ドンファンをさがせ番外編:-美味しいものほど身体に悪い-
「なんであたしがスケアクロウのナビ担当に…」
ええ、ぶつくさ言ってるこの私こと田野瀬麻里子。
痴女皇国の本宮上階に広大なオフィスを構える財務局という部署の副局長を相変わらず勤めております。
で、私が何でぶつくさ文句を言ってるかご説明させて頂きますとですね。
例の詐欺師兼女たらし男のジャコモ・カザノヴァという男性を有全珍から護送する輸送手段に、毎度お馴染み変態輸送機のスケアクロウを使用しようという話が出たからなのです。
最初は、痴女皇国所有…というよりはテンプレス・セキュリティが保有してることになっているダッソー・ソニックファルコンという超音速ビジネスジェット機を使おうという話も出ておりました。
しかし、罪人にあれはもったいないとか言い出したわがまま皇帝がおったのです。
ええ、ソニックファルコンはその性質上、双発超音速機の操縦免許を必要とするそうです(ジーナさん談話)。
そして核融合ターボファンエンジン搭載機ということで、双発戦闘機の操縦経験または他の大型旅客/貨物機の操縦飛行時間が一定以上でないと操縦桿を握れない制約があるみたいなのです…。
つまり、ジーナさんがNB行きっぱなしの現状だと、そのソニックファルコンを飛ばす乗務員の中に、高い確率でベラちゃんが入ってしまうのです。
となると、この飛行機の売りである豪華な客室を堪能したり、クリスさんと一緒に乗り込んできゃっきゃウフフどころか、延々と操縦桿を握りっぱなしということにも。
まぁ、この飛行機はめっちゃくちゃ速いので、痴女島から地球のどこへでも6時間あれば絶対に到着してるそうですけどね…。
とにかく、自分が贅沢できない上に、罪人の護送に高級ビジネスジェットとはなんたる贅沢かというベラちゃんの意見が通ってしまったとお考え頂きたいのです。
しかし、今でも急がない船であれば途中航路すっ飛ばしルートを使わせてもらえたとしても3〜4日、急がない貨物船なら1週間以上は絶対に必要とする有全珍から欧州への船旅も、これまた一種の贅沢となる模様。
(暴れた乗客を閉じ込める特殊船室があるにはありますが、暴れてもいない者を入れるのは虐待とされるのです…ですが、それ以外の客室は基本的に個室…更には船客向けの食堂のクオーコにですね囚人向けの粗末なごはんを作れといっても逆に無理があるのです…)
で、ベラちゃんの説明を補足しますと、今現在の痴女皇国世界における国際航路に就航している旅客船は基本、船内で3食を保証する船賃を頂戴するのが基本のクルーズ船と類似であり、ちゃんとしたご飯どころかフルコースの食事または船によっては複数営業している中華や和風料理のコーナーに行くなど、割と贅沢な食生活を提供してくれるのです。
ですので、囚人の護送とかに使うと、料理長に無理を言うか、賄い飯を分けてもらうか等々の特殊手段で粗末な食事を用意する手間が発生するのです。
しかも、これまたベラちゃんが言う通りで、エコノミー船室でも乗り合わせの場合があるとは言えど個室船室です。
はっきり言って、囚人…それも、痴女皇国世界でわざわざ有全珍まで手を伸ばして捕獲しているような罪人に対しては贅沢だと私も思うのですっ。
(日頃は茸島にも行けないたのに贅沢の話をすると火に油よね…)
(あたしが茸島に行って何の慰労になるのよ…それに行ってる女官って基本、慰労どころかMAXで運動して疲れて帰ってくるような事してるわけじゃないの…)
ええ、茸島って聖院学院神学部校舎などがあるんですけど、そこの男子生徒の部活兼務お小遣い稼ぎの手段として、本宮から船で遊びに来る女官と遊ぶアルバイトの需要が毎晩生じております。
何をどう遊ぶかはともかく、この田野瀬にしてみれば、かつての担当だった文教局管轄の聖院学院本校・福祉部寮と何が違うのか。
そして私は、普段の授業や生活ならともかく、あそこの保母さん女官やハリティリーネ福祉部長とか、あるいは田中雅美内務局長とかベラちゃんが大得意な夜の遊び方については苦手っちゃ苦手な部類でして、福祉部児童の少年たちも私の外観の地味さもさりながら、そういうところを察して避けてくれていたのです。
(少年たちが気を遣うって…たのちゃん、よっぽどよ…)
