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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど
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新人財務官の悩み・痴女になりたくて その2

「げひゃあああ?!」思わず、変な声が出ました。なんでダイアデレーヤさん、同室の先輩の個人おこづかい口座にですね、本来ならあり得ない毎月の支給日以外の入金があるのか。


ダリアさんが深刻そうな顔をしてあたしに見せたのは、聖環所有者がどこにいるか確認できる地図画面。


特定ユーザを中心にマッピングされていますが、淋の森に間違いありません。そりゃ、今、おかみ様を女官区画から追い出してあそこに戻したらひと悶着ありますよね。


更に、ぽつぽつと置かれた街灯に備わる隠しカメラと、監視用ドローン…こないだあった鬼退治騒動の余韻余波で、しばらくは継続的、かつひそかに厳戒態勢を敷いているそうです。


「で、それの顔認識と、聖環のビーコン発信で引っかかったみたいやねんわ。何で痴女皇国女官、それも財務関係者がここにおんねんと注意報が警備ホストから自動発信されたみたいでな、んで映ってたのが、この光景に類似するものばかりやったんや」ジーナさんが自分の聖環で、そのカメラ映像を見せてくれます。


ええ、男と女の出会いの真っ最中ですね。


そしてマップの検索結果…ダイアデレーヤさんのすぐ側にもう一個の光点。


これは、一時入国者向けに貸し出される聖環で、預託金を納める事で利用が可能になるものだそうですが、それによると持ち主はイタリア方面からの定期船便の船員みたいですね。


「確かに、今の淋の森の相場は1回、六千南洋王国ルピーのはずですけど…」


「いやな、うちの女官、追加お布施の受け取り含めて小遣い稼ぎは禁止してるやん。どうしても欲しい場合…例えば実家仕送りとかあるなら、増額には応じるよ。ただ、十人卒やったら百人卒に昇格してもらうとか、千人卒になって疲れ知らず状態に近づいてお客増やすとかさ、一般企業でいう残業、それも生活残業に該当するような措置を取ってあげて対応してもらうねん。あくまでも女官の頂くお金はお布施。その原則は痴女皇国でも変わってないし、これを変えると聖院女官の存在理念に関わるのはうちも理解しとるからな」どうしたもんかという顔のジーナ様。


「そして問題があるのよ。今、この問題を処理するのが妥当な財務女官の統括者が実質不在なのよ。マイレーネさんが欧州支部長で行きっぱなしでしょ。で、代行はあたし。ただ、実態はたのにも話したとおりで、ダリアはもとより、マリーさんや他の人を教育役や監督役に運用して回してる状態なんだけどね。下手したらアルトさんも借りてた時もあるし」と、これまた悩み深そうな顔でりええがため息つきつき。


「そして、この場にマリーを入れていない理由です。ええ。あの子だと絶対に厳罰を課そうとします。そして、たのちゃんもご存知の通りのマリーの性格でしょ。うん、未来には惨劇しか見えないわよね…」ベラ子陛下も頭が痛そうです。


「マリーにはこの件は伝えてません。知ったとしても、あたくしの管轄案件として処理するから手を出すなと言い含めます。下手に動いたら、地下墓所のあれを使いますよと脅す予定ですし」きっぱりと言い切るアルトさん。いつものほえほえーっとした雰囲気は流石に雲散霧消、この件を広めないようにする意志に満ち溢れていますね。


「救いは、財務女官の心話などの機能制限。ま、今まで、この件があるからバレずに済んでたのもあるでしょう。恐らく、彼女、ほぼ1ヶ月、生理の時以外は毎日のように通ってたと思いますよ。今、見せてもらった入金記録だと、おこづかいの入金以外に、6千南洋王国ルピーの入金が今月で25回近くありましたしね。監視映像の検索結果や、移動履歴もそれを裏付けています」ダリアさんが、これだけはまだ救いかと言う感じで。


「出金の方も見てみますね。仕送り送金か、はたまた浪費かの分析もできますから。…こっちはあまりないなぁ。下着や日常用品、お菓子とかの買い物ですね。だいたい支給品購入額の範囲内で収めてます。浪費癖がないのが救い。高額出金も記録にありません。エマ子さん。部署全体の大規模出金で使途不明または出金者不明なものはないか調べて頂けますか。流石にわたしの権限だと両替処全てや痴女皇国全体の財務にチェックを入れられませんので」


