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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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鬼さん月へ行く -Le diable va à Luna- ・8

さて、案内(あない)されました先。


三河監獄国のたはら工場も驚きの光景でした。


いえ…あそこで、何十何百の職人たちが馬車やら荷車やら家具やら何やらを並んで流れるように組み立てておる光景、何かの折に拝見させて頂きました記憶はあったのですが、あれをもっとカラクリ仕掛けにしておるような。


『可動作業台に載せている船体があらかた完成している状態の船がここの最終艤装ラインに来るのさ…この最終艤装ラインだけでも今は…十隻がここに来てるな』


『確かサン・テグジュペリ級汎用型外宇宙航宙貨物船だったっけ。旅客モジュール採用船ってことでルナテックス社とトランザコスモ社のプレスリリースが出てたね…』


『マリア、これユニオンキャリーNB支社でも採用してたやろ』


『そそ。昨今はアークロイヤルに代わって連邦地球〜NB間航路にも就航してるよ』


(で、訳がわからん人に説明しておくと、従来はアークロイヤル級や、時にテンプレス級まで駆り出してたNBと地球の間の密輸事業…つまりは抜け荷だけどさ)


そんなこと、こうも大掛かりにやっておってよいのでしょうか。


抜け荷は非常な罪だったのでは。


(まぁ、プラウファーネさんになるべく理解できるように説明すると、黒火山芋侍国(さつま)年賀臨戦準備国(ちょうしゅう)がさ、幕府や朝廷に内緒でエゲレスやフランスや球根詐欺国と抜け荷をしてるんだけど、下関や鹿児島に各国の租界が作られて、幕府もそこでの荷物扱いに文句を言えないようにされてるようなもんだよ)


(つまり、英国と…昨今は協力国に加わったフランスのルアーブルやマルセイユにイタリアのナポリ、イスラエルのハイファあたりに船を直接転移させて荷役させとるわけよ。日本でも苫小牧と名古屋新港と衣浦と田原、それから苅田と博多が対象やったやろ、マリア)


(で、パリでもポワカール閣下の娘さんたちに会ったと思うんだけどさ、今の連邦政府の事務局長…一番偉い人の出身国が抜け荷の一大拠点なんだから、実質公認みたいなものなんだけどね)


で、マリアさんからは、そのNBという国と地球の朝廷同士、敢えて戦争(いくさ)が始まってもおかしくない状態にしておくことで、よろしくない人や物の往来を防いでいることを教えられます。


(で、いくさをしないように仲介をやってる国が抜け荷の取り扱いも担当してるんだよ。テレーズちゃん…わかってくれるかな)


(へいへい陛下。くわえてその、えぬびーいう星を切り開いた英国人の開拓者で有力な貴族が現地の民選王になって、英国の爵位持ちやったがために陛下も聖母様も向こうの貴族にされてましたんやな)


(これがフランス共和国が貴族制を継続してたら、そっちの爵位をもらうことでバランス取れるんだけどね、ま、痴女皇国世界のフランス王国にさ、連邦世界のフランス共和国の要人が常駐してることで、その辺を采配してると思ってよ)


と、テレーズ殿下が折に触れてぼやいておられた「マリアさんと英国のただならぬ仲」の理由をここでも知ることになります。


(法律や規則にうるさい割に横紙破りも大好きだからな…自分らで作った規則の脱法手段を考えるってどうなのと思うよ、あたしゃ今でも)


(マリア…お前はクリスを経由してあの爺さんの遺伝子を受け継いでるんやからな…)


(まぁ、ワーズワースのお祖父様自体がそういうこと大好きだから)


(ほほほほほ、確かにあの、へんりー様はただの人にしておくのは惜しい御仁…だからこそ死亡扱いとしておるのでしょ、痴女皇国の方のマリアリーゼ…)


ああ、これも言っておられましたね、テレーズ殿下とフラメンシア殿下。


痴女皇国の方の英国は女王が仕切っておられますが、その女王が難物で交渉に手間取るから、話を円滑に進めたいときはマリアさんにお願いした方が早い、とも。


『あの国の連中はとにかく謀略が好きでねぇ…いや、僕としても想定外と言えば想定外だったんだよ…』


『そういえばサン=ジェルマンのおっさんも、フランスで工作を頼んだついでに英国にも足伸ばして女王に謁見してたよな』


『ま、嫌いじゃないね、あの国の連中は』


どうもサン=ジェルマン氏、痴女皇国世界の欧州にも出現して山師のごとき所業で衆目をさらったことがおありのようで。


『そうだね…オーガの君たちには魔法や奇術は子供だましに見えるかも知れないけどね、マリアリーゼたちがやってるようなことは、ある意味では人の欲望や憧れそのものではあるんだよな…長寿長命や不老、そして酒池肉林…』


しかし、パリにおった時の馬小僧や偽女種たち。


そして何より、弥助の子の弥助。


あの子たちは、単純に欲に溺れて沈むことなく生きておりました。


そして、敢えて底深い女の欲を露わにすることで弥助と仲良くしておった役者のサラ・ベルナール嬢や、同じくおなごの欲とはなんぞやを考えつつも馬小僧と接していたシャルロット・コルデー。


あの者たちは一見すると、男のいちもつに狂っておるようでしたが、連れ添うべき(おのこ)の欲をまずは満たしてやろうという配慮も浅くはありませんでした。


『ま、女ってのはある意味でうそをつくのがデフォルトみたいなとこがあるからね…特にサラさんは女優だから、役を演じ切る必要があるし、コルデーさんも脚本家志望だろ。なら、役者に喋らせる内容を考える必要がある人だしね…』


つまりは、男に喜ばれるように振る舞う癖が身についておるのでしょう。


己の欲を満たすことを考えるようで、その実は一番に演技を見せたい相手に対して役者として、弥助に接しておるのが、私の心には印象として残ったのです。


『ま、人生は演劇の舞台ってやつだよ。だからこそ舞台回しの道化にも価値が出るってもんさ』


『それやり過ぎて無茶苦茶にしたから、あたしらが今苦労してるんじゃないの…』


『人を煙に巻くことが大好きだもんねぇ…サン=ジェルマンさん…』


で、このマリアさんたちの話で、サン=ジェルマンという人物がどういうお方か、ある程度は読めてきたかなぁと思うわたくし茨木童子。


(プラウファーネ…サン=ジェルマンは人にも演技をもとめるのですよ…この者は元来、人を七転八倒させてたのしむ悪いくせがあるのです…)


(ま、ええせいかくしとるんはまちがいない)


おかみ様が言いますかそれ、と思いましたけど、それよりは初代様の話の方が気になります。


『ま、ナンムの言うことも間違っちゃいないんだよ…確かに僕は自らがペテン師のように振る舞うことが楽だって思ってんだけど、同時にペテン師にきりきり舞いさせられる人々の姿が滑稽なほど、楽しめるのは間違いないねぇ』

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