表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/296

新人財務官の悩み・痴女は墓場でゼニ勘定編

「あの、いきなり百人卒の人とかここに連れて来て大丈夫なんでしょうか」


「だーいじょーぶ大丈夫。ま、マリアも言ってましたけど、財務を本格的に組織として見直すなら、絶対にここの存在は知っておいた方がいいという意見に、あたくしも賛成しておりまして」初代金衣女聖、テルナリーゼ様はそう申されますと、事もなげに例の絵画下の禍々しくも黒々とした両開き扉を開かれます。


「えー、ここ入った事ある人」アルトさん、挙手。ものすごく嫌そうな顔ですね。


(それはそうですよ。ここの品物のせいでダリアがおかしくなった時の事を思い出しますとね…)


(うう、あれ、こんな場所に仕舞ってたんですね…)


そして、私を含む新参組、絶句。


そうです。地下墓所の禁断の扉の先の懲罰具倉庫。ここの先に、目的とする場所とものがあると初代様はおっしゃられます。


「今は、懲罰具は木箱に入れていますから、その瘴気を直接浴びる事はありませんよ。ただ…絶対に直接には触らないように」その、件の木箱とやらがいくつも並ぶ棚の列を横目で見ながら奥へ奥へ。


で。一番奥は、一見すると何もない壁です。透かして見ても先が見えません。


ですが、初代様が手をかざすと。


穴。


この話で穴というと皆様ご想像される穴があるかと存じます。不肖・田野瀬麻里子にも備わっております。


ですが、その穴ではなく、正真正銘の穴です。


初代様が身を屈めずに通過できる穴。その穴の向こうに光が見えます。


「はい来て下さいねー。こっちこっち」平然と言われますが、暗い素掘りの穴ですよ。


おっかなびっくり通過すると、かつての聖院当時のような作りの通路が。


途中で90度曲がったりしますが、とりあえず前進前進。


とある扉、鉄製でのっぺりしており装飾も入っていません。


ですが、開けた瞬間に。


「なんですかこれは!」見渡す限り棚、棚、棚。


その棚にぎっしり詰められた黄金の延べ棒。


インゴットというやつです。


で、棚の種類。木の棚と、スチールラックがあります。


初代様は迷わずスチールラックの方へ。


「えーっと、これがマリアリーゼが持ち帰ってくれた方ね。ふむふむ」インゴットを取って検分される初代様。


「ねぇダイアデレーヤ。これ、マリアリーゼが掘って来てくれたものだけど、純金かどうかわかる?」そして、差し出される延べ棒。


ずっしりと重そうなそれを受け取ったダイヤさん、とろけそうな顔に…次の瞬間、恐怖におののき始めます。あ、金を手から離したら…!


ふう。何とか私が受け止めます。


ですが、この金、何か変ですよ。どうも持ちたくなくなるような…。


「初代様、ちょっとその金塊、持たせて頂いてよろしいですか」


「…ダリア様、その金塊は…!」


「あーこれ、黒化してますね。手に取った人間の欲望を醜悪に増幅してしまうんです。で、その醜悪な姿を持った人間の意識に植え付けます。そして以降、同じ金属を手に取る度にその幻覚に襲われるようになってますね」ふーんという顔でダリアさん。


「…え?何でその禍々しい金塊を持って平然としておられるんですか?」心底不思議そうな、そして不安な面持ちでダイアさんが尋ねられますが。


「あー、さっきの部屋の黒グッズでいうと黒絹クラスですねこれ。こんなもの、あたしやアルトさんには普通の金塊と変わりませんけど…千人卒未満の方には厳しいと思います。この金を普通に持てるようなら一人前の騎士か女官ですよ」


「ダリアちゃんで普通に持てるのか。じゃ、たのっち、これ持ってみて」あっさり普通におっしゃいますが、私は…ああそうか、位階上がってるから行けるかな。


…ああ、うっすらと、持ちたくなくなる忌避感がします。ですが、職務と思って検分してみましょ。


「ところで初代様。何でまたまりり、こんな金を。銀行でも開設する気ですか」


「近いわねぇ…。マリアリーゼ曰く、NBや連邦と高額取引する際の保証資産めいたものを所有しておきたいと言う話でしたわ」


「ああ、納得。日本でもやってますよ…ここにある分の四分の一くらいかな。日銀金庫に保管されてます。あと、まりりは多分意識したと思いますが、国際通貨基金(I M F)という組織が前身の連邦開発銀行という金融機関が連邦政府直轄組織として存在するんです。ここの金資産保有高がだいたいこの部屋にある金地金…三千トンくらいですね、それと同じくらいです」