「え、たの…そこまでする必要は…」


「残念だけどあんのよ、りええ。というか内部不正が発覚した場合、使い込みとか他の余罪をやらかしてないか念のために調べるの。もしお金に困ってやってたら、そっちもやってる可能性があるから。疑いたくはないんだけど…」


(その必要はねぇぜ、たの。今、エマ子とアルトから事情は聞いたし、かーさん他みんなの頭んなかも拝見した。そして…肝心の本人なんだが、動機は偶然。んで目的は性的欲求不満だな。エマ子に繋いでもらってダイアさんか。その人を見せてもらったが、本当に偶然の産物だなぁ)


「ぬっまりりっ、それは本当なのかいな。なら、ダイアデレーヤさんの扱いは全く変わると思うから慎重にしてよ?」


(まあ、たのの職業病なら仕方ないか。とりあえず発端はだいたい1ヶ月前だな。鬼問題が湧いて出る直前あたりか。つまり、淋の森の警戒体制を強化する前の事みたいだが、三交代の朝昼勤務の後に日用品や何がしかの買い物に出たダイアさん、たまたま雨に祟られて夕暮れどきに淋の森に来たわけよ)


そこからはまりりの話をあたしが記述しましょう。


まりりの言う通りに記述すると確実に未成年にはまずいので。


で、淋の森の公園に差し掛かり東屋(あずまや)に避難したダイアさん、先客に気付きます。


ところが痴女皇国女官に見られないよう、門前町の女性に似た部屋着兼私服姿だったダイアさんに、その男は勘違いして5千南洋ルピーと千南洋ルピー硬貨を握らせてきます。


…そう、財務関係者は門前町外出時には特に女官と見られない服装をすべしと言い含められますので、ダイアさんは立ちんぼさんと勘違いされたのです!


悪いことにダイアさん、財務3年目で登院からほとんど財務屋さんで、敢えて地味子なルックスです。ことさら、地元のウリさんに見えたようなのですよ…。


で、断るかと思ったダイアさんですが、スコールの存在を失念していたがために買い物は全滅に近い状態。初期研修は経験していましたから、えい女は度胸よと過ごす10分弱。日本円にして一万二千円程度は、あと3回は同じ買い物をやり直してお釣りがくるくらい。


(なんで6千ルピーかだけどよ、ある時、立ちんぼさんから宿の風呂や荷物預かりだの売春税の支払いの苦労話を聞いて、不憫に思った心優しいお大尽がいたと思いな。で、チップというか心づけに千ルピー硬貨を余計に握らせてくれたんだよ。その話が広まって、立ちんぼさんには1回6千ルピーって相場が定着したんだと)


ふむふむ。実際にダイアさんも「見慣れないけど最近渡って来たのかい? ここは夕立ちが毎日必ず来るからな。で、邪魔者や出歯亀がいねぇってんで、わざと雨の間に仕事する女や、そいつ狙いの男がいるんだよ。ま、渡した分で後2回くらいは買い物がやり直せると思うし、雨に濡れたなりで戻ったら、優しい店主なら無料で取り替えてくれるかも知れねえから、雨が止んだら市場に戻りなよ」なーんて、優しい言葉をかけてもらうわ、果ては色々と淋の森事情を教わった模様。


「しかしまりり、問題があるわよ。なんでダイアデレーヤさん、売春婦でもないのにウリのお代金、受け取れるのよ」


(あー、それな。女官限定のお布施対策。これは聖院でもそうだけど、新型聖環のキャッシュレス処理が広まったせいで、個室に聖環を持ち込む客がいるのよ。確かに、あれまで外せとなったら何のために聖環付けて貰ってセキュリティ面の向上やキャッシュレスの利点を謳ってるのかって話になるだろ? で、追加お布施を握らせようとしたお客には一言「入金は即通告なんです。黙っていてもこの階の担当女官にすぐ伝わりますが、それでもよろしければ、時間延長またはおこころざしとして受け取らせて頂きます。ただ、延長可能か確かめさせて頂きますね」と断ってから聖環で受け取らせてんだよ。ま、いけすかない客なら「延長大丈夫ですか」問題ない客なら「延長お願いします」って通告する符牒決めてるけどな。それかショートメッセージで同じ処理。聖環で延長可能かはすぐわかるし)