(文教局当時のたのきちがいかに色気を遠ざけようとしていたか、よくわかりますね…)
それはいいのですが雅美さん。
警務局の副局長になってる娘さんのペルセちゃんと、こっちにいる雅美さんの仇敵のりええの管轄ではないのですか、囚人の移送。
(そもそも痴女皇国世界で犯罪を犯して遠くまで逃げ切れるって事態を想像してなかったから…)
(この件はナディア海事部長にも相談しましたけど、大西洋航路なら軍艦も走っている場合がありますから、営倉に入れて運べますがと渋い顔でして…)
ええ、いくら逃げられないように出来るとは言っても、何十人もの女を騙して金品をかすめ取ったり、果ては路頭に迷わせかけた女の敵であるカザノヴァ氏。
そんな人物をリヨン郊外の山の中に連れて行くまでは、もはや一切の贅沢をさせたくないと関係者一同が合意している状況なのです。
そこで、ある程度は高速性能があって、かつ後ろの席は兵員輸送用の壁際から引き出す粗末な折りたたみ椅子か、グレードアップしてもエコノミークラスと大差ない椅子が並ぶ座席パレットというものを装備した状態で乗客をエコノミー症候群以上に虐待できるスケアクロウが選ばれた、そうお考え下さい。
ですが、スケアクロウは船よりはるかに速く飛べるとは言っても、音速を越えることができない飛行機だそうです。
いえ、当初は高高度をワシやグライダーのように無音で滑空することが求められたせいか、高速性能が全力で犠牲になったとジーナさんが今でもぼやくくらい、この飛行機は変な代物です。
特に、宇宙船としても使えるばかりか、その気になれば月や木星土星どころか、連邦世界の地球からだとおおむね百光年先の恒星系に存在するNBまで一瞬に転移できるG型スケアクロウですら、普通に飛ばしている限りは音速を越えられないとか、一体どこの誰がこんなの考えたのか、宇宙船はもちろん飛行機にも素人なこの田野瀬にもおかしいと思える物件なのです。
で、そのG型スケアクロウは、宇宙船として飛ばしたり大気圏内でもスティックスドライブ・レベル4という方法で瞬間転移が可能なんですけど、この方法で長距離飛行をサボろうとする場合、操縦士2名だけではなく航法士と機関士を乗せないとだめ、という決まりがあると言われるのです。
いえ、決まりだけじゃなくて、実際に超光速航行となる瞬間移動を行うためには、本当に4人の連携が必要だというのは私にもわかります。
何せ、最初に聖院や痴女皇国世界にやってきたスケアクロウであるH型、諸事情で痴女島から欧州に行く際に私も乗せられたことがあるのですけどね。
ええ、りええはジーナさんを恨んでいますよ、今も。
(恨むというよりは忘れられないのよ…こっちに帰ってくる度に仕返ししてるけど)
(あれは仕返しというのだろうか…)
で、わたくし田野瀬にしても、あまりいい思い出のある飛行機じゃありません。
乗った回数は、文教局主催の修学旅行の下見とか結構多いのですけど、何せ機内の全てが軍用輸送機特有らしいのですけど、旅客機や個人用飛行機にあるような装飾や内装材がいっさい見当たらない、無骨極まりないしろものなのです。
しかも、最初に乗った時の状態ですと予備席とかいうものがないか簡単すぎるということで、割とまともな椅子が備わっているナビ席に座らされたのが運の尽き、あの席だけなら私は何故か操作が一応はできることにされてしまいましてね。
以来、隙があれば呼び出されてあそこに座らされるのです。
もっとも、この時のスケアクロウ操縦室、私より更にさしたる必要もないのに呼び出された女が座ることになっていました。
しかも、私以上にスケアクロウに対しては因縁のある女です。
ええ、痴女皇国国土局長の通称・室見理恵こと、りええ。
(逆よ逆っ)
(パイセン…たのきちは後でしばきますから、とりあえずですねぇっ)
で、今の私たちがいる場所。
有全珍は笛之巣愛挿巣の街です。
で、この街がどれほどに頭痛のする状況なのかの説明を聞かされた後で、私たちは遠路はるばるようこそお越しやすといった態の歓迎を受けていたのです。
(詳細はアルトさんの枠で解説されています…)
(フランシスカさんだけじゃなくて、管轄のはずの南米行政局の人たちまでもが頭を抱えまくってるわよね…)
と言っても、連邦世界のアルゼンチン共和国と同様、農産物生産国として機能している痴女皇国世界の南米行政局は有全珍支部。
