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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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王の帰還 -Reditus Regis-・1

ルーン王城市から遠く遠く離れた、悪魔の谷城。


そこから更に山へと向かって南へ進んだあたりの谷の入口に、どぉーんとそびえ立つのが、他ならぬ魔王城です。


と言っても、わしも知ってますけどね。


リュネ世界の何がしかを記録した石板なり粘土板なり書物なり、あるいは人の遺した諸々を仕舞う蔵が中にあるせいで割と大きいそうなんですけど、実際には魔王は地下の苗床の湖におることがほとんどなので、魔族が使っている部屋はそんなに多くないんですよ、ここ。


で、珍しくも…というべきか、その魔王城の地上階に出てきた魔王。


一応は魔王らしい装身具を身につけておりますが、基本は素っ裸に近いのです。


そして、悪魔とかいう連邦世界の魔物の生やす尻尾の位置…あ、ロッテも生やしとったな…最近は引っ込めてやがることが多いですけど…に、地下の苗床から繋がっとるらしい触手が伸びております。


で、わしは何をしに、魔王城へ赴いたのか。


いえ、わしだけやないんですよ。


淫化からロッテ…アスタロッテと、そしてエマネが呼ばれてます。


ほんまはクシーやジャムジュナ妃も同行すべきではなかったのかと思うたのですがね、あの二人は一応はリュネの王位継承からは外れておきたいという意向ももろてますから、遠隔参加で。


で、本当ならば剣聖たるわたくしイリヤ・ヤスニでもぶっ倒れかねない魔毒濃度のはずの魔王城や地下の苗床ですが、改良に改良を重ねまくったせいで、もはや占術師のメリエンどころか鍛治師のリザンも訪問できるまでに、魔毒の毒性は落とされております…いえ、私らの体も魔毒の毒がより、効きにくくされたというのもありますね。


なにせ、長期間でないならば普通の西方族でもこの魔王城の付近までは来れるそうですから。


で、今から何をするのか。


ロッテに連れられて、広間に入って来たのはなんと、リュネ王城で戦死したはずの先代リュネ王アトハと、その妃である我が末妹のリミニ。


で、わしは預かっていた王妃用の王器たる腕輪や首輪と、わし自身が身につけておった王器各種を見届け人役のエマネに返却します。


といっても、エマネもわしから受け取った王器の数々、メリエン配下の占術師が差し出した盆の上に置かせてますけど。


で、わしはメリエンに一旦、聖剣を預けます。


次に、エマネも同様に爆炎剣をメリエンに渡すのです。


そして占器を持ち込んだメリエンが聖剣、そして続いて爆炎剣を占器一式の一つである占具の棒に取り付け、アトハの王位復帰を善しとするか否かの託宣を得るのです。


んで、王選の占いを立てる時と同じで、るーれっとのようにくるくると聖剣を回すのです。


そして、今回は皆様でいう◯か×かの二択、占具の下に敷かれた占盤という布の上に印が置かれております。


で、誰の手も借りずにスッと、◯を意味する文字の上で、聖剣の切先が止まったのを見たメリエンが、託宣が出たという宣告を出すのです。


「見ての通り、聖剣はアトハ様の王復と、リミニ様の王妃位への復帰を承認しました」


で、この際に新王へ王器を装着するのは前王ってのが習わしです。


わしはメリエンに呼ばれると、王器を載せた盆を捧げ持つ占術師を従えてまずはアトハの前に進み出て、一礼。


そしてアトハの左手首に王環、それから後ろに回って王輪をアトハの首に装着します。


これ、元来ならば王の後ろに立つのは不敬となっていますから、先王または代行者が行うのが習わしとされています。


で、アトハの前に戻って王環と王輪を確かめさせると、一礼して次はリミニの右腕、そして首に王環と王輪を装着していきます。


で、最後にアトハの前に戻ると、剣聖が王位を代行した証である頭環を外して返却し、アトハが占術師侍従の捧げた盆に頭環を戻して王位の証の返還は終わります。


で、メリエンの宣言は続きます。


「しからば、聖剣の託宣が正しきかを念の為に確かめとう存じます。アトハ王、リミニ王妃、こちらへ」


過日、わしが暫定王位を授けられた流れの類似で、アトハに聖剣が。


そして、リミニには爆炎剣が渡されます。


この時に、持てぬほどに熱くなったり、あるいは火を噴けば「やっぱだめ」となるのですがね。


そんなん、起きたことあったっけかしら。


(ないと思いますよ。それよりもこれはこの次に来る聖剣や爆炎剣の返却の儀に繋がるんですから私が呼んだら王と王妃の前にエマネ様と一緒に来てくださいっ)