「あ、なるほど…女官ならお布施を受け取れるのか…で、誰でもお布施される可能性は…うん、あたしらでも皆無じゃないな…買い物とかで女官とバレてーらしたら、おまけみたいな感じで釣り銭キャッシュバックとかあるし」


「はぁ…お布施として受け取れるのに気付いたっちゅう訳か…マリ公他みんな。まず、女官なら誰でも彼でもお布施を受け取れる現状に規制をかけるべきか否かを聞きたい」ジーナさんが悩める顔で聞いて来られます。


「確かにあたし達女官や騎士は、寄付寄進を受けることは皆無ではありませんからねぇ。アルトさんも、門前町の見回りなんかで暑いさなかに、これで何か冷たいものでもとか言われてお金を握らされた事あったでしょ」


「ありましたありました」ダリアさんとアルトさん、どちらも騎士経験がそれなりにおありなので、頭を捻りどうしようか悩む局面に遭遇する事もそれなりに経験されて来たようです。


「で、下級時代なら確かに有り難かったんですけど、とりあえず寄進は聖院に納める決まりは決まり。でも素朴な善意の寄進を無下にするのも聖院の立場としてはよろしくないから、受け取るだけ受け取って、両替処でおこづかい出納申告して寄進処理していた記憶ありますね。今は電子化されて、女官は基本的に現金を携帯してないと門前町に通知されましたから、その辺簡単明瞭になってますけど」


「確かに、南洋王国時代からの方なら純粋素朴な方々が多いし、私達を聖職視して寄進されるんですよ。本当に有難い話ですが」


「少額の喜捨収受機能は残す方がええんやろなぁ…で、うちの懸念は多分、他にも抱いている人もおるかと思うがな。賄賂(わいろ)。特にマリ公の方針を敷衍して絶賛手入れ中の色街辺りな」なるほど。基本的にあそこを宿坊街化してしまう話ですね。


(かーさん。ついでだから現段階で出ている、くだんの宿坊化で発生してる問題だ。まず、一般売春婦は全て聖院女官になる事を望んでいない。実際には女官化するデメリットはないとあたしは思ってるんだけど、やはり宮仕えで上下関係がある雇用形態の経験がない人は生理的に嫌がる傾向が出ているな)


「あーわかるわかる。沖縄の店のまわりにも石を投げれば当たるレベルでおる。つかそういう方が多いな」


(そして、野良売春婦化した彼女たちで淋の森が最近混んでいるって話もある。んで、あたしとエマ子で連中や客の心理を読んでみたが、自由恋愛な雰囲気を好む奴は、敢えて淋の森を目指す傾向があるな…)


「なるほど。これもわかる。いわゆる天蓋(てんがい)というやつやろ。売春婦と個別交渉に及びたい部類や」これも頷けます。店外で店に縛られずに遊びたいのですね。


「変態傾向のある客が来てるのは、一度でもあそこの警備をやるとわかりますよ。ジーナ様もアルトさんやベラ子陛下と行かれて雰囲気を見られたでしょ」


「うんうん、あれは確かに足を運ぶ価値はあった。あの雰囲気は確かに聖院はもとより痴女宮ですら出すのは難しいな…客を彷徨わせて行きずりの痴女に襲わせるとか考えたことはあるけど」


(それ面白いから今度コースにできねーか考えてみるわ。まぁ、確かに淋の森を愛好する男も多いけど、あそこが混むと困るには困るよなあ)


「ただ、淋の森ばかり流行っても、うちも困りますよね…」


「そうなのよねぇ。鬼退治の件で一旦封鎖して、困った人は女官にしてあげる通達出してもらったじゃないですか。あれで女官化したけど、再開したらまた還俗するとかいう話もかなり出ましたからね。ただ、例の10階から降りる陸橋が出来る話を早めて頂いたから、思い留まる人もそれなりに出ました。女官からも逆に、淋の森で客を引いて聖院に連れ込めば一種の指名になるとか提案が出る始末」


(女官連中に市場街への買い物とかを推奨してるのは淋の森対策でもあるんだよ。男連中の目につかせるんだ。で、あれはだれよとなると痴女宮の女官で、あのクラスは普通にうようよしてると市場の皆様が教えるって寸法さ)


「熱問題がある程度解決してるから出来る技ですよねぇ。エマ子さんやベラ子陛下まで協力してるから効き目抜群なのは巷の噂で伝わってるし」


「一応警護騎士の方も同行を頼んでるので、変に声をかけられる事はありませんが…すけべいな感情を発露させてる人には、痴女宮来たらあたしくらいの痴女出て来ますよー。30分5千SOKR(なんようるぴー)もあれば気持ちいい事できますよーと指向性心話送ってます」


