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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど
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臨時校外活動・日本三大祟り神営業ドサ回り!4

「いや、余…いやもとい(それがし)も、ここまで祀られ敬われておりますならば、それはそれで悪い気は致しませぬのですよ。菅原氏(すがわらうじ)も似た話を申しておりましたでしょう?」


はい、という訳でおかみ様には御神域を作成頂きまして、初代様に智秋先生他の保護場を形成して貰いました中での落武者おじさんとのご面会です。


「いえいえ、こちらこそ押しかけまして申し訳ございません。更に聞けば、何やらうちの姉が迷惑だとかで…」


「いえいえいえいえ滅相もございませぬ。帝様も院様も、出雲でお会い致しました際には気安くして頂きますと某も楽しみが増えますでな」


(なんか祟り神というイメージに相応しくないんですけど)話をしている分には、外観に似つかわしくないコルディオーレ(ふれんどりー)なお方です。このお方の外観については後で説明します。


「いやいや、ここに千年も祀られておりますと、いい加減達観もしようと言うもの。しかし…わざわざここまでお越し頂かなくとも、(みやこ)西洞院(にしのとういん)で事足りますものを、遠路はるばるお越し頂きました事、改めて御礼仕(おんれいつかまつ)り申し上げまする」


「いや…まさかど、そちもすぐそこ(こうきょ)の天子に申したい事はあろうから、そちらに赴くも考えたのじゃが…ほれ、京ならば、一里も行かぬ先に()()がおろう、()()が」


「あー、はぁ…確かに、どちらに先に行こうと某が尻馬に乗るか、はたまたあのお方が機や良しと思われたら()()でございますな…」


「うむ、()()()()も北野で良いとは申してくれたがな、やはり京はな…色々ありすぎよる」


「まぁ、私共も、表で待たせている子らの見聞を深めたいとか色々都合がありましたのでね。それより公。聞けば何やら、私をお避けになっているとかおらぬとか、かような弱いなりの乙女にとりまして心外の極みですわ」おい姉。あんたのどこがか弱く見えるのよ。


「ああ…それがですな。件の、讃岐の院様。あのお方が某の袖を引いてこっちゃこうとやりますのでな…」


「ええー、何ですか、つまり、私めを避けておるのは上皇様ただお一方…」


「左様。如何に某が、やすやすとおかみ様に逆らえぬ立場とは申せ、院様を避けるのであれば美濃なり下野(しもつけ)になり、そそくさと逃げ出し申す。此処にこの首がございますのが我が言の証と見て頂ければ重畳にて候」


「はっは、確かに仰せの通りで」にこやかに姉が笑ってますけど、その首、胴体と離れているというか…鎧姿の胴体側の腕に持たれてるんですけど。


(いいか、絶対にデュラハンとかブロッ○ケン伯爵とか言うなよ!特にかーさん!間違ってもおちょくるの絶対ナシだからな!)


(やるかっ!…学生さんら、バスの中で寝かしといて正解やわ…ほんまこれ気の弱い人、卒倒するぞ…)


(あたしも同感。何ですかこの悪霊(でもーね)感丸出しのお方はっ)


(ああ、実際に相対したプレッシャーは将門公(しょうもんこう)の方がはるかに上だけどよ、格好だけなら大江山とか山本(さんもと)のおっさん(ごろうざえもん)とか、神野の兄ちゃん(じんのあくごろう)の手下にそれなりのがいるぞ?)


「そうそう、おかみ様…実は菅公も申しておられたかと存じますがな、昨今は恐れ敬い崇められるのは良しとしても、祈念の証がこれこうでございまして…出し渋りしてはおりませぬのは、おかみ様であればおわかりかと」と、首を左手で抱え直してから、右手で差し出して来られたものを拝見します。