「たのちゃん、これだけ金があれば、ぎんこうという組織を作れますか?」


「資金額的には充分です。ただ、信用資産…我々はこれだけ金塊を保有しているから破産はしないという信頼を得る為に持つべき(きん)なので、流動資金は別に準備しておく必要はありますね」


「ふむ。ま、マリアリーゼは必要があれば面倒極まりないけど掘りに行く、この3倍くらいはなんとかなると申しておりましたから、わたくしが昔用立てた、古い方の棚の分を、うんてんしきん…というのですか。そちらに回して頂いてもよろしいですわよ」


「なるほど…ところでダイアさん、こちらの金塊はどうですか?こっちは普通っぽいですよ」木の棚の方のインゴットを手に取ってお見せします。しかし、イヤイヤされました。


「金を目にするのも嫌になりまして…」


「ふーむ。では、初代様…仮に玄奘さんに持って頂いたらどうなるか気になるのです。まりりが持ち込んだ禍々しい方」玄奘さんの方を見ながら私はお聞きしてみます。


「んじゃ試して頂きましょ。玄奘様、これが呪われてる方」頷いて、まりりが持ち込んだ金塊を受け取られる玄奘さん。


「ふむ…おかしいですね。拙僧は何ともありませんよ」


「ああ、簡単ですわ。その金塊、ダリアが見抜いた通り、手に取った者の所有欲…金欲とでも言うべきものを真逆に解釈して()()()に植え付けてしまうようなのです。なので、金を欲するよりも、この金を使って民衆を救う何かしらの事が出来ないか考えた玄奘様は、私利私欲がないという事で呪いが発動しなかったのでしょう」苦笑しておられますね、玄奘さん。


「なるほど、それで私は「あー、これ自分のなら東京帰ったらあれ買えるなー」なんて考えたから、ちょっとだけ嫌になった訳ですね」


「で、ダリアやアルトはここの手前にあるものを知っています。そして、懲罰具を使っても問題がないくらいに鍛えているのもありますが、これまた金塊そのものを欲しているわけではありません…ダイアさん、解りますね…この呪いは心に刻まれます。お金が欲しかったあなたは、その物欲しげな感情を真逆に解釈して呪われたのです。呪いを外さねば今後、両替財務で働く事は難しいでしょう。今のあなたは小銭すら持てないはずです」


厳かにおっしゃられる初代様…何という呪いを仕掛けるねん…まりり!


「いえ、マリアリーゼの呪いは正しいのですよ。ここにある金塊は、正に「気楽に使われては困るお金」なのです。そして、その金を気楽に持ち出そうとする上級職者が今後現れても、そうやすやすとは手を出せないようにしたのですよ。誰とは申しませんが浪費癖のある者が万が一、誰かに憑依した場合などは、ね…」にやにや。


うん。昨今、ご先祖様家族会との交流機会が増えたこともあり、浪費癖を有する特定ご先祖様の名前も浮かびますから。ダリアさんやアルトさんも、誰の事かわかったようでニヤニヤしておられます。


「そして…」どういう呪いかを知って涙目なダイアさんの頭に手をかざされます。「あっちゃあ…あの子もかなりえげつない事するわね…邪心邪欲が強ければ強いほど、他の欲望についても真逆の呪いがかかるのですよ。たのちゃん、この意味…ご理解出来て?」


「まーさーかー、売春行為も不可能に…」


「ええ。男性恐怖症になっています」もう今にもわんわん泣きそうですよ、ダイアさん。そろそろ勘弁してあげましょうよ。


「この呪いはさきほど申し上げた通り、金衣女聖にすら作用しかねない強力なものなのです。千人卒未満のあなたでは、この呪いを跳ね除ける事すら難しいでしょうね。ですが…」と、ここで玄奘さんが手を叩いて仰られます。


「初代様。千人卒以上になればその呪いは…外れるのですか?」


「ええ。といっても、そもそもの金欲があればやはり、効き目こそ欲の程度に左右されますが、それなりには呪いの効果は出るでしょうね。即ち、痴女体質に昇格する事に加えて私心私欲を捨てる必要があります」はっはーん。初代様、もしかしてこうなるの見越して、ここに連れて来られましたね?