「ああ、下足処に出したり、港の観光案内所に出してるお布施額目安やな。実質料金表のあれ」


「あの価格設定で淋の森ベースの野良売春婦が怒ってますけど、じゃあウチ来たらいいじゃんと突き放すダリアであった。ふっふっふっ」


「あたくしとしては心境としてやりたくはない話ですが、定期的な淋の森の取り締まりをする必要があるかも知れませんねぇ。野良売春婦が増えると、警備の手を煩わせる話も増えますし」


(ま、三ヶ月に一回くらいは取り締まって女官になるか放逐かを選ばせるか…まさかあたしが立ちんぼを取り締まる警察の気分になるとは…)


(話が脱線している…いいのか!)


(たの…女官収入は一応、痴女皇国の経営の根幹に関わるのよ…あれで得ているお金がだいたい月に5億南洋ルピー、日本円換算で10億か。あとは罪人工場の生産品や、大規模工事受注や産業指導に比べたら今や比率的には低いけど、安定収入にはなってるからね…それにあたし達のご飯だから、例え値下げしても売春は極力やめられないわよ…)


(あ…何としても精気を確保しないとダメなんですよね…)


(そゆこと。読者のみなさんの中には感づいている人がいると思うが…実は聖院は、日本国の経営基準でいうと赤字出まくり持ち出しまくりだったのだっ!どうだ!驚いてくれ!)


「マリ公、いまさらや…初代様から続く奉仕精神の極みな聖娼神殿の具体化やからな…」


「ちなみにまりり喜べ。痴女皇国の聖院再回帰路線以降は、国全体の収支がかなり改善しています。年度会計だけなら黒字だったり」


「うむ。第六天魔王作戦やな。商業的活性化を狙い、他国の開発にいっちょ噛みして生産拠点化。更に国家間経済相互依存を進めて単純な戦争発生を防ぎ中央集権化」


「まぁ国家経営の話になってますが、まずは女官の立ちんぼアルバイトの話!回数や料金収受からして、控えめ控えめですけどね。そのうちバレて野良売春婦と揉める可能性ももも。アルトさんダリアさん、仮に売春婦から、ダイアデレーヤさんが女官じゃないのかと密告入ったらどうします?」


「密かに捕縛した事にします。で、これは悪い顔になる話ですよ、たのちゃん。そんなうるさい人、痴女皇国の方針に異を唱える可能性があると思いませんか?なんかあるたびに文句を言いそうな」


「で、あたくしからも。敢えてダイアさんを捕まえる事で、三ヶ月に一度の取り締まりの理由にできます。まぁ女官だったのは伏せておいて、怪しい人が混じるのを防ぐために、三ヶ月に一度は全員取り調べを受けてもらいます。この際、淋の森で営業するのは三ヶ月が限界ですよって話にしませんか?」


「ふふふ。それと、ダイアさんは別にしても、おかみ様や初代様の気分転換の場所に使ってもらおうと。で、あの方々なら上も上ですけど、あたし達が市場に行くのと同じ理由で、痴女宮来たら私のような子は他にもいっぱいいるよ、野外プレイもできるよと宣伝してもらえればなお良いんじゃないですか。それに治安向上も期待できますよ。初代様やおかみ様をよがらせるのはまだしも、倒せる奴はこの世にいるんですか」


「たのさん。確かに淋の森を使う客は多いのです。しかし、あそこに入り浸られたら、あたくしたちの事業にさしつかえがありすぎるのです。ですから、無税にして保険を手厚くしたのは女官化の前振りですよ、痴女皇国は痴女宮の営業をさまたげる人を最終的に見逃しまへんでという無言の圧力をかける事で、あたくしたちが淋の森の管理者であることをわかってもらうべきでしょう」


(アルトの立派な発言の裏に、淋の森野外プレイの新たな刺激の影を感じるんだけどよ。まぁ、アルトはかーさんの愛人いやもとい調整役だから、淋の森の混雑を嫌がるのはわかる。わはは)