「ふむ。そちの方も白が多いのか…いや、気にせずとも良いぞ」見ると、白い直方体の結晶、白と黒がありますが、白の方が遥かに大きいのですよ。


「しかし、おもての若衆…それかしで本当によろしいので?」


「良いからつれてきておる。それに、あの子らの中にはこの辺りで働く者も少なからずおろう。お主を訪ねて礼の一つでも言うてやりやと申し付けておこうぞ」


「有り難き幸せにて候。さればお伝え頂きたく。必ず礼に来いとお申し付けを。科挙は首級を取られるいくさに非ず、生きてさえおれば拓ける道もありきやと」


「ようはかろうてやってくれ。頼むぞ」


「そうそう、失礼…そこな若衆の菅野とやら。そちも科挙が待ち構える身であろう。()()()()を続けたくば気張りやれ。良いな」


「ははっ」ノリがいいですね菅野さん。


(いや、正直、将門塚が怖いの知ってんだよな…更に、俺さ、帝国の時は霞ヶ浦で航空教練やっただろ…成田山にご縁ありまくりなんだよ…近かったし…あ、イタリア語だとドゥオモだっけ、成田山新勝寺)


(ぎゃああああバレたらダメ!あそこ将門様と相性最悪だよなおしちゃん!)


「あー、気にするでない。今はお主ら、西国じゃろ? 壇ノ浦にも参ってやってくれ」


(ベラ子。成田山新勝寺ってな、将門公の祟りを調伏したくて建てた寺なんだよ…んで、菅野さんが航空兵として訓練を受けた霞ヶ浦基地に近い上に、当時の成田山は戦勝祈願はもとより軍に飛行機を献上したりしてるんだ。そのお礼に参詣していても不思議じゃないわな)


(なるほど…そりゃ、お参りしたらいい顔なさいませんよね…)


「ま、なべて武家ならば上には早々逆らえぬでしょう。わざわざ我が首まで足を運ばれた礼は致しまする。かつてこの辺りが戦火に包まれた際に、馬を駆っておった自分の某も感心しきりの働きで守りを致しておりました若衆は存じております故、小言を繰り述べるのは道義に反すかと。いくさの流儀は違え(たがえ)ど意気やよしに候」


(東京大空襲の際に防空任務に就いた連中を知ってるから野暮は言わん、むしろようわしの首塚を守ろうと頑張っててくれたって意味だよ。なんせ菅公や、次に行く陛下と同じく平安時代の方だからな。厩戸皇子…聖徳太子とかもっと訳わかめだぞ)


(ねー様。その割に初代様やおかみ様が割と聞き取りやすいのは…)


(なんかゆーたかーべらこー)


(聖母様にマリアリーゼやルクレツィアやそなたの頭の中を伺えば、皆に合わせて話すくらいは出来ますよ。ただ、暑い時にパーっと脱いだりすると怒られるのは困りますがっ)裸に(スピアッジア)なれる場所(ヌーディスタ)じゃないんです。それ以前に聖院宮でも痴女宮でもありませんっ。


「しかし、おかみ様、聖院様に院様、帝様。それかしが申すのも何なのですが、讃岐の院様…昨今は不機嫌にも程があるご様子。豊葦原が紅毛の風習に倣うのも気に食わぬ、特におなごの態度ですな…あれでかなり色々溜め込まれておられる態に映りまする。相まみえる際には斟酌頂きたく候」


「うむ。うわついたのが夜まで押し掛けて(かしま)しいとは聞いておる。これが、()()()というのか、騒がしからねど色気のある鹿島(かしま)しいやからばかりならば、あれも鼻の下を伸ばすやも知れんのであるがのう」


「はは。聖子様に兵衛佐様に内侍様がおられまする故、色気は間に合っておられるやも知れませぬな」


(聖子は崇徳天皇中宮…皇后な。ひょうえのすけのつぼね、というのが二号さん。阿波内侍(あわないじ)は愛人だよ)


(なかなかに発展家ですね、祟りおぢさん)


(いや、この時代、今ほど出産成功当たり前じゃないんだよ。ベラ子の母親(るっきー)がまさにそれだろ。連邦世界じゃ死産の上に本人も体調崩して39歳で若死になんだから…日本の天子…皇帝の後継ぎ、特に確実に残す必要があったからなぁ)


(あーなるほど…)


(まぁ、うちらの世界だと目下のところはそこのお城に住んでるタヌキ一族いるじゃん。あれよりは作法にうるさい種付けおめこな毎日でもなかったようだが)


(そろそろたのきちを孕ませてやろうと思う矢先にMIDI化しちゃいましたしねぇ。たのちゃんが盛ると連動してあたしが機能するんですけど、二日に一回ペースですね、今は)


(まだ早いだろ…)


