王の帰還 -Reditus Regis-・10.10
で。
現在の淋の森公園、痴女島の南の端にあるわずかな平地を切り開いた門前町と、崖とは言わねどかなりに急な坂となった山肌との境目となる斜面の森を切り開いて造成しておるそうです。
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↑酷道1号線・智秋記念牧場方面
→聖院開闢記念大堤・痴女宮方面
東屋⬜︎ ⬛️⬜︎修練場
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//淋警本部・クラブジュネス→
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←門前町住宅街
↓聖院港事務所へ
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そして淋の森への西側の入口から東の方に向かって斜めに森の中へ中へと伸びる道を進むと。
その道が真東の方に曲がって暫くしますと、あずまやと呼ばれる屋根のついた小屋の備わる広場の横に着きます。
ここが淋の森のほぼ中央に近い場所で、待ち合わせやアレの主なすぽっととなっておるのは変わってませんね。
なぜならば、そういうことに必要な貸し出し椅子が納まった物入れとか、あるいは水場もこの辺りにあるからです。
しかし、雅美さんはそこを無視してなおも本宮や淋の森警備本部への森の中の道をずんずん進まれるのです。
で、何があるのかと不安な顔のアトハとリミニ、そして秘書娘や息子ですけどね。
「あー、あれ…」
ええ、フユキは知っとるのです。
この先、左手…山側の道の横に何があるのかを。
そして、割に高くそびえる木々の間に開かれた広場に、絶林檎の植え込みが少し離れて2つ、見えてくるのです。
で、こちらから見て奥の1つの植え込みは内側に塀が設けられており、痴女種視覚で見ないと中を窺えません。
しかし、手前の方は道に面しての植え込みの木がほとんど植えられておりません。
そして低い仕切りと、これまた手を中に差し入れればかんぬきを外して開くような低い扉で仕切られておるのみ。
つまり、西側の植え込みは、道から中が見えるのです。
しかし…通りかかる女官や男たちは、その中を窺わずにすたすたと早足で去るのです。
理由。
雅美さんが嫌そうな顔をしてその低い門を開けてわしらを招き入れた先の、植え込みで隔てられた広場の奥にあるものが、とても禍々しい瘴気を放っており、長時間の正視に耐えないからです。
ええ、これこそが、一度死亡した雅美さんの遺骨を納めたお墓と、その上を覆うオドウという扉のない屋根と壁の小屋を、他から隔離しておくための広場なのです。
しかし、このお堂の中のオハカという石碑。
ええ、フユキは笑いかけています。
しかし、なぜこのお墓がそのような形をしているのを以前の訪問時に教えられている上に、そのお墓の下部の石室に前の体の遺骨を収容した壺が収納されている理由を知っているので、懸命に笑いを堪えているのです。
ですが、秘書娘やその息子、そしてアトハとリミニの顔色はかなり悪くなっておるのです。
「ああ、そうでしたね。ふゆきくんはにほんの子ですから、おはかというものをしっているのですね」
一応は、そのお墓に手を合わせているフユキを見てアルトさんが思い出したという顔をしています。
「そうそう、なぜか冬樹くんにはここのお墓の瘴気が通じへんのんですわなぁ」
で、このお墓。
確かに見た目は、フユキが笑うのも無理はない姿なのです。
黒々と艶やかな石で彫られておりまして、まだ生きてるうちに墓が建立されたという印らしい赤文字で「田中雅美之墓」と聖院第二公用語文字で縦書きに名前が刻まれておるのです。
ですが、笑うところはそのお名前ではありません。
ええ、ええ。
このお墓は、雅美さんが生やした際のアレを模して彫られております。
それも、かなり露骨に、本物そっくりに。
おまけに、雅美さんが生前にお使いだった懲罰短剣…それも初代様ゆかりの品物だというものが、墓前の石床にぶっすりと突き刺さっておりまして、その柄がこれまた、アトハやリミニが今持っておる王の杖王妃の杖の柄や、わしの聖剣やエマネの爆炎剣の柄の類似品。