「うちのよめは何を言い出すのですか!わたくしはダリアが警備シフトで悩んだり、純子さんの店のかせぎにさしさわりがある原因を排除したいのですよ?」


「確かにアルトさんはガチにその考えですよね。で、ダイアさんの性欲発散について。建前では女官は女官として稼げ。財務は性質上エロから距離を置け。その方針から外れた存在のダイアさんをどうするか、痴女皇国が淋の森の売春婦を間引いた前提で考えると、このまま黙認という方法もあるかも知れません」


「な、なんで?たの?」


(いや、りええ。たのの考えにも一理はあるよ。一般女官のシフトや勤務実態はりええの方が把握してると思うが、財務など、特殊勤務者以外は淋の森に立つ余裕や考えは出るだろうか。ちょっと考えてみないか?…かーさん、財務以外で立ちんぼなんて考えつくシフトの場所、思い当たるかな)


「あんたよりあたしが詳しいとは思わんが…まず、聖環のお布施受領機能を知ってないと現金で貰うしかないわな、おかみ様みたいに」


「うんうん」皆様頷きます。


「で、問題点。もろた現金、どこに置いとくねん。ここの女官で管理室に部屋掃除されへん奴はおるんか。そして、皇族や幹部くらいやろ、部屋に硬貨何枚も転がしたり財布に入れてても平然としてられるのは。南洋ルピーやったら千ルピーは銀合金としても五千は18金メッキやったっけ。割と目立つ色やし500円玉よりちょいでかいくらいか。それも一枚二枚ならいざ知らず、何十枚も部屋に置いとける豪胆な奴は…特に痴女宮は女か痴女ばかりやろ。自分の胸に手を当てて考えてみ? あたしは無理やな」


(ババァは金に細かいからな…あたしも清掃を試すように思われるのは嫌だから、金はあっても隠しておいたが…だいたい幹部連中なら下手すりゃ大阪か沖縄かロンドンかミラノかNBで買い物してっだろ。つまり電子マネー主体)


「地元消費助けたれや…マリ公の身体に落書き追加1つな。まぁそれはよい。南洋ルピーは熱帯という性質上、うちらの鋳造工場で供給しとる硬貨ばかりや。ヨーロッパにしても事情は似たようなものやろ。ま、この場にるっきーがおったら、約束手形や小切手の起源国はウチだと絶対ドヤっとるやろけどな」


(あーそうか、メディチやあの国の商人が国際取引なんかで必要に迫られて思いついたからな。ま、紙幣が一般的になるのは印刷や製紙技術が発達して機械的に大量生産が可能になる産業革命以降の話だろ)


「そう、硬貨や聖環収入を処理出来たり、余剰収入を指摘されづらい財務以外は、女官業務以外で淋の森に立つ事を思いつかないか、収入をどうバレずに処理するかの過程で思い留まるやろ。しかも今、一般女官の生活態度管理のトップはマリーや。あいつが女官管理室に浪費兆候の観察を言い渡してない訳がないやん」


「…ですね」


「マリー台風って言われてますねぇ」


「たのちゃん、確か女官寮でも財務用エリアは認識阻害かなんかあったやろ。つまりマリーでもあそこは正確に把握できん。この意味でも財務以外は困難やろうと思う」


「ふむふむ。あとは財務担当の性欲とモラルの問題と…ダイアさんの真意を計るには、本人の事情聴取が必要とは思いますが、うまくすれば黙認によって痴女宮への利用客誘導も図れますし、インセンティブ制度導入の契機に出来るかも知れませんね」


「いんせんでぶとは、どんなでぶですか」


「アルトさん座布団一枚没収。成果報酬ってやつですよ。やる気を出す為に業務評価をするわけです。今は扱い精気量の増加、つまり昇格が主体でおこづかい額の増加は副次的利得に留まっていますが、今後は工場稼働で嗜好品や贅沢品の流通が増えるかも知れませんから、現金収入を積極的に押し出した成果報酬制度を導入検討する価値はあると思います」


「何やらベラ子陛下がキラキラした目でたのちゃんを見ています」


「たのさんが我々を相手にして剣でなく口で圧倒しているからですよダリア。あれは恋するおとめのまなざしなのです」


「アルトさんが言うと冗談か本気か、よく把握できませんわね…本当にわたくしはたのさんをなんとかして差し上げたいのですわよ…」ベラ子陛下、あたしの股間の「生えるなら付け根になる」位置をぐりぐり。