で、神域解除していつもの巫女さん…ではなく、ごく普通のスーツ姿に戻られたおかみ様ですが、この姿になられたのは理由がありまして。


黒塗りのワゴン車…というのですか、箱みたいな車に乗せられます。品川駅から私たちを乗せて来たバスもついて来ますが…。


はい、お城の中に連行されました。


あたしも姉も初代様も、痴女皇国制式の典礼用のドレス姿になります。


「わしだけ地味やないか」


「姉様がいつもの姿ですとあちら様が困惑なさいます!」


…はい、どなたと引き合わされるかはお分かりですね。若様もスーツ姿に白手袋です。


(御所の解説はなさいませんように…流石にここの詳細、漏らすとまずいんですよ…)


で、御所というのですか、海外からの賓客や着任公使と謁見接遇する場所の入口で車を降ろされ、出迎えの中年ご夫婦とおかみ様、初代様、姉、あたしの順で握手。


(与党総裁、つまり田淵君のお父さんですよ)そして内閣総理大じ…。


姉とは「いつぞやは息子が世話になりまして」などと話されていますね。


で、もう一組のご夫婦を紹介されます。


こちらは…向こうからおかみ様に一礼。


(そりゃ、わしの孫子じゃもの。親が先に頭を下げる道理があるかい)…ごもっともです。痴女皇国代表たる私達はともかく、言うなればこのお城全てもおかみ様の間接的な持ち物と言えるでしょう。我々はきちんとご挨拶と握手を交わしますが。


「何やら記帳とやらをせねばならんらしいが」


「おかみ様には不要でございます。そちらの皆様は、申し訳ございませんがこちらに」と、若様に書き方を教えて頂きながら訪問帳に記帳。


よく報道で出てくるという長い廊下を、ご夫婦のご案内で進みます。今回は内緒も内緒でという事ですので、報道の方は一切いらっしゃいません。


(痴女皇国だけならば逆に報道を打診されたでしょうが、おかみ様いらっしゃいますからね…で、案内されるのは竹の間ですね。宮殿内で二番目に格の高い部屋です。松の間は各国大使の着任で信任状捧呈式を執り行う他、形式的な行事に使う場所なので会談には向きませんから。実質的な最上級賓客扱いですよ)このお部屋もいくつかありまして、案内されるお部屋でどういう扱いかがわかるそうです。


(さっき通った廊下の角の壁に富士山の絵が掛かっていたの、覚えておいでですか。あれとその下の台に置かれた置物でも分かるんですよ。間違いなく国賓待遇の扱いです。あと、竹の間に飾られた花、おそらくヒルガオ辺りですよ。花言葉は信頼)


(あー、うちのお祖父様に負けず劣らず、皇室もそういうの得意だよな。どこぞ人民共和国のトップなりたてが押しかけて来た時に黄色いバラ飾ったり)なるほど、そういうサインを読み取る事が出来る教養も必要なのですね。


で、その竹の間。


(やっぱりヒルガオでしたね。しかもピンク色。痴女皇国国花の花の色でしょ?)


(んだねぇ。ベラ子、もう一つサインあるからな? おかみ様と日本の仲介役をお願いしますよって意味だよ。ピンク色の菊の花も飾られてるだろ。しかも敢えてほんの少しだけヒルガオより低い位置になってるじゃん。これも、交渉の対象は比丘尼国だけど対話の相手はあたしたちだよって事だからな)


(英国以上に凝った事をされますね…)


(若様の入れ知恵もあるとみた。ま、そんな期待をされてるなら、きっちり仕事はして差し上げようや。ベラ子にお土産ももらえるみたいだし)


で、これまた事前資料で見ておりました椅子に着席を促されましての会談開始。


これが政府主導なら、リニアの話だの実利的な事から切り出す流れになったのでしょうが、今回は皇室主催という事で一番の向こうの懸念をまず聞かれます。


「あー、今までの二人は大人しいものよ。妹もまりやもべらこもおったしな。で、問題はやはり讃岐のあれじゃろ?」そうです、日本三大祟り神と言われた方々のご機嫌を質問されました。


「で、わしは今回、痴女皇国に依頼されて奴らを訪ねておる。わしを遇するのもよいが、今回は痴女皇国…特にまりやに雇われたようなもんじゃ。妹は手荒に扱ってもよいが、まりやとべらこは痴女皇国の代表じゃ。そこを違えぬようにたのむぞ」