その料理も、アルゼンチン料理とあまり変わらない…つまり、お隣さんの尻出国名物ブラジル料理と大差はないのです…。
「で、たのきちが嫌がっている理由ですけどね、パイセン」
「そりゃ有全珍って言えばさ、アルゼンチンと同じで肉よ肉っ特に牛肉っ」
ええ、私たちはこの笛之巣愛挿巣の市役所や支部警備局だの、あるいは公営企業が入居している高層ビルのバローロ宮殿を中心とした一帯…市役所広場という公園を囲んだオフィス街に来ております。
なんで、こんな場所に。
下の略図で大体の建物の位置関係を把握頂きたいのですが、有全珍支部・売具合支部・孕具合支部の合同庁舎にもなっておりますカサ・ロサダ宮殿から市役所までは2キロ未満。
そして、夜ともなればこの辺りが身体を売る偽女種少年のたむろする売春地帯へと一変するのです…ええ、私たちは今、まさにその光景を眺めながら、公設食堂にお邪魔しております。
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笛之巣愛挿巣 ↖︎コロン劇場へ
市役所 \←建国の母通り
↓ \ ⬜︎メトロポリタン大聖堂
⬜︎|_|=◇===|_|⬜︎カサ・ロサダ宮殿
↑ ↑ ↑マージョ広場
市役所広場 バローロビル
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この公設食堂、利用者は偽女種…それも現地では淫売偽女種とか売春偽女種とか称しているそうですけど、分類としては苗床から出るか偽女種転換後からの寿命がおおむね5年程度の奉仕偽女種…痴女皇国の分類では下から2番目のランクに属する特殊人工性別とされている存在が主に利用するだそうです。
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痴女皇国・偽女種分類表:聖院暦105*年版
男性型痴女種
→現在はクリス・ワーズワース用特殊義体のみ存在
(偽女種生態実験テストベッドを兼ねる)
寿命:完全体痴女種同等
身体能力:通常人類男性基準・可変
男性形態変化:基本は少年固定
特殊大型性器装備:可能
性交対象制限:延命処置能力のある痴女種が好ましい
女性蔑視傾向:個体の性格に左右される
変態傾向:個体の趣向性癖に左右される
指導偽女種
→鬼族偽女種状態類似擬似身体装備者
寿命:女官種類似または延長可能
身体能力:同等卒級女官に準拠
男性形態変化:任意または少年・偽女種状態固定
特殊大型性器装備:可能
性交対象制限:身体出力に応じて制限あり
女性蔑視傾向:個体の性格に左右される
変態傾向:趣向誘導・弱
知能偽女種・芸能偽女種(元・修道偽女種)
→女官種能力身体基準
(茨木童子の鬼細胞で偽女種化・能力制限あり)
寿命:女官種未満
身体能力:同等卒級女官に準拠
男性形態変化:少年固定&偽女種化には痴女種補助要
特殊大型性器装備:可能&固定装備
性交対象制限:聖母教会尼僧による制限制御あり
女性蔑視傾向:個体の性格に左右される
変態傾向:趣向誘導・中
奉仕偽女種
→女官種能力身体基準
(茨木童子の鬼細胞で偽女種化・能力制限あり)
寿命:女官種未満
身体能力:同等卒級女官に準拠
男性形態変化:少年固定&偽女種化には痴女種補助要
特殊大型性器装備:一部不可能
性交対象制限:聖母教会尼僧による制限制御あり
女性蔑視傾向:若干の兆候強化措置あり
変態傾向:趣向誘導・受動型(相手の変態性に影響される)
懲罰偽女種
→女官種能力身体基準
(茨木童子の鬼細胞で偽女種化・能力制限あり)
寿命:懲罰仕様短命型女官種身体
身体能力:同等卒級女官に準拠・強制制限あり
男性形態変化:基本偽女種または少年固定
特殊大型性器装備:不可能
性交対象制限:なし
女性蔑視傾向:兆候強化措置が基本
変態傾向:強
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で、この偽女種の分類のうち、千人卒以上の完全体痴女種の性別変更バージョンらしい指導偽女種以外は、通常の食事を絶対に必要とします。
ただ、言い換えればこの場にいる全員が完全体痴女種または指導偽女種で、勢い食事は不要のはずなのです…。