つまり、握るところがアレそのものという、痴女皇国伝統のち◯ぽ剣そのものが、その黄金の柄を輝かせて石床に刺さっておるのです。
で、この剣に跨って柄を下の口で咥えた上で股ぐらの力で引き抜いたものには金衣の力が与えられるとか、さもまことしやかな話が伝わっておりますが、誰も試そうとはしないそうです。
いや、わしも遠慮したいんですけど。
「イリヤさん。その金衣の力が与えられるというのは真実です。ただ…その◯んぽ剣によってある程度は緩和されているお墓の呪いを抑えるという仕事がついて回るんですけどね…」
「雅美さん、それやったら余計に挑戦する人、おらんようになると思うねんけど…」
と、そりゃ誰もやらんわという顔のジーナ様に向かって、宣言する雅美さん。
その発言はまさに、聞いた瞬間に皆が顔を引きつらせたのです。
「でも、今からやってもらうのよ…」
えええええっ。
「つまり、皇族や幹部の身でありながら、淋の森でやってるお◯こを妨害しかけた重罪につき、本来は港町警備本部の留置場送りとなる立場よ、ジーナちゃんたち…精気授受の妨害行為は非常に罪が重いの、皇帝室長こそが一番に知ってないとダメじゃないの…」
で、雅美さんがあの聖母ジーナ様をこう呼べる理由。
ジーナ様が小学生あたりの頃から知っておられるそうです。
そして、少しだけ年上ということで、家に帰りたくなかったり、家で冷遇されていたジーナ様の遊び相手を雅美さんのお父様や、ジーナ様の会社の偉い方で顔は大きくて怖そうなのですが、人としてはとてもまともな方から依頼されて務めておられたのがご縁とか。
つまり、ジーナ様は雅美さんにあまり、頭が上がりません。
その、雅美さんの厳しいお達しに、やむなくその黄金の柄に跨って、引き抜く動作をなさろうとするジーナ様ですが。
「お読みの皆様にわかりやすく言うと和式便器を使うポーズに近いねん…そして力むわけやけど…あんぎゃああああああああ!」
ええ、この黄金の柄。
そもそも引き抜く資格がないとなると、わしの聖剣みたいにお断りやでと反抗するそうです。
ただし、聖剣や爆炎剣のように柄が熱くなったり、あげく持ち手を逆に焼かんばかりの炎を発するのではなくてですね。
「精気を吸い取られたかのような衝撃を与えます」と、倒れかけたジーナ様を介抱しながら雅美さんは申されるのです。
そしてですねぇ。
アルトさんやダリアさんが涙目になりながら挑戦しても、同じように倒れていかれるのです。
どんだけなの、このお墓。
そして、わしらの方に振り向かれる雅美さん。
で、エマネやわし、更にはあのロッテまでもが、恐怖に怯えたような表情を浮かべる中。
「エマネさんとアスタロッテさんは流石に除外しろというお達しが出ました。ですが…リュネを代表してイリヤさんが挑戦して欲しいというのが、初代様のお達しです。これは懲罰ではなく、家族会としても興味のあることらしいのです。ですから失敗したからどうしたということはありません…」
えええええ。
ただ、雅美さんはわしを見据えてはおりますが、ちょっとチャレンジチャレンジと心話でもわしに囁くのです…。
そして、雅美さんは何と、アルトさんが着ておるようなど派手服の色違いめいた黒い悪役風味の姿に、一瞬でお変わりに。
「ちなみにスザンヌちゃんとマリアンヌちゃんもこれに挑戦したけど敗退しました…ベラちゃんでもダメだったのよね…」
では、なぜにそんなものを。
しかし、そこで待ったがかかるのです。
「雅美母様。二代目様からです。イリヤ様のその試練については、まず、雅美さんが手本を見せてからと…」
(え…何よアフロ…ちょっと二代目様に直接文句言うわ…はい、田中ですけど娘から今聞きました…ってあたしもやるんですかあれ!)
(イリヤ殿は確かにこの騒ぎの当事者であり、懲罰半分でやってもらう必要があると思いましてよ。しかし、本件については雅美さんも手本を示すべきです。そして…黒化白金衣の力でずるをするのはダメでしてよ)
「でぇええええええっ!」
な、なんと、雅美さんの着ていたその禍々しい服が雲散霧消すると、赤薔薇騎士団のどすけべ制服が無理やりに雅美さんのお体にまとわりついてしまうのです。
いえ、普通の赤薔薇騎士の服装から、更に変化していきます…。
な、なんと、淋の森の警務騎士など、痴女皇国の要所で見る機会も多い「どすけべぽりす」姿の赤色仕様に変わってしまったのです!
