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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど
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新人財務官の悩み・青い髪の女(神)編

どうも。先輩同僚のやらかしに悩む田野瀬麻里子です。

でも、頑張ります。これを乗り越えてこそ社会人。



まぁ、痴女皇国での勤務経験、仮に日本に戻ったとしても、全て活かされるかは疑問ですが…。

さて日付変わって当日12時。


臨時の財務担当として派遣されて来た方と仕事を引き継ぎます。


「では、ティアマリーネさん、後の作業、よろしくお願い致します」


「はい。お任せください」にっこり微笑まれる比丘尼国巫女装束のお方ですが、ものすごく透き通るような青い髪の毛に変わっています。それも、なんか周りに鱗粉が舞い散るかのようなキラキラした感じでして。


で、この人が来た経緯。


--


それは昨晩の話がまとまった後、報告を受けたおかみ様が来られまして。


で、診察の際に…


「おい妹。お前も診てやれ」と言う事で初代金衣女聖テルナリーゼ様を呼ばれましてね。


その際におかみ様の体を拝借されたんですがね。


…もう全員その場で絶句。


「こんな染めても出ない色合いって、絶対普通に思われませんって!」


「だーいじょうぶーばれないばれないー」


そうです、初代様、初代様としてこの旧・聖院の地に降り立たれる前の人生…というものが「いくつも」あらせられる方らしくて、その一つの海棲特殊人種の姿になられたそうなんですけど。


ちなみにその際の姿だったそうですが、Gストリングと言っていい細いパンツみたいなふんどし状のお召し物「だけ」を披露されまして。


で、この手の事に詳しい広報統括部長いわく。


「あの…初代様、ほんっとーにナンムって呼ばれたんですか?」


「うん。ティアマトの名前でも出ていますた」


(あのさー。たのちゃん、理恵ちゃん。あたしが念押しして名前聞いてんの、シュメール神話の海の女神様って事だからね…わかるよねこの重大さ。おかみ様のいくつかある名前のうち、一番メジャーな奴くらいインパクトある聖院のルーツなお話だからね…)


まぁ、流石にその姿はまずかろーという事で、おかみ様の普段着に戻ってもらって、比丘尼国の経理担当という事にして…。


「ものすごく無理がある気がするが、とりあえず良しとしよう」ジーナさんも呆れていたり。

で、更に爆弾発言。


「アルトリーゼ。いえ、サレルフィール。あなた…うん、アルトリーネを派遣した甲斐があったわ…」


「え」アルトさんをまじまじと見つめる初代様@お姉さんに憑依中。


「みなさん、アルトさんが聖院に来るきっかけ、ご存知かしら。知ってる人は挙手」


ジーナさん、ダリアさん、雅美さん…そしてエマ子さんが手を挙げます。


「さすがはインマヌエル、というところですね。で、サレルフィールが子供時代に寺子屋の教師だったのが初代アルトリーネ。そして、彼女に聖院の短剣を預けさせて聖院に駆け込ませた件ですが、実は初代アルトリーネの派遣を家族会で決めて、当時の金衣を通じて指示したのはわたくしなんですの」


(インマヌエルってのはエマ子、エマニエルの本名らしい。この子の正体は生態MIDIとでも言うべき人型救世主兵器というわけわからん代物なんやけど、全性能を今の世で使う必要はないからと、アルトとは違うベクトルのアホキャラに擬態しているのや…恐らくエマ子なら、時間を遡って当時の状況をリアルタイムで見ることすら出来ると思う。本来の性能なら、な)と、ジーナさんが解説してくれます。


「で、サレルフィール…この子、聖院に入ってから成長がかなり早かったのを知ってるのは…クレーゼくらいよねぇ。まぁ、簡単に言っちゃいますと、この子は何十何百世代か後の、わたくしの子孫とでもいうべき子なんですよ。隔世遺伝、といえばジーナさん、雅美さん、麻里子さん、理恵さんにはわかるかな」一同絶句。話がデカすぎる気がします。


