国歴史での方です。


そう、痴女皇国開闢にあたり聖院時代との方針の違いから、アルトとやり合って負けて去った人です。今の痴女種もそうですが、基本的に千人卒以上の女官が持ち場を離れるイコール死亡。


自殺行為とも取れるこの行い、完遂される直前に時間軸遡行したエマ子が精気充填して身柄かっさらって来てここにいる次第。


ついでに現行痴女種化処置を行い、差し当たりステータスも理恵ちゃん同列化して女官管理業務の引き継ぎを行っとります。


この役目の就任にあたり本人は抵抗しましたが、初代様とデルフィリーゼさんとクレーゼさんの三名で説得の結果。


「確かに当時敵対していたアルトや、後輩のダリアが上役なのは不愉快です。しかし、現状はむしろ聖院開闢当時の理念に合う実態と言えるでしょう。理想以上の状況で要請に応じないのはむしろわがまま。…アルトやダリアとはいずれちんちん勝負で話をつけるとして、やれるだけやってみます」と。


「ただ…デルフィリーゼ様まで復帰してるのに、あたくしがわがまま言ったら真剣にしばかれてましたね…」とも言ってましたから、やはり当時の脳筋体質な聖院を知る人には拳が手っ取り早かったのでしょう。


「クライファーネはほえほえですが気は短い方です。一度パンチさんにおせっきょうしていただく方がよいと思います」


「正直、優しいか厳しいかで言うと後者。マリーほど手が早くないですけど、口は早いです」と、当時の同僚や後輩の評価。まぁ、女官より騎士任務が多い子だったしなぁ…。


ま、女官長交代問題はこれで良し、元来の女官については管理室長のオリューレと副室長メル子もいるし。


そしてうちの娘ども。


解決方法を提案して頂いたのは、他ならぬ阿波内侍さん。


「よろしいですか。ここに、誰それさんに誰それさんと同じまなびや…がっこうにかよいたいと書いて、高木まりあんぬと名前を入れなされ。すざんぬさんも同じようになさりませ」


はい、夜更けで静かな例の神社、阿波内侍さんの元来の職場です。拝殿で二礼二拍手一礼を終えたエマ子・クレーゼさん・あたしと娘二人のうち、娘たちが札場に誘導されます。


「お書きになられましたらこちらへ」と、例の穴の後ろ側に娘二人を誘導。


「縁を切りたい時とは逆向きにくぐるのですよ。ご注意なさりませ…で、くぐりましたら札をお貼りなさりませ」


そうです。縁結び祈願の際にはあの巨大石絵馬の穴、裏側から表に向かってくぐります。マリアンヌに続いてスザンヌも同様の手順で願掛けを終了。


「さて、ここからは特別さーびす。聖子様、兵衛佐様」本殿に向けて呼びかけられると…。どこからともなく尼さんが一人、十二単が一人。無表情な顔を見るまでもなく、崇徳院関係者とわかります。その異様さにビビった娘二人、思わず内侍さんの後ろに…母親の後ろに来てよ!


「内侍、委細承知である。兵衛。お二方の願について異はありきや」


「作法に則り、正しう願掛け致されてござりまする」


「では、母殿方。元来なれば喜捨を頂くところではあるが、稚児の願いにつき母殿より頂きたく…銭ではなく念を頂戴致しまする」瞬間、十二単衣さんに向けてあたしとクレーゼさんの精気がずるっと抜かれる感覚。


「はいはーい。二千人分くらいで良かったんでしたっけ?」と、抜き取り量調整と静止要員のエマ子が吸い取り量を聞いています。


「うむ。このくらいあれば重畳。主上、只今より娘子お二方の願掛け、御前にお捧げいたしまする」呼ばれて威厳たっぷりに現れる上皇陛下。ただ、前と違うのは…。


「おお、良い子そうであるな。よしよし。そなたらの願い、確かに朕が預かろう」はい、エマ子提供義体なしでも「表情」を出されるようになりまして…これは内侍さんも同じですがね。穏やかな表情を読み取った娘二人も前に出てきてお辞儀。


「主上、くれぐれもお手柔らかに…と申し上げたきところにございますが…」


「うむ。母との方。その学舎…色々と沙汰が入りそうなしでかしが多そうじゃな。朕から見ても邪念渦巻き禍々しい相ありき。子らを通わすには向かぬかも知れぬな」


「あー…言われてみればなんか思い当たる節も…」


「教材納入や教科書選定で、何やら色々あったらしい話も聞こえてますわね…」


「なるべく荒療治にはならぬよう諮るが…子らよ、そなたらもともがらも、あそこには通わぬ方が良いやも知れぬぞ…では、早速に取り掛かり申す」


「何とぞよろしくお願い致します。ほれ、あんたらもお願いしなさい」と、頭を下げさせておきます。


「ま、朕に任しやれ。楽しみにな」ニヤリと笑って消え去る上皇陛下に続き、正妻とお妾さんもあたしらの前から消えておしまいに。


「あー大丈夫かなー。まぁ、まさか学校ひとつ潰れるとかはさすがにないよな…」


「ほほほほほ。国ひとつ祟ろうかという主上でございます。町ひとつくらいなら造作なく」


「いやそれほんまにやりそうで怖いんですが。東住吉とか平野区くらいならマジに地表から消えそうで」やらんやらんと拝殿の奥からなんか聞こえた気もしますが、とりあえずそんな話をしながら痴女宮に戻りました。




