潜入作戦随行見学編・対決!どすけべ貴婦人と戦う女子高生の悩み
皆さんこんばんわ。室見理恵です。
痴女の皆さんがあっちこっち行っていけないことしてるみたいです。
で、レポートを書くネタを仕込む為に、潜入する痴女に同行させてくれるそうです。
悪い予感、かなりしますけど。
「ふむふむふむ」まりり唸ってます。
ここはお城の会議室。
「むーんむーんむーんむーんざむーん」ジーナさん、その唸りで何か起動しそうですが。
で、まりりがぱっと光って黒マリにちぇんじ。
「イタリア方面の下拵え、早める必要あっかもな。正直あそこは色々遊びたかったんだが…ちょっと知恵袋呼ぶわ」で、広報第二部長さん登場。
「なー雅美さん。一応、初期案じゃメディチ懐柔して毒盛りをあそこの家長に据える方向で行こうと思ってたんだがよう。んでアレ軍師に取り立てて」
「それでいいと思いますよ。で、何の問題が」
「ローマ略奪事件。あれに近い事をあのクソウザ帝国の系統が考えてるくさい。連邦側の史実と違って、こっちじゃ神聖ローマは既に長靴から手を引きかけてるが、隙あらばってとこだ。で、アドリア海対岸からローマに押し入り強盗をしようと考えてるようだな」
「そしてメディチやボルジア家の面子を潰してイタリアを掻き回すと。葡萄酒の王朝はどうなんでしょ」
「聖女…あ、学生諸君に言っとくぞ、うちのおかんじゃなしに貧乳の火炙りの方だからな?あれの功績でルイ王朝が安定した治世を送ってる。ま、聖院がペストを潰してるのもあるんだけどねぇ。ただ、ナポリやシチリアを欲しがってんだよな」
「そして、サヴォイ家を支援。サヴォイ家がここモントルーを手放したのも、聖院の機嫌を取っておけば聖院赤十字隊がシンプロンルートを確保してくれる上に、史実と違って仕事を放棄しない傭兵を回してくれるから。言ってみれば聖院の味方は葡萄酒とミラノ。毒盛りをうまく盛り立てて長靴中央を統一。そしてナポリ王家とサヴォイ家とメディチの御三家による長靴統一。この線は崩さない方がいいんじゃないですか」聖院スイス支部の直属部隊が赤十字隊だそうです。
「問題はやはりハプスブルグと神聖ローマだなぁ。あそこ何とかしねーと周辺に絶対にちょっかいかけるから」
「そしてハプスブルグは事もあろうにドーバーの先を支援する可能性が、ねえ」
「ああ、葡萄酒の国の不倶戴天の仇敵はいつもあの海峡の先さ。ナチなんざ1回かそこら殴り合っただけじゃねぇか」
「この時代で既に無敵艦隊、打ち破られてましたっけ?」若様。
「ああ、そっちは史実通りだ。スペインもポルトガルもハプスブルグに密使を送ったりローマに密使
を送ったり忙しそうだぜ。下手すると南北新大陸利権すら英国の総取りにされかねんからな」
「あの島国を何とかすると、スポンサーが怒りますよ、ねえ…」雅美さんが顔に手を当てて唸ってます。
「ああ、あそこを消し飛ばせば今回は話が早い。新大陸利権を餌に色々釣れるんだよ、釣れるんだがな…」
そうです。今回、事もあろうにワーズワース家のご先祖様が生まれた土地の例の海賊な国、のちに日の沈まぬ国を豪語したあそこが邪魔者なんですよ。げに欧州事情は複雑怪奇なり。
「まずはハプスブルグ家と神聖ローマの戦略を読んでみましょうよ」若様が提案なさいます。
「まず、スペインとポルトガルは無敵艦隊を破られており、大西洋航行の自由を脅かされている。跳梁跋扈する海賊を何とかしないと船団の荷物が届かない。一方でハプスブルグはスペインからの黄金他、新大陸資源を資本に長靴の金融・地中海方面の海運を押さえたい。そこで英国を海洋利権独占から引かせる為にブルボン王朝攻略を示唆したと」