「マリアがアルトを旦那に指名した理由、これかいな…」


「ジーナさん正解。そうですよ。だからマリアとアルトは何としても、後々まで残ってもらわなくてはならないのよ…()()()を産んでもらうために、ね。ま、この話は聞かなかった事にしてください。ただ、アルトくんも、家族会の重点庇護対象だというのは皆さん知っておいてくださいね」ふふふ、と笑われる初代様。


「まぁ、せやなかったら、ダリアとの時にご先祖様加勢の限定金衣状態でけっこうな大勝利をおさめられんわな!」うははははは、と笑われるジーナさん。アルトさんの顔が真っ赤なんですけど。


「あの時の話は無しにしましょーよー。あたしも黒あれ締めてたせいで大変だったんですよ?マリア様にボコボコにされるしっ!」ダリアさんにも黒歴史なんですね。ええ。触れない方向で。


「ふっふっふっふっふっ、雅美さんでしたかしら。ダリアちゃんにもね、実はね」


「え。まさか…」雅美さん、慌てて聖環操作中。で、ダリアさんと画面を見比べてますね。


「初代様。口頭で申し上げてよろしいでしょうか。ある人名…になるのかはわかりませんが」


「どうぞ」


「ギリシャ神話ですね。エチオピア王妃カシオペーア。そして王女アンドロメーダ」何かを決意したかのように告げられますが、初代様は…。


「うっふっふーないしょー。ま、もしもアンドロメーダなら、兆候、いずれ出るかもねー」と言って、アルトさんとダリアさんの間に入って二人の頭ぐりぐり。


「ついでにバラしちゃいましょ。今の時点であたくしにわかっている中で、その手の因子引きずっている可能性があるのは、この中ではエマちゃんを別格としても、アルトくんとダリアちゃん。そして…あ・な・た・さ・ま」さあ誰だ…。


「…あの?…うち? あたしバルト三国とかウクライナ方面の血は引いてるらしいんですけどね、なんかあの辺にそんな話あったんですかいな。北欧神話とは接点ないやろし…」


「これ、連邦社会出身でないとピンとこないかなー。オルソドクシア、またはオーソドックス。頑張って思い出すんだ、どこぞ大学出身とどこぞ高校中退、いや分体が卒業してあそこ大学行った人!」


「うう、あの変な学長像が現れる大学を分体が目指すとは…」


「りええが悲しみに包まれているっ」


「ま、まぁ…あそこ大学だって立派なものよ?ただ、どこぞ大学よりは目立ってないけど、あそこ大出身というと変わり者目線が来るって上司が泣いてたけどさ…」


「えーと。毎年2月に変な像を飾る風習は分体通学時も生きています。クソボロさで有名な学生寮は、流石に建て替えられました。有名な石垣の看板、あれもあたし分体通学時はもはや見る影もありません。で、東京駅で遭難した総理大臣とか、戦場のほもな映画も撮られた有名なとっても怖い監督のおじさんとか、定めぢゃな僧侶の中の人が先輩な理恵さんなんです…」


「なお天の声が在籍していたさる会社、親会社から出向してきた当時の社長さんや業務企画担当部長がどこぞ大学、で副社長や特命職部長があそこ大学とか、親会社役員室長経験者が専務で、若様が行ったやんごとない私立大学出とか、出向者が有名大学出身者の見本市会場だった模様。だいたい世間の評判通りやったな、と」


「ダリアさんの出自も気にはなるけど、ジーナさんも先祖がかなりややこしい予感」


「あの辺は鬼汗国に該当する連中とか、ギリシャ人とか色々絡んでいるからねぇ。ジーナちゃん、お母さん、変な十字架とかマリア様の踏み絵みたいな変わった絵とか持ってなかった?晩ご飯の後に詠唱する習慣とか」

