うつされた学園 -sodródó tanterem-・4
では、水…その湖に溜まるばかりになるのでは。
この私、リュネ剣聖のイリヤの疑問にすらっとお答えになる室見理恵・痴女皇国国土局長様。
(もともとオーストラリア大陸の類似品だったルーン大陸は、その位置と地形の性質上、全体的に降雨量が少なめなのです。ですので、流れ込んだ水は蒸発するばかり。ただ、天然自然の雨や周辺の山地から流れ出てくる湧水量を勘案して、人口降雨の制御用水源にも使っていますから溢れる危険はありませんよ)
つまり、溜まった水は溜めたなりの使い道があるようです。
(それと、ルーン大陸の大気中魔毒量を制御するためにも人工降雨の必要があるんですよ。元々のリュネ世界の人工惑星環境でも雨、降ってたでしょ…あの雨によって空気中の魔毒粒子の量を調整してたんです)
あー、何か教えられた覚えがありますね…私どもの住んでおったリュネ世界、実は宇宙という虚無の空間に浮かぶ大きな人工の大地であって、私たちリュネ族や西方族、そして魔族の生存に必要な何がしかをカラクリが整える仕掛けがなされておったと…。
つまり、あまりに魔毒が濃厚になりすぎると雨で流しておったようなのです。
で、有毒ではありますが、同時に私どもの飛行や炎剣、そして魔族由来の氷剣の動作を助ける魔毒。
今より向かうデビルズバレーなる谷に移された魔族大陸由来の原初苗床から湧き出させておる瘴気や魔毒苔が、ルーン大陸に魔毒を供給する源になっとるそうです。
つまり、この魔毒が完全に消失すれば魔族のみならずリュネ族の生存にも影響大とあっては、このルーン大陸においても、否応なく魔族と手を結ばねばなりません。
同時に、苗床から遠く離れることが叶わない魔王の代役として、私どもや魔族の名代が諸々を整える必要があるのです。
ところで、わたくしイリヤ。
行けと言われて行く立場ですが、行ったそっちで何をさせて頂ければよろしいのやら。
(なんかこう、イリヤさんって天然でボケるとかそういう性質、ありませんか…)
(えーと、確かにフランシスカさんとかマルヴィレはとにかく行けはよ行けだったのですよ。で、マルヴィレとかドミネラやレヴェンネの言い回しには厄介払いしたい思いが多分にありましたけどねぇっ。それ以前に、早く来てくれというリンジー殿の切羽詰まった泣き叫びもあったかと)
つまり、行った先で着くなり暴れ回るとか聖剣を振るう段取りには間違ってもならんのが確定しておる今回の赴任。
さりとて、わしは何をさせて頂ければ良いのでしょうかという疑問、素直に出ると思うんですよ。
(あー、マリアンヌですぅ。ええとですね、イリヤさんには学園都市の市長をやって頂きたいってのがこちらの要望です。ただ…自らが何かを率先して行うっていうよりは、下についた職員が持ってくる相談や決済への対応をお願いしたいんですよ。ほら、今までイリヤさんは魔族の侵攻が会った際に先陣を担当する立場だったでしょう)
で、室見様に代わって、高木マリアンヌ姫様が申されるには、ですね。
(今度は後方で軍師をやってもらう感じで。それと、リュネ族は純血の組み合わせでないと能力を維持できないと伺っています。特に、炎剣を製作する工房の鍛治屋さんについては、絶対にリュネ族か魔族でないとダメって伺ってますので、技術保存と炎剣の製造生産を担当する工場は絶対に学園都市や魔王城の近所に作る必要があるそうですね…これについても、イリヤさんの管轄にさせてもらえればと思ってます…)
で、魔族とのいくさが終わりを告げたのになんで炎剣を打つ必要があるのか。
これは、淫化帝国時代に理由を聞かされています。
高い山の中にあって、燃やせる木や炭にも事欠く場所が多い淫化では、炎剣をかまどの火元に用いることが考えられました。
そして、そういう用途に適した調理剣という包丁や、更には魔族の魔剣を解析して食べ物を凍らせて保存する氷剣も開発されたのです。
すなわち、日々の暮らしを助ける器具として、炎剣の技術が広められたわけです。