で、そのひと月後。


「かーさん…保護者向けの通知プリント見てよ…」迎えに来たあたしにメディアウォッチを見せる、ランドセル姿のマリアンヌ。


「あー、あれかい…」うろうろしてる警備員や、派遣された制服警官を訝しげに見るまでもありません。


以前、この学校周辺に現れる春の風物詩の話を誰かがしたのを覚えておいででしょうか。


あれ、先輩から後輩には構うな無視しろと代々伝える慣わしがありましたが…帰宅組の高等部一年生の一団がですね、今年の春にですね。


「えー、◯性やん!信じられへん!」


「包◯が許されるのは十代までやんねーきゃっははー!」と馬鹿にしたそうでして。


で、恨みに思っていたらしく、一団の中で派手目の子を帰宅途中に拉致して以下略、もちろん警察沙汰になりました。更にはニュースにも。


そして阿倍野署から「すんませんが捜査に協力を…」と連絡がありまして。


娘を管内の学校に通わせているとあらかじめ告げて「忘れ物」して便宜をお願いしておりましたし、何より痴女皇国関係者の通学校で起きた事件でもあり、迅速な解決を府警本部から言われたと来訪の刑事さんに土下座する勢いで頼まれましてね。


そしてマリ公が拉致現場と思しき学校周辺に行って十分で犯人を割り出しーの…「埋めた」場所まで特定しーので…。


そして、被害者の家族がよりによって高級外車、それもエアロバキバキな方向のやつを所有する人種だったり、当日はたまたま迎えに行けずに電車での帰宅となったが、急行の出る始発駅まで歩くのめんどくさいと、始発の次の各停しか止まらない駅に一人で向かう途中に襲われたりとか発覚しまして。


ま、そんなベクトルの保護者の方ですので学校警備の責任について揉める揉める。


さすがに被害者が高等部だし駅まで教員なり学校側警備員が送り迎えしろというのかとなりましたが、そこで捜査に協力していたマリ公が、そもそもの犯行原因となった変態…どうも警備会社のアルバイトらしく、体格やら体力には自信があったらしいのですが肝心の股間がデリンジャーな方…との接触を映像に収めて警察と学校に提供。


従来からこんなのいたら建前では逃げて通報なのに、わざわざ集団で馬鹿にした娘さん達にも問題はなかったのかとやりまして、更にPTA巻き込んで紛糾。


そして警備費用が馬鹿にならぬ、ついては来年四月から学費値上げにご協力をというのが、くだんの保護者向けの通知です。建前では保護者各位の送迎強化を願いたいという内容ですが、学校側も再発防止策を打ち出したいけどオゼゼの話がっての、保護者説明会で理事長さんからあったばかりでしたしねぇ。


ただ…。


とりあえずマリアンヌとスザンヌをランドローバーの後席に詰め込むと、あたしは運転席に。


「マリア、あんたにも来てたかな、学費値上げのお願い」


「クレーゼ母様に見せてもらったけどさ…ただでもここ、かなり高いのに値上げだろ。他の父兄から文句出てないのかよ…」


「それよそれ。お前…教科書選定に関する話、何処ぞに噂で流さんかったやろな?」


「さぁどーかなー?ついでに、亡くなった◯◯さんの成人異性交友関係がSNSで掘られたり、チャットツールのログが抜かれて拡散されたり死亡前1ヶ月分くらいのGPS座標情報が出回ってたりとかも知らないなー」と、棒読みにもほどがある話を。


で、普通なら変態の風上にもおけない、変態番付から即除名処分対象な性犯罪者の毒牙にかかった貴重なJKが以下略となります話ですが、そんな事が世に広まるとか、あるいは変態を小馬鹿にした同級生との会話が掘られて広まってしまいますと、自分の粗珍を馬鹿にされたらと男性からの擁護意見が当然、出てきますよね。


更には先輩らしき人物が匿名掲示板に現れて「我々は変態を刺激する事なく徹底無視を指導していた。確かに変態は犯罪だが、他者の身体的コンプレックスをあげつらうアホは校是に背く無礼者であり、被害者に全く非はなかったのかは疑問である」と意見を投げ込んでたりしまして。


加えて、その赤黄黒な国旗のエアロ系高級外車を好まれる保護者様のお車の運転ぶりが動画で挙げられたり、はたまたご経営の土建会社ですね、ゼネコンごと、西日本リニア建設工事に絡む談合入札が発覚して出禁食らってたりとか、中抜きダンピングに手抜き工事が発覚するとか。