「詠唱はあの母親の実家に伝わってたみたいやね。あと、けったいな十字架はうちの部屋にネックレスがあるよ」


「むっふふーん。独特の風習の教派なんだけど正統派を名乗るには理由がありましてねぇ…にっひっひっひっひっひっ。まぁ、聖母様が産んだのがアレだけかって話が仮にあるとか、生神女は誰が産んだのよとか」今度はジーナさんの隣に来てぐりぐりされています。珍しいですね、ジーナさんがこんだけいじられて黙ってんの。


(んー。雅美さんにたのちゃん。前にフランス行った時にあたし行きたくて行けなかってさ、スペインで眼帯おばはん拉致った作戦の時も行けなかった心残りな場所があんねん。連邦社会に戻った時の方が明確に場所わかるから、どこか言うとくわ。ピレネー県のルルド。ここにマリ公連れて行けるなら行ったって欲しいかな、と。多分、あたしやったら何もわからんはずやから。指定は、黒でも白でもまりあでも、とにかくマリアリーゼ。あとマリアヴェッラも、何かが起きて、あの子らの為になる事に繋がる可能性がある。これは家族会からの密かな対象外秘連絡事項な)


「初代様…あんま未来確定しすぎたら、子供というのはやる気をなくすんですわ。できれば、可能性の揺らぎ、作ってもらう方がみんなの為になるかなーと」


「まーねー。だけど聖母様。貴女はまだまだ現世に留まって頂かないといけないようです…申し訳ありませんね…」


「ベラ子を泣かしたくないから大丈夫ですよ。出来ればなるべく長く、この子の側にいてやりたいので」などと聞いていると、いつの間にかジーナさんと初代様以外は寝て…。


で、起きたら寮の自室。


麻里子ちゃんの息子さんの所在を確認して一安心した後、聖環の勤怠アプリで連絡・伝達事項確認。


…変更事項あり。両替処業務は12時で切り上げ、皇帝室派遣女官に後を引き継ぐ事。昼食後、修学宮教務長室に出頭して特待研修生と面談後、研修生並びに憑依する名誉教務員兼聴講生を伴い、15時を目処に淋の森に向かう事。


…特待研修生って誰よ…。しかも憑依って、またややこしいのが出そうじゃないですか。思わず、業務特命発令者のまりりに心話を入れそうになりましたが、心話制限区域なのを思い出して留まり、業務受命ボタンアイコン、ポチッとな。


で、起きてきたダイアさんに、あたしの勤怠変更がご自身の聖環に来てるか確認を取ってから身支度を始めます。水回り使用は先輩優先で、ね…。


んで二人してアオザイスーツ姿に着替えて一緒に食堂に行きます。


あたしは日本式、ダイアさんはトマトソースの中に収まる目玉焼き…あ、ダイアさんの出自。


痴女皇国世界や聖院世界では存在しませんが、連邦社会だとものすごく独特な宗教戒律を基準にした食習慣がある国…というか民族の方です。


といっても、アッラーアクバルな方じゃないです。


ええ、それよりさらにうるさいと一部に有名な方。身体が浮く湖とかあって、シンボルが正三角形を二つ配置した、カゴメかごめでダビデってるあそこです。


折角ですから女官寮食堂について説明しておきましょうか。と言っても、まりりが皇帝または女聖になる前から基本的な内容は変わってないそうです。


ただ、女官寮の実質拡張…今は千人卒以上の居室を痴女宮本館上層に移した関係で食堂利用者が増えまして、トレイをテーブルに置いた瞬間から動き出すタイマーが15分経過後にアラームと光を発する仕組みが導入されました。


