ドンファンをさがせ -Maestro del sexo legendario-・1
「人探し、でっか…」
「ええ。厳密に言えば、伝説の人物の足取りを追う話、っちゅうやつですわ…」
「なるほど、お話はわかりました。わしの父母にも尋ねてみましょう。あの二人であればモリエールや、フラメンシア殿下のお国におったデ・モリーナの書き下ろした戯曲を知っておりますかも」
(イタリア版のドン・ジョヴァンニについては…これ、フラメンシア殿下には都合のよろしくない話となりますけど…”フィガロの結婚”という戯曲を書いたエマヌエーレ・コネリアーノが筆名ロレンツォ・ダ・ポンテで出したものがございますわ)
(ありがとうございます、ルクレツィア総統閣下…)
(いえいえ。しかし、ドン・ジョヴァンニ…イスパニアではドン・ファンというのでしたかしら。漁色家というよりは猟色家とでもいうべきおはなし、でしたわね…)
(これ、フラメンシア…そもそもがドン・ファンとはイスパニアの地に伝わるおはなしではございませんか…いかにルクレツィア閣下のお治めの土地でも好評人気を博した話であるとは言えど)
(イザベルおかーさま。であれば尚更、ドン・ファン伝説がイスパニア起源やとか大人気ない話を言い出すのもいかがなもんか。とりあえずはうちの映画のネタ集めのためにもですなぁ)
(失礼、イザベル陛下…フラメンシア殿下。我が海綿菓子国の残虐王ペドロ1世と、そちらの残酷王ペドロ1世陛下の件にも触れる話かと)
(おやおやこれはジョアン4世陛下。確かに我が方の古き残忍王の家臣がドン・ファンの元となった話はございますが…)
(さよう。かの二人の残酷王のうち、貴国の古き王は我が方のペドロ1世の甥となる血筋でありましたかと)
(そう言えばルクレツィア総統閣下、確かジャコモ・カザノヴァ…あるぜんちんに逃れたとか聞きましたが)
(確かに我がイタリア教和国の者、出稼ぎや移住にと南米に向かいましたが…)
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ええと、すみません。
痴女皇国南欧行政局・フランス支部行政顧問の職務からなかなかに離れられぬイスパニア王女のフラメンシア・ド・ヴァロアまたはデ・ヴァロイスとはこのわたくしめでございます、皆様おひさしう。
さて、いつぞやの馬の話ではわしが主人公でしたが、お付き合いを頂きました方には、改めて御礼申し上げます。
https://novelup.plus/story/572931504
https://kakuyomu.jp/works/16818622174974164207
https://ncode.syosetu.com/n9921kl/
で、今回のお話。
上の方でも会話に加わっておりましたがね。
わしの不肖の母親たるイスパニア女王にして、こともあろうに南欧行政局の局長の地位をわしに押し付けようと画策中のイザベル1世というおばはんはもちろん、他の痴女皇国・欧州地区関係者があれこれ言い合っておりました一件に由来するのでございます。
理由。
いにしえのイスパニアの地にあって、好色を極め、皆様には馴染み深い行為たる、ねとられをも辞さぬ突っ込み男であったドン・ファンなる者の子孫がおったら探してくれ。
こんな話、痴女宮本宮から指示として送られて来たからです。
更には、可能ならばそのドン・ファンの名を継ぐ候補者をなんとしても捕獲してフランスまで引っ張って来てくれ。
これは、南欧行政局フランス支部のソフィー王女から寄せられた要望でもあり、なんでそういう話になったのかは、このフラメンシアもよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおく汁、いえ、知る話だからです。
一言で言えば、悪徳尼僧として界隈に悪名を轟かせております最中のシモーヌ・エドワルダのわがままなのです。
(フラメンシアさま!いくらフラメンシアさまでも、かくもひどい言いようには抗議させていただきます!あのジャン・ジュネのような世をすねた悪童、そうそう手に入るものでもなかったのですわよ?)