(まっさかー。呪われてるのは聞いてましたけど、あたくしなら大丈夫って言われましたし。まぁでも、あたくしはもちろん、たのちゃんでも充分に対応可能な呪いでしょ?)


(ですねぇ。そして…ダイアさん、仮に私が痴女化したら解除出来そうでしょうか。これ、男性恐怖症だと女官としても仕事させられないって事になりますよね)


(ふっふっふっ、だから「上司」にも同席してもらっているのですよ?)


(あー…でも、私が上司になっちゃうのでしょうか)


(ええ。マリアいわく、近々、両替処を財務本部に名称変更して専用事務室も設ける予定だそうです)


(…もーしーかーしーてー部長って…あたしですか)


(さすがに、いきなり統括要職は厳しいと思いますから、墓所から現世復帰第2号を出して財務本部長にします。エマ子には専用分体の作成を指示しておりますよ)にまにましておられるので、誰が復帰するか、よう分かります。


(いえいえ。本部長はあたくしがやります。流石にクレーゼにそれは任せません!クレーゼは旧・両替処に代替する出納部という組織の長に就任して貰いますから。本人は嫌がってますけど、やらせます。で、地下金庫を扱ったり、痴女皇国自体の財政管理を行う部署として財務部の新設がマリアから提案されています…)ああ、そっちですか…。


(じゃ、ちょっとダイアの治療の手順を説明してあげましょう)


「ダイアさん。あなたをどうにかする方法はありますよ。まず、男性に対する恐怖症を外す事は可能です。これが出来る者は…ま、わたくしもですが、まずアルトリーゼ、ダリアリーゼ。そして…田野瀬麻里子さん。あなたです。要は、千人卒以上への昇格を行う、()()()()()()をするだけです」


「うーん初代様、その役目、あたしやアルトさんではちょっと不適切ではないでしょーかー」棒読みでニヤニヤしながらダリアさんがおっしゃいます。「ですよねーアルトさーん」


「そうですねぇ。たのちゃんも無事、痴女化した上にかなりの位階まで行かれてますから、差し当たって千人卒に上げて、あとは()()()()()様のところでしゅぎょうをされれば、欲を捨てて仕事に生きるようになるのではと」ちなみにアルトさんのアルト語というべき言い回しですが、本人はある程度わざとやってるそうです。まぁ、半分は地ですがとアルトさん。


(あたくしがマリーやちちうえのようにツンツンしていたら、それはもう仕事に支障がありますので…)


「ではこの場で、金衣女聖職としてお聞きします。ダイアデレーヤ。この場で還俗も可能です。ですが…呪い、残りますよ? ですので、いささか早いですが、あなたの還俗に関する進退を今この場で伺います。千人卒以上への昇格を望まれますか? 昇格した場合の注意事項ですが、男性との接触が制限されます。理由は言うまでもなく、痴女と()()と、その男性は痴女でなければ満足できなくなります。従って、本来の痴女宮本館上部女官寮居住者…千人卒以上については、男性を相手にするための手加減研修を受けて頂く事になりますが、ダイア、あなたは引き続き財務で勤務する場合、この手加減研修を受けることはできません。なぜならば両替財務女官は、一般女官に課せられた「あの」お当番を免除されているからです。…が、今後の仮称淋の森計画とからみますが、上司の申請があれば手加減研修措置を受ける事は可能です」


「はぁ…つまり、この先、人間としても痴女としても生きていくならば、呪い解除を可能にする上司に付き従う必要があるという事ですか…」


「そうなります。更に、両替財務女官が還俗する場合、特別な措置を受ける必要があるのは知っておりますね?両替処配属が決まった時点で説明は受けたはずですよ?」


「…はい、記憶を消されると…」


「そうです。あなたの場合、痴女皇国は元より聖院での初期研修も含めて、女官時代のほぼ全ての記憶が失われます。知識もです。財務以外のこともしておけば、そちらに関する分は残せたのですが…」