で、15分経過して離席しない人のところには指導女官が飛んでくる仕掛けです。


さらに、食器返却口。


残飯は牧場送りで豚の餌になるそうですが、お残しが多い人は強制記録され、後で女官管理室呼び出しが待っているそうです。


罪人食堂も似たシステムだそうですが、あちらは刑務所らしく定食との事。そ、女官食堂はアラカルトで、好きなものを皿に盛って食べる「まりり曰くのアナポリス方式」です。


ですがパン・スープ組はまだしも、熱帯地方なので日本米のごはんや味噌汁は供食量が少なめで、はっきり言うと争奪戦が起きています。


皆さんにわかりやすいイメージは学食や社員食堂でアラカルトメニュー。で、供食窓口を巡って盛り付けを完成させてパンやスープ類を添えてから、喫食確認ゲートに聖環をかざしてテーブルに向かう流れです。


つまり、ご飯食べたかチェックされます。


あ、体調不良や傷病は基本、ちょー速攻で治療食らいますから、ズル休みは出来ないと教えられています。百人卒までは生理がありますが…生理痛、治されます。で、食堂とか女官寮清掃などの生理期間専用コースできっちり仕事させられますよ。


野良売春婦が聖院勤務を嫌がる理由の一つが、おそらくこの徹底した健康管理体制だと思います。ある意味ブラック企業といいますか…とにかく在籍者は何がなんでも何らかの労働に従事させられますから。


ちなみに聖環電子化や勤怠管理他についてですがね。


八百比丘尼国傘下の三河監獄国という、国自体が労働刑務所になっている国にマリーさんが出向して囚人管理を学んだ成果を生かしてるらしいんですが。


()()()という工場で大八車の完成検査とか織機や紙漉き設備の製造だの、あげく()()()()工場で西洋社会に輸出しているという馬車用板バネ巻きバネの鍛造工場での操業にチャレンジしてるマリーさんの姿が映像記録にされてたのを見せられた事がありまして。


「まぁ熱いのなんの。痴女体質でなかったら死ぬ死ぬ死ぬ。工場のあちこちに飲料水の樽があるとか、囚人が竹の水筒を携行してる理由がよくわかりましたわ」ですと。ちなみに痴女体質のパワーを遺憾なく発揮するわ、囚人寮で食事を取ってもよいとされたので以下略。


で、工場長はおろか国主にまで残ってくれだの是非作業員派遣してくれだのという大変熱心な懇願があったそうなのです…。


業務受託費用も妥当なものが提示されたらしく、近々たはらの近くの()()()()()というところに作られた痴女皇国専用寮に住む派遣者を運用した操業を始めるとか聞きまして…。


(エマ子のやらかしの穴埋めもあるけどさ、いい機会だから国家経営に本腰入れろって、ワーズワースの祖父様に発破かけられてんだよ。で、集約労働のノウハウも欲しいから同意してな。三河監獄国の紡績工場を天竺に作る提携事業の話のための第一段階なんだわ。あと製鉄事業を筑前手榴弾修羅国と海洋蛮族国と北欧ポルノ国と南米尻出産婆国と、痴女皇国のすぐ下の罪人流刑国で興す予定)


で、石炭どうすんですかという話には。


(百万卒以上の痴女なら遠隔で抽出採掘できるから、既に筑豊口曲国や釧路とか長崎沖の炭田に比丘尼国神楽隊の選抜者を派遣して採掘開始してる。あとはコークス製造炉を高炉の側に作って以下略。高速海流生成ノウハウは初代様と人魚族が持ってるから、北欧海蛮国の海事学校卒業水先案内人がいたら輸送船は何とかなんのよ。トリエステは接収してイタリアの領土にしたから、造船所は実質うちのもんだしな。蒸気機関を使いたいんだが、あれ与えたら絶対軍艦とか作るからなぁ…)


この話、連邦側の日本に流さない方がいいと思うのですが。


(流れても何もできねーじゃん。ちなみにものすごく遠回しかつ婉曲表現で、たのやりええの家族とか高木家になんかあったら最後、アレーゼさんかあたしが日本で暴れるからなと若様経由で通達済み)すんまへんお気遣い頂いて。