と、メリエンに怒られました…。


「では、剣聖と王女は、聖剣並びに爆炎剣を改めてアトハ王並びにリミニ王妃より預かるものとします。イリヤ様、エマネ様、前へ」


つまり、この聖剣再貸与、アトハとリミニの王夫妻としての最初の公式行事となるのです。


聖剣も爆炎剣も、あくまでもリュネ王国の王器の一つという扱いなので、王の代替わりの際にはこうして形式的な移動が行われるのです…。


(それ以前に占いを立てるために聖剣がいりますがな…)


ええ、ギロっとメリエンがこっちを睨むのです。


何せ、こういう国事行為の時のメリエンの地位、一時的にではありますが王よりも上になってますんで…。


(あとでおぼえとけよっ)


(そういうことしてるからイリヤ様は田舎のやんきー扱いなのです…いえ、やんきーとやらの方がまだ、素直かも知れませんよ…)


で、わしらの醜い争いは察知されることなく、聖剣や爆炎剣を再度、わしやエマネに授ける儀式は進みました。


そして、わしは聖剣を。


エマネは爆炎剣を右太腿部に巻きつけた装具に戻して、一礼します。


で、普通ならこれで儀式は終わるはずなのです。


はずなのですが、まずは魔王が手を挙げてメリエンに「ほれほれ、あれ」と申します。


で、これ自体は決まってた事なのですけど、魔王からの贈呈物の授与式に移るそうです。


その際に、万一のことがあってはいかんという形式的な儀礼として、わしはアトハの後ろ、エマネはリミニの後ろに控えて衛兵ぽじしょんを取るのが、今回の臨時の動きですね。


で、同時に魔王はロッテとオオルリさんを背後に従えて、メリエンの案内でアトハとリミニの前に進み出ます。


「このたびはアトハもリミニも、ふたたびリュネのおうさまになるときいていわいをしにきた」


と、えらそうに言う魔王ですが。


「魔王殿におかれてはリュネ王国の再建はもちろん、この新天地を切り拓くことに助力頂き感謝の極み」


「アスタロッテ様、オオルリ様他配下の方々含めてこのリミニからも御礼申し上げます」


「なんのなんの、わしも苗床をながらえるたすけをしてもろとるから助かることこの上なし…で、おふたりにはわしだけでつくったもんやないんやけどな、あるものをおくらせてもらおうとおもうんや。ロッテ、おおるり殿、あれを」


と、言われて進み出てきたロッテが、魔王に何やら棒のようなものを渡すのです。


その長さは、聖剣や爆炎剣とあまり変わらないようです…皆様の世界の単位で申し上げますと、いちめーとる未満。


「これはれんぽう世界のむかしのおうさまやえらいさんが持つもんをさんこうにさせてもろたんやけどな、たとえばこういうあつまりに出るときにで剣やら何やら、ぶっそうなもんをたずさえるのはけんかするつもりがあるとみられて失礼らしいんや。まぁ、イリヤやエマネはんが持っとる剣はしゃあないとおもうけどな…」


で、これも実は事前に、ベラ子陛下やアグネス様からアトハとリミニに対して入れ知恵がなされとるのです。


他国の王族や重臣などの使節を歓待する席で、目につく武装は失礼に当たると。


しかし、万一の襲撃があった場合を鑑みて、王や王妃は杖のような棒の部類を持っておくのも式典の作法の一つであるという連邦世界の古式ゆかしい王や貴族の風習を知恵として仕込まれておるのです。


「なるほど、それでその杖を…」


ええ、魔王がお金を出し材料の一部を提供したのは本当です、その杖の製作。


そして、この王杖というものはリュネの王具としてはどうかという打診と共に魔王から奉納する形を取ることで、和平のしるしともしたいという希望をあらかじめ伝えられておるのです。


で、魔王直々にその杖を、アトハとリミニに手渡すのですが。


何やら、杖の持ち手から下の黒い部分の周囲が薄く光るのです。


まるで、魔毒の反応で私たちの翼の周囲が光るように。


「そのつえには、ちょっとしたしかけをさしてもろた。まず、おまえらリュネのもんが魔毒きれにならんようにする、魔毒でんちのしかけをつけておる…ただ、そのつかいかたはあとでせつめいしたるから…で、これこそがだいじやとおもうんやけどな、いつぞやみたいにな、おまえらのところににうちのへいたい連中がようけおしよせて、まわりに魔毒がみちみちた時には、そのつえを持ったもんのまわりの魔毒をかってにすいこみよるんや…」