ただし、炎剣や氷剣はリュネ族または魔族の血を引いておらねば扱えぬ代物でした。
おまけに、これは私にも見当が付きますけど、魔毒漂う地か、作動に必要な魔毒を供給できる者がおらねば炎剣も氷剣もその力を出せずに単なる包丁や剣に成り果てます。
(ただ、炎剣や氷剣については苗床のある地域だと使えるようになりましたよね…)
ええ、このあたりは改良されたのですよ。
そして、冷蔵庫や冷凍庫を置くのが必須の場所にある聖母教会では、人の男児に出す食事を充実させたり、氷菓子を提供するのに重宝しとるそうで…。
(イリヤさんが連邦世界のティノチティトランでアイス屋さんに入り浸ってたって聞きました…)
(そういえば支部長会議の後でも女官寮2階の購買のアイスコーナーで買い食いするか、喫茶珈琲淫でアイス系の注文してたって…)
ええと、えとえとええと。
(学園都市の生活区域にもスーパーマーケットめいた場所作ってます…本格営業はこれからですが、その経営指導や指揮も市長のお仕事ですよ…)
(まぁ、痴女島のアイス工場から当面は送ります…)
(その代わり、チョコ系は快感王が原料ですから取扱注意でお願いします…)
そう言えば、フユキが召喚された時も最初は苦労しましたね…。
リュネ世界で一番に困ったのは食べ物、特に甘味だったのです。
ですが、その問題は比較的短期に解決しました。
何せ、フユキが呼ばれてから半星期もしないうちに魔王の乱でしょ、で、淫化に逃がされた私たちが淫化帝国…痴女皇国に拾われた後、フユキの出自がわかったのちに「こういうのどう」と向こうの甘味を渡されてたんですよ。
で、マリアリーゼ陛下が「んじゃお菓子都合するわ」と、痴女島の購買部で買って来られたものを与えてくれたのです。
ただその…ちょっとばかり、特殊なお菓子…ええ、快感王とか使われてたのが問題にはなりましたが。
で、今ではフユキもあまりお菓子を求めぬ身となっておりますが、一方、このイリヤは…。
(おばさまは全力で堕落しました)
(っていうかエマネ。あんたも離魔の租界に菓子屋作らせてるでしょうがっ)
(あれは男の子たち…わけても愛隣会館やチンボテの子たちの福利厚生ですよ…おばさまみたいに連邦世界のめきしこしこのお菓子が潤沢に手に入る環境じゃないんですからね…)
(ふん、今は私もお菓子から縁遠い場所に赴任するとこじゃっ)
と言っておりますが、実のところは菓子屋の部類、絶対に作られると私は確信しとるのです。
なぜならば、菓子の類、年若い男児には意外に効くもの。
好んで食べる年かさってものがありますから、こちらから買って与えたりする必要はありますが…。
つまり、男の子はあまり積極的に自分から進んで菓子を買い求めない傾向があります。
しかし、差し出せば口にする場合が結構多いのですよ。
で、膝の上に乗せて快感王チョコを与えながら、体をいじくり回してやればその気に…って何を言わせるのですか。
(今、ひどい自爆を見ましたよおばさま…そっちのスケアクロウの中の人、みんな肩震わせてるじゃないですか)
(というかなんでエマネに心話が繋がってるのよ。ここ連邦世界のエヌビーって星よ…)
(あのー、おばさまも私も黒薔薇資格者じゃないですか…通じるようにされてますよ…)
あがががががが。
(でね、おばさま…その新天地とやらへ行ったついでに確かめておいて欲しいんですけどね、せっかく私がマルヴィレたちにも王位継承権を与えて王族扱いにしようって思ってあの人たちのためにと産んだ三つ子のペーネとポーリャとピック、あの子達をほったらかすどころか、学園都市にたんしん赴任させたって言うじゃないですかっ。あげくマルヴィレもドミネラもレヴェンネも、ソーデくんランセくんピーレくんでしたっけ、それぞれが産んだお子さんとセッキしまくってるって…それどういうことなんじゃいって、本当なら私が詰めに行きたいんですよ…ただ、行って炎剣の撃ち合いにでもなったら目も当てられないでしょ? ですからおばさまに、とりあえず四天王のセッキ事情を聞いといて欲しいんですよ…)