(まぁ、あたしとしてはなるべくベラ子に苦労させたくない訳よ。あの子には、かーさんの側でのほほんとさせてやりながら痴女宮にでんと構えて欲しいからな)


まりりの世話焼き癖は変わっとらんのう。


で、食事が終わるとトレイを持ち上げます。するとタイマーがリセットされますが…。


ええ、ズル考えた人、手を上げて下さい。


この仕組みだと、途中でトレイ持ち上げてリセットしたら居座れるじゃんって思うでしょ。甘い。


ここで再度降ろすと警報、出ます。リセットは監視役の騎士様を呼ばないと出来ません。


しかも我々の属性、思い出してください。その時点でズルを考えたの、飛んで来た騎士様に読まれます。


それだけではありません。このやり取りは記録されて「素行エラー」という項目で女官管理室に送られます。


はい、そのエラー記録を精査して、最終的に目を通す人が誰か、思い出してみましょう。


…マリーさんの着任挨拶での映像で皆を脅した件ですが、それが本当なのを何人か見せしめにしてやられましたから。昔よりは手加減してるそうですが、それでも公開レ○○くらいは平気でやりかねない性格だと皆に知れ渡っています。


更に言う事を聞かないと…期間限定の欧州支部送りになります。


ええ。あそこの長が誰か知ってたら、どういう目に合わされるか分かりますよね。それよりはちゃっちゃとご飯食べて持ち場に戻って仕事帰りのついでに推奨されている門前町利用。茶房もありますから、お茶して談話する方が理に適ってます。


で、返却口にトレイを返して、業務用下足処へ、ここも以前よりおっきくなりました。


ですがわたしたち財務系は、ここのゲートは通れません。


下足処のすぐそばにある女官管理室に入室。


「おはようございます。両替財務の2011ダイアデレーヤと田野瀬麻里子、出勤します」と二人して声を掛けて室内奥の地味で目立たない扉を目指します。で、ドア横のタッチパネルに聖環をかざしてロックを外します。この際に、ダイアさんが先輩なので先に入るとか、後輩のあたしがドア開けて待つとかはダメ。


必ず、一人ずつ通過認証。1回の開放で複数人通過すると警報です。


ダイアさんが聖環をタッチパネルにかざして、認証の緑発光を確認したら次はあたしも同様に。


で、ドア閉鎖を確認。


その先には下向き階段が。薄暗いですが専用通路です。正直、方向音痴系なんで、どこの辺りなのかよく分かりませんが、とにかく歩きます。そして、ここには第一キノコ室。すみません、第一金庫室も存在します。他に第二金庫室というのもあるそうですが、どこに存在するかは秘匿されているそうです。


で、割と歩いた後に何も書かれてない発光看板が。


ここも、聖環でドアを開きます。


「おはようございます。ダイアデレーヤ、出勤いたします」


「おはようございます。田野瀬麻里子、出勤いたします」


そして、各々の席について各自の端末機を起動。ログイン認証で出勤処理がなされます。


最近のあたしの仕事はゼニ勘定。


まぁ、この部屋にいる何人もの人、ほとんどゼニ勘定してますけど。


ただ、現金を収受している部署ではありません。


現在の痴女宮の女官は全員、キャッシュレスが基本です。そして門前町の市場すらキャッシュレス…おい、連邦の世界なら西暦1600年代の時代にそれ導入してどないするんじゃと思いますが、とにかくキャッシュレスです。小銭じゃらじゃらのお店も残っていますが、今後数年かけてキャッシュレスにしていくそうです。


ですが、よその国から来る方々はその国の通貨を持ってます。


そういう方は、とりあえず港の観光案内所併設の両替処に行って南洋王国ルピーに両替してもらいます。


そして、南洋王国ルピーを客用下足処の聖環貸与専用窓口で聖環に入金。


滞在が終わったあとは逆の手順で、預託金を含めて現金を戻してもらいます。


以前は聖院に両替処が置かれていましたが、痴女皇国になった後で南洋王国が一度潰れたあと再建した際に、南洋王国としての貿易を行う業務の一環として他国との通貨交換ができるようにと痴女皇国の支援で両替処を作ったそうです。