「ああ、あぁ…」もうダイアさん、ガン泣きです。


「ダイアデレーヤさん。泣くのはおよしなさい。これが私の尊師の教えで言う因果というものなのです。あなた自身の心中を拝見しましたが、あなた自身の認識以上に、あなたがなされた事は罪深い事なのです。あの金塊の制約を定めたのが痴女皇国上皇のわざである以上、その痴女皇国の女官として生きるあなたは痴女皇国の掟に縛られます。その定めがお嫌ならば、私が仏門への出家を助言いたしましょう。…ただ、これはこれで辛い修行か、瞑想の果てに悟りを開く事が待ち構えております。その行に耐えるには、我が尊師、釈尊の歩んだ辛く苦しい人生の道程の半分以上に匹敵する期間が必要でしょう。そして、それに耐える精神を持たねば…路傍の石と成り果て朽ちる事と相成ります。更にわたしどもの教えでは、(ごう)を抱えて次の生を歩む事になります。つまり、繰り返しです」


くずおれたダイアさんの前にしゃがみ、優しく玄奘さんが説いて聞かせます。


「ダイアデレーヤさん、だね。玄奘くんがなかなか上手く僕の教えた事を伝えてくれたけど、悪い事は言わないから、一度昇格しておきなさい。必要に迫られて悟りを開く道を歩まざるを得なかった罪人は僕の弟子にも何人もいたけどさ、全員それなりに苦労しているよ? まぁ仏教とされる宗教の開祖扱いされてる僕が言う事じゃないけどさ、同じ苦労をするなら、ご自身の身についてご利益のある苦労をした方が、あなたにはいい結果になると思うんだよ。ま、仏門に入るなら入るでいいんだけど、もう少し俗世で苦労してから玄奘くんを訪ねてくれる方が、仏の教えは身につくと思うよ?」


と、乗り移ったありがたいお方が、それでいいのか仏教というお話を。


「だって、千人卒以上だっけ? 本格的に痴女化したらさ、人の数十倍数百倍の知恵も力もつくんでしょ?それならその力で世のため人のために何かしてもらう方が、波羅門みたいに苦行苦行苦行って言ってるよりも、よほど世間のためになるでしょう。田野瀬さんだって、自分の身についた力を実感してるでしょ?だからさ、この子にもその力を渡してから、自分の人生を改めて考えてもらっても遅くはないと思うのですよ。せっかく仏様に近い立場になれるんなら、何も苦労をする必要なんてないよね。…あ、でもさ、ダイアデレーヤさん。痴女という人たちについて、僕はまんざら知らない訳じゃないんだけど、上の方になればなるほど、人や生命を尊び、その生命を全うさせようという考えが強く刷り込まれるからね?それだけは承知しておいた方がいいよ?ものすごい力の代わりに、痴女は力を合わせて世界のために働く義務を持つようになるんだ。それは与えられる力の代償と思って受け入れておくんだよ?」


なんというものすごい納得力あふれるお言葉。さすがは出家した後で「うちの息子がこんなに立派な僧侶になって」と褒められた人だけはありますね。まりりもちょっと説法受けてきた方がいいんじゃないかな。


(うるせぇっ、以前それをクレーゼ母様にしてもらえないか頼んだらな、永平寺か駄洒落山を勧められたんだよ! あの人の煩悩は禅行か駄洒落修行でないと治らんって言われてな…ああ、あたしの母親だからな、()())っていうか聞いてたのか。ジーナ語で言うと、まりりも気にしぃやなー。


(しょーがねーだろ。それよりそのインゴットの在庫管理、たのの仕事にすっからな。逃げられねぇぞ。喜べ、お前の直属上司はたった今から初代様だ。つまり、初代様の欲望の管理も君の仕事なのだよ!ふははははは!)


(待てやまりり!なんぼなんでもあたしの身体が持つの?あの人初代様でしょ?)


(だから家族会承認であそこまで強化されてんだよ。現状では雅美さんと同格だぞ「あの」雅美さんと)


(…なんかものすごく喜べないんだけどその昇格!)