「上出来だ。神聖ローマは史実と違ってフランスへの血統戦略が頓挫しかけてるし、独自繁栄を遂げてるのが大変気に食わない。しかしあそこはそれなりに大国だ。だが積年の恨み重なる仇敵の島国が、ドーバーの漁業利権や大西洋への海洋利権にカエル食いがいっちょ噛みするのを事の他嫌がってるわけだな」
「つまり、フランスを農業国にしておいて、彼らの海洋利権はマルセイユから南にしてもらえたらとりあえず英国は大人しくなるのでは?イギリスの弱点は食料自給率かと」
「んだな。あんだけどつき合いしてんのに相互に重要顧客とかどんだけよ」
「あとは、かーさんの祖国。この時代はモスクワとかキエフ大公国のレベルだ。これが統一されると絶対に南下してくる。そしてイギリスはこの時代、モスクワと仲がいいんだよなぁ…」
「なんでなんでー」
「これさ。これはメーテヒルデの私物を借りたんだが…」黒い帽子とコートを取り出すマリア様。
「けがわですね」
「んだ。ロシアンセーブルって聞いた事あるかい?」
「なんかすげーたけー毛皮のような」
「マリアちゃん、どっちかというとうち、お受験系だからそういうガチお嬢様グッズが家にないところも多いの…」雅美さんが泣きそうな顔をしています。
「うぇ。だから何とか院ってのは置いといて、モスクワ大公国がシベリア方面に進出したのは毛皮を求めたところも大きいんだよ。高級な毛皮が取れる動物って、寒冷地に生息してるだろ?」黒マリ様の話に、みんな納得した顔です。
「で、その毛皮を買い取って欧州市場に流してたのが大英帝国ってわけさ。そしてハプスブルグ麾下の商人が高級防寒材として欧州の貴婦人にばら撒くのよ」な、世界の紛争の源をたどると最低五割があの二枚舌帝国に行き着く理由、わかるだろと黒マリ様が心話でおっしゃいます。ですよねぇ…。
「一方、統一するとウクライナの小麦がモスクワの輸出品目になり、ハプスブルグとしてはありがたい。で、モスクワの勢力拡大はハプスブルグやイギリスの利権確保になるんだ。ついでに小麦を買ってるから南下すんなやという釘刺しにもなる」
「…まともに取り合うと頭痛がする国ばかりよねぇ」
「本当に欧州史を学んでいくと頭痛がするぜ。あ、痴女皇国世界や聖院世界だと、これでもまだ単純なんだぜ。連邦世界では例のいえめん十字教要素が絡むから更にぐっちゃぐちゃだ。世界史を選択科目にしたり専攻しようとする人は、今回のこの辺の話をもっとややこしく勉強せにゃならんから覚悟しろよ。何を隠そう、これがめんどくさいからあたしの祖父な某NB首相が大学で東洋史学に逃げたという話もあってな」
「それでいいのかNB」
「一応国としては回ってはいる。だが、首相は平家の和式住宅に住み、英国風二階建ての本宅を幽霊屋敷として熟成した上で将来は売却したい意向のようだ…ほら、あのクソジジイの前妻がおったやろ。あたしの父様産んだ人。あれの命日にわざと墓参せず化けて出るのを狙っているらしい」
「普通なら事故物件では…」若様をはじめ、みんな呆れてますがな。
「うん。せやけどな…あいつらの間ではそういう曰く物件を珍重する困った風潮があってな…ツタンカーメンのマスクやホープダイヤモンドなんかもそうだが、やたら呪われた物を収集する悪癖がな…」ジーナさんが頭を抱えております。もし呪われたものがあれば可能な限り回収しといてくれと密命も受けていると。
「某皇族や宮内庁の保管物にもそれなりのがあったりしますがねぇ」
「ああ、だからおたくらとはウマが合うんだろ。とにかくあいつらのオカルト好きは異常なんだが、今の時代じゃその傾向を利用するのはまだ早いんだよな…」
「だいたいシェイクスピア以降でないと無理ですよね」
「少なくともマリーセレスト号事件より後でないと有効じゃない手かなー。ま、国で言うと今回はドイツ・オーストリア・ハンガリー班とイタリア班に分かれている。イタリアはここの戦力でOKなんだが、問題はスイスの東から北東だな。黒と紫で蹂躙してるが、なんせ対象人数が多いんだ」