ここは南洋王国の施設という建前ですが、私達も派遣されています。他国通貨も扱うので、2年以上継続勤務者が行く決まりになってるそうです。ここの施設には、この部屋から行くゲートが出来ていますよ。


さて、あたしのここのところの仕事は給与・報賞管理。


給与といっても、この話で言う女官向けのおこづかいですよ。


千人卒未満のおこづかいの毎月の支給処理を行なったり、女官室から送られてくる新人女官の登録情報を精査して財務側で登録されているかをチェックしています。


あ、支給日は決まってますよ。例月20日〆、当月末払い。身一つで流れつく立場の人に、なるべく早く福利を与えたい意向ですから。あと、入寮が決まると支度金としておこづかい1ヶ月分を余分に。


そっそ。新人さんの支給額…1万SOKR(なんようるぴー)、だいたい2万円からスタートです。少ない?


いえ、下着とか服とかサンダルとか支給されてますよ。お食事も。


ちな、門前町の茶房、1杯50ルピー。市場の定食屋さんで150〜300ルピーが相場ですねぇ。


そして1ヶ月経過後には1.5SOKRに。日用品購買額として上乗せ支給されます。


あとは年数経過より、精気管理量増加が重視されます。百人卒になると2万ルピー、千人卒で3万ルピー。


で、そこから先の話。


あたしは密かに試します。


個別女官財務処理画面に自分の名前を打ち込んで…と。


Mariko Tanose. 田野瀬麻里子 Million Suction 百万卒 両替処初級財務役

Monthly Basic salary 基本支給額 SOKR 60,000-

Role allowance 役名俸 SOKR 5,000-

Job allowance 職級俸 SOKR 1,000-


その他手当はなし。まぁ、昨日昇格してしまったのを今日付でりええが打ち込んでくれたのが早速反映されたのでしょう。


ちなみに先輩とかだとどうかな。


Masami Tanaka. 田中雅美 Million Suction 百万卒 広報統括部長

Monthly Basic salary 基本支給額 SOKR 60,000-

Role allowance 役名俸 SOKR 50,000-

Job allowance 職級俸 SOKR 10,000-

Management allowance 管理手当 SOKR 5,000-


Rie Muromi. 室見理恵 Million Suction 百万卒 痴女宮女官長

Monthly Basic salary 基本支給額 SOKR 60,000-

Role allowance 役名俸 SOKR 50,000-

Job allowance 職級俸 SOKR 10,000-

Management allowance 管理手当 SOKR 50,000-


で、これを見ると職級…管理職や技術職の位が上なのよりも、就任した役職の方が重視されている給与体系だと言うのがわかりますね。


そして…ぬう、りええの管理手当めっちゃでかいやん。


これ、何を管理してるのかというと、りええ曰く、精気管理実績数…露骨に言うと、吸い上げてる部下の数だそうです。単純に言って雅美さんの十倍の人数の精気を処理してるはずなんで…。雅美さんも以前はこのくらい行ってたそうですけど、広報統括部長になってからは女官との接触機会が減ったそうですので。


さてここでテスト。まぁ、エラーが出たら後であたしの代わりに来る人に直してもらいましょう。


役名や職級は女官管理室、つまり人事部で設定されますから、あたしはいじれません。


で、テストとして訓練用のハンド入力設定書画面を出して、仮にあたしに特殊会計手当なるおちんち…いえ、おちんぎんが入る事になったと仮定して入力してみます。この設定処理が通っちゃうと、あたしの権限が上位職のそれにされてる確認になりますから。