「まぁ、そのつもりはないと思うんだけど、あれも嫌これも嫌とわがままばかり言うようじゃ、世の中は回らない。出家してもそれは同じなんだよ。結局は生の重さと向き合うんだから。なら、向き合える力を与えてもらう方が理にかなってるんじゃないかな?」


「流石は仏陀様ですわねぇ…」お目々うるうるしてはりますね初代様。


(…っとね、内緒ですけどね、あたくしも十月懇親会の面子に入ってるには入っておりますの。ほら、連邦日本でいう隠岐島はあるけどしまねな県に八百萬神族とか、承認された他族を集めてやるアレ。で、その時に毎年お顔を拝見しておりますけど、モテてますよこの方。とにかく周りになにか誰かいてますから)


「いや、ですから僕は出家してますからとお断りしてるんですけどねぇ。長髪くんも童貞の必要があるのにみんなに言い寄られて困ってますけど」どんな集まりなんですか、神有月。


(興味があるんなら上司に相談して出張許可取って、今年の十月に出雲に来い。特別に()()()ようにしてやるぞ? あそこは元来、わしら以外は浄化消滅するのを知っておろう。ま、お主は日の本生まれじゃから、他の奴よりは耐性はあるやろうけどな)ああ、ジーナさんが生きて帰れたと不思議がられたアレですね。


(あそこにおると、お前ら痴女には色々と利点もあるようでな。まぁ、てるこには考えてやってくれと言うとくから)


(たのちゃん…ついでに言っとくけど、あそこにご招待って、神様かその眷属扱いされる事なのよ。本当はかなり栄誉なことなんだけどねぇ、たのちゃんについてはうちの姉の思惑があるから…まぁ、行きたいなら許可を出して差し上げます。うん、ただ…ちょっとだけ覚悟してね。か・く・ご)ああ、ジーナさんがアレ勝負させられたアレですね。分かりたくありませんけどわかります。考えさせてください。


「わかりました。…初代様、申し訳ありません。わたしを昇格させては頂けませんでしょうか…」


よくぞ申した、という顔で全員がダイアさんを見ます。


「うぉっしゃ了解。ちゃっちゃとやってしまいましょう。…ですがその前に一言。今後、八百萬神族や鬼族を始めとする八百比丘尼国の皆様とのお付き合いが増える事が予想されます。で、一般女官の方々には、耐性を持って頂けるように順次、改良するための薬のようなものを渡しています。たのちゃんは何をすれば薬のお注射がわりになるかご存知ですわね」はいっ。わかるけどわかりたくないお話ですねっ。


「これ、玄奘様と釈尊には、分かる訳にはいかない話です…ですが、ここでしないと呪いへの耐性因子がつかないのですよ。更に都合よく、わたくしは今、姉の身体を拝借しておりますから、一気に事を進めざるを得ませんので…まずはわたくしとたのちゃん。で、次にたのちゃんとダイアの順番で進めますわ」


「必要な行為は承知しておると釈尊も。どうぞ、お気兼ねなく」


「ご配慮痛み入ります。では」…初代様が引き寄せたものは…何ですかこの顔らしき場所に穴が開いた変なベッド!


「えすてべっどとかいうものでして、マリアリーゼがこれをと。で、装いも」初代様のお姿でミニスカナースって、なんか痛くないですか。似合っておられない訳じゃないのですよ。ただその…顔はやめなボディだよ系姐さんルックスな方にですね、それ着せるのは罰ゲ…私もかよ!こらぁまり!一体何を考えとるんじゃ!


(新しい奉仕形態の実験に決まってんだろ。メンズエステとやらを導入できねぇかやってみようと言うわけよ。んで、千人卒未満の勤務終了後に吸い上げ作業あるじゃん。それにも使えないかなーって思ったのよ。ほら、千人卒以上の個室って元々広いだろ?だからこれを置いて上がって来た千人卒未満をだなっ)わかったわかった。で、あたしは何をすればよいのだ。


(とりあえずてるこ様の施術を受けて八百萬神族耐性をきちんとつけてくれ。たのは確か、きちんと施工されてない筈だから念のためにやっとくんだよ。ほれうつ伏せになって寝転がれ)ああ…そのための穴なのか…それに、やたら寝台の位置が高いぞこのベッド。


(本式は、揉みやすくするために高めに出来てるんだよ。低すぎたら施術者が腰を曲げる姿勢になるだろ?)ふんふん。


で、もみもみされます。なんか痴女宮の島の場所が場所だけに、近所のバリ島で南国気分を味わいながらレディースエステを受けている気分…。


な訳ありません。


詳細省略。


しかし、やる事きっちりやられました。


R15版の可能性があるとかで、私自身の口で語らずに、見学者に話を聞いてみましょう。


はいアルトさん。


「あの…ちちうえのような激しさが…」


はいダリアさん。


「あたしも思いました。まさか乳上やマリータイプとは…雅美さんみたいな感じになるという予想、見事に覆されました」


はい玄奘さん。


「水牛の争いを見るかの如く、釈尊の感想です。拙僧には龍虎の争いに見えました」


はいダイアさん。


「入院式で見せられたマリーさんの映像以上の衝撃でした。痴女皇国でも聖院でも幹部や皇族の方々はあれが日常なのでしょうか。直接お相手禁止とオリューレ様がきつく言い渡しておられた理由、速やかに心安らかに理解いたしました」