そして、雅美さんといえど今の二代目様には逆らえないようですね…。
(イリヤ、あなたたちに言っておきましょう。痴女皇国女官の懲罰を決める勤務規制委員会の長はこのベルナルディーゼが務めております。そして、雅美さんやアルトリーゼが着ておる白金衣の原型を作ったのは他ならぬこのわたくし。あの石頭にして悪母の中の悪母、鬼母の鬼母たるやの我が母テルナリーゼを泣かせるために、わたくしが作り上げたのが白金衣なのです…雅美さん、悪いのですけど懲罰の懲罰たるやあなたのような御仁でも裁定が下れば避けられずということを他の皆に教えるためにも、汚れ役をお願いしますわよ…)
ええ、観念した顔で剣に跨る雅美さんですが、さすがにこれは無理があったようで、何度か試したものの、諦めた顔でふらふらと立ち上がられるのです。
(というかあの剣を下の口で咥え込んで立ち上がれるだけでも大したものなのですがね…で、イリヤ。私の申す通りに致すのです…まず、淋の森の警務騎士の制服着用をこのベルナルディーゼの名において許可します。ペルセポネ、イリヤの服を着せ替えて差し上げて)
えええええっ。
なぜに、と思いましたがとりあえずは従います。
何せ、二代目様に逆らえない時に逆らうと、雅美さんよりひどい目にあうのはたった今、はっきりと判明しましたから。
それとですね。
この服、前々から他の方々も言っておられましたけど、意外に男の子には好評なのです。
特に、この服を着ている状態で「負ける」のを見たがる性格の者には。
(よろしい。では、フユキ少年には剣の前に立ってもらいなさい…この子にその、雅美さんのお墓の瘴気やネメシスの呪いが通じない理由も気になりますのでね)
ああ、なるほど。
その辺も見られたいのですね。
(ふうむ…どうも、お墓やお盆などの日本の風習に親しんでおった時代の子ゆえに、その墓には一応は敬意を払う思考があるようですね…で、イリヤ。フユキ少年の両肩に手を置きながらしゃがみ込んで、剣の柄を咥え込むのです…)
まぁともかく、仕方がありませんので警務騎士服の股間に穴が開くように操作して、剣に跨ります。
と言うかこの服、その下着部分がほとんど紐なので、三角形をずらすだけでも入るんですけどね、剣。
で、お尻に力を入れて…前に試した人の温もりが残るのがアレなのですが、とにかく剣の柄を締め上げるのです。
ところが、その◯◯ぽ剣、何やら刀身が熱くなって光ったかのような挙動を示すのです。
で、意を決して、股間の筋肉で剣の柄を締めつけたまま腰を持ち上げて行きますと。
あの…抜けてんですけど、剣。
で、雅美さんにこれどないしましょという顔でその黄金の短剣を差し出しますとですね。
「…え、やっぱり私の思った通りだって?とりあえず戻しておいてくれ? はぁ…そうしますけど…」
(ふふふふふ…やはりそうなりましたか…で、イリヤ。本当ならその母の剣、金衣の力と共にあなたに授けるところですが、雅美さんのお墓の呪いを封じるためのものでもありますから、元に戻させます。それにあなたはその腰の聖剣とやらを既に預かっておる身、その聖剣に短剣と同じ価値を与え授けるにやぶさかではありません…)
え。
そ、それは一体、どういうことなのでしょうか…。
ですが、二代目様から申し渡された一言が、驚愕だったのです。
(あなたにはその試練の短剣を引き抜いた褒美として、言い伝えの通りに聖院金衣の力を授けましょう。しかしながら、リュネというえろふの種族の重鎮職や、西方族とやらのりーだーを務めねばならぬ身の上というのも理解しております。ですのであなたは聖院金衣の直系系譜の分派として、わたくしや家族会の承認のもと、金衣の力と装束、えぬびーへ持ち帰りなさいな…その聖剣とやらをルーン大陸とかいう陸地の守護職の象徴として、引き継ぐ家系の長を名乗るにはちょうど良い箔付となりましょう…)