「ふむ。蹂躙とは」
(…あ、若様と田淵君には言ってなかったな。今回の連邦政府や日本政府の対応を鑑みて、ご先祖様から二つの指示が飛んだんだ。一つは聖女に対する抑止システム。これの詳細は省かせてくれ…)黒マリさんとジーナさんがすっごく嫌そうな顔をした一方で、雅美さんの目が妖しく光りました。きっとなんかあったのでしょう。
(で、もう一つ。痴女皇国世界と聖院世界への痴女化抑止システムには特殊機能を組み込めと。これが、今回の作戦の頭痛のタネでな。ほら、行きに片道切符で工作班下ろして行ったじゃん。あれもその作戦の一環でなぁ)
(よし、ちょっとあたしが引き継ぎましょ)広報第二部長登場。
(単なる痴女増殖防止細胞じゃないのよ。任意で痴女化できるの。この意味わかるかな?ふふ)雅美さんは男子2名をじーっと見つめています。
「任意で起動可能なテロ爆弾に使えそうですね」敢えて音声で田淵くんが言います。
(智秋さんではなく僕が言いましょう。日本や連邦が聖院や痴女皇国に何かをすれば、即座に女性という女性が痴女化するという事で間違いはないでしょうか)
(ちょっとだけ違うわね。痴女化するのは社会の上層部の女性。そして伴侶を支配するわ)はい、部活組は全員真っ青です。
(何もこの世の女性全員を痴女化しなくてもいいのよ。現時点では身分制度がある国が世界の主流。基本的に下層階級から成り上がったり玉の輿は難しい。そしてね、今撒いてるのは男性もキャリアになるの。つまり、一人痴女化したらその家には順次感染していくのよ。性交渉した相手の数だけ)
(うわー、正にあの帝国向けの最終兵器ですね。男性への発症は?)
(単なるキャリア。影響なし。ついでに女性も、マリアちゃんが何もしないなら普通の人間として寿命を全うするわ)
(しかし何かあれば痴女化すると)
(その時に周囲を隷属するか壊滅させるかは状況次第ね。あとね。遺伝するの)またしても衝撃的な話です。つまり、いつ痴女化するかわからない血統で各国の上流階級を塗り替えて行くと…。
(智秋くん、田淵くん。これはレポートに載せるかな?)ニヤニヤと黒マリ様が尋ねています。
(載せたら絶対に騒ぎますよね、特に連邦)
(…いや、載せなくても大丈夫です)言い切る若様。(だいたい痴女化阻止作戦や、上流階級浸透作戦自体はお聞きしているんですから。作戦内容の詳細までは僕たちは聞いていません。それでOKでしょう)
(でも、これは流石に…)
(田淵くん。痴女皇国の存在する地球について統治の権利と責任はマリア陛下にあるんだ。だからマリア陛下がやるという話に意見具申は可能。但し聞き入れてくれるかは別だろ?ましてや連邦側が制止しようにも手段はない。むしろ、こういう事してますよと僕たちに大サービスで教えてくれているんだよ陛下は。レポート作成のネタ提供という義理堅い好意なのさ)
(流石だねー。で、これだ。この図の意味はわかるよな。間もなくこの通称「姦作戦」は完了する。そして、みなさんに見て欲しいのは作戦遂行中の痴女の姿だ)
(我々が伝えるべきは何ですかね)
(んー。要望すると、まず、これをする必要性。あっちこっちにちょっかいかけるのが大好きな帝国とお家を大人しくさせたい。次はバルカン半島から中央アジアにかけての安定化だ。セルビアが何やらかしたか、中学生でも習うよな…)
(そして中東からアジア。麻薬や石油に依存しない農業経済の樹立は順次進行中です。ね、マリアちゃん)
(北米並びに南米大陸についても地元文明の保護と維持作戦は既に着手しているんだ。あと、オーストラリア。聖院本部または痴女宮のすぐ下にあるからな?あれ)