Imperial family service allowance 皇室会計処理手当 10,000-


今でっち上げた、このお手当をその他手当支給で入力してみましょう。


で、ハンド入力設定書を保存。個別女官の画面に戻ってメニューから諸手当追加を選んで設定書を読み込ませます。


うお…通りやがった。これ、初級財務じゃ通せないんじゃ…。


まぁ、この設定書通りにあたしの奉仕報奨金(おこづかい)設定を保存しちゃうと本当に支給されかねないので消してしまいます。ハンド入力設定書もゴミ箱送りっ。


ま、本当に支給されるかというと無理です。担当は秘匿されているから不明ですが、後で必ず「田野瀬さーん。この手当設定は何ですかー」と呼び出し食らいますから。あ、そうそう。あたしたちの机配置、某ラーメン屋方式です。両隣、覗き込めません。パーティションで仕切られてますから。


んで、そんなこんなでお昼前にティアマリーネさん。ぶっちゃけ初代様に席を変わります。


あたしがログアウトしてから、初代様の聖環…おかみ様の聖環を初代様用のアカウントに切り替えたものでログインし直してもらいます。ちゃんとログインできるのか確認しておきませんとね。


(うん、出来てる出来てる。おっけー。なんかあったらここの区署担当に聞くから大丈夫よ。たのちゃん行ってきてー)


(はーい)ええ、流石に初代様は心話制限かかってないそうです。


(そりゃ、あたくしがここのしきたり最終決定してますのよっ)だそうです。


そして退室処理を済ませて、客用下足処側の出口から出させて頂きます。こっちが出口に近いんですよ。ただ、通常退勤は必ず女官管理室側からやるように言われてますから。


今回は初代様公認の特例で通させてくれるそうですので、遠慮なく通過。聖院正面玄関から出て行きます。


(まりりー。フリーになったぞー。修学宮の教務長室前に送ってくれー)


(しゃーないのー。ほれ)で、転送依頼。普通なら修学宮には専用出入り口から入らないとセキュリティに引っかかるそうなんですが、幹部クラスになるとそう言うのは免除される模様。


一瞬で目の前の光景が変わります。


目の前のドア横の看板にも「修学宮教務長室」と書かれていますね。


「失礼します。痴女皇国両替財務の田野瀬麻里子です。皇帝特命の件で出頭しました」


「どうぞー」と、教務長付き事務官…秘書さん役がドアを開けてくれます。


「おはようございます、お世話になります」と挨拶を交わして中へ。


「ようこそ、田野瀬さん。初代様からお話は頂いていますよ。私が教務長のシェヘラザード…初代アルトリーネです」


…え!

たのの「なんか今回、色々びっくりな話がいぱーい」

りええ「それは良いが、あたしの給与明細みるなー!」

たのの「なお世帯手当や育児手当等はまだない模様」

てるこ「聖院作った当時は結婚しても勤務するような雇用形態は念頭にありませんでしたからねぇ。あとテル子!せめてティア子とかナム子とか」

まさみ「うう…りえちゃんにまけてる…」

たのの「あ、あれ管理画面なんで、総支給額じゃありませんよ?」

まさみ「え?そうなの?」

たのの「あと広報部には、外国とのお付き合いのための対外活動費枠がありますよ。一時期はるっきーの服代で三分の一を持って行かれて以来、高額支出は承認制になりましたが、かなりの金額を使えるはずです。下手したら年間で数十億。ただし雅美さん、ルッキー、博子さん、ジーナさんの合計ですけどね。ま、ジーナさんは今は皇帝室予算枠に回って貰ってるのかな」

りええ「あたしの場合は部内対策費みたいなもんかな。女官の愚痴を聞くためのお茶代お菓子代」

たのの「おーい。その枠はちゃんとあるぞー。そっち使えよー」

りええ「ひぎいいい経理指導の恐怖が痴女皇国にもっ」

まさみ「皇帝陛下のバリスタ購入経費も落として下さい!」

たのの「うーん。それ、ジーナさんかまりりに聞いてみましゅ…」

まさみ「え」

たのの「意地悪じゃないですよ先輩、あたしの頭を覗いてくださいよ。で、バリスタマシン自体は、るっきーのドレスやスーツやコートやバッグなどの服飾品類からしたらめっちゃ安いとは思うのですよ。クソ高いブランド品とか、この時代の職人に頼む費用とかすればっ」