そして、どきどき新人教育。


これまた詳細は省かせて下さい。


ええ、大卒2年目の今に至るまで、私はろくな経験がありません。まぁ、一時的に痴女化してましたから、扱い方は全く知らないわけではないんですけどね。


ですので、結果だけお伝えします。


松茸山の松茸さん爆誕。以上。


しかし、松茸以上に喜ばしい事があります。


ダイアさんは例の呪いの金の延べ棒、あれを何とか触れるようになっていました。


普通の方のインゴットに至っては全く普通に触れるとの事。これで硬貨の取り扱いも問題ありません。やったねたのちゃん、部下がふえたよ。


更に、懸念されていた男性恐怖症。


これも何とかなりそうです。


えがったえがった。


今までの両替処財務、千人卒または上級女官が就任した事は皆無に等しいらしいのです。


ですが初代様曰く「ぜってー必要ですわ。上級は精気授受がないと生存は無理ですので、財務部所轄女官の就労制限見直しにもちょうどよい機会ですから、両替処の皆様も例のさいくるとやらに入って頂きますわ。うん、そもそもの就労制限を決めたあたくしが申し上げるからには絶対にやって頂きますっ」と鼻息も荒く申されます。


で。


後日。


痴女宮21階、例のカウンターと淫魔部からは廊下とエレベーターを挟んで対になる場所、痴女宮の南側の新築区画最上階になるんですかね。


あ、もいっこ上がある。会議室だから階下への騒音は大丈夫と。


で、そこに財務本部ができました。企業によっては役員室区画直近に財務部を置くらしいので、この配置自体は妥当という気がしますが。


しかし、廊下を挟んで北側が皇帝室秘書課オフィス。


さっき淫魔部と言いましたよね、私。


ええ。


出入りしてる人が片端から、見るからに淫魔ばかりの淫靡で猥褻な18禁部署です。何でまたそんな場所に…。


「なら出納部と場所を変えますか?広報部の横ですよ…それもあって、クレーゼを出納部長に致しましたのですよ…たのちゃん、おわかりですわよね?」はい。どちらにしても、卑猥な人物が長を務める場所の近くなのですね。


「あたくしは聖母様のところにお邪魔すれば良し。クレーゼは広報部統括部長と戦えば、精気授受サイクルに乗る事ができます。あと、エマ子に命じて半ば無理やりですが、財務本部から客用下足処を経由して出納部までの直通えれべーたーを作らせております。これで会計関係者は地下の出納部に顔を出しやすくなりますし、第一金庫室…通常会計用のお金を管理する場所にも人目につかず台車を押して参れましょう」ほっほっほっと扇子で口元を隠しながらお笑いになる我が上司。


かつての金衣時代まんまのパツキン姿だというお姿、どう見てもお堅い金庫番には見えないんですが。更に類似品のクレーゼ様。


私は直接面識がなかったんですが、現役女聖時代を知るアルトさんやダリアさん、そしてジーナさんに、数十名の幹部や上級女官が嫌そうな目を向けて…よっぽど色々とあったんですね、その姿の時代に。


で、エマ子さんが身体を作った、えらいさんお二人の居室は…。


「初代様!お願いですからあたくしに個室を!」


「黙らっしゃい!デルフィリーゼから涙ながらにきつく言われております!必ずやクレーゼめは初代様とご同居をと!」


「しかも元・アレーゼの部屋ではないですか!何でまたこの場所にっ」


「お黙りなさい!娘たちも頭を悩ませたのですよ?よりによって金衣2名が復活などありえん。部屋の格式をどないしようと考えたあげく、マリアヴェッラがアレーゼに頭を下げに行ってまで確保してくれたのです!有り難く使わせてもらいなさい!それがお嫌なら、B24に部屋を作らせますよ?」