(で、なるべく既存文明圏の安定化を図っておくと)
(そそ。で、民族や国家のサバイバビリティを上げる。多分、各文明自体は一旦は壊滅に近づくだろうが、遺跡や遺物を聖院が提供する事でセーブポイントからやり直せるんだ。自分達で掘り起こしてもいい)
(連邦なら科学技術を投入しようとしますよねぇ…)
(それやると資源が生成されねぇから待てやめろこっちくんな、これがあたしらの言い分だから、そもそも連邦とあたしらは水と油なのよなあ)
(NBについては?)田淵くーん。既に答え出てる話じゃんか…。
(これたぶっちゃん。記者会見でうちや白マリがゆーた事思い出すのぢゃ。聖院技術や痴女システムのノウハウは、あたしマリアがおる限りNBへの提供は確約も同然ぢゃ。つまり、殊更聖院地球や痴女宮地球にこだわる必要なんぞない…ただ、孫娘や関係者の安全保障については関わる気満々だな。でなきゃ同質量のプラチナと同じ価格のアレをあたしらに預けないだろ?)黒マリ様が示す先には湖上に浮かぶスケアクロウ。翼を複葉機のように二枚重ねにして、翼端と中央からフロートという浮きを出していますね。
あれ、教えてもらいましたが田淵くんの席で動かせるものを使うと、別に中出しされなくてもローマ軍7万6千の軍勢くらいなら蹴散らせるそうです。だからあの赤いスイッチをうかつに触るなと…。
(あれがなくても作戦は可能っちゃ可能なんだが、あれば要所要所で役には立つのよ。それと、中東でもちょこちょこやったんだが、痴女皇国や聖院には我々にない色々なものがあると印象を与えている。ま、敵に回すよりは供給を受けようかという方向に持って行きたい訳よ。科学技術の普及に痴女は必ずしも必要はないよな?)
(確かに中東でもワッハブ百卒長、ソニックブラスタにびびってたよなー)
(何ですか?それは)
(音響兵器。今回もTAPPSに付けてきてる。例の変態領主の屋敷に、非殺傷のハイフリークエンシーモードでぶちかまして邸内にいる人間片端から追い出したったんや。痴女突っ込まして吸い取ったら楽は楽やけど、隠れてる奴がいたら探すん手間やろ)
(ふむふむ。騒音でおかしくするんですね)
(あと、殺傷用の低周波モードに切り替えたら音が有効に聞こえる範囲の生物の内臓とか破壊する。隠れてても音聞こえたらアウト)
(何ですかそのえげつない兵器わ)
(はっはっはっ田淵くん、あたしの身体の祖国なんかもっとエグいよ。その昔、山や森に隠れているアフガニスタンやチェチェンゲリラを無効化する為にだな、サーモバリック弾頭というものをつけた携行ロケット砲とか連装ロケット砲を開発しててな)
(それだとどうなるのでしょう)
(歩兵用のRPO-Aだと君達のがっこの体育館くらいを炎で焼くが、それだけではない。炎の周囲を酸欠にしてしまうのだよ。蓮コラロケットのTOS-1なら学舎一つ分は皆殺しだな…仮に炎に焼かれなくてもその周囲の酸素を瞬間的に奪うのだよ。つまり穴掘って隠れたり森に隠れていても酸欠で死ぬのだ…)
(何というおそロシア…)
(今はカジュアルな小型核弾頭もあるから重用はされとらんがな)
(ま、話を戻しましょう。とりあえず我々は作業を見学またはお手伝い。侵入作戦のために男子は…待機の方が無難でしょうね…)
(んだなー。本当は一度は実地を見せたいんだけど、捕まったら洒落にならん。それとやってる事の刺激が強すぎる)
(見学も無理なんでしょうか)
(うむ。田渕くんは未練があると思う。しかし、有り体にいうが汚染する気満々の痴女が単独で行動しておる横だ。やばいんだよ)
(…意識共有してあげたらええんちゃうん)
(目だけならな。他の感覚は危ない。よし班編成。セリアン、ちょっとこっち来れるか?)