しかし、この店のオープンテーブルに座って最初の料理が運ばれてからこっち、手からフォークまたはお箸を絶対に離そうとはしないのです、わたくし田野瀬以外はぁっ。
「串の時は離すわよ…それにさ、たのの…女官も百人卒未満だと食事必須よ…」
「パイセン…たのきちがお肉を嫌がる理由はもはや明白なのです…太りたくないからなのです…」
ええそうです。
体格が自動調整され、その当人に許されている最高のプロポーションが維持されるはずの完全体痴女種の半人工身体。
それにも関わらず、何故か私の身体は、美味しいものを食べるとそれに比例して太り始めるのですっ。
「完全体痴女種のはずのたのきちがデブるのも痴女宮七不思議なのです…そんなにお肉料理が嫌なら、あたしたちが赤ワイン片手にぱくぱくしているのを羨ましがらせてあげるのです…」
ええ、こと、食事となるとベラちゃんは姉のまりり…痴女皇国上皇のマリアリーゼ以上に目の色が変わります。
そして、ミラネーサとかいうイタリア風の牛肉のカツレツではなくて、卓上コンロの上の鉄板に盛られてじゅうじゅうと音を立てている肉盛り合わせ料理…パリジャーダというそうですけど、それにフォークではなくて何故かお箸を伸ばしておるのですっ。
しかも、この後で石のピザ窯やパン窯同様のアサード窯の中、じっくり1時間ほどかけて遠赤外線で焼き上げたというステーキが登場する予定らしいのです。
ううううう。
辛抱できるかぁっ。
ええ。ラプラタ川で獲れるナマズ種の煮込みのスルヒ…尻出国や北米にも似た種類のナマズがいますけど、それらと同じで白身の上品な味わいなのです…ですとか、これまたパタゴニア産のハラマスを焼いて岩塩と、お好みで檻愛撫油をかけて頂くトルーチャだけでもいいかげんハイカロリーなのですけど、私の手はたまらずに鉄板に伸びていました。
お箸を持って。
そして、私は絶叫しました。
「お兄さん、お肉おかわり!」
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たのの「もうええ。私かて欲に負けたい時があるんや」
りええ「たのに関西弁が発症している件はともかく」
くらら「確かにここな有全珍、肉料理については…その、野卑と言えば野卑なのですが、その」
べらこ「あまり上品に頂くもんでもないと思いますけどね、でもブラジル料理のシュラスコとか見たらこんなもんかぁって思いますよ実際」
しすか「あと肉肉肉肉肉。これはもう、慣れてない人にブラジルから南はきついと思わせるのではないかと」
べらこ「メキシコ生まれでアメリカ生活も経験してるフランシスカさんでさえ…」
しすか「お言葉ですがベラ子陛下。マラネロのリストランテ・カバリーノで出された茹で肉盛り合わせとかあれ何ですか。フェラ ーリの創業者の昼食がこれだっていうことで出されたのですけど…パスタでしょ、スープでしょ、で、お肉。当時の私は普通の人類の娘でしたから、お腹が出るのが怖くて怖くて」
べらこ「あそこは観光客とかフェラ ーリ愛好家のためのお店ですから、口に合わないという人はもっと違うリストランテも経験すべきなのです…」
りええ(で、たのが食欲を解放してる理由なんだけど…有全珍って聖院時代から小麦生産で目をつけられてた国よね…そしてさ、尻出国に大豆畑を開くついでにって、小麦畑の拡張はもちろん明日輝とうもろこしとか淫化コーンの変種の生産も始めたわよね、特にデントコーン)
しすか「で、セニョーラ室見が何を申されたいのかという件ですが、有全珍の牛は牧草だけで育ててはいないのですよ、アルゼンチン同様に…」
べらこ「飼料作物の生産でも有全珍への期待は大、なのです…」
りええ「これ、本当にオージービーフとアメリカ牛を食べ比べたらわかるけど、食味や油のしつこさがかな〜〜〜り違うのよね…正直言って高級輸入牛肉の味よこれ(ステーキぱくぱく)」
たのの「なんでりええの体型が変わらんのに、私は太るの!(泣)」
べらこ(もしかして初代様の呪い…)
てるこ(わたくしは無実でしてよ。まぁ、女というものは自制心がなくばみるみるうちに肥え太るいきもの…)
他全員(というわけで、太りやすい食生活の方は本当に気をつけてくださいね…笛之巣愛挿巣編については、引き続きアルトさんの枠で大詰めとなるようです…)