えええええ。


つまり、魔王によれば持ち手の身体や周囲が魔毒過剰となった場合でも、魔毒を抜く器具として使えるのだそうです。


おお、これはすごい…と、最初に話を聞いた時には思いましたよ。


ですから、過日の魔王軍による奇襲の時のような事態が起きても、魔毒を体内から抜いたり、あるいはリュネの者には魔毒過剰となる場合があっても、その杖を使えばかつてのアトハやリミニが崩御した時のようなことにはならない。


魔王はそう、言いたいのです。


ただねぇ。


痴女皇国の管理下にあるリュネですやん。


なんもなしに、何かを渡すわけはなかったんですよ。


その魔毒抜きや、あるいは魔毒補充に適切な形があるって、マリア様が杖の形について「これにしなよ」っていうご意見を押し切られたんです。


ええ、リミニもアトハもね、内心呆れてたんですよ、聖剣や爆炎剣への痴女皇国仕様だっていう改造処置。


これ、メリエンいわく「聖剣も爆炎剣も内心は嫌がってます」だそうです。


で、魔王から渡された杖がどんな形をしてるのか、わし、今の今まで具体的に言わなかったでしょ。


ええそうです、大人じゃない方には解説をはばかる形状なのです、聖剣や爆炎剣の今の柄と同じで。


いえ、調理剣や炎剣だって、今はそうなんですよ。


あれほんまにやめませんか、マリア様。


ベラ子陛下もアグネス様も聖父様も、なんかゆうたってくださいよ。


「で、そのつえで魔毒をぬいたりほきゅうするばあいやねんけどな…もうわかるやろ、アトハとリミニ、おまえとイリヤがときどきやっとったあれやあれ、あれをするようにされてな…いや、わしもいちおうは意見をしたんや。ロッテにもおおるりはんにも聞いてもろてええ…」


「アトハ。魔王殿がこの杖の握り手持ち手をこうなさったのでないことは明白です。ただ…イリヤ姉様、これはちょっとあんまりという意見は、このリミニもアトハに同じくです…このあと、ルーン王城市に参りました後にはえぬびーとやらの総督さまにもお目にかかろうと思いますが、そんときにこれ、見せて苦情を申し立てます…」


ええ、リミニの怒りも、もっともです。


なぜならばその杖で魔毒を抜いたり補充する場合には、その杖の柄を咥える必要があるのです。


(坐薬みたいにして使う方法があるってねーさんも言ってましたけどね、これ、ジーナかーさまに見せてから怒ってもらう方がいいと思いますよ)


ええ、もちろんですベラ子陛下。


そのほうが絶対に怒ってもらえると思いますから。


そして皆様…もう、お分かりでしょう。


ええ、リュネ語でソドと言うのですけどね、殿方や痴女種女官のまたぐらに生えててぶら下がってるか天を向いて屹立しとるアレっすよ、アレ。


アレのご立派な形を迫真の出来で再現されとるのです、杖の柄の部分の金色のところ!


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べらこ「痴女皇国の習わしを知らん人に、あんなもんいきなり見せるもんじゃないですよ…」


マリア「うちの掟をわかってもらうのにちょうどいいって思っただけだってば!」


めりえん「ちなみにですねぇ、はりがたっちゅうんですか。一応リュネにはありますよ」


べらこ「ええええええ」


いりや「あー、あれね…」


めりえん「ただねぇ、あれ、そういう使い方をするんじゃなくて呪具の一種でしてね…魔毒を吸う性質のある木から削り出して、前線の女の戦士に優先的に配ってたんです…」


えまね「まぁ、これが効くのはあまり位階の高くない戦士に限るから、私やおばさまは持たされまへんでしたけど…」


いりや「私もエマネも魔毒抜きの専属従者をあてがわれてましたからね…」


めりえん「で、呆れてる場合じゃないですよイリヤ様」


いりや「もうこれでやめとこ、ほんまやめとこ…」


めりえん「いや、これからこそが本番の儀式ですやん…イリヤ様の今後の進退に関わる話ですよ」


いりや「で、わしはいったい何を言われるのやら」


めりえん「次回も魔王城からお送りさせて頂きます…」

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