(御意。召喚頂ければ)と、背中に何かを背負った山伏みたいな人が現れます。金髪で青い目です。
「セリアン、今晩の予定は見学者ありだ。任務終了後はこの子…ミス・タノセを連れて脱出ポイントまで逃げて来てくれ。心話くれたら即回収する」と。「じゃ、行って来てくれ」で、たのとセリアンさんという方が消え去ります。
「セリアンの視点は田淵くんに繋げる。あれは変な性癖はないから普通に仕事を終わらせてくる筈だ」たぶぶ、ちょっと残念そうです。おそらく変なもん見せたらハマりそうだという人選なのでしょう。
「さて智秋くん。君には雅美さん…と言いたいが、視界だけでも危ない可能性があるっ!わかるな!」
「ええ、わかりたくありませんがわかります」
「そこで、もう一人呼ぶ。ダリアー。ちょっと呼んでいいか?ほい」黒い服ですが、なんかこうねぎを勧めてくる星人や恐竜や妖怪みたいな星人と戦いそうな格好の人です。サリーさんに雰囲気が似てますね。
「理恵さんは、このダリアリーゼと行動を共にしてもらう。実は痴女皇国ではアルトの次に強いんだ。つまり三番目」へぇ。
「で、智秋くんの目はダリアに繋ぐ。ま、技を見ておいてくれ」
そして、わたしの周囲が光に包まれます。
(ちょっとその装備じゃまずいわね…マリア様、黒蛇の予備あります?出来たら自爆機能は切ってもらったやつ)
(おけー。ほい)
え。
ななななんですかこれ。
そのがんつな衣装ですか。
(あっちゃー。これは切れないか…ねぇ理恵さん、我慢できる?どうしても無理なら言ってね)
(は、はぁ…)
(これ黒蛇騎士団の標準戦闘服なんだけど、今回みたいに単独潜入の場合だと、当然、見つかったら困ることになります。で、緊張感を高めたり怯えをなくすために色々と分泌したり、刺激する機能があるのね)ダリアさんがわたしの股間のクロッチ部を指差します。ええ、さっきから何か微妙に動いたり湿ったりしてますね。
(そして副作用で…盛るのよ…うん。とりあえず行こう。あまりじっとしてらんない。認識阻害のやり方教えるね。こんな感じで。そうそう)他人から見えなくしたり見えづらくする事が出来るそうです。すみません、足手まといで。
(で、今回はあたしが先行します。臭いと足跡を見てついてきて。慌てなくていい。出会った人間は片端から眠らせたりするから、あたしの通った後は安全。この靴は音がなるべくしないものだけど、慣れないうちは歩いて来ていいから)
言うなり、一気に壁の遥か上にまで跳躍。空中でくるくるっと数回転して、速度を殺してから塀の中に降り立たれたようです。
(その先の通用門の鍵を開けた。そーっと開けて。入ったらかんぬき閉めて)
ダリアさんの姿はとっくにありません。わたしからは見えるようにしてくれていますが、一般の人には見えないようです。
もんのすごく大きなお屋敷ですね。暗いからよくわかりませんが茶色い壁のようです。お城みたいです。後から聞いたのですが、やはりエステンセ城というお城だったようです。
で、指示された入り口からお屋敷の中に入ります。階段を上がります。ダリアさんは迷わず進んでいったようで、かすかに残る足跡に乱れはありません。どうも、痴女にしか認識できないナノマシンを微妙に靴底から分泌していることで、痴女には足跡がわかるようになっているみたいですね。
(そこの扉を開けて。入ったら閉めて)
(安心して。リモートドレインで砦の全員は軽く吸っといたから)
で、ベッドに腰掛けている女性。めっさべっぴんですけど気が強そうでわがままっぽいです。悪役令嬢みたいな感じですね。
ダリアさんが口に指を当てています。
(我々も手荒なことはしたくはないのですよ。それと、いいお話があります。この一年後、あなたは女の子を出産します。するのですが…死産となるのです。そして、あなた自身も産後の肥立ちが悪く、死を迎えます)
「一見すると信じられませんね。ですが、ここに辿り着いただけでも普通の方ではないでしょう。そして、ベネツィアの手の者なら私を誘拐または殺害に及ぶ筈ですしね。それに…」その女性の目が怪しく光ります。
(もし、何でしたら、我々の服とは違いますが、着用なさいますか?少し変わった着心地ですが)と、ダリアさんが背中から何かの包みを取り出します。