「え」


「え」


「ちょちょちょちょちょちょっと!」


「何?ベラ子にたのちゃん、どないしたん」


「ジーナお母様!他の人も!慌てずに落ち着いて見て下さいね…衝撃で引っ込まれたら困りますから…」ベラ子陛下が、そろーっと。本当にそろーっと、例の淫蟲くん仕様のあたしのパンツに手を近づけます。


ぽろり。


何がぽろりしたかは言うまでもないでしょう。


「ぬふう…奇跡や、奇跡が起きた…」だからりええ。拝むな。


「おおっ…めでたい…しかも結構おっきいっすね」ダリアさん。貴女にはりええが。


「これは…おせきはんというものを用意しますのですね、ジーナ様」あるとさん。違う。


「なんか違うがとりあえず、赤飯を用意するか」ジーナさんも違うか…ああ、この人にこういう方面の説教は無駄ですね。


「エマ子、機能に異常はないか診察なさい。あと、ステータス確認しますね、たのさん」で、ベラ子さんがあたしに自身の聖環をかざされます。すっげ緊張します。


Mariko Tanose. 田野瀬麻里子 Million Suction(Limited Ten million, Limited Orge mode)百万卒(限定千万卒・限定鬼化能力者) Slut Visual. 痴女外観 Rosy knights. 桃薔薇騎士団 Finance Bureau office. 両替処財務


瞬間、皆さんの顔にどよめきが走ります。痴女状態になっているだけではありません。なんか他の情報もえらいことになって…確かこれって乳上か雅美さんレベルにまで上がってません?


「うん。これ、下手したらあたし同格以上…たのに一気に並ばれた…」


「ベラ子…実務で行けるかどうか分からんけどさ、たのちゃんの財務部長昇格、マリ公や家族会に打診してもええんちゃうか…」


「かー様。田野瀬さん。痴女機能異常なし。機能、試験されます?」エマ子さんがあたしを指して申されます。


しかし。


「皆様、ご迷惑をお掛けしました。どうも正常な痴女機能を得られたようです。ですが、慎重に過ごしたいのと…恐らく、あたしの身体機能の制限が外れたのは、ある人を救う為に全力を尽くせと言われた気がしてならないのです…もし宜しければ、痴女機能を初使用するのは、その方に対してさせて頂けませんでしょうか…」全員があたしを見ます。


「まりり、見てた?聞いてた?エマ子さんも異常ないって言ってるけど、今言った通り、出来たら「ある人のために」使いたいんだけど、大丈夫かな?」


(んー。合意は取りなよ。本人が希望しない限りは痴女化しないようにするのと、今後の人生に関わる話になるからな。一応、還俗は可能だが、たのも解ってるだろ?痴女化されると脳の思考・演算はもとより身体能力もとんでもなく強化されるんだ。百人と千人の間の壁はおっそろしく高いからな。その壁を乗り越えるのはもちろん、元の人間に戻れと言われてはいそうですかにならない人が多いってのをよく認識して尋ねるなら、あたしゃOKだよ)


「田野瀬さん。明日の業務について、皇帝勅命で業務指示を出しますがよろしいですか。明日14時以降、この皇帝室秘書課に出頭の上、特命指示する作業に従事。…15時までに淋の森に向かい現地待機、雨が降り出したら…あなたの思う任意行動に移って下さい。それでよろしいですか?」ベラ子陛下が微笑みながら言われます。


「皇帝室長連名発議。理恵さん。悪いけど皇帝室秘書課出頭までの内容で、女官長指示入れたってくれるか」


「了解いたしました。早速かかります。アルトさん、ダリア、明日、体が空いてたら15時以降に淋の森に潜伏、警備お願いして宜しいでしょうか」


「あたくしはおっけーですぅ、ダリア、大丈夫?」


「いけますよ。黒薔薇で手すきを使うので色街警備本部と淋の森詰所の手は…多少煩わせるか…とりあえず、明日15時以降、警備演習を淋の森で実施するって告知入れて、他の立ちんぼさん排除します。あ、痴女宮の方には告知流さないで下さいね。対象はいつも通りご出勤させたいので」


「ではそれでいきましょう。おかみ様には…ジーナ様、とりあえずたのさんの痴女機能制限が外れたのと、明日は15時以降に淋の森の封鎖がある事だけ連絡お願いいたします」アルトさんとダリアさんの手回し、例によってめちゃくちゃ早いですね…。


「うむ。…田野瀬さん。ダイヤちゃんにはくれぐれも無理強いしないように。それと、責めずにまずは理由、聞いたってな」

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