はたまた類似ベクトルの御父兄の経営するレストランチェーンで食中毒が出てバイトの雇用態度由来の衛生管理が取り沙汰されるとか時給発言をなさっていた過去が発掘されるとかですね、どこの鬼女な方々の暗躍があったのかと言わんばかりの不祥事が保護者から。


とどめに中等部と高等部教師の淫行問題もメディアウォッチ通信記録から発覚いたしましたが。

…実はこれ、痴女皇国関係者通学先に不審者が通うとまずいという事で連邦軍本部合同情報管理局と…裏ではイアン・フレミング記念情報研究センターの共同監視対象にするよと学校には事前通知していたのですが、それにも関わらずやってたのがバレておりましたのを、もののついでに累積した証拠を府警本部と学校側に提出なさいまして。


「マリアンヌ、スザンヌ…友達から何か言われたか?」


「それがね、あたしたちが中等部からあそこ行く話してたじゃん。で、向こうのお父さんお母さんがさ、うちのりょうこも紹介してもらえないだろうかって、母様に話をしたいみたいなのよ」


「あたくしも同じ。痴女皇国の留学受け入れで警備も整ってるだろうし、受験校なのは知ってるから、おかしな生徒さんもいないだろうと言われましたわ」


「つまり、逆にあそこ高校中等部に行きたいと」


「まぁ…この女子校に何かあるかもとは思ったけどさ、この学校…早晩、生徒不足で大変なことになるんじゃないかな…」


「噂では別のお嬢さん学校あるやん。なんとかマウンテン学園」


「ああ、あの超有名かつ高級ハイソセレブな場所にある」


「あそこに吸収合併を持ちかけているらしいねんけどな…」


「そーいや、かーさん…何でマリアンヌやスザンヌ、あそこに通わせなかったのさ」


「当時は微妙に遠かったし、学費が更に高くてな…クレーゼさんも会社立て直してる時やったからなー」


「ああ…女官食堂で食事を提供したこともあったよな…」


「でもさ、母様…あの神社が本当に噂通りだというのがわかって怖いんだけど」


「会社やめたいと言ったら会社がなくなるくらい怖いとは聞きましたけど…ほんとにそうなるのですね…」


(いえいえ、もともと人の欲ですとか、ねじくれ曲がった願望の持ち主が多数かかわっていただけでございますよ。たまたま、そうしたよこしまな者どもの向きが悪い方に悪い方に走ってしまっただけ。お嬢さまがたは、くれぐれもよろしくない方々の邪念を見抜いて避けるようお勤めなさいませ)


「確かに、あたしらも加担はしたけど、言うたら内侍さんが言う通りでさ、良くない人が少なからずおったから、いざ問題が出たら次々と出てきたんやろなぁ」


「ま、マリアンヌもスザンヌも、天王寺に住み続けるにしろ痴女宮に住むにしろ、少しでもそういう危ないのがいない少ない学校に通いたいよな?」


「というか、あれだけ色々出てきたら誰でも転校考えるわよ…いや、母様や姉さんの知り合いに色々いるのは知ってるけど、内侍さんは格別だったわよ…」


「姉様がいらんことするなと言った理由、よくわかりますの…」


「たりめーだ。あたしが何でおとなしくしてるかわかったろ? 言っとくけど初代様…テルナリーゼさんとか、おかみ様はあの人の更に上だからな。金輪際逆らうな。反抗期がやりたい時は絶対にあたしかマリアヴェッラに相談しろ。いいな!」


「はーい…」


「身にしみております…」


(断っておきまするが、我らの社はあくまで郷社、主上の元来の社も官幣大社でございます。おかみ様お住まいの神宮は単に神宮、我ら全ての神社の本荘(ほんそう)にございます)


「つまり、いちばん偉い神社ってことだよ。神社の位で、祀られてる神様の格がわかるのさ」


「えー、あのお酒好きですけべいのおばちゃんがいちばん上なのー?」


「少しばかり疑問を呈したいですわ…」


(お嬢さまがたには申しましたでしょう。神様とは少しばかり理不尽なのです。ですから多少のわがままは…お内儀様、姉姫様…わらわの部屋のお神酒が最近減り、早うございますのですがよもやまさか)


(待てマリ公。あの賀茂鶴の樽があるの知ってるのて…)


(エマ子!阿波内侍さんの部屋前の監視カメラ映像を調べてくれ!21階に銀蝿(ぬすみぐい)がいるかも知れねぇ!)


(あと、くろぐっずとやらの借用申請書の書き方、指南くださいまし…)


(この場合、仕方あらへんよな…マリ公)


(ああ…雅美さん…あとで阿波内侍さんがB24に行くから、ブラ◯ガスの貸し出し手続き頼むわ…)


(ありがたき幸せ。なんせあのお方、我が社で縁切りを願えど効き目ございませんから…身体に言い聞かせるしか手がありませんで!)


ま、世の中は平和な部類なんでしょう。きっと。


数時間後に神様の絶叫が痴女宮にこだまするかも知れませんが、平和な部類なのです!

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