(はいはい、わかっとるから…幸いにも、お前のその悪人根性の染みついたメガネに叶うような奴が南米に逃れとるらしいから、ついでに本宮からの依頼という名前の断れない指示のために働かせてくれや…お前かて、これ以上は本宮に睨まれとうないやろ? あんまうるさかったらアルテローゼ殿下に泣かしてもらうぞ?)
(うう、ひどい仕打ち…)
(これこれシモーヌ、確かに男を取られたように感じる貴女の思いもわからなくもありません…だからこそフラメンシア殿下は、いつもの貴女に対する態度ではなく、ちょっと待てやと本宮の言ってきた伝説の人物に関する調べ物にかこつけて人探しをすると申されているのですよ、ねぇ、マリアンヌ様…)
(はいはい、何の因果かリヨン・ノートルダム寺院の担当枢機卿とかいうことで罰姦聖母教会に絶賛出向中の高木マリアンヌですっ。…それにシモーヌさん、この件はフランス映画として新たな大作となるべく撮影を企画している話でもあります。あなたの元々の所属だったロントモン過激団に戻れるかどうかはともかく、協力しても悪くない話だと思いますよ…)
ええ、シモーヌがフランスはリヨン南西の深いふかーい山の中で泣いてるらしい心話も届きましたが、無視しておきます。
ついでに乳上こと、アルテローゼ殿下が何やらシモーヌを慰めておるようですが、何をどう使って慰めているのかは大人の世界の話っちゅうことで、これまた黙っておきま…いずれは大人の方のお話で語らせてもらうことになると思いますが、とりあえずシモーヌは黄薔薇騎士団長に就任したアルテローゼ殿下の部下となっている、これだけ覚えておいて頂ければ支障はございませんでしょう。
で、わしと…本宮文教局・芸術文化担当顧問を兼任しておられるマルハレータ殿下の二人には、このドン・ファン伝説を追うばかりではなく、もう1つ、重大な任務を課されております。
では、マルハレータ殿下、どうぞ。
(ええとですな、都々逸帝国ザルツブルグ生まれの音楽家であるウォルフガング・モーツァルトの出世歌劇としてこのドン・ファン伝説を脚色して演じさせよとありますな、田中内務局長の仰せでは)
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まさみ「そういう訳だから頑張ってね」
まるは「なんか、大きい話とゆう気もします…」
ふらこ「というか実際に大きい話ですよ…南米まで行くのも確定しとるやないですか…」
まるは「最悪は南米までのアシに、そにっくふぁるこんを使えるように計らわせてもらいましょう…」
ふらこ「ああ、あのめったくそ速いひこうき…」
まるは「それに何か、向こうに行って捕まえてくるんは女たらしのおっさん1人でっしゃろ? 淫化やったらわしが土地勘ありますしな」
ふらこ「逆に、わしがある程度知ってるんは映画「タンゴ・アルゼンティーナ」の関係で有全珍についてはそれなりに。問題はくっそ広い南米行政局尻出支部…尻出帝国管内ですが」
じょあん「息子に連絡しておきましょう。いかに広大な尻出の地と言えど、欧州の暮らしのままで住める場所はまだ限られております。そして、尋ね人がお尋ね者の女たらしとあっては、言葉にも苦労せず女を漁れる街に潜む可能性は高いのではと」
ふらこ「まぁ、ジョアン陛下のご推察通りになりそうですけどな」
まるは「とりあえず、最悪の場合、ジャコモ・カザノヴァの足取りはわしが追いますわ。フラメンシア殿下は、地元で歌劇に必要な資料をお探し頂ければ…」
ふらこ「というわけで、あっちこっち行ったり来たりが確定しとる人探しと聞き込みが始まりますねん…」
べらこ「まぁ、意外にあっちこっち行くこともないかも知れませんよ(にやり)」
ふらこ&まるは「とりあえずはよろしう、なのです…」