(で、貴女の体質を少し変えておく必要があります。より健康に、そして更に美しく。理恵さん、立って下さい)と、わたしを立たせてくるっとゆっくりひと回し。
(この者はある国の平民です。賢者を養成する塾に通ってはおりまして、かなりの出来の良い部類ですが貴族ではありません。でも、この容姿ですよ?)と、その鼻っ柱の強そうな美人の…恐らく貴婦人を煽ってます。
「何をすればよろしいので」腰に手を当てていますね。取り繕った感じではなく、もう自然に威厳を醸し出すような動きを学んできたのでしょう。一言で言うと育ちのよいサラブレッドみたいなお姉さんというかおばさんというか。
(まずはこの者のものを)
え。
え。
え。
出てます。出されました。
いわゆる「ボロン」です。
(我々は特殊体質でして、長寿と美容を獲得しています。それは我々を見た奥様ならば理解できるでしょう。しかしながら見ての通り私は混血児。で、東洋の美女の方が奥様のお口には合うかと)
「つまり、貴女がたの逸物をこうするとお相伴に預かれる。こう申したい訳ですね。ほほ。造作もない」
(…理恵さん我慢してね。話には聞いてたけどやっぱりこのおばちゃん、めっちゃ槍満。確か連邦世界でのこの人、作った子供は通算で8名はいた。で、政略結婚が多かったせいもあるけど、旦那いてるのにもうやりまくりで…実際にはやりまくってて、毒殺大好きと言われてるお兄さんともやってる。そして公式での結婚は3回。今は3回目の旦那とのおうちね、ここ)ダリアさんがわたしにだけ繋いで教えてくれます。
(いく時は貴女の若さを与えるように…あれ?サリーちゃんにアンジェリーナちゃんだっけ、の遺伝子痕跡…はっはーん)
ダリアさんニヤニヤしてます。げ。こんなんでもわかるの?ぎゃああああ!
(これこれ取り乱さないの。ま、それなら話は早いわ。アンジェリーナちゃんの遺伝子をベースに操作してあげましょう。その方がこの槍満お天気お姉さんには違和感なくていいわね。それっと)
で、結構気持ち良かったです。
このおばはん、口でするのに躊躇いが全くない時点で貞操観念が崩壊しまくってるのがよくわかりました。中世ですよここ。いくらいえめんな宗教がないと言っても基本的には倫理観念はそれなりに…。
(多分、ローマ時代の文化引きずってる。つまり、貴女たち曰くのおせっせやえちえちに関するタブーは薄い)うげー。
どうも硬さとか太さが気に入ったのでしょう。こいつとやれないか。そんな目で見ないで下さい。雅美さんと違った意味で蛇女ですねこの人。名残り惜しそうに口を離したおばはん。
なんという事でしょう。
劇的アフター。
聖環のカメラの画像を見てお目目キラキラさせています。アンジェリーナさんの要素も入ってますね。一言で言うとばいんばいんのイタリアンモデル、跳ね馬シンボルな赤いF1マシンの前に何人かで立ってそうな感じです。
「でも、ちょっと痩せたかなぁ…平民に見られないかなぁ…」
(大丈夫です奥様。聖母のお薦めとお導きです。実は奥様の時代の遥か後、こちらの美の基準が少しばかり変わりまして…)と、ダリアさんが、まさにそういうラテン系な女性がサーキットをうろうろしてる姿の画像とか、水着になってる画像を見せています。
「ふむふむ、未来の貴族はこうなるのね。で、聖母様がわたくしに流行を先取りさせてくれたと。了承いたしました」
なんとすごいラテン系思考。恐るべき納得力です。
一説によるとイタリア史上最強の槍満ビッチだとか。更に、私たちの世界での話ですけどね…ローマ教皇の血筋なんですよ?このひと!ついでに言うと、こっちだと教皇が愛人に産ませた娘です。
「で、その包みの中も想像はつきます。恐らく、貴女がたはこれを私に着せたいはず。そして…」
(ご理解が早くて助かります。しかし、その前に…私と、こちらの者と)で、ダリアさんもダリアさんを披露。うわすごい思っきし上向き。剛刀一本、という感じです。
で、流石に拒否するかと思いきや。後で聞きましたが、相手の心を読んでこっそりやるかこういう風に交渉するかの二択だったそうです。そしてこの時代、だいたい交渉の方になると…つまり槍満ばかり…。おい!