「お姉様。あんまりですわよっ」などと笑いを誘いつつも、訪問目的を改めて姉から伝えてもらいます。


「いえいえ、お気遣いなく。直接領土たるやせいぜいバチカンくらいの小国ですし。しかし、ここ…三回ほど改装されたとはお聞きしましたけど、まぁ最初にお邪魔させていただいたのが1940年代でしたからねぇ、しかも私が生まれて間もない時期でしたし」と、ここに来るのは初めてじゃないよアピールする姉。


「それに、初代様や妹はともかく、私は日本国籍もございますからね、本来ならこの椅子を勧められる立場なのか思い悩むところで」


で、我々の来訪の理由、おかみ様臣下とも言える方々のへそくりを差し出させるようなものであり、比丘尼国にとって表裏一体に等しい最友好国の痴女皇国を支援する目的でおかみ様を先頭に来たことをお話し頂きます。ますが。


「さて、ここからは内緒の話ですよ。来年以降を目処に、私か母親のジーナ・高木かどちらかがNBに出向して国会議員選挙に出馬します。現状では議員席が無ければ祖父の率いる国民労働党…政権与党の総裁被選任資格が与えられませんが、NB赴任後2〜3年を目処に党総裁選にも立候補させられる予定です。田淵総理大臣であれば、この流れで私か母の立ち位置をご理解頂けるかと存じます」


「私の帝位即位、この話がありましたので早めに進められたようなものなのですよ。無茶な押し付けだとは思いますが…」


「智秋君から伺っております。上皇陛下をNB首相にする流れでございますね…」


「で、問題がこれなのです」赤い表紙の小冊子をいずこかから取り出す姉。金色の押し付け加工された菊の紋章と漢字、何か書かれてますね。


「今更申し上げるまでもなく、私個人は陛下の赤子扱いされる立場でもありますので、これが頂けるのではないかと。まぁ、高木まりあとマリアリーゼを完全な別人にしてしまえば良いとは思うのですけどね。それとも、これ、天王寺か南港のパスポートセンターに返却した方が良いのかと智秋氏に相談させて頂きまして、本日この場で回答を頂ける運びと」


「たぶちとやら、頭が痛いとは思うが…まりやにその手形、持たせておく方が良いのではないかえ?」


そうです。姉の日本国籍離脱問題です。日本国籍を有したままNB政界デビュー。これを認めるのか。


そして日本は二重国籍を認めない国です。そう、姉に対する扱いの決断を迫るに等しい話題なのですよ、これ。


「田淵総理。この場に我が方の陛下もおいでです。確かに我が国の天皇陛下は国政に干渉できません。まぁ、外交問題だけでも意見をお述べになられました場合、そちらにも影響甚大ではございましょう。しかしながらこの場にご臨席されていらっしゃるだけ、ただお座り頂いているだけですら深い意味がございます。あの花のごとく、ですね」ヒルガオに注意を向ける若様。なるほど、こういう交渉の仲介が出来る人だからこそ、姉が特別扱いして何がなんでも身を守るって明言してるんですね。


「まぁ、そもそも痴女皇国を現代連邦水準で国家として認めてしまうと、私のみならず母などもややこしい話になってしまうのですがね。それに、私が現時点で既にNB・英国・日本の四重国籍者ですから」


「英国の分は完全に我が国の国籍法違反ですが、はてさてマリアリーゼ陛下をどのように入国管理局に収監したものでしょう。しかも我々に、陛下を痴女皇国へ送り返す手段は与えられておりませんし。…あれ…陛下、いえ、マリアさん。英国旅券はマリアリーゼ名義ですよね?」皆様くすくすお笑いです。田淵総理以外は。


「もちろん。智秋氏もさりながら、田淵総理の御子息の同窓生から前科者を出すような事はいたしませんわ。ほほほほほ」


(要するにこの席は、引き続きあたしに高木まりあ名義の日本国籍を与えたままにしといて、日本と痴女皇国とNBの政治的交流を維持しようって話を詰める場なんだよ。だから政府は高木まりあが同時に日本の二箇所で確認されても騒ぐなよと皇室から圧力をかけてもらってるのさ、たった今まさにそれの進行中だよ)


