ぢょおうさまとおよび -Adora me-・9
で、オオオカ様が渋い顔をしてらっしゃるのはよくわかるのですが、トオヤマ様やハセガワ様も、あまり旧悪を明るみにされたくはないようです。
(ま、尾張の家にちょいと話をしてですな、那古野の港や停車場の近隣に盛り場を作らせてみる話も言ってんですよ。なんせあっちも三河監獄国の絡みでよそのお国の船も入るようになりましたから、向こうさん向けの遊び場もねぇってのも片手落ちな話だろうって、尾張徳川の当代も俄然、乗り気になってくれましてね。ほれべらこ様、横濱や神戸の租界と同じであちらさん向けの娼館もお作り頂きましたでしょ?)
(イリヤさん…罰姦聖母教会扱いで、比丘尼国で言う南蛮人向けの売春拠点を作ったんですよ…ほら、日本の人だと連邦世界ほどには他の国の人よりも平均の体格が小さめだった時代ですし、何よりまだまだ国外の方々に慣れていない国情がありますから)
と、イエミツ様とベラ子陛下に、話題転換を兼ねてその辺の入れ知恵をして頂きます。
(それと、租界という地域を設定して外国人の居住を制限しているんですけど、それにははっきりとした理由があるんですよ。比丘尼国は痴女皇国と提携していますが、完全に同一ではありません。例えば、比丘尼国の刑法では死罪が存在します。そしてもっと重要な事として、不殺の掟は痴女皇国や聖母教会・慈母寺の支配地域ほどには厳密ではないのです…)
あ、それはわかります。
ルーン王城市でもエヌビー人には制限、入れてます。
ただ、これは魔毒汚染を防止するためでもあるのですけどね。
そしてニホンのサムライは無礼を働かれたら剣を抜いて殺人に及ぶ場合があるそうですが、実はリュネでもそれに近い掟が存在します。
戦時中のリュネでは戦士への侮辱は大罪だったのです。
実際、わしが剣聖やってた時代は発生してませんでしたけど、過去には西方族やリュネ族でも戦士ではない者の違反者を海岸村送りにしていた事例がいくつか存在したのを知っております。
ええ、わざと魔族に攫わせやすい場所に置き去りにすることで、実質的に死罪としてしまうアレです、あれ。
(で、我らも逆に思いつきましてな。遠島…つまり江戸や他の町から遠い島へ流す刑が存在するのですが、そちらさまでは生きておるものが大罪人であろうとも貴重であるとか。すなわち、死罪を申しつける代わりに、まりや様やべらこ様のお国に回せば大変にありがたいとも伺いまして…ですな、兄上)
(その通りよ。まぁ、くにを傾けるような事をしでかした野郎のためにも死罪はちょっと置いときたくてさ、ほら、山田朝右衛門の件よ…)
(そそ。大岡、山田のお家に仕事がなくば、ちと困るという件があったであろう…)
で、これもベラ子陛下からの入れ知恵です。
(フランス王国のサンソン一族のような死刑人と、その一族が存在するんですよ…日本刀の鑑定でも有名な剣士なので、完全に死罪を廃止されると困るという訴えがよこされまして…で、比丘尼国ならおかみ様の裁定にお任せしたところですねぇ)
・戦士の犯罪での最高刑罰は斬首(死罪)
・名誉の自刃行為+斬首がその次位に来る
・それ以外の身分の場合でも最高刑は斬首+首を晒される
・奉行はなるべく斬首刑を出さないようにすること
・斬首刑を申し渡された者は江戸で仕置きする
(つまり、死刑判決を出すような犯罪については、最高裁判所に近い機能のある江戸の白洲で取り調べることとされたんですよ。それと比丘尼国にも連邦世界の日本に存在した切腹という武士社会特有の死刑が存在します)
ふむふむ。
ハラキリとかいうその制度ですが、宮殿や公邸内で剣を抜いて殺害や乱闘に及ぶなど、領主や戦士としての規範を大きく逸脱した犯罪を犯したものの、例えば他者に侮辱を受けて許し難いと怒って抜剣した場合には裁判が行われた結果、斬首かハラキリかを決めるんだそうです。
(ま、実際は武士の面子ってもんがありますんで、実質的に切腹が一番重罪なんですよ、武士だと)
で、このハラキリ刑の場合、首を斬られますが、その前に自分が悪いということで自ら短刀で自分の腹を切り裂く行為が潔いとされ、それ以上苦しませずに済ませるために行う名誉維持行為となるんだそうですね。
で、このハラキリの介錯とかいう助刃行為でも、剣術の達人がその任務を務めるのが慣わしなんだそうです。
(敵討ちもどうするかで揉めたんだよなぁ、そういや)
これも、一応は残されたそうですけどね。
(ただ、仇討ち敵討ちに至るまでの調査、巫女種や痴女種女官だとあっという間に終わりますし、何より今は比丘尼国でも聖環装着が原則です。つまり逃げられないのですよ)
(で、遺族が敵討ちを望む場合は介錯人に立候補させたりするんだよな)
つまり、戦士階級の中での揉め事はそこそこ起きるようです。
まぁ、これについてはリュネ族の場合、聖剣を用いた裁定によって最終的に運命を決めることになる掟が存在しますから、他国の風習ということで記憶しておきましょう。
確かに比丘尼国、他の地域と比べても特殊なことがらが多いために、他の痴女皇国の管理地と別枠扱いになっている理由の一端が知れました。
それと、犯罪そのものが激減した理由ですね。
聖環です。
(下手すりゃ今、財布持ってないよな、誰も彼も)
(すりや置き引きはもちろん、押し込み強盗も、おうちにお金がないとなったら意味がなくなりますからね…)
これ、痴女皇国の他の支配地で金銭取引があった地域では絶対に起きることらしいですね。
窃盗や強盗、わけてもカネを盗む犯罪がなくなってしまうって件です。
それと、カネ以外の貴重品を窃盗してもすぐ、足がつくようになってしまいました。
過去を遡ったり人の記憶を追いかけられる女官ならば、盗難品をどう処分したのか、あっという間に調査が終わってしまうからです。
(鼠小僧とか申す賊も、瞬く間に捕えられておりましたからな…その節、老中様にはお手を煩わせまして…)
(まぁ、リンドと小官が動いて捕縛できないのは名折れというもの…ただ…その…)
で、ジョスリーヌさんが言いにくそうにしています。
(そのジロキチとかいう窃盗犯だが…例の下帯強盗事件に関連してたんだよ…)
それ、なんですか。
(なるべく手短に説明する。かつて南洋王国に現れた変態三兄弟の遺伝子が比丘尼国に持ち込まれた結果、変態が繁殖しかけた事があったんだよ…その時に変態は根絶されたかに見えたんだが、どうもその時に孕まされた女の子に、その変態の因子が復活したようでね…国主や有力なサムライの邸宅、それも女性の居住区を襲って犯行を重ねていたんだ…)
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