「異論はありません。むしろ」そう言ってダリアさんに絡もうとします。
(ままま待って下さい奥様!まずはこれをどうぞ。それからでも遅くはありませんよ?)必死に引き剥がしています。話が早いというか色々早すぎます。
で、奥様に渡した者は何セットかあります。そして、ダリアさんおすすめを着付け指導のもとで着用。もう期待感みなぎってます。犯すとか事前に聞いていた話と全く違う展開です。やる気満々です。
モニターしていた雅美さんが後で教えてくれましたが「この人の場合、多分、ある程度はこうなると思っていました。ええ。派手好きで浪費家でも有名だったから…でも史実以上に話が早すぎ!」と呆れ返っていたそうです。
生体繊維を最大活用した白レース。金糸っぽい縫い取りも入ってます。そして首元のレースのチョーカーにぶら下がる十字架。
「あら可愛いわね。これは…」
(あ、飾り兼お守りですわ)しれっと言うダリアさんですが、なんか某宗教から思いっきり苦情来ませんかね。今着せてる服、乳首もあそこも丸見えですよ。ワンピースのボディスーツなんですけど、コルセット風です。そしてこの時代からすると絶対ありえんハイレグです。ストッキングも絹風生体素材。
もう奥様はキャッキャしてますね。
で。
省きます。
尊厳の為に省かせて下さい。
3回。何の数字かは言いません。
ダリアさんも痴女の筈なのに疲れた顔してはります。
(雅美さんから聞いていた以上に難物だった…)
(ええ。交渉ごと一つ毎に1回とか…鬼や、このおばはんは鬼や…)
で、交渉ごと。
・まず旦那にベッドでベネチアとの戦争やめてと。やめんと裏かかれて神聖ローマ帝国に侵略されるぞ。
・めっちゃ美形のおにーちゃんに手紙書いて。内容こう。
・不倫関係の旦那の兄貴の嫁にも手紙書いて。そっちも聖母のお導きがあって話は伝わってるから。
これに対して一人一発。何かは説明しません。
戻った際に黒マリからまりりに戻ってましたが、一体何があったと不安そうに私たちは見られました。
まりり曰く、特殊な痴女化はしたが基本的には一般人のはずだ。何だあの逸般人は。ジーナ母様に続く、痴女○○○に勝ちやがった人間史上二人目らしいです。
「ほんっと化物ね…ボルジアの毒蛇女、運命の公妃…」
雅美さんも呆れています。
…そう、私たちが相手をした女性、ルクレツィア・ボルジアというそうです。
りええ「なんですかあのエナジードレイン。あれ人間ですか」
まさみ「ちなみにあのおばはんの義兄の嫁。あれも似たようなものだから」
まりり「というかあの時期のイタリア、割とあんなんばっかし。あれは特別すぎて史実に残ってるが」
たのの「あたしのほーはセリアンさんがちゃっちゃと終わらせて速攻逃げ帰ってきましたけど。ただ、あのハングライダーみたいな翼で飛ぶのは怖かったでしゅ」
りええ(何やらたのの顔が赤い…)
まさみ(おかしい、セリアンさんは割と堅物のはず…)
まりり(…あっちゃー、あの可変滑空翼使わせずに転送回収すべきだったか…)
まさみ「え?セリアンに黒真珠?男性恐怖症治すのにもちょうどいい?」
まりり「がっしょう。えいめーん」
ジーナ「結果的にはセリアンの役に立つ治療になるが、阻止した方が良い気がする」
たのの「まさみさんがまがまがしいくろさになっています」
りええ「あのぼるじょあのおばはんとたいけつさせたいです」
まさみ「黒化しても、あれに勝てるか自信ないのはなぜだろう…」