(なーるほど。しかし皇室がよく動いてくれましたね)


(若様のおかげ。また一つ借りができたのはいいとして、そもそも天皇家に伝わる書物があってね。昭和帝直筆の秘文というか日記帳)


(あー、それに何か書いてあると)


(まぁ、高木まりあという赤子に国を救われた云々と詳細な事実が書いてあるだけなんだが)


(宮内庁も首を傾げていますが、歴代陛下に直々に密かに伝え渡されているらしいので、僕は内容なんか存じておりませんねぇ、はっはっはっ)


(で、この場を借りて要望もう一つ行くよ。頼むよ若様)


(はいはい。マリアヴェッラ陛下の日本国籍付与の件ですね)


「えー、あと私の妹の()()マリアヴェッラなのですが、どちらが父母かはともかく、間違いなく、あの高木ジーナとフェラーラ公妃ルクレツィア・ボルジアの実娘、私にとっては腹違いの妹です。つまり、我が妹が日本国籍を取得可能かについてお伺いしたいのですが」


「これまた我が陛下が直接お話ができない件ですので、私が代弁させて頂きます。そもそもルクレツィア殿下、連邦世界ではとっくの昔に鬼籍入りされた方ですし、イタリアでは名誉国民扱いですが、生年月日などは完全に作成され(でっちあげられ)ていると伺っております。そんな方を母親と認めた旅券、事情を知らぬ者が扱えば騒動必至でしょう。更にはそれを元にした外国人登録証を発給するのもよろしくないとの話がございます」実際にはルクレツィア母様ともども、イタリア旅券と国民登録に伴う権利、日本でもガンガン使わせて頂いておりますが。


「ですので、大阪市には天王寺特別区民として出生届を提出。父親欄不明で高木マリアヴェッラ様として日本国民の扱いをと、計らわせて頂く判断が下りました」で、若様が後ろに合図すると、侍従の方が捧げるお盆の上の敷き物に載せられた何かが。


「まず、これがベラ子陛下の分の住民カード。そして日本国籍旅券。で、印鑑登録証と実印です。日本国政府に対する金銭借用書を作成しようかとも思いましたが、流石に踏み留まらせて頂きました」


(ちなみに若様のこのジョーク、今は電子印紙が貼られて公証人役場でベラ子が作成証明手続きしていない借用証が無効だっての前提だからな、怒るなよベラ子)


(というよりこの場でベラ子なんですか!)


(日本人には言いやすいんだよ。あくまでも私的な会合だし、諦めろっ)


で、下の敷き物…袱紗という包み布だそうですが、それに一式をくるむ形で若様からあたしに手渡されます。


「んじゃベラ子、これ一旦あたしが預かるよ。あとで渡すから」


「良かったですわね、マリアヴェッラ陛下。()()()()()日本国をよろしくお願い申し上げます」


「ただ、沖縄では羽目をお外しにならないようお願い致しますよ…」ちょっと若様!陛下もご存知なんですか。


「ほほほ、よく似た別人でしょう。まぁ、監督役の私が見張っておりますから沖縄県警にご迷惑はおかけいたしませんわよ。ほっほっほっ」つーか姉、ママの店のバイトの件バレてんの?


(んなもん若様に報告してるに決まってんだろうが。あそこ今、実質るっきーの持ち店だぞ?政府に話は一応入れとかないと、沖縄県警や宙兵隊の客巻き込んで揉める事故が万一出た場合に困るだろ?そのための保険よ保険)


「それよりですね…比丘尼国と痴女皇国へのご行幸の件、これこそ私共政府としましては正直、認めさせて頂きますと…」


「あ、大丈夫ですよ。出立と帰着の時間軸を調整しますから、皇居を空けている物理時間はほぼ一瞬です。1秒も経過しておりませんよ」


「たぶち。わしの息子や娘が、親やしんせきの家を見たいとゆうとるだけやないか。しかもこっちを空けるのは瞬きする間だけや。何ならおまえも一緒に来るか? べらこにまりや…日の本の太政大臣やったら扱いどないなるねん」


「えー。向こうのイタリア連合公国同等。つまり、例の夜の爛れ会の顔ぶれ接待と同格の扱いをさせて頂きます。すなわち、ご希望であれば()()()()()()()()()()