まさみ「確かに言えてるわね…」

たのの「るっきーも気にしていて、ジーナさんに安い買い方を教わったり、はたまた懇意の職人に作らせたり、あるいは最悪エマちゃんに頼んで複せ…まぁ、それしたらうちの品物どこで買われたとかになるから、公職者だから分別はつけてると思うけど、それでも高いには高いですよね。ま、バリスタマシンに話を戻すと、確かに高くはないです。ですが、カートリッジ代とか故障した場合の対応もさりながら。さりながら」

まさみ「むむっ」

たのの「本編でも触れましたが、下級女官ってご飯も慌ただしいし、お茶タイムだべりタイムや、その場所があればと思うことしきりなのです。これは上級だと心話で用事が足りてしまったり、嗜好品摂取の欲求が減るから見落とされがちだと思うのです」

まさみ「なるほど…喫茶室があれば解決するわね。それと、企業や省庁によっては同じビルに入ってる喫茶店から出前してくれるとか」

たのの「女官教育にもなりますし、喫茶店に地元の茶房から入札で入ってもらうとか、さらにはうちや比丘尼国で生産してる茶葉の乾燥や紅茶の発酵過程評価だの、コーヒー豆の出来や焙煎技術のチェックに使えると思うのです。ベトナムコーヒーだってフランス支配下で広まったし、パリのカフェが流行った成立起源を紐解くと、あたしたちが世界に嗜好品消費文化を創出しかけてる訳ですからねぇ」

まさみ「なるほどっ、自産製品のチェックにも使えると」

たのの「バリスタマシンは女官が忙しい時や、彼女達がいない時に利用するとかの緊急用に残しておいて、給茶業務や喫茶室新設については提案をいたしたくっ」

りええ「しかし、場所の件は言われそうよね…今、食堂は時差出勤などで効率化を図っているから割と回っている面はあるのよ。それと、女官は罪人食堂も使えます。あ、罪人も先輩後輩で活動する上に、逃げようがないから日本の刑務所と違って食堂でご飯食べる方式なんですよ。それに罪人と言っても政治犯や制度犯…その国の風習で重罪人扱いでも、よそなら無罪な事件で来てる人も多いので、罪人イコール悪人ばかりではないのですよ」

まさみ「ちなみに調理や食堂作業、罪人と女官から選抜された人で女官食堂も罪人食堂もまかなっています。十人卒でも大抵の罪人よりは強いし、精気を持て余してる罪人からドレインさせてもらえるから女官にも好評。加えて罪人側も優良認定されてる証になるから、女官とペアの仕事を望む人多数」

りええ「罪人の皆様の意欲向上のためにも、なるべくコンビを組む仕事を作ってもらっています」

たのの「とりあえずバリスタの経費は皇帝室長に通してやってくださいと依頼しておきます。実は21階から上の経費、ジーナさんとまりりが査定役なんですよ…」

まさみ「つまり、喫茶室新設の話をして欲しいと。了解。…黒装備つけて身体で認めさせるとするかっ!」

たのの「ひぎいいいい。なお、雅美さんだとホイホイ入れる権限設定な例の懲罰具倉庫…実は今回の改築の後で改装工事が入ったらしくて…」

りええ「何が入るんだ一体…」

まさみ「後書きでこの話が出るということは、たのちゃんに絡む可能性大とみたっ」

たのの「あそこに金庫作るとか断固拒否させて欲しいなぁ…」

えりこ「もしそれならあきらめなはれ。さだめや」

たのの「いやああああ(マジ泣き)」

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