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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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ドンファンをさがせ -Maestro del sexo legendario-・3

「まぁ、早いっちゃ早いもんですな、さすが我が国の調査網」


ふほほほほほほ。


そして、マダム…セニョーラ・田中雅美からは耳より情報を寄せて頂けました。


なんでも比丘尼国の京都に政府があった時代に書かれた助平話に出てくる、架空の男性貴族たるヒカルゲンジなる男に関する描写のことごとく、ドン・ファンの行状と類似であることも。


いえーい。


いえ、今のわしフラメンシアは祖国イスパニアに帰っておりますから、歓声は¡Hurra!で。


で、ドン・ファン伝説についても、改めて収集しましたところですね。


古くより伝わる「石像の客」なる、理不尽な殺人に怒った男が亡霊となって殺害者を訪問して地獄に引き摺り込む民話と、史実上の色事師として知られた貴族ドン・ファン・テノーリオなるおっさんのよろしくない逸話が悪魔の如く合体して語り継がれたものらしき話であり、明確な作者はいないらしい、とも。


ただ、このドン・ファン伝説を取りまとめた劇戯曲、我がイスパニアの作家であるティルソ・デ・モリーナという人物の著作となっております。


El burlador de Sevilla y convidado de piedra(セビリアの色事師と石の招客)というその劇戯曲、実のところはわしの方で民間劇として演じる分にはええで、とお触れを出しておった記憶が。


と申しますのも、その劇中に出てくるドン・ファンはセビリアの貴族の息子だったのですが、身辺はもちろん見かけた女ですら犯そうと企む悪漢の類。


そして、娘を犯された父親と決闘して斬り殺したり、復讐に来たのを返り討ちにしたりなどなど…その時の伝承や劇中演技によって異なりますが、犯された娘の報復に訪問した父親を殺害するあらすじなのです。


こりゃあ、貴族同士のいさかいとしてもあまり宜しくはない話ではあるなと、一旦は発禁に近い処置を取ってしまってたんですわ、わし。


しかし、貴族を揶揄し悪を懲らしめる話ということで民衆には人気があった演目ということで、マドリードで堂々上演はあかんとしても、町や村の娯楽に上演するくらいはええで、とその時のわし、お沙汰を出してたのでした…。


で、当のモリーナをオリエンテ宮殿に招いて、この話の改変について相談に及ぶわしですが。


「ふむ…確かに、救世主教と違って聖母教会ですと、ドン・ファンのような悪漢、悪事の贖罪のために延々と苦難の人生をやり直すことになると伺いましたな…」


などと申すモリーナ。


で、この人物ですが、実のところは救世主教会の教義「悪いことした奴や救世主と神を信じない奴は頭がハゲて地獄行き」という展開の作品を数作、救世主教の神父稼業の傍で書き下ろしていた実績持ち。


そして「不信心ゆえ地獄堕ち」という彼の作品も読んでおったわしとしては、こりゃあ聖母教会向けの話を書いてもらわんと、そのまま世に出すのはまずいと判断しておったのです。


幸いにしてこのモリーナ、聖母教会のスペイン進出によって失職しておりましたが、文才を買われてマドリードの大学教員の職を斡旋して文芸関係の講座を開いておったこともありまして、まぁ今の世に合わせたものを書き記すに異存はないという程度には柔軟な思考が出来たのです。


「ただ…ですな、ドン・ファンの話のくだりでは、悪霊と化す父親や、その後の展開を考えますだに地獄という概念を採用しなくばいささかに受けが悪くなろうかというのがわたくしめの懸念でございまする…」


と、改変を考えるに至る思いつきが出せそうにないという困った顔をされたのです。


「まぁ、貴方の言い分もわかる話ですわ。ただ、モーツァルトに渡す原稿のこともありますんで、セニョールには原案作者として名を連ね、別のもんに改稿させるゆうことでよろしいか…」


と、モリーナには山吹色のお菓子ならぬ、再販戯曲として出す分のドン・ファンの話の原稿料を握らせ…といっても、聖環のおひねり機能を使用しての下賜金ですよ…著作出版分については販社からの印税を別途受け取れるように指示を出しておきます。


「ははぁっ、これは過分な賜り物…なれば、その戯曲を新規に書き下ろす分につきましては…」


「まぁ、都々逸かイタリアの作家が担当すると思うけど、著作権で揉めんようにするための措置やからな…あんたの話とは直接関係なくするけど、原案として載せるか紹介することになるやろ…」


ええ、このドン・ファンの話の原作者を探したのは、その起源が民間伝承だったことを証明する必要もあったのです。


でないと、聖母教会向けに話をいじくったということだけでも、モリーナが騒ぐ可能性がありましたのでね。


で、モリーナに金を握らせたのは、一種の口止め料という意味合いもあったのです。


が、しかしぃっ。


一応は原稿料だってことで、今のおひねりはモリーナが受け取った記録が聖環に残ります。


ただ、経費で落ちるもんか…ええ、今後その戯曲ドン・ファンが大受けしてもお前は黙っとれという代償にですね、モリーナの年収に近い金額の銭、くれてやっとるんですよ…。


つまり、かなりの大金を動かしたのです…。


(うう、これを黒薔薇騎士団の経費として認めてもらうには…)


ええ、わしが痴女皇国から支給されている業務報償金額の倍くらいの額です。


滅多に使わんからええようなものの、この支出は痛い。


と思っておりますと、ペルセポネーゼ団長から連絡が。


(はいはい、フラメンシア殿下…それ、雅美母様の依頼でもありますから、内務局付けで紫薔薇騎士団の工作費として計上しておきます。そのモリーナとやらの原作の出版にかかった費用の細目、後で母様のとこに送っておいてください…)


(ありがとうごぜぇます…)


(あと、どうせその後に調査で色々と入り用だと思いますので、とりあえず仮払い金、紫薔薇騎士団の活動費として殿下の口座に出金しておくそうです。後ほど確認願います…)


うははははぁっ、と東の方の痴女島の方角を向いて三拝九拝とやらをするわし、フラメンシア…。


そう、次の仕事として、モリーナの代わりに戯曲を書いてもらう人物に話をする必要があるのですよ…。


----------------------------------------


ふらこ「なんかイタリアに行きそうな予感が」


まるは「わしはわしで南米に行くんですけど、お互い大変ですな…」


べらこ「まぁ、フラメンシアちゃんの方は飲ませ食わせ抱かせ握らせになるのですよねぇ、お仕事…」


ふらこ「満更楽でもない仕事やと思い始めました…」


べらこ「こういう交渉になると、やはり土地勘もさりながら商売のお話にもなりますからねぇ…」


ふらこ「とりあえずは避暑どころか、汗をかく状態であればびしょびしょになってるかと」


てれこ(誰がうまいこと言えと…)

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