「…そこ…寝所なのでしょうか…」


「墓所とも申しますね。何でしたらクレーゼ。貴女の寝台を引っ張り出して寝床にいたしましょうか?」


何かその方が色々よい気もします。


ちなみに私の寝室。区割り変更があり、現行財務従事者は一気に大多数の上級昇格がなされた事もあり、本館20階に財務従事者専用の居室区画が設けられました。…上級女官管理室、すぐ側ですやん…。


ま、個室にもなりましたし、気兼ねなく過ごせるのは良いことなのでしょう。職場は一気に近くなったので出退勤は楽になりました。


なりましたが。


ええ。すぐ上に呼び出されるとか、淋の森に誘われるとかですね。更に私の身体、上級女官相当にされてます。初代様が言われた精気収受サイクルにきっちり組み込まれました。それはもう、ダイアさんが愚痴仲間になるほどに。


あ、ダイアさん、出納部配属になりました。


ええ、クレーゼ様の部下です。


かねてからフリーダムな方とはお聞きしていましたが、まさか数日経たずに出納部はもとより財務本部すら全員「姉妹」にしてしまうとは。


私たち財務部はクレーゼ様の直属部下ではない筈なのですが…初代様から「この際デルフィリーゼも復活させて監督して頂きますよ!」とめっちゃ怒られていましたが。


「まぁ、気持ちは分かるから。とりあえず客間を貸すから避難したい場合、気兼ねなく来ていいよ…」ありがとうりええ。君たちの声についてあれこれ言わない分別はあるから、遠慮しなくていいよ。心落ち着く場所があれば、それでいいんだ。


ええ、見かねたりええがエマ子さんに頼み込んで、ペントハウスへのアクセス権を設定してくれました。しかも向かい部屋はるっきーがいます。


「あたくし在室時に限りますが、室外で怪しい気配がした場合、ミカ子に引っ張り込ませますから。少しは気兼ねなくお過ごし頂けますでしょ?」ああ、人の優しさが心に染みる日々。すんませんルクレツィアさん。どすけべ夫人とか言って。まさか貴女と同等以上の強烈なお方とは。


うん、出納部の運営…大丈夫だよね!きっと大丈夫だよね!

たのの「大丈夫じゃなかったです」

ダイア「どう大丈夫じゃなかったかは↓をどうぞ…」

https://novel18.syosetu.com/n0112gz/37/

たのの「しかし、私も真剣に整形を受けようかどうしようか悩むのよね」

ダイア「メリットしかないじゃないですか」

たのの「あるっ。あるのよダイアさん…ここで皆様に。私もダイアさんも、実家があります。そしてどちらも、娘が戻って来たら来たでありがたい状況なのです」

ダイア「美形の方が縁談が来るのでは?」

たのの「ダメなのです。私は戻れば財務官僚。なもんであまり目立つと色々と…同僚上司部下のやっかみもありますし、見た目で出世する職場じゃないのです…天下りするにも事情は同様」

ダイア「むう、お役人様や銀行家とはそんな制約があるのですね」

たのの「ダイアさんはどうなのでせう」

ダイア「えっとですねぇ、後日談の方にも書かれてますけど、私の国と言うか民族は少し特殊でして、よその国でも活動していますが、自民族で群れたがる傾向があるのです」

たのの「あああああ…まぁ、痴女皇国世界では宗教が絡んでないだけまだマシか」

ダイア「そちらの世界の私達民族の歴史や宗教や国土については学ばせて頂きました。正直、こっちで良かったと言うか、まだマシだなぁと」

たのの「他国に移住して溶け込むのは第二次世界大戦後の方が強くなっていきますからねぇ。戦前だとアメリカ合衆国が一番受け入れられやすかったのではと」

ダイア「そんな私ですが、今後は痴女宮の現場での現金収受や税収現場などの職務を巡る予定です。ですが…」

たのの「ええ。今後は財務担当女官の強化を図るために、痴女皇国でも聖院でも本当は必須な行為が完全義務化されるのです…」

ダイア「この話の続きの、私の側の視点の話がR18枠なのはそれがあるのです…」

たのの「なもんで、財務部関係のお話は、他のエピソード同様に未成年に相応しくない状況…まぁその、結合とか合体という類の行為描写が具体的に出てくるような内容などだとアルトさん枠やまりり…闇落ちマリア枠になりますので、読める方は併せてお読みくださいませ…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