「田淵閣下、わたくしどもの最上級の扱いでございます。無論、ここな初代様やおかみ様乱入のオプツィオーネ(おぷしょん)付きですよ?」


「ええ、日本の天子様ご夫妻や政治の代表の方ですから、全力で歓待申し上げます」


「たぶち…なんじゃその顔は!わしやったらいやなんかい!」


「まぁまぁ。ま、実はこのお話ですね、ラッツィオーニ閣下やうちの祖父夫婦が受けた延命措置をですね、日本側の要人の方にも施させて頂こうかというのが真意なのですよ。それと…ベラ子ベラ子、あれ。ほれあれ」


「これは初代様からお話を頂く方がよいのではないでしょうか…」


「よろしい。天子様、奥様。そして田淵様。現在、我が痴女皇国はNBと共同で向こうの持ついくつかの星のうち、まだ到底人が住むに値せぬものについて改良工事を促進する計画を進めております。その星の開拓居住者はNB国民主体を予定していると、ワーズワース様から伺っております」


「そして、本来はNB本星で、NB国民が使う筈の土地を少しばかり空けて頂きました。その面積は概ね英国本土、イタリア本土、日本列島に匹敵します」


「更に…これこそが私どもからの提案の真骨頂です。地球社会に万一があった場合、私マリアリーゼと、マリアヴェッラの娘たるエマニエル皇配騎士が、生体兵器の性能を発揮すればNBや痴女皇国と親しい三ヶ国、一瞬で地球表面から切り取ってNBに移植も可能です。本日の訪問はこのお話をさせて頂く事もあらかじめお聞きですよね? 田淵総理大臣」


そう、マリア姉の意図。


今ここにいるご夫婦の旦那様の祖先に連なる方への恩返しの約束を果たすためなのです。いざという時に日本を助けましょう、という姉の約束。


そして、ワーズワース叔父様やおかみ様や私やルクレツィア母様の国も、いざ何かあれば助ける話であると聞いておりました。


「総理。それと、日本の政治体制は他ならぬこの私、()()()()()がよく存じております。今この場で日本国の最高意思決定者は田淵総理大臣、あなたですよね。ですが、おかみ様を含めた比丘尼国・痴女皇国合同外遊団体旅行団は、敢えて無言の合否を求めます。どなたに求めるかは言うも野暮ですが、総理もそれをご承知置き頂きたいのです」


「たぶち。これは、この日の本のほんまのもちぬしが誰やいうはなしやからな。おまえらにはいちおう、わしらをあがめておるからはなしを聞かせるだけやぞ。わしはまず、いざ何かあったときに自分のこどもを助けたいから、妹やまりややべらこに頼んだのや。わしにいわせれば民草が消えるのは惜しいが、時と場所があればかわりはつくれるのや。しかし、わしのこどもと嫁や子はそうはいかん。わしがこう考えているのは、おまえらには我慢ならんやろが、日の本の持ち主は()()()や」


「ただ、田淵様や日本の皆様にとって、それはあまりに不本意で不憫な話ですわよね? 姉様がわがまま言うのも大概になさいませ、というわけで、マリアリーゼにマリアヴェッラ」


「ええ、私と妹と…エマ子。アルティメットモードで来てくれるか。陛下に引き合わせておきたい」


はい。


我が娘エマニエル、無制限機能行使状態で呼びつけられました。


ピンク色の痴女皇国皇配用ビキニアーマーに、2本を一本に繋いだ聖杖装備の姿です。髪の毛は金髪ロングであたし譲りの癖毛。顔は母様似。


その聖杖、実は聖院で寝てるロンギヌスとカシウスの機能そのもので、聖院エマ子と分担して持つのが本来の使い方らしいのですが。


そして、白と桃色の羽毛が混ざった天使の翼を装備。


この姿が、エマ子本来のフルパワーモードで動く時に「人類が見る姿」らしいですよ?


そしつエマ子、翼を畳み軽く一礼して口上を述べます。


「母様、姉様。お招きに応じて参上致しました。天皇陛下、皇后陛下、そして田淵総理大臣。わたくしがエマニエル・ワーズワース・ボルジアことM-IKLA22、生体型救世用兵器にして痴女皇国皇配騎士インマヌエルでございます。以降よろしくお見知り置